人間の尊厳と自立(Aパート 2問)
問題1
社会福祉の理念を発展させた人物に関する次の記述のうち,適切なものを1つ選びなさい。
- バンク-ミケルセン(Bank-Mikkelsen,N.)は,「ソーシャルロール・バロリゼーション(Social Role Valorization)」を提唱した。
- ニイリエ(Nirje,B.)は,「ノーマライゼーション(normalization)の8つの原理」を提唱した。
- ヴォルフェンスベルガー(Wolfensberger,W.)は,「エーデル改革」を提唱した。
- リッチモンド(Richmond,M.)は,「ケースワークの7原則」を提唱した。
- エリクソン(Erikson,E.)は,「自立生活運動の理念」を提唱した。
正解は 2 です。
スウェーデンの知的障害者福祉連盟の行政官であったベンクト・ニイリエ(Nirje,B.)は、ノーマライゼーションの理念を「一日のリズム」「一週間のリズム」「一年のリズム」「ライフサイクルにおける発達の経験」「尊重される自由と選択」「異性との関係」「平均的な経済水準」「平均的な環境水準」という8つの権利(原理)として定義し、世界的な普及に大きく貢献しました。
【他の選択肢が誤りである理由】
- 選択肢1(誤り):バンク-ミケルセンはデンマークで知的障害者の親の運動に触発され、1959年法において世界で初めてノーマライゼーションの理念を法制化した人物です。設問にある「ソーシャルロール・バロリゼーション(社会的役割の価値高め)」を提唱したのはヴォルフェンスベルガーです。
- 選択肢3(誤り):ヴォルフェンスベルガーはノーマライゼーションの理念を北米に導入し、社会的役割の価値高め(ソーシャルロール・バロリゼーション)へと理論を発展させた人物です。設問にある「エーデル改革」は、1992年にスウェーデンで行われた、高齢者福祉の権限を県(ランドスティング)から市町村(コミューン)へ一元化させた社会保障制度改革を指します。
- 選択肢4(誤り):リッチモンドは『社会診断』『ソーシャル・ケースワークとは何か』を著し、ケースワークの理論化・体系化を行った人物です。設問にある「ケースワークの7原則」を定式化したのはバイステック(Biestek,F.)です。
- 選択肢5(誤り):エリクソンは人間の生涯にわたる発達課題を8つの段階に分けた「心理社会的発達理論(ライフサイクル論)」を提唱し、アイデンティティ(自我同一性)の概念を確立した精神分析学者です。設問にある「自立生活(IL)運動」は、1970年代にアメリカのバークリーを中心にエド・ロバーツら重度身体障害者らが展開した運動です。
問題2
Aさん(62歳,男性,要介護2)は,2年前に筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis:ALS)と診断された。妻と自宅で過ごしたいと希望し,訪問介護(ホームヘルプサービス)と訪問看護を利用している。最近,症状が進行し,サービス担当者会議で,Aさんは,「人工呼吸器はつけないで,最期まで自宅で生活したい」と言った。
会議のあと,妻は訪問介護員(ホームヘルパー)に,「夫にはなかなか言えないのですが,一日でも長く一緒にいたいので,私は人工呼吸器をつけてほしいと思っています」と気持ちを伝えた。
次のうち,Aさんの妻に対する訪問介護員(ホームヘルパー)の提案として,最も適切なものを1つ選びなさい。
- 「会議で話されていたAさんの意思が大切なので,尊重しませんか」
- 「私にはわからないので,医師に決めてもらってはどうですか」
- 「Aさんに人工呼吸器をつけてもらったほうがいいですよね」
- 「Aさんとお互いの気持ちを話し合う時間をつくりませんか」
- 「病院や施設の情報がほしいと介護支援専門員に伝えてはどうですか」
正解は 4 です。
人工呼吸器の装着を望まないAさんと、「一日でも長く一緒にいたい」と願う妻との間には、意思の不一致(葛藤)が生じています。厚生労働省の「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」では、本人と家族、医療・ケアチームが繰り返し話し合うアドバンス・ケア・プランニング(ACP:人生会議)が重要視されており、お互いの思いを共有し、受容し合うための対話の機会を設ける提案が極めて適切です。在宅生活の継続という共通の根底にある思いを確認しながら、療養生活の進め方を夫婦で話し合うプロセスが最優先されます。
【他の選択肢が誤りである理由】
- 選択肢1(誤り):Aさん本人の意思尊重は重要ですが、葛藤している妻に対して一方的に夫の意思への同意を迫る言葉かけは、妻の心情を無視しており、孤立感や罪悪感を植え付ける恐れがあります。
- 選択肢2(誤り):生命維持治療の選択は本人や家族の価値観に関わる重大な意思決定であり、医師に決めてもらうよう委ねる(丸投げする)対応は、主体的な自己決定を妨げます。
- 選択肢3(誤り):「人工呼吸器をつけない」というAさん自身の自己決定を覆し、妻の希望のみに偏って同調する提案は、本人の尊厳や意思を軽視しています。
- 選択肢5(誤り):Aさん夫婦はどちらも「自宅で過ごしたい・一緒にいたい」と望んでおり、現時点で施設や病院への入所・入院情報を介護支援専門員(ケアマネジャー)に求める提案は、夫婦の希望や現状のニーズに合致していません。
介護の基本(Aパート 10問)
問題3
介護施設における介護ロボットに関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
- 導入した施設は,人員配置基準が撤廃される。
- 使用方法は,職員個人の判断で行う。
- 導入することによって,利用者の自立支援や生活の質の向上が期待される。
- 導入の目的は,職員と利用者とのかかわりを最小限に抑えることである。
- 導入によって,職員の巡回は不要になる。
正解は 3 です。
厚生労働省および経済産業省が推進する「ロボット技術の介護利用における重点分野」において、介護ロボットの導入は「利用者の自立支援・日常生活動作(ADL)の維持向上」や「介護従事者の負担軽減による介護の質の確保」を目的としています。移乗支援や移動支援などのテクノロジーを活用することで、利用者が自身の力で行える動作を増やし、尊厳の保持や生活の質(QOL)の向上へつなげることができます。
【他の選択肢が誤りである理由】
- 選択肢1(誤り):介護ロボット(見守りセンサー等)を一定以上導入し、安全性が担保されている場合に特定施設や介護老人保健施設等で人員配置基準の「緩和」が認められる特例はありますが、人員配置基準そのものが「撤廃」されることはありません。
- 選択肢2(誤り):介護ロボットの誤った使用は、利用者の転落・転倒や負傷、機器の破損といった重大な事故に直結します。そのため、使用方法や対象者の選定は職員個人の判断ではなく、多職種によるカンファレンスや、施設で定められた安全マニュアル・運用手順に基づいて組織的に決定する必要があります。
- 選択肢4(誤り):介護ロボット導入の真の狙いは、移乗や見守りなどの身体的・時間的負担をテクノロジーで代替・軽減し、そこで生まれた時間的なゆとりを「対面でのきめ細かなコミュニケーション」や「専門的な個別ケア」に充てることにあります。かかわりを最小限に抑えることが目的ではありません。
- 選択肢5(誤り):センサーやインカム等の見守り機器(ロボット技術)の導入によって、巡回の回数を効率化・最適化することは可能ですが、機器の異常検知、停電などのトラブル、あるいは利用者の急変に対応するため、職員による目視や定時の巡回業務が完全に不要になるわけではありません。
削られていく体と、守りたい笑顔のあいだで。私たちが介護ロボットや見守りセンサーを本気で味方につける方法
問題4
次の記述のうち,指定避難所での要配慮者に対する生活支援として,最も適切なものを1つ選びなさい。
- 避難所内の情報提供には,音声やピクトグラム(pictogram)も取り入れる。
- 避難所内では,二次避難に備えて土足で過ごしてもらう。
- 食事は,被災者の平等性,公平性の観点から同じものを提供する。
- トイレは,感染予防のために和式便器が望ましい。
- 生活範囲は,区画されたスペースに限定する。
正解は 1 です。
内閣府の「避難所の運営に関する指針」に基づき、避難所では高齢者、障害者、外国人などの要配慮者を含めたすべての被災者への確実な情報伝達が求められます。視覚障害者や認知症の人、外国人などに対して、文字による掲示だけでなく、メガホン等による音声案内、直感的に理解できるピクトグラム(絵文字)を併用するマルチメディアによる情報保障は極めて効果的です。
【他の選択肢が誤りである理由】
- 選択肢2(誤り):内閣府の「福祉避難所の確保・運営ガイドライン」等において、避難所内の衛生管理と居住性の向上のため、原則として靴を脱いで過ごす「土足禁止」の環境づくりが推奨されています。土足のまま過ごすと、床面の砂埃やウイルスの飛散、ノロウイルス等による集団感染のリスクが急速に高まります。
- 選択肢3(誤り):要配慮者への食事提供においては、一律の平等性よりも、個々の身体状況に合わせた個別性が優先されます。咀嚼・嚥下機能が低下した高齢者への「形態調整食(粥、とろみ食)」、食物アレルギー対応食、宗教上の配慮を施した食事など、それぞれのニーズに応じた配慮が必要です。
- 選択肢4(誤り):要配慮者(特に下肢筋力が低下した高齢者や車椅子利用者)にとって、和式便器は立ち座りや姿勢保持が困難であり、転倒リスクを高めます。足腰への負担を軽減し、手すり等の設置が容易な洋式便器(または仮設の洋式トイレ・簡易便座)の配備が望まれます。
- 選択肢5(誤り):間仕切り(パーティション)等によるプライバシーの確保は重要ですが、要配慮者の生活範囲を狭い区画内のみに過度に関止(限定)してしまうと、身体活動量が低下し、廃用症候群や深部静脈血栓症(経済クラスター症候群)の発症を誘発する危険性があります。
問題5
ユニバーサルデザイン(universal design)の7原則に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
- 安全で使いやすいデザインにする。
- 要介護高齢者を対象とする。
- 個別対応より標準化を優先する。
- 介護福祉職にとって操作しやすいことを優先する。
- デザインの美しさを優先する。
正解は 1 です。
ユニバーサルデザイン(UD)の7原則には「うっかりミスを許容する(原則5:エラーに対する包容力)」が含まれており、危険を最小限に抑え、誰もが安全かつ簡単に使用できるデザイン(安全性・平易性)が定められています。
【他の選択肢が誤りである理由】
- 選択肢2(誤り):ユニバーサルデザインは、年齢、性別、国籍、障害の有無などにかかわらず、「最初からすべての人が利用できるように設計する」という理念に基づいています。要介護高齢者などの特定の対象に限定した設計は「バリアフリー」の考え方に該当します。
- 選択肢3(誤り):原則2には「自由度が高い(利用における柔軟性)」が掲げられており、個人の好みや多様な使い方、右利き・左利きの双方に対応できるような選択肢を提供することが求められます。画一的な標準化のみを優先するわけではありません。
- 選択肢4(誤り):ユニバーサルデザインは特定の職種や特定の介護者の利便性だけを優先するものではなく、サービスを受ける利用者も含めた「すべての使い手」にとって使いやすいものである必要があります。
- 選択肢5(誤り):原則7には「接近や利用のための空間と大きさ」が規定されているように、実用性、安全性、身体的負担の少なさが重視されます。デザインの審美性(美しさ)を最優先にするものではありません。
ユニバーサルデザインとバリアフリーの違いとは?身近な例と7原則からわかりやすく解説
問題6
Aさん(51歳,男性,障害支援区分5)は,知的障害がある。共同生活援助(グループホーム)で生活をしている。日中は,生活介護を利用して軽作業を行っている。Aさんは,タオルに強いこだわりを持っていて,なじみの店で自分が選んだタオルしか使用しない。これまでタオルは,両親と買いに行っていたが,両親が高齢になり行けなくなった。Aさんの両親から,サービス管理責任者に,「強いこだわりがあるので,いつも行く店で本人にタオルを選ばせてほしい。何か良いサービスはありませんか」と相談があった。
次の記述のうち,サービス管理責任者の助言として,最も適切なものを1つ選びなさい。
- 店までの移動に不安があるため,同行援護を勧める。
- 身体機能の維持・向上のために,自立訓練(機能訓練)を勧める。
- 一人で外出できるように,自発的活動支援を勧める。
- 自立した日常生活が送れるように,自立生活援助を勧める。
- 本人が買物に行けるように,行動援護を勧める。
正解は 5 です。
行動援護は、障害者総合支援法に基づく障害福祉サービス(介護給付)の一つです。自己判断能力が制限されている知的障害や精神障害により、行動上著しい困難を有する障害者(障害支援区分3以上など一定の要件を満たす者)を対象としています。外出時の移動中の介護や、行動する際に生じ得る危険を回避するための予防的対応、激しいこだわりといった行動障害への専門的な支援を行うため、Aさんが馴染みの店へ行って自分でタオルを選ぶという目的・状況に合致します。
【他の選択肢が誤りである理由】
- 選択肢1(誤り):同行援護は、視覚障害により移動に著しい困難を有する障害者を対象に、移動のサポートや代筆・代読などの視覚的情報の提供を行うサービスです。知的障害に伴う強いこだわりを理由とするAさんの外出支援には適用されません。
- 選択肢2(誤り):自立訓練(機能訓練)は、身体障害のある人や難病患者などを対象に、一定期間、理学療法や作業療法、日常生活動作の訓練を行う福祉サービス(訓練等給付)です。Aさんが買物に行くための移動や選択を直接サポートするサービスではありません。
- 選択肢3(誤り):障害者総合支援法における地域生活支援事業の「自発的活動支援事業」は、障害者やその家族が自主的に行う活動(ピアカウンセリングや意思疎通を図るための活動、親の会などのグループ活動)を支援する事業です。個別の買物の同行支援を目的としたものではありません。
- 選択肢4(誤り):自立生活援助は、障害者施設やグループホームなどから一人暮らし(単身生活)に移行した障害者を対象に、定期的な訪問や相談を通じて、日常生活における課題(公共料金の支払いや近隣トラブル等)の解決を一定期間支援するサービスです。共同生活援助(グループホーム)に入居中であるAさんの買物同行のニーズには適合しません。
問題7
次の記述のうち,介護保険制度における一人暮らしの要支援者を支えるサービスの内容として,適切なものを1つ選びなさい。
- 夜間を安心して過ごすために,夜間対応型訪問介護を利用する。
- 自宅で安全に移動するために,介護予防住宅改修を利用する。
- 趣味のカラオケに行くために,小規模多機能型居宅介護を利用する。
- 身元保証や死後の財産処分のために,高齢者等終身サポート事業を利用する。
- 金銭管理のために,日常生活自立支援事業を利用する。
正解は 2 です。
介護保険法第8条の2第11項に規定される「介護予防住宅改修」は、要支援者(要支援1・2)が自宅で安全かつ自立した日常生活を送れるよう、手すりの取付けや段差の解消、滑り防止のための床材変更などの改修費用を支給する給付(上限20万円、自己負担割合は1〜3割)です。一人暮らしの高齢者が自宅内での転倒を防ぎ、安全な移動経路を確保するための環境整備として直接的な支えとなります。
【他の選択肢が誤りである理由】
- 選択肢1(誤り):夜間対応型訪問介護は、要介護者(要介護1〜5)を対象とした地域密着型サービスであり、予防給付にあたる要支援者は利用できません。
- 選択肢3(誤り):小規模多機能型居宅介護(および介護予防小規模多機能型居宅介護)は、日常生活の支援や機能訓練を行うサービスです。趣味や嗜好、娯楽(カラオケ等)を目的とした外出・移動は介護保険の給付対象外(算定不可)とされています。
- 選択肢4(誤り):高齢者等終身サポート事業(身元保証や死後事務等を行う民間サービス)は、介護保険制度におけるサービスではなく、内閣官房や厚生労働省などが「高齢者等終身サポート事業者に関するガイドライン」等の整備を進めている契約に基づく事業です。
- 選択肢5(誤り):日常生活自立支援事業(旧・地域福祉権利擁護事業)は、認知症高齢者や知的障害・精神障害により判断能力が不十分な人の福祉サービスの利用手続きや日常的な金銭管理(預貯金の払い戻し、公共料金の支払い等)を援助する事業です。実施主体は各都道府県・指定都市の社会福祉協議会であり、介護保険制度に基づくサービスではありません。
問題8
Aさん(91歳,女性,要支援2)は,長年診療所の医師として地域医療に貢献してきた。婚姻歴はなく,診療所敷地内の自宅で3匹の猫と暮らしている。85歳で医師を引退した後も,近隣にはAさんをしたう地域住民が多く,定期的に,「先生,元気にしてますか」とAさんの自宅を訪ねている。
Aさんは昨年から歩行の不安を訴え,現在は地域住民の見守りのほか,訪問型サービスを週2回利用している。人の世話になることに慣れていない様子もあるが,最期まで自宅で暮らすことを望んでいる。
次の記述のうち,Aさんの生活史を尊重した訪問介護員(ホームヘルパー)の声かけとして,最も適切なものを1つ選びなさい。
- 「3匹の猫は,今後は地域の皆さんに預けましょう」
- 「近所の方の力も借りて,この地域で暮らしていけるように考えていきましょう」
- 「介護を受けることにも,今後は慣れてください」
- 「医師であったことは忘れて,私たちを頼ってください」
- 「一人暮らしで自宅で最期を迎えるのは,不安がありますよね」
正解は 2 です。
Aさんは「最期まで自宅で暮らすこと」を望んでおり、近隣にはAさんを慕って定期的に自宅を訪ねてくれる地域住民が多く存在します。これまでの地域医療への貢献や良好な近隣関係というAさんの「生活史(ライフヒストリー)」を尊重し、インフォーマルな地域資源(近所の方の力)を活かしながら在宅生活の継続を目指すアプローチは、本人の望む生き方を支える上で最も適切です。
【他の選択肢が誤りである理由】
- 選択肢1(誤り):長年自宅で共に暮らしてきた大切な猫を他の人に預けるよう促すことは、Aさんの愛着やこれまでの生活基盤を無視した提案であり、精神的苦痛を与える恐れがあります。
- 選択肢3(誤り):「介護を受けることに慣れてください」という言葉かけは、人の世話になることに不慣れなAさんの自尊心や心理的な抵抗感への配慮に欠けており、受容的・共感的な態度とは言えません。
- 選択肢4(誤り):長年、医師として地域医療に尽くしてきた歴史はAさんのアイデンティティの根幹をなす重要な一部です。「医師であったことは忘れて」と否定し、専門職への依存を一方的に求める対応は不適切です。
- 選択肢5(誤り):Aさんは自宅での生活継続と最期を迎えることを前向きに希望しています。介護職側から「不安がありますよね」とネガティブな感情を先回りして植え付けるような声かけは、自己決定を妨げることにつながります。
高齢者の生活史を尊重した訪問介護のあり方。自尊心を傷つけない声かけと地域連携の具体策
問題9
次の記述のうち,介護老人保健施設における在宅復帰に向けたカンファレンスで,介護福祉士が連携する職種の役割として,最も適切なものを1つ選びなさい。
- 歯科衛生士が,義歯を作成する。
- 看護師が,車いすを貸与する。
- 介護支援専門員(ケアマネジャー)が,訪問介護計画を作成する。
- 福祉用具専門相談員が,下肢の機能訓練をする。
- 作業療法士が,自宅の玄関の段差を確認する。
正解は 5 です。
作業療法士(OT)は、心身に障害のある人に対して、応用的動作能力や社会的適応能力の維持・回復を図るため、手芸、工作、その他の作業(日常生活活動、家事動作、職業関連動作など)を通じて治療、指導、援助を行います。介護老人保健施設(老健)からの在宅復帰を円滑に進めるため、実際に入所者の自宅を訪問、あるいは写真や図面等を通じて、玄関の段差をはじめとする環境の確認や、それに応じた動作指導、住宅改修の助言などを担います。
【他の選択肢が誤りである理由】
- 選択肢1(誤り):義歯(入れ歯)の作成、歯の切削や治療、充填などの歯科医療行為を行うのは歯科医師の役割です。歯科衛生士は、歯科医師の指導のもとで歯科予防処置(フッ化物塗布など)、歯科診療の補助、歯科保健指導(口腔ケア指導など)を行います。
- 選択肢2(誤り):車いすなどの福祉用具を貸与(レンタル)するのは、介護保険法に基づく「福祉用具貸与事業者」の役割です。看護師は、療養上の世話や診療の補助、健康管理や医学的判断に基づくケアなどを担います。
- 選択肢3(誤り):訪問介護計画を作成するのは、訪問介護事業所に配置されている「サービス提供責任者(サ責)」の役割です。介護支援専門員(ケアマネジャー)は、その前段階として全体のマネジメントを統括する「居宅サービス計画(ケアプラン)」を作成します。
- 選択肢4(誤り):下肢の機能訓練や歩行訓練など、身体機能の維持・回復を目的としたリハビリテーションを直接行うのは理学療法士(PT)の役割です。福祉用具専門相談員は、利用者の状況に応じた福祉用具の選定援助や、適切な使い方の指導などを担います。
問題10
次の記述のうち,介護老人福祉施設におけるリスクマネジメントとして,最も適切なものを1つ選びなさい。
- 安全対策担当者を置き,事故発生予防のための委員会を定期的に開催する。
- 家族からの苦情は,介護福祉士が,その場で解決する。
- 利用者の私物を壊したときは,介護福祉職の自己判断で弁償する。
- 入浴介助時のインシデントの報告は,職員間の口頭による伝達に統一する。
- 事故防止のため,地域のお祭りへの参加は控える。
正解は 1 です。
「指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準」第40条の3において、施設は事故の発生または再開を防止するため、安全対策のための担当者を定め、事故発生予防・再発防止のための委員会や研修を定期的に開催し、必要な措置を講じるよう義務づけられています。
【他の選択肢が誤りである理由】
- 選択肢2(誤り):家族からの苦情に対しては、介護福祉士が現場で独断で判断せず、施設の苦情解決責任者や窓口に迅速に報告し、組織として原因究明や誠実な対応を行う必要があります。
- 選択肢3(誤り):利用者の私物を破損した場合は、まず上司や施設長などの管理者に報告し、事実関係を正確に確認した上で、施設の損害賠償責任の有無や保険適用の手続きを含めて組織的に弁償等の対応を行います。
- 選択肢4(誤り):インシデント(ヒヤリハット)の報告は、情報の客観性や正確性を担保し、施設全体で共有して再発防止策を練るために、口頭ではなく書面(インシデントレポート)を用いて記録として残すのが原則です。
- 選択肢5(誤り):過度な活動制限や外出制限は、利用者の生活の質(QOL)を著しく低下させ、尊厳保持の観点からも望ましくありません。リスクを予測し、適切な人員配置や安全対策を講じた上での参加が求められます。
問題11
次の記述のうち,介護現場におけるレジオネラ菌の感染対策として,最も適切なものを1つ選びなさい。
- 感染者の衣類は,熱湯で煮沸消毒する。
- 提供する食品は,加熱調理を徹底する。
- 循環式浴槽は,塩素系薬剤を使用して消毒する。
- ドアノブは,次亜塩素酸ナトリウム液で消毒する。
- 家庭用加湿器のタンクの水は,常に貯めておく。
正解は 3 です。
厚生労働省の「レジオネラ症防止指針」に基づき、24時間風呂などの循環式浴槽では、レジオネラ属菌の繁殖やバイオフィルム(生物膜)の形成を防ぐため、遊離残留塩素濃度を一定(通常は1リットルあたり0.4ミリグラム程度)に保つよう塩素系薬剤を用いた適切な消毒管理が求められます。浴槽水の定期的な換水やろ過器の逆洗浄と並び、この塩素消毒はレジオネラ症の集団感染を防ぐ極めて有効な対策です。
【他の選択肢が誤りである理由】
- 選択肢1(誤り):レジオネラ症は、レジオネラ属菌に汚染された微細な水滴(エアロゾル)を吸入することで感染する呼吸器感染症です。ヒトからヒトへ直接感染することはないため、感染者が着用した衣類を他の利用者のものと区別して熱湯で煮沸消毒するなどの過度な対応は必要ありません。
- 選択肢2(誤り):レジオネラ属菌の主な感染経路はエアロゾルの吸入であり、汚染された食品の摂取による経口感染の危険性は極めて低いため、食品の加熱調理徹底は本菌の直接的な感染対策には該当しません。これは主にノロウイルスやO157といった食中毒原因菌への対策です。
- 選択肢4(誤り):ドアノブなどの高頻度接触面の消毒は、接触感染を媒介するインフルエンザウイルスやノロウイルスなどの感染対策として重要です。空気中に浮遊する水滴を介して感染するレジオネラ属菌に対して、ドアノブを次亜塩素酸ナトリウム液で消毒する優先度は低いです。
- 選択肢5(誤り):超音波式をはじめとする加湿器のタンク内に水を長期間貯めたまま放置すると、水温の上昇に伴ってレジオネラ属菌が著しく増殖し、発生したエアロゾルが室内中に飛散して集団感染を誘発する原因になります。タンクの水は毎日完全に換水し、定期的に内部を洗浄・乾燥させる必要があります。
問題12
介護福祉職が受けるストレスチェック制度に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
- 3年に1回の実施が義務づけられている。
- 労働者数が常時100名の事業場は受検が免除される。
- 結果は労務管理を行う介護主任へ提供され,面接指導に活用する。
- 心理的な負担の程度を把握するためのものである。
- 高ストレスと判定された場合は,産業医による治療が必須である。
正解は 4 です。
労働安全衛生法第66条の10に基づき導入されたストレスチェック制度は、労働者の「心理的な負担の程度」を把握するための検査です。定期的に検査を行うことで労働者自身が受検を通じて自らのストレス状況に気づき、メンタルヘルス不調を未然に防ぐ(一次予防)とともに、集団分析の結果を職場環境の改善につなげる役割を担っています。
【他の選択肢が誤りである理由】
- 選択肢1(誤り):ストレスチェックの実施頻度は、3年に1回ではなく「常時使用する労働者に対して1年以内に1回、定期的に」行うことが義務づけられています。
- 選択肢2(誤り):常時50人以上の労働者(パート・アルバイト含む)を使用する事業場において実施が義務づけられています。常時100名の介護事業場は義務化の対象であり、受検は免除されません(常時50人未満の事業場は当分の間、努力義務)。
- 選択肢3(誤り):検査結果は、受検した労働者本人に対して直接通知されます。本人の同意がない限り、労務管理を行う介護主任や経営者などの事業者に結果を提供することは労働安全衛生法により禁止されています。
- 選択肢5(誤り):高ストレスと判定された場合、本人の申し出に基づいて「医師による面接指導」が実施されますが、医療機関での受診や産業医による治療が「必須(義務)」となるわけではありません。また、産業医の主たる役割は治療ではなく、適切な就業上の措置に関する助言や面接指導です。
社会の理解(Aパート 12問)
問題13
民法の親族に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
- 民法は,三親等内の血族を家族と規定している。
- 民法は,六親等内の姻族を親族と規定している。
- 民法は,いとこは互いに扶養する義務があると規定している。
- 民法は,同居する親族は互いに扶け合わなければならないと規定している。
- 民法は,養子と養親の間には,親族関係は生じない。
正解は 4 です。
民法第730条において「直系血族及び同居の親族は、互いに扶け合わなければならない」と規定されています。これは家族・親族間における相互協調の倫理的義務を定めた条文です。
【他の選択肢が誤りである理由】
- 選択肢1(誤り):民法には「家族」の具体的な範囲を制限・定義する条文は存在しません。民法第725条が規定しているのは「親族」の範囲です。
- 選択肢2(誤り):民法第725条において、親族の範囲は「六親等内の血族」「配偶者」「三親等内の姻族」と規定されています。姻族については「六親等内」ではなく「三親等内」が法的な定義です。
- 選択肢3(誤り):民法第877条第1項において、原則として互いに扶養する義務を負うのは「直系血族及び兄弟姉妹」と規定されています。四親等の血族である「いとこ」には通常の扶養義務はありません(同条第2項により特別の事情がある場合に家庭裁判所が三親等内の親族に扶養義務を負わせることができますが、いとこは四親等であるため対象外です)。
- 選択肢5(誤り):民法第727条において「養子と養親及びその血族との間には、養子縁組の日から、血族と同一の親族関係を生ずる」と規定されています。これにより、実子と同様の一親等の直系血族(法定血族)としての親族関係が発生します。
問題14
次の記述のうち,「令和4(2022)年 国民生活基礎調査」(厚生労働省)における,高齢者に関する調査結果として,適切なものを1つ選びなさい。
- 65歳以上の者のいる世帯の世帯構造で最も多いのは,親と未婚の子のみの世帯である。
- 高齢者世帯は5割以上を占めている。
- 要介護者等と同居の主な介護者の年齢の組合せでは,65歳以上同士が約6割を占めている。
- 介護が必要となった理由の第1位は,骨折・転倒である。
- 1世帯当たりの平均所得金額では,高齢者世帯では600万円を超えている。
正解は 3 です。
「2022(令和4)年 国民生活基礎調査」の構造からみる介護の状況において、要介護者等と同居している主な介護者の年齢をみると、要介護者等・主な介護者ともに「65歳以上」の割合(いわゆる老老介護)は63.5%を占めており、6割を超えています。さらに「75歳以上同士」の組み合わせも35.7%にのぼり、高齢の介護者が高齢の要介護者を支える状況が顕著です。
【他の選択肢が誤りである理由】
- 選択肢1(誤り):65歳以上の者のいる世帯の世帯構造で最も多いのは「夫婦のみの世帯(32.1%)」であり、次いで「単独世帯(31.8%)」、「親と未婚の子のみの世帯(20.2%)」の順となっています。
- 選択肢2(誤り):全世帯(5,431万世帯)のうち、高齢者世帯(65歳以上の者のみで構成するか、これに18歳未満の未婚の者が加わった世帯)は1,693万1千世帯で、全体の31.2%です。5割以上には達していません。
- 選択肢4(誤り):要介護者等となった主な原因の第1位は「認知症(16.6%)」です。以下、第2位「脳血管疾患(脳卒中)(16.1%)」、第3位「高齢による衰弱(13.9%)」と続き、「骨折・転倒(12.5%)」は第4位となっています。
- 選択肢5(誤り):2021(令和3)年の1世帯当たり平均所得金額をみると、全世帯の平均が545万7千円であるのに対し、高齢者世帯の平均所得金額は318万3千円です。600万円には届いていません。
問題15
Aさん(78歳,女性)は,一人暮らしである。家事や買物は,時間はかかるが,できるだけ自分で取り組んでいる。近くに頼れる親族がいないため,緊急時にすぐに通報できる公共サービスを利用している。Aさんは,定期的に市の窓口や,地域包括支援センターに今後の生活支援について相談している。近所には,毎日散歩を一緒にしている友人グループがいて,散歩に来ない仲間がいると訪問して声をかけあっている。
次のうち,Aさんの生活を支える自助に該当するものとして,最も適切なものを1つ選びなさい。
- Aさんが身辺のことを,時間をかけてもやること
- 緊急時にすぐに通報できる公共サービスを利用していること
- 市の窓口の職員が相談に応じること
- 地域包括支援センターの職員が相談に応じること
- 散歩仲間が声をかけあっていること
正解は 1 です。
地域包括ケアシステムにおける「自助・互助・共助・公助」の4つの要素において、「自助」は自らの力で自立した生活を営むこと、または自発的に市場のサービス(民間サービス)を購入して解決することを指します。Aさん自身が家事や買物といった身の回りの事柄(身辺のこと)に対して、時間をかけながらも自分の力で主体的に取り組む姿勢は、自己負担・自己責任に基づく自助の典型的な形です。
【他の選択肢が誤りである理由】
- 選択肢2(誤り):緊急通報等の公共サービスの利用は、税金等を財源として行政が提供する仕組みであるため「公助」に該当します。
- 選択肢3(誤り):自治体(市)の窓口職員による相談対応や制度上の支援は、行政が担うべき福祉・生活保障の領域であり「公助」に該当します。
- 選択肢4(誤り):地域包括支援センターによる相談援助や権利擁護業務は、介護保険法に基づく高齢者のための公的な社会福祉システムの一環であり「公助」に該当します。
- 選択肢5(誤り):散歩仲間という地域の友人グループがボランティア精神や相互のつながりに基づいて声をかけあう活動は、制度化されていないインフォーマルな相互扶助である「互助」に該当します。
問題16
介護保険制度における介護サービス利用に関する次の記述のうち,適切なものを1つ選びなさい。
- 65歳未満の者は,保険給付の対象外である。
- 保険給付には,支給限度額がある。
- 要介護認定の有効期限は,原則として3か月である。
- 保険給付による福祉用具の貸与は,要介護3以上の者が対象である。
- 地域包括支援センターに相談する前に,要介護認定を受ける必要がある。
正解は 2 です。
介護保険制度の在宅サービス(居宅サービス・地域密着型サービス)には、要介護度に応じた「区分支給限度基準額」が設定されています。利用者はこの限度額の範囲内であれば、原則1割から3割の自己負担でサービスを利用できますが、限度額を超えた分の費用については全額が自己負担(10割負担)となります。
【他の選択肢が誤りである理由】
- 選択肢1(誤り):40歳以上65歳未満の医療保険加入者は「第2号被保険者」に位置づけられており、末期がんや関節リウマチなど、加齢に伴う16種類の特定の疾病(特定疾病)が原因で要介護・要支援状態になった場合は保険給付の対象となります。
- 選択肢3(誤り):要介護認定(新規・区分変更)の有効期間は、原則として「6か月」(状態に応じて3か月から11か月まで伸縮可能)です。更新認定の有効期間は原則「12か月」(状態に応じて3か月から最大48か月まで伸縮可能)と定められています。
- 選択肢4(誤り):福祉用具貸与は要介護・要支援認定を受けた人が広く利用できるサービスですが、車いすや特殊寝台(介護ベッド)、床ずれ防止用具、体位変換器、認知症老人徘徊感知機器、移動用リフトなどの一部種目については、原則として「要介護2以上」の軽度者以外(要支援1・2、要介護1)は原則給付対象外とされています(要介護3以上に限定されているわけではありません)。
- 選択肢5(誤り):地域包括支援センターは、高齢者の保健医療の向上および福祉の増進を図るための総合相談窓口です。要介護認定を受ける前であっても、介護や生活に関する相談を行うことが可能であり、同センターが窓口となって要介護認定の申請手続きを代行することもできます。
問題17
次の記述のうち,障害者福祉の歴史的展開として,最も適切なものを1つ選びなさい
- 国際連合の障害者の権利に関する条約の影響を受け,障害者基本法に「社会的障壁の除去」が規定された。
- 第二次世界大戦後5年以内に,優生保護法が廃止された。
- 「精神薄弱者福祉法」の制定によって,知的障害者の入所施設からの地域移行が推進された。
- 社会福祉基礎構造改革によって,高齢者より先に障害者の福祉制度が利用契約制度となった。
- 身体障害,知的障害,精神障害のうち,福祉に関する法律の制定が最も早かったのは知的障害である。
正解は 1 です。
わが国は、2006(平成18)年に国際連合総会で採択された「障害者の権利に関する条約」の批准に向け、国内法の整備(障害者制度改革)を進めました。その一環として、2011(平成23)年に障害者基本法が大幅に改正され、障害の定義に「社会的障壁」の概念が導入されるとともに、国や自治体、基本原則において「社会的障壁の除去」を講ずべきことが明記されました。
【他の選択肢が誤りである理由】
- 選択肢2(誤り):優生保護法が制定されたのは第二次世界大戦後の1948(昭和23)年です。その後、1996(平成8)年に優生思想に基づく不妊手術に関する条項などが削除され、「母体保護法」へと改称・改定されました。大戦後5年以内に廃止されたという事実はなく、長年にわたり存続していました。
- 選択肢3(誤り):1960(昭和35)年に制定された「精神薄弱者福祉法」(現在の知的障害者福祉法)は、当時の社会背景を反映し、主に障害児・者の保護や入所施設(精神薄弱者援護施設)の整備を進めるための法律でした。知的障害者の「入所施設からの地域移行」が国を挙げて本格的に推進されるようになったのは、1990年代以降の障害者プランや2000年代の障害者自立支援法(現・障害者総合支援法)等の導入以降です。
- 選択肢4(誤り):社会福祉基礎構造改革(2000年施行)において、従来の行政がサービスを決定する「措置制度」から、利用者が事業者と対等な契約を結ぶ「利用契約制度」への移行が図られました。このとき、高齢者福祉制度(介護保険法)が2000(平成12)年に先行して契約制度へと移行し、障害者福祉制度は2003(平成15)年の支援費制度の導入によって契約制度へと移行したため、高齢者の方が先です。
- 選択肢5(誤り):いわゆる福祉三法(身体障害者福祉法、生活保護法、児童福祉法)の中で、障害に特化した福祉法の制定が最も早かったのは、1949(昭和24)年に制定された「身体障害者福祉法」です。知的障害(精神薄弱者福祉法)は1960(昭和35)年、精神障害(精神保健福祉法のもととなる精神衛生法)は1950(昭和25)年であり、知的障害は3つの中で最も遅い制定です。
問題18
次の記述のうち,障害者福祉の関係する機関やシステムとして,最も適切なものを1つ選びなさい。
- 地域活動支援センターは,補装具の判定を行う。
- 基幹相談支援センターには,介護福祉士の配置が義務となっている。
- 都道府県は,身体障害者更生相談所を設置しなければならない。
- 都道府県は,障害支援区分の認定を行う。
- 利用者負担の額は,市町村障害福祉計画によって決められる。
正解は 3 です。
身体障害者福祉法に基づき、都道府県には「身体障害者更生相談所」の設置が義務づけられています。この機関は、市町村への専門的な技術的援助や、18歳以上の身体障害者に対する医学的・心理学的・職能的判定など、高度な専門判断を要する業務を包括的に担う専門機関です。
【他の選択肢が誤りである理由】
- 選択肢1(誤り):地域活動支援センターは、障害者が通うことで創作的活動や生産活動の機会を提供し、社会との交流促進を図るための施設(地域生活支援事業)です。補装具の処方や購入・修理の必要性を判定する専門的な役割は、身体障害者更生相談所などが担います。
- 選択肢2(誤り):基幹相談支援センターに配置が必要なのは、地域の専門的相談に対応できる「専門的な知識・経験を有する人員」であり、具体的には社会福祉士、精神保健福祉士、保健師、相談支援専門員などが想定されています。介護福祉士の配置は法的な義務には含まれていません。
- 選択肢4(誤り):障害支援区分(区分1〜6)の認定を行うのは、障害福祉サービスの支給決定主体である「市町村(または特別区)」です。市町村に設置された障害支援区分審査会の審査・判定を経て、市町村が認定を交付します。
- 選択肢5(誤り):障害福祉サービスの利用者負担額は、障害者総合支援法に基づき、利用者の世帯所得に応じた「応能負担(所得に応じた月額負担上限額の設定)」を原則として国が一元的に定めています。各自治体が策定する「市町村障害福祉計画」によって個別の負担額が左右されることはありません。
問題19
障害者虐待防止に関する次の記述のうち,適切なものを1つ選びなさい。
- 養護者による虐待が疑われる障害者を発見した場合,都道府県へ通報する義務がある。
- 著しく拒絶的な対応は身体的虐待に当てはまる。
- 使用者による障害者虐待は含まれない。
- 行政職員が障害者福祉施設等に,立ち入り調査を行うことは許されていない。
- 虐待を発見した障害者福祉施設従事者が通報した場合,業務上の守秘義務違反にはならない。
正解は 5 です。
障害者虐待防止法において、障害者福祉施設従事者等による障害者虐待を発見した者は、速やかに市町村に通報しなければならないと義務づけられています。同法では、この通報をしたことを理由として、解雇その他不利益な取扱いを受けないことが保障されているほか、刑法の秘密漏示罪や各専門職の法律に定められた守秘義務の規定にかかわらず、通報義務が優先されるため、業務上の守秘義務違反には問われません。
【他の選択肢が誤りである理由】
- 選択肢1(誤り):養護者による虐待(またはその疑い)を発見した際の通報先は、都道府県ではなく、原則として「市町村」です。
- 選択肢2(誤り):著しく拒絶的な対応や放置、必要な介護・世話の放棄、あるいは同居人による虐待行為を放置する等の行為は、「ネグレクト(放棄・放置)」に該当します。身体に心身の苦痛や傷を負わせる身体的虐待とは区別されます。
- 選択肢3(誤り):障害者虐待防止法が定義する虐待の主体は、「養護者」「障害者福祉施設従事者等」に加えて、障害者を雇用する「使用者」の3つが明記されており、使用者による虐待も同法の対象に広く含まれています。
- 選択肢4(誤り):障害者福祉施設従事者等による虐待の疑いがあり、事実確認のために必要があると認められる場合、市町村長等の行政機関は関係者への質問や、施設等への立ち入り調査を行う権限(法的権限)が認められています。
問題20
Aさん(82歳,女性,要介護1)は,自宅で一人暮らしをしている。外出機会が少ないAさんを心配して,民生委員が定期的に見守りを行っている。ある日,民生委員から地域包括支援センターに,「Aさんのように,家に閉じこもりがちな要介護者が増えている。民生委員だけでは十分な見守りができない」と相談があった。
次の記述のうち,地域包括支援センターの職員の対応として,最も適切なものを1つ選びなさい。
- 高齢者本人による相談が原則のため,Aさん自身が相談に来るように促す。
- 介護サービスを利用するため,Aさんのケアプランを作成する。
- フォーマルな社会資源の活用を優先し,民生委員のかかわりを制限する。
- 地域ケア会議において,関係者と地域課題について話し合う。
- 要介護者の実態を把握するために,介護保険審査会を設置する。
正解は 4 です。
介護保険法において地域包括支援センターの機能として規定されている「地域ケア会議」は、個別事例の検討を通じて多職種協働のネットワークを構築するだけでなく、個別事例の積み重ねから見えてきた「地域に共通する課題」を抽出し、地域に必要な社会資源の開発や政策形成に反映させる役割を持っています。民生委員からの「家に閉じこもりがちな要介護者が増えており、民生委員だけでは十分な見守りができない」という相談は、地域全体の構造的な課題(地域課題)であるため、地域ケア会議の場に関係者を集め、多角的な支援体制の構築やネットワーク化について協議する対応が合致します。
【他の選択肢が誤りである理由】
- 選択肢1(誤り):地域包括支援センターは、高齢者本人だけでなく、家族や民生委員、近隣住民などの地域住民からの相談にも広く応じる総合相談支援業務を担っています。閉じこもりがちで外出機会が少ないAさんに対し、本人による来所を相談の原則として求める対応は適切ではありません。
- 選択肢2(誤り):Aさんは「要介護1」の認定を受けています。要介護者の居宅サービス計画(ケアプラン)を主に作成するのは「居宅介護支援事業者(ケアマネジャー)」です。地域包括支援センターが主にケアプラン(介護予防ケアプラン)を作成するのは、要支援者や総合事業の対象者となります。
- 選択肢3(誤り):地域包括ケアシステムでは、公的な制度であるフォーマルサービスだけでなく、民生委員やボランティア等の地域のインフォーマルなつながり(互助)を組み合わせることが重視されます。民生委員のかかわりを制限するアプローチは逆行しています。
- 選択肢5(誤り):介護保険審査会は、要介護認定の結果や保険料の徴収に不服がある場合に、被保険者からの申し立てを受けて審理・裁決を行う都道府県の附属機関(第三者機関)です。地域包括支援センターに設置権限はなく、要介護者の実態把握のために設置されるものでもありません。
問題21
法定後見制度に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
- 65歳未満の者は利用することができない。
- 判断能力が十分ある者には,後見人をつけることができない。
- 市町村長は,後見開始の審判を請求することができない。
- 法人を後見人に選任することはできない。
- 後見人は財産管理を行うことはできない。
正解は 2 です。
民法に基づく法定後見制度は、精神上の障害(認知症、知的障害、精神障害など)によって判断能力が不十分な人を保護・支援する仕組みです。本人の判断能力の程度に応じて「後見(常況として判断能力を欠く)」「保佐(判断能力が著しく不十分)」「補助(判断能力が不十分)」の3つの区分が設けられており、判断能力が十分にある人は制度の対象外となります。
【他の選択肢が誤りである理由】
- 選択肢1(誤り):法定後見制度の利用に年齢の上限や下限(高齢者限定など)の規定はありません。精神上の障害によって判断能力が不十分であれば、65歳未満の若年性認知症の人、知的障害や精神障害のある人なども広く利用が可能です。
- 選択肢3(誤り):身寄りがなく申立人がいないなどの理由で福祉を図るため特に必要があると認められる場合、老人福祉法、知的障害者福祉法、精神保健福祉法(いわゆる福祉三法)の規定に基づき、市町村長には後見開始等の審判を請求する権限(市町村長申立て)が認められています。
- 選択肢4(誤り):民法第843条において、家庭裁判所は必要と認めるときは弁護士や社会福祉士などの専門職だけでなく、社会福祉協議会や一般社団法人などの「法人」を成年後見人に選任できると定められています。
- 選択肢5(誤り):成年後見人の主な職務は、本人の権利を守るための「財産管理(貯金の管理や不動産の処分、各種支払いの代行等)」および日常生活の契約に関する「身上保護(医療や介護サービスの契約等)」の2つであり、明確な財産管理権が認められています。
問題22
有料老人ホームに関する次の記述のうち,適切なものを1つ選びなさい。
- 入居する高齢者に,介護,食事の提供,家事,健康管理のうち1つ以上のサービスを提供する。
- 状況把握サービスと生活相談サービスの提供が義務づけられている。
- 自立した高齢者は,入居の対象外である。
- 共生型サービスとして,指定を受けることができる。
- 介護保険制度の指定対象外である。
正解は 1 です。
老人福祉法に基づき、有料老人ホームは「入居させる高齢者に対して、①食事の提供、②介護の提供、③洗濯・掃除等の家事の供与、④健康管理の供与、のいずれか(1つ以上)のサービスを(供与をあらかじめ約することを含み)行う施設」と定義されています。
【他の選択肢が誤りである理由】
- 選択肢2(誤り):「状況把握サービス(安否確認)」と「生活相談サービス」の提供が少なくとも義務づけられているのは、高齢者住まい法(高齢者の居住の安定確保に関する法律)に基づく「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」です。
- 選択肢3(誤り):有料老人ホームには、主に自立・要支援状態の高齢者を対象とする「健康型」や、自立から要介護まで広く受け入れる「住宅型」が存在するため、自立した高齢者を入居対象外とする規定はありません。
- 選択肢4(誤り):共生型サービスは、障害福祉サービスの指定を受けた事業所が介護保険の指定(訪問介護、通所介護、短期入所生活介護など)を受けやすくするための特例制度です。有料老人ホーム自体が共生型サービスとしての指定対象になる仕組みではありません。
- 選択肢5(誤り):有料老人ホームのうち、都道府県知事等から「特定施設入居者生活介護」の指定を受けた施設(介護付有料老人ホーム)は、介護保険制度に基づく保険給付(指定対象)の枠組みに含まれます。
問題23
生活困窮者自立支援法に関する次の記述のうち,適切なものを1つ選びなさい。
- 障害者は対象から除外されている。
- 生活困窮者自立相談支援事業は,社会福祉法人へ委託できない。
- 生活困窮者自立相談支援事業は,市にとって任意事業である。
- 生活困窮者住居確保給付金の支給は,市にとって必須事業である。
- 都道府県の責務は規定されていない。
正解は 4 です。
生活困窮者自立支援法において、福祉事務所を設置する自治体(都道府県、市、福祉事務所を設置する町村)が実施すべき「必須事業」として、生活困窮者自立相談支援事業および住居確保給付金の支給が義務づけられています。住居確保給付金は、離職や収入減少などにより住宅を失った、または失うおそれのある者に対して家賃相当額を支給し、自立に向けた就労支援等を行う制度であり、自治体の裁量によらない法定の必須業務となっています。
【他の選択肢が誤りである理由】
- 選択肢1(誤り):生活困窮者自立支援法の対象は「就労の状況、心身の状況、地域社会との関係性その他の事情により、現に経済的に困窮し、最低限度の生活を維持することができなくなるおそれのある者」と包括的に定義されています。障害の有無を理由に対象から除外されることはなく、他制度の障害福祉サービス等と適切に連携しながら支援を行います。
- 選択肢2(誤り):生活困窮者自立相談支援事業は、適切な実施能力があると認められる社会福祉法人、特定非営利活動法人(NPO法人)、民間企業などの多様な主体に委託することが法的に認められています。
- 選択肢3(誤り):生活困窮者自立相談支援事業は、福祉事務所を設置するすべての自治体(都道府県、市、特別区、福祉事務所設置町村)にとって「必須事業」です。任意事業とされているのは、生活困窮者家計改善支援事業や生活困窮者就労準備支援事業などです。
- 選択肢5(誤り):生活困窮者自立支援法第2条において、都道府県は、地方公共団体としての責務(生活困窮者の自立の促進に関し必要な施策を講ずる責務)を負う旨が明確に規定されています。また、福祉事務所を設置していない町村の区域については、都道府県が直接、自立相談支援事業等の必須事業を実施する主体となります。
問題24
次の記述のうち,生活保護制度における補足性の原理として,適切なものを1つ選びなさい。
- 申請に基づいて保護を行う。
- 国の定める基準によって測定された需要をもとに保護を行う。
- 個人の必要に応じてできるだけ早く保護を行う。
- 資産・能力を活用した上で保護を行う。
- 世帯を単位として保護を行う。
正解は 4 です。
生活保護法に規定される「補足性の原理」は、保護を受ける者が利用可能なすべての資産、能力、その他あらゆる法律や制度による支援・援助を、自らの最低限度の生活維持のために最大限活用することを前提とし、それでもなお不足する部分を保護によって補うという原則です。不動産や預貯金などの資産の売却・取り崩し、就労可能な能力の活用、扶養義務者からの援助などがこれに該当します。
【他の選択肢が誤りである理由】
- 選択肢1(誤り):「申請保護の原則」に関する記述です。要保護者、その扶養義務者、または同居の親族の申請に基づいて保護を開始する仕組みを指します。
- 選択肢2(誤り):「基準及び程度の原則」に関する記述です。厚生労働大臣が定める基準によって測定された需要をもとに、その者の金銭や物品では満たせない不足分を補う形で保護の程度を決定します。
- 選択肢3(誤り):生活保護の基本原理・原則にこのような規定はありません。急迫した事情がある場合には申請を待たずに職権で保護を行う「職権保護」の仕組みがありますが、設問の表現は法的な原理の定義とは異なります。
- 選択肢5(誤り):「世帯単位の原則」に関する記述です。保護の要否や程度は、個人ではなく「世帯」を一つの単位として認定・測定することを基本としています。
人間関係とコミュニケーション(Aパート 4問)
問題25
新人職員のAさん(20歳)は,子どものころからの夢だった介護福祉職になり,がんばって働いていた。ただ,介護の技術をもっと学ぶ必要があるといつも感じていた。ある日,利用者のBさんに,「Aさんじゃダメだ,別の人を呼んで」と言われて,ショックを受けた。悩むうちに利用者とかかわりたくないと感じるようになり,眠れなくなってしまった。
次の記述のうち,このような状況にあるAさんが,ストレスを取り除くためにまず行うべき対処方法として,最も適切なものを1つ選びなさい。
- つらさから逃げず,学びが足りないことを自覚する。
- 介護の技術がうまくなるために,全力で取り組む。
- 眠れるように,毎晩飲酒する。
- 上司や同僚などに悩みを話して,助言を受ける。
- 介護福祉職には向かないと判断して,転職する。
正解は 4 です。
利用者の言葉にショックを受け、不眠や業務への忌避感といった心身のストレス反応が生じている状況(バーンアウトやメンタルヘルス不調の初期段階)では、一人で抱え込まずに周囲のサポートを求める「相談(ソーシャルサポートの活用)」が最初の適切な対処法(コーピング)となります。客観的な視点を持つ上司や同僚に悩みを打ち明けることで、精神的な負担の軽減と、具体的な業務改善に向けた助言を得ることができます。
【他の選択肢が誤りである理由】
- 選択肢1(誤り):すでに不眠症状などの心身の拒絶反応が出ている状態で、「つらさから逃げず」「学びが足りない」と過度に自分を追い込む自責的な思考は、ストレスをさらに増幅させ、うつ病などのメンタルヘルス不調を悪化させる危険性があります。
- 選択肢2(誤り):介護技術の向上を目指す姿勢自体は望ましいものの、ストレスによる睡眠障害や業務への精神的拒絶が生じている現状において、さらに「全力で取り組む」といった過度なエネルギーの投入は、早期のバーンアウト(燃え尽き症候群)を引き起こす恐れがあります。
- 選択肢3(誤り):睡眠を目的とした入眠期の飲酒(寝酒)は、睡眠の質(深い睡眠)を著しく低下させ、中途覚醒や早朝覚醒を誘発します。また、耐性が形成されやすくアルコール依存症のリスクを高めるため、健康管理の観点から極めて不適切です。
- 選択肢5(誤り):夢であった職種に就いたばかりの新人職員が、周囲への相談や適切なサポート体制の検討、業務調整といった段階を経ることなく、一時の強いショックや悩みのピーク時に独断で「向いていない」と決めて転職を選ぶのは時期尚早です。
問題26
Aさんは有料老人ホームに入所したばかりである。ある日,廊下を行ったり来たりしているAさんに,B介護福祉職が声をかけた。Aさんは,「私の部屋はどこですか」と困った様子で答えた。B介護福祉職が,「ここから2つ隣の部屋です」と伝えると,Aさんは,「どこですか」と不安そうな表情で聞いた。B介護福祉職は非言語的コミュニケーションを用いて伝えることにした。
次の記述のうち,B介護福祉職が用いた非言語的コミュニケーションとして,最も適切なものを1つ選びなさい。
- ゆっくり話した。
- 大きな声で伝えた。
- Aさんの部屋の番号を紙に書いて渡した。
- Aさんに近づいた。
- Aさんの部屋のドアを指さした。
正解は 5 です。
非言語的コミュニケーション(ノンバーバル・コミュニケーション)は、言葉以外の手段(身振り、手振り、視線、表情、姿勢、空間的距離など)を用いて情報を伝える方法です。入所直後で環境に馴染めず、言葉による「2つ隣の部屋」という説明だけでは場所を認識できずに不安を感じているAさんに対し、実際の部屋のドアを指さす(身振り・ジェスチャー)という視覚的な非言語情報を併用することで、目的地の方向や位置を直感的に伝えることができます。
【他の選択肢が誤りである理由】
- 選択肢1(誤り):話す速度(テンポ)の調整は、音声の出し方や調子に関わる要素であり、言語的コミュニケーションを補完する「準言語(パラ言語)」に分類されます。言葉そのものを用いたアプローチの一部です。
- 選択肢2(誤り):声の大きさや高低、イントネーションの変化も「準言語(パラ言語)」に該当します。不安を感じている利用者に対して不必要に大きな声で伝える対応は、威圧感や恐怖心を与えてしまう恐れがあります。
- 選択肢3(誤り):紙に文字や数字を書いて伝える方法は「筆談」の領域であり、文字言語を用いた言語的コミュニケーションに該当します。
- 選択肢4(誤り):利用者に近づく行為は、パーソナルスペース(対人距離)の調整という非言語的コミュニケーションの一種です。しかし、接近するだけでは「自分の部屋がどこか分からない」というAさんの具体的な課題(方向や場所の把握)に対する解決の提示にはなりません。
問題27
次のうち,介護福祉施設におけるコンプライアンスの意味として,最も適切なものを1つ選びなさい。
- 法令を遵守すること
- 給与を引き上げること
- 連携を促進すること
- 介護技術の向上に努めること
- 管理体制を強化すること
正解は 1 です。
コンプライアンス(法令遵守)は、企業や組織が各種の法律、政令、省令、自治体の条例といった明文化された法規範だけでなく、倫理観や社会的規範、組織内の就業規則などの内規を守って公明正大に業務を行うことを指します。特に高い公共性と安全性が求められる介護福祉施設においては、社会福祉法や介護保険法、労働基準法などの遵守、および利用者の人権や尊厳を守る倫理的な行動基準が強く求められます。
【他の選択肢が誤りである理由】
- 選択肢2(誤り):給与の引き上げ(賃金改善)は、処遇改善加算の取得や事業所の処遇、人事労務管理に関わる施策であり、コンプライアンスそのものの定義には該当しません。
- 選択肢3(誤り):他職種や地域、他機関との連携促進は、多職種協働や地域包括ケアシステムの構築、ネットワーキングに関わる取り組みであり、法令遵守という意味とは区別されます。
- 選択肢4(誤り):介護技術の向上に努めることは、個人の専門性の確保や能力開発、資質向上(介護福祉士法に定められた資質向上の責務など)に関わる行動であり、コンプライアンスという言葉が示す主たる概念ではありません。
- 選択肢5(誤り):管理体制の強化は、リスクマネジメント(危機管理)の徹底やガバナンス(企業統治)の確立、組織運営の最適化を指すものであり、コンプライアンスはそれらの基盤となる一要素に位置づけられます。
問題28
入社して3か月のA介護福祉職は,はじめて夜勤を経験したとき,排泄チェック表の記入でミスをしてしまった。起床介助で忙しい時間に記入したために,記載箇所を間違えてしまった。A介護福祉職は自身のミスを受け入れられず,落ち込んでいる。
次の記述のうち,A介護福祉職に対する支持的スーパービジョンとして,最も適切なものを1つ選びなさい。
- 同僚と一緒に排泄チェック表を確認する。
- 施設長から再発防止に向けた対応を指示する。
- 上司がA介護福祉職の気持ちの理解に努めつつ,状況を確認する。
- 看護師が利用者のその後の状況を確認する。
- 業務マニュアルを見直して,上司が必要な修正を行う。
正解は 3 です。
スーパービジョンは、スーパーバイザー(指導者)がスーパーバイジー(受託者・援助者)に対して行う専門的な指導・育成のプロセスであり、「教育的機能」「管理的機能」「支持的機能」の3つの主要な機能に分類されます。このうち「支持的機能(支持的スーパービジョン)」は、対人援助職が抱える業務上のストレスや不安、孤立感を軽減し、情緒的な安定や自己効力感を高めるための援助を指します。入社3か月でミスをして落ち込んでいるA介護福祉職に対し、上司がその心理的動揺や感情に寄り添い、理解に努めながら話を聞くアプローチは、支持的スーパービジョンの定義に合致する対応です。
【他の選択肢が誤りである理由】
- 選択肢1(誤り):同僚と一緒に排泄チェック表の事実確認を行うアプローチは、ミスという結果に対する客観的な情報整理、または今後の業務の正確性を高めるための教育的な関わりであり、情緒的サポートを主とする支持的スーパービジョンには該当しません。
- 選択肢2(誤り):施設長が再発防止に向けた業務命令や改善指示を出す対応は、組織のサービス品質管理、安全管理の観点から行われるものであり、スーパービジョンの3機能における「管理的機能(組織の基準や規則の遵守、適切な業務執行の管理)」に分類されます。
- 選択肢4(誤り):看護師が利用者の身体状態や安全を確認する行為は、発生したミスに伴うリスクマネジメント(事後対応)および多職種連携に基づく実務的な連携措置であり、スーパービジョンとしての職員の心理的支援とは異なります。
- 選択肢5(誤り):ミスを防止するために上司が業務マニュアルの不備を見直し、システムとしての改善を施す一連の環境整備は、組織全体の管理体制や持続可能な業務プロセスの構築を目的とするものであり、スーパービジョンのうち「管理的機能」に該当します。
コミュニケーション技術(Aパート 6問)
問題29
次のうち,利用者とのコミュニケーション場面で,介護福祉職が行う自己開示の目的として,最も適切なものを1つ選びなさい。
- 自己の潜在意識を活用するため
- 利用者との信頼関係を評価するため
- 利用者に自分自身の情報を知らせるため
- 利用者との信頼関係を形成するため
- 自己を深く分析し,客観的に理解するため
正解は 4 です。
対人援助における「自己開示」は、自らの生い立ちや考え方、感情などを意図的に相手に伝えるコミュニケーション技法です。援助者が適度に自己を開示することにより、利用者の緊張や警戒心が和らぎ、相互理解が進むことで信頼関係(ラポール)の形成が促進されます。
【他の選択肢が誤りである理由】
- 選択肢1(誤り):潜在意識(無意識の思考や感情)の活用は、心理療法における自己探求などの領域に関わるものであり、利用者との対面場面で意図的に行う自己開示の直接的な目的には該当しません。
- 選択肢2(誤り):関係性の評価(アセスメントや事後分析)は、ケアの振り返りや記録、カンファレンスなどを通して客観的に行うものであり、コミュニケーションの最中に自己を開示して測定する性質のものではありません。
- 選択肢3(誤り):自分自身の情報を知らせること自体は自己開示の行為そのものを指していますが、介護福祉実践におけるコミュニケーションの目的としては、その先にある良好な関係性の構築を目指す必要があります。
- 選択肢5(誤り):自分自身を深く分析して客観的に理解するプロセスは、援助者の「自己覚知(自己理解)」にあたる概念です。自己開示は他者に向けて行うアプローチであり、自身の内省を主目的とするものではありません。
問題30
A介護福祉職は,認知症(dementia)のあるBさん(80歳,女性)と会話をしている。Bさんは,「私は小さい頃毎年お祭りに行くことが楽しみでね」「なんだか最近ひざが痛いような気がしてね」「今から何をしようかしらね」と,次々に話している。A介護福祉職は,Bさんが混乱しないように,「Bさん,子どもの頃の思い出や体調のことをお話しくださっているのですね」と返答した。
次のうち,A介護福祉職が行ったコミュニケーション技術として,最も適切なものを1つ選びなさい。
- 要約
- 承認
- 賞賛
- 共感
- 同意
正解は 1 です。
要約は、話し手が次々と語った複雑な内容や複数のエピソードを、援助者がそのエッセンスや重要なポイントに絞って簡潔にまとめ、整理して相手に返すコミュニケーション技法です。Bさんは子どもの頃の思い出(お祭り)、現在の体調(ひざの痛み)、これからの活動(今から何をしようか)という異なるテーマを立て続けに話しています。これに対し、A介護福祉職が「子どもの頃の思い出や体調のことをお話しくださっているのですね」と話のポイントを整理して伝えたアプローチは、Bさん自身の頭の中を整理し、対話を円滑に進めるための要約の定義に当てはまります。
【他の選択肢が誤りである理由】
- 選択肢2(誤り):承認(アクノレッジメント)は、相手の存在そのものや、見せた行動、変化、努力などを言葉にして認め、伝える技法です。話を遮らずにうなずくことや、「毎日リハビリを続けていらっしゃいますね」といった事実の伝達が該当し、複数の話を整理する今回の対応とは異なります。
- 選択肢3(誤り):賞賛は、相手の成果や優れた行動に対して、褒めたり称えたりすることです。「それは素晴らしいですね」「よく頑張りましたね」といった評価を含む言葉が該当しますが、今回の場面ではA介護福祉職は評価を行っていません。
- 選択肢4(誤り):共感は、相手の感情や内面の心理を、援助者が自分のことのように想像し、寄り添って理解しようとする姿勢や技法です。もし「楽しみにされていたのですね」「ひざが痛むと不安になりますね」など、Bさんの感情に焦点を当てて言葉を返していれば共感になりますが、今回は話のテーマ(内容)を整理しています。
- 選択肢5(誤り):同意は、相手の意見や考えに対して「私もその通りだと思います」「私もそうします」と、自分も同じ意見であることを示す肯定的な反応です。客観的に話をまとめる要約の技術とは性質が異なります。
問題31
次の記述のうち,利用者の家族との関係づくりにおける介護福祉職の基本姿勢として,最も適切なものを1つ選びなさい。
- お互いの緊張が解けるまでじっと待つ。
- 介護福祉職のペースで話を進める。
- 利用者の意向よりも家族の意向を優先する.
- 家族への連絡は最小限にする。
- 利用者支援で協働するパートナーとして接する。
正解は 5 です。
利用者の家族は、その生活歴や価値観、心身の特性を最もよく知る存在であり、施設や地域におけるケアを共につくりあげる重要な連携相手です。介護福祉職には、家族を単なる支援の客体(依存対象や依存先)として捉えるのではなく、利用者の尊厳を維持しQOL(生活の質)を高めるための共通の目標を持ったチームの一員、すなわち「協働するパートナー」として対等に接する基本姿勢が求められます。
【他の選択肢が誤りである理由】
- 選択肢1(誤り):家族が抱える不安や緊張を緩和するためには、介護福祉職側から受容的・共感的な態度で積極的に働きかける(傾聴や挨拶など)必要があり、何もしないまま受動的に待つ対応は信頼関係の構築を遅らせます。
- 選択肢2(誤り):コミュニケーションの主導権を専門職側が握り、自らのペースで話を進めるアプローチは、家族側の心理的障壁を生み、本音や真のニーズを汲み取ることを阻害します。
- 選択肢3(誤り):介護福祉実践における基本原則は「利用者主体(本人本位)」です。たとえ良意であっても、利用者の意向を無視して家族の意向を無条件に優先することは、本人の自己決定権を侵害することにつながります。
- 選択肢4(誤り):孤立や不信感を防ぎ、24時間を通じた生活の連続性を保つためには、日頃の状況変化やケアの方針について丁寧かつ適切な頻度で情報共有を行う必要があり、連絡を最小限に絞ることは連携の希薄化を招きます。
問題32
- 滅菌手袋を使用して行う。
- 上半身はベッドの手前端に移動する。
- バスタオルで両下肢を包む。
- 洗浄するときは,43℃のお湯を用いる。
- 終了後は,蒸しタオルで水分を拭き取る。
正解は 3 です。
ベッド上での陰部洗浄の際、露出部分を最小限にして利用者の羞恥心に配慮すると同時に、室温や洗浄水による身体の冷え(おむつを開放することによる体温低下)を防ぐ必要があります。バスタオル等を用いて両下肢を覆うように包むことは、プライバシーの保護と保温の効果を両立させるために有効な手順です。
【他の選択肢が誤りである理由】
- 選択肢1(誤り):陰部洗浄は無菌操作を必要とする医療行為(処置)ではなく、日常生活上の清潔援助(介護)です。滅菌手袋を使用する必要はなく、介護福祉職自身の感染予防および衛生管理の観点から、通常の使い捨てプラスチック手袋(ディスポーザブル手袋)を着用して行います。
- 選択肢2(誤り):ベッド上で行う排泄・清潔介助では、利用者の腰部(臀部)の下に洗髪槽や防水シーツ、おむつなどを敷き詰めて洗浄水をキャッチします。上半身だけをベッドの手前に移動させると、身体が不自然にねじれて苦痛を与えるだけでなく、安定した安楽な姿勢を保てません。
- 選択肢4(誤り):43℃のお湯は、陰部や外陰部のような皮膚・粘膜が非常に薄く繊細な部位に対しては熱すぎます。強い刺激によって痛みを感じたり、熱傷(やけど)を引き起こしたりするリスクがあるため、一般的には体温より少し高い「38℃〜40℃」程度のぬるま湯を使用するのが適切です。
- 選択肢5(誤り):洗浄後に蒸しタオル(温熱・湿潤タオル)を使用すると、拭いた直後に皮膚の表面から水分が蒸発する際、周囲の気化熱を奪って皮膚が急激に乾燥し、肌荒れや湿疹、不快な冷えを招きます。終了後は、乾いた清潔なタオルやペーパータオルを優しく押し当て、水分をしっかりと吸い取るように拭き取ります。
Aさん(80歳,女性,要介護3)は中途障害の全盲である。介護老人福祉施設に入所している。最近,食堂の席の入れ替えがあった。Aさんは同じテーブルの利用者同士の会話を,自分に向けて話しかけられていると思って,応答した。しかし,誰からも反応はなく,Aさんは下を向いてしまった。その様子を見たB介護福祉職は,Aさんの状況に対応するために,同じテーブルの利用者にAさんの事情を話し,協力を求めた。
次の記述のうち,B介護福祉職が同じテーブルの利用者に協力を依頼した内容として,最も適切なものを1つ選びなさい。
- Aさんは疲れているので,部屋で休むように伝えてほしい。
- Aさんは不安なので,そっと手を握ってほしい。
- Aさんにもわかるように,話す相手の名前を呼んでから話してかけてほしい。
- Aさんが混乱するので,食堂での会話は控えてほしい。
- Aさんは施設の予定がわからないので,これから食事だと教えてほしい。
正解は 3 です。
中途障害による全盲のAさんは、視覚による情報(誰が誰に向かって話しているか、視線や表情など)を捉えることができません。そのため、複数人が集まる食堂のテーブルでは、自分に向けられた発言であるかどうかの判別が難しく、誤解や心理的孤立を招きやすい状況にあります。周囲の利用者が話しかける際に「○○さん」と相手の名前を明確に呼ぶ習慣を持つことは、Aさんが全体の会話の流れや発言の対象を聴覚的に正しく把握するための極めて有効な環境調整です。
【他の選択肢が誤りである理由】
- 選択肢1(誤り):Aさんは同じテーブルの会話に入ろうとする意欲(応答)を示しており、身体的な疲労によって下を向いたわけではありません。一方的に自室への退室を勧める対応は、Aさんの交流の機会を奪い、社会的孤立をさらに深めてしまいます。
- 選択肢2(誤り):全盲の人に対して、事前の声かけや文脈の共有がないまま不意に身体へ触れる(手を握る)行為は、かえって驚きや不意打ちによる恐怖心、強い警戒感を与える原因となります。
- 選択肢4(誤り):Aさんが混乱することを防ぐという名目で、他の利用者に対して食堂での会話そのものを制限(自粛)させるよう求めることは、周囲の利用者の自己決定や生活の自由を不当に狭めるものであり、適切な集団援助・環境調整とは言えません。
- 選択肢5(誤り):Aさんが困惑している原因は「食堂の座席変更に伴う他者とのコミュニケーション環境の変化と、発言対象の判別困難」にあります。施設のスケジュールや、これから食事であることの認識不足が本質的な課題ではないため、この依頼は状況に合致しません。
問題33
Aさん(72歳,男性)は記憶障害があり,介護施設に入居している。ある日,介護福祉職にAさんが,「あの,ちょっとお願いがあるんです。ええとね,実は,お昼ご飯をほとんど残しちゃいました…。それでね…,あ,あれかな,調理師さんはがっかりしたかな,私はずっと食堂をやっていたんですよ。店はけっこう繁盛していたけど閉めることになってね。あ,ええと何の話だったかな…」と話しかけてきた。
次のうち,このときのAさんの発言を促すための介護福祉職の応答として,最も適切なものを1つ選びなさい。
- 「Aさんは,お店を閉めたくなかったのですね」
- 「Aさんは,どんな料理が得意だったのですか」
- 「調理師さんのことは気にしなくていいですよ」
- 「どこかからだの具合が悪いのではないですか」
- 「何かお願いがあるのではありませんか」
正解は 5 です。
Aさんは冒頭で「ちょっとお願いがあるんです」と切り出していますが、自身の記憶障害の影響や、過去に食堂を経営していたエピソード(エピソード記憶)が途中で想起されたことにより、本来話そうとしていた要件を忘れて混乱しています(話の脱線)。対人援助のコミュニケーションにおいて、記憶障害により途中で意図を見失った利用者に対しては、話の本筋(本来の目的やニーズ)に優しく引き戻すための声かけが有効です。最初に本人が口にした「お願い」というキーワードを優しく提示することで、忘れてしまった本来の用件を思い出すきっかけをつくります。
【他の選択肢が誤りである理由】
- 選択肢1(誤り):お店を閉めたことに対する感情へのアプローチであり、傾聴の姿勢としては一見適切に思えますが、Aさんが本来伝えたかった「お願い」の内容からさらに話題が逸れてしまい、発言の本筋を思い出す妨げになります。
- 選択肢2(誤り):過去の職業や得意料理に関する質問は、回想法的なアプローチとしては有効ですが、今回の場面ではAさんが本来伝えたかった「お願い」という中心的なニーズから完全に話題が外れてしまいます。
- 選択肢3(誤り):Aさんの調理師に対する申し訳なさ(気遣い)に焦点を当てた慰めの言葉ですが、この応答ではAさんが途中で見失ってしまった「本来伝えたかった要件(お願い)」を思い出すことにはつながりません。
- 選択肢4(誤り):「昼ご飯をほとんど残した」という発言から身体調調不良を疑う視点ですが、Aさんは直後に「調理師さんはがっかりしたかな」と心理的な懸念を述べており、さらに「何の話だったかな」と混乱しているため、まずは体調の追及よりも話の文脈を整理する声かけが先決です。
問題34
次のうち,客観的事実に該当するものとして,最も適切なものを1つ選びなさい。
- 利用者Aは,楽しかったはずだ。
- 利用者Aは,朝食のパンを残した。
- 利用者Aは,何か言いたそうだった。
- 利用者Aは,不安だったと思う。
- 利用者Aは,退屈そうにしていた。
正解は 2 です。
介護記録における「客観的事実」とは、誰が見ても同じように認識できる記述であり、観察、測定、あるいは本人が発した言葉(発言)そのものなど、記録者の主観や推測が混じらない事実を指します。「朝食のパンを残した」という事象は、第三者が見ても判断が一致する明確な測定・観察可能事実です。
【他の選択肢が誤りである理由】
- 選択肢1(誤り):「楽しかったはずだ」という記述は、利用者の実際の感情を客観的に証明するものではなく、介護福祉職側の推測や主観的な思い込みに基づく表現に該当します。
- 選択肢3(誤り):「何か言いたそうだった」という記述は、利用者の様子に対する介護福祉職側の主観的な解釈や推測であり、明確な客観的事実を示す記録としては不適切です。
- 選択肢4(誤り):「不安だったと思う」という記述は、末尾の表現からも分かるように、記録者自身の個人的な感想や意見(主観)の混じった推測文となっています。
- 選択肢5(誤り):「退屈そうにしていた」という記述は、利用者の特定の行動(視線や姿勢など)から介護福祉職側が受けた主観的な印象・推測であり、客観的事実そのものを表した表現ではありません。
生活支援技術(Aパート 26問)
問題35
次の記述のうち,介護福祉職が行う利用者の生活支援として,最も適切なものを1つ選びなさい。
- 利用者ができないことを代わりに行うことに重点を置く。
- 利用者の全体像をとらえて支援する。
- 利用者がすべてを自分一人でできるようにする。
- 利用者の生活の効率化を図ることを目標にする。
- 利用者に同情する気持ちで寄り添う。
正解は 2 です。
介護福祉実践における生活支援は、単に疾患や障害といった局所的な側面だけに注目するのではなく、利用者のこれまでの歩み(生活史)や価値観、心身の状況、家族関係、社会的環境、精神的負担などを含めた「全体像(ICF:国際生活機能分類の視点など)」を包括的にとらえることが基本となります。個々の生活課題の背景にある要因を多角的に把握することで、はじめて本人の尊厳に基づいた個別ケアの実践が可能になります。
【他の選択肢が誤りである理由】
- 選択肢1(誤り):できないことを一律に介護福祉職が代行(過剰介護)することは、利用者が持つ残存能力の発揮を妨げ、心身の廃用症候群を進行させるだけでなく、自己効力感の低下を招きます。支援の本質は、本人が望む生活を自らの力で営めるようサポートする「自立支援」です。
- 選択肢3(誤り):介護保険法等でも掲げられている「自立」とは、何から何まで全てを一人で完結させること(身辺自立)だけを意味するものではありません。障害や衰えがあっても、他者や社会資源の助けを適切に借りながら、自らの意思に基づいて主体的な生活を送る「自己決定」や「社会的自立」も含まれます。
- 選択肢4(誤り):効率性や事業所側のスケジュール管理を優先した一律の支援は、利用者一人ひとりの生活リズムやこだわり、個別性を無視することにつながり、生活の質(QOL)や本人の主体性を損なう原因となります。
- 選択肢5(誤り):「同情(相手をかわいそうだと思うこと)」は、援助者と利用者の間に上下関係や心理的な非対称性を生じさせるため、専門職としての倫理的態度(バイステックの7原則における統制された情緒的関与など)に反します。必要なのは、相手の立場に立って感情を理解しようとする「共感」の姿勢です。
問題36
介護老人福祉施設における,快適な室内環境に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
- 風の通り道をつくって,換気を行う。
- 手すりは,壁紙と同じ色を使う。
- ベッドライトの光源は,利用者の目に直接あたるように調整する。
- カビの発生を予防するために,湿度は高く保つ。
- 靴音を小さくするために,硬い床材にする。
正解は 1 です。
室内環境の衛生を保つための換気は、空気の出入口となる2箇所の窓や扉を開け、風の通り道(気流)を確保して効率よく行うことが基本となります。特に対面する位置にある開口部を開放することで、室内の汚れた空気や湿気、臭気が速やかに排出され、新鮮な外気を取り入れることができます。
【他の選択肢が誤りである理由】
- 選択肢2(誤り):手すりは、視覚や認知機能が低下した高齢者でもその位置を容易に識別できるよう、壁紙や周囲の環境とは対照的な色(コントラストの高い色)を採用し、視認性を高める必要があります。
- 選択肢3(誤り):ベッドライト(読書灯・枕元灯)の光源が利用者の目に直接入ると、強い不快感や眩しさ(グレア)を生じさせ、視覚的疲労や覚醒を引き起こして睡眠を妨げる原因となるため、間接照明やシェードを用いて光源を遮る調整が求められます。
- 選択肢4(誤り):湿度を高く保ちすぎると、結露が生じやすくなり、カビやダニの繁殖を促進してしまいます。室内環境として推奨される相対湿度は40%〜60%の範囲であり、カビの発生予防には適切な除湿や換気による湿度コントロールが必要です。
- 選択肢5(誤り):硬い床材は、靴音が響きやすく(床衝撃音の増加)、室内環境の静穏性を損なう原因になります。また、転倒時の衝撃を吸収しにくく骨折のリスクを高めるため、介護施設では適度なクッション性や吸音性、防滑性を備えた床材(コルクや弾性ビニル床シートなど)が適しています。
問題37
パーキンソン病 (Parkinson disease)の人の住まいに関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
- 玄関の段差には,スロープを設置する。
- 廊下の床には,歩幅に合わせて目印をつける。
- リビングの床には,大きさの違うカーペットを重ねて敷く。
- 移動空間が狭くなるように,家具を配置する。
- リビングは1階,浴室は2階にして,階段で行き来する。
正解は 2 です。
パーキンソン病の代表的な歩行障害として、歩き出しに足が出にくくなる「すくみ足」があります。すくみ足に対しては、床に視覚的な情報(線やマークなどの目印)を一定の間隔で配置すると、それをまたごうとする意識が働き、歩行がスムーズに誘発される効果(視覚ハック・視覚的キュー)が認められています。
【他の選択肢が誤りである理由】
- 選択肢1(誤り):パーキンソン病の進行に伴い、歩行時に足が上がりにくくなる「小刻み歩行」や、前傾姿勢で突進してしまう「突進現象」が現れます。玄関の段差に急なスロープを設置すると、前方に加速がついた際に制御が利かなくなり、転倒のリスクが極めて高くなります。段差昇降には、手すりを設置した段差解消機や、適切な踏み幅の段差(式台)と手すりの組み合わせが基本です。
- 選択肢3(誤り):大きさの異なるカーペットを重ねて敷くと、床面に不必要な段差やめくれが生じます。足元が不安定で、かつ「小刻み歩行」や「すくみ足」の特徴を持つパーキンソン病の人にとって、カーペットのわずかな段差や縁はつまずきを誘発する重大な危険因子です。
- 選択肢4(誤り):突進現象や姿勢反射障害(バランスを崩したときに立て直せない症状)があるため、移動空間が狭いと家具に衝突したり、方向転換(方向転換時のすくみ足)が困難になったりします。車椅子での移動や介助スペース、方向転換の軌道を考慮し、十分な通路幅を確保した家具配置が必要です。
- 選択肢5(誤り):パーキンソン病は進行性の疾患であり、姿勢保持が困難になるため、階段の昇降は滑落や転落の危険が非常に大きく危険です。生活導線はワンフロア(平屋構造、または1階部分)に集約させ、階段の行き来をなくす環境調整が原則です。
問題38
次の記述のうち,歩行が不安定になり,移動の意欲が低下している利用者に対する介護として,最も適切なものを1つ選びなさい。
- 福祉用具の使用は避けて,自力での歩行を目指すように促す。
- 移動の目的を伝えるよりも,歩行機能の改善を優先する。
- 成功体験を積み重ねることができるように,達成可能な歩行の目標距離を設定する。
- 歩行の不安定さに合わせて,移動範囲を縮小する。
- 本人が希望しなくても,介護福祉職の判断で毎日歩くことを目標にする。
正解は 3 です。
心身の機能低下により移動への意欲が減退している利用者に対しては、無理のない、確実に達成できるスモールステップでの目標を設定することが効果的です。小さな成功体験(自己効力感の向上)を段階的に積み重ねるアプローチは、不安を取り除き、「また歩いてみよう」という自発的な意欲の回復や維持に直結します。
【他の選択肢が誤りである理由】
- 選択肢1(誤り):歩行が不安定な状態で専門職が自力歩行のみを強要することは、転倒リスクを高めるだけでなく、利用者に過度な恐怖心を与えてさらなる意欲低下を招きます。歩行器や杖などの適切な福祉用具の活用は、安全の確保と移動の自立を促すために必要不可欠です。
- 選択肢2(誤り):生活場面における介護福祉は、「トイレに行きたい」「食堂でご飯を食べたい」といった目的(活動・参加)を伴う移動を重視します。機能回復訓練(リハビリ)そのものを最優先にして目的を二の次にする対応は、本人の生活の質(QOL)を損なう原因となります。
- 選択肢4(誤り):安全管理のみに囚われて活動・移動の範囲を一律に縮小(過剰な制限)してしまうと、歩行に必要な筋力やバランス能力の廃用症候群(機能低下)がさらに進行し、社会的な孤立をも深める悪循環に陥ります。
- 選択肢5(誤り):本人の意向や心理状態を無視し、専門職側の判断だけで一歩的なノルマ(毎日の歩行目標)を押し付ける対応は、「利用者主体(自己決定の尊重)」の原則に反し、深刻な拒絶や意欲喪失を引き起こします。
問題39
次の記述のうち,右片麻痺のある利用者に対する,仰臥位(背臥位)から車いすへの移乗の介護として,最も適切なものを1つ選びなさい。
- 利用者に右側臥位になって起き上がるように促す。
- 端座位になった利用者の左側に立つ。
- 端座位になった利用者の右側に,車いすを置く。
- 車いすのフットサポートは下げておく。
- 移乗するときは,利用者に前傾姿勢をとるように促す。
正解は 5 です。
ベッドの端座位(端に腰掛けた状態)から車いすへ安全に移乗するためには、立ち上がり動作の段階で利用者に頭部を前に出してもらい、前傾姿勢をとるよう促すアプローチが重要です。前傾姿勢をとることで身体の重心が前方(足の裏の支持基底面内)に移動し、臀部がベッドから離れやすくなるため、最小限の力で安全に立ち上がることができます。
【他の選択肢が誤りである理由】
- 選択肢1(誤り):右片麻痺のある利用者が起き上がる際は、麻痺側を下にする右側臥位ではなく、健側(動かせる側)である左側を下にする「左側臥位」から、左の肘や手でベッドを押して起き上がるのが原則です。麻痺側を下にすると強い痛みを生じさせたり、残存能力を活かせなくなったりします。
- 選択肢2(誤り):端座位になった利用者の健側(左側)に立つと、利用者の安全を確保できません。介護福祉職は、転倒やバランス崩落のリスクが極めて高い側、すなわち利用者の「右側(麻痺側)」に位置し、いつでも支えられるよう近接して立つ必要があります。
- 選択肢3(誤り):車いすは、利用者が自力でアームサポート(ひじ掛け)を掴んで方向転換できるよう、動かせる側である「健側(左側)」に配置します。麻痺側である右側に配置すると、利用者が車いすを健手で掴めなくなり、移乗動作が著しく困難になります。
- 選択肢4(誤り):車いすのフットサポート(足載せ台)が下がった(閉じた)状態のままだと、立ち上がりの際や移乗中に利用者の足が引っかかり、転倒や擦過傷を招く危険があります。移乗前には必ずフットサポートを跳ね上げ(開いて)、足元のスペースを開放しておきます。
問題40
視覚障害者の歩行時の誘導に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
- 介護福祉職は,利用者の半歩後ろで背中を支えながら歩く。
- 介護福祉職は,白杖に触れながら歩く。
- 狭い通路では,介護福祉職は利用者の後ろを歩く。
- 階段利用時は,介護福祉職は階段の前で声かけして止まる。
- 介護福祉職は,利用者が握っている上肢を振って歩く。
正解は 4 です。
視覚障害のある人を誘導する際、階段や段差の手前では必ず一歩手前で一度立ち止まり、「ここから上り階段です」「一段下がります」といった具体的な状況を言葉で伝える必要があります。事前に声をかけて静止することで、利用者は足元の変化に備えて安全に昇降動作へ移ることができます。
【他の選択肢が誤りである理由】
- 選択肢1(誤り):基本姿勢は、介護福祉職(誘導者)が利用者の「半歩前(または一歩前)」に立ち、利用者に肘の上やつかみやすい部分を軽く握ってもらう形をとります。後ろから背中を押すような誘導は、前方の状況が分からない利用者に強い恐怖心を与えます。
- 選択肢2(誤り):白杖(路面を触擦して周囲の障害物や段差を検知する道具)は、利用者が自ら安全を確認し、平衡感覚を保つための重要な体の一部です。他者が白杖に触れたり動きを妨げたりすることは、利用者の情報収集を遮断し、バランスを崩させる原因になります。
- 選択肢3(誤り):狭い通路や人混みを通る際は、介護福祉職が利用者の「真前」に位置を変え、自分の腕(または肘)を後ろに回して利用者に掴まらせることで、お互いの体が縦一列になるように誘導します。後ろを歩くと、前方の危険を介護福祉職が先に察知して回避することができません。
- 選択肢5(誤り):誘導中に介護福祉職が腕を不必要に大きく振って歩くと、利用者に歩行のタイミングや方向が正しく伝わらず、腕の動揺によって利用者の身体バランスを大きく崩してしまいます。腕は振らずに自然に固定して歩行します。
問題41
身じたくの目的に関する次の記述のうち,国際生活機能分類(ICF)における「心身機能・身体構造」の観点が考えられるものとして,最も適切なものを1つ選びなさい。
- 体温を調整する。
- 身体を清潔に保つ。
- セルフケアを行う。
- 自分を表現する。
- 周囲との人間関係を調整する。
正解は 1 です。
国際生活機能分類(ICF)における「心身機能・身体構造」は、生命維持や身体の生理的・心理的機能、および器官・肢体といった解剖学的部分を指します。衣服を着脱する「身じたく」には様々な目的や側面がありますが、「体温を調整する」という行為は、外気から身体を保護し、体温調節機能という生物学的な生理機能を補う・維持する観点に直結します。
【他の選択肢が誤りである理由】
- 選択肢2(誤り):「活動」の観点に含まれます。ICFにおける「活動」は個人による課題や行為の遂行を指し、自らの身体の清潔を保持する一連の行為そのものがこれに該当します。
- 選択肢3(誤り):「活動」の領域に該当します。セルフケア(自己管理・自己評価を含む)は、日常生活を営む上で個人が主体的に行う具体的な行為全般を指す包括的な概念です。
- 選択肢4(誤り):「参加」または「背景因子(個人因子)」に関わる観点です。社会的な場面において身じたくを通じて自己を表現し、固有の役割や個性を発揮することは、社会生活への関与を意味します。
- 選択肢5(誤り):「参加」または「環境因子・関係性」の観点です。TPO(時間・場所・場合)に応じた身じたくを整えることで、周囲の人々や社会集団との良好な関係性を構築・維持する行為は、社会的な関わり合いに位置づけられます。
問題42
次のうち,介護が必要な利用者への口腔ケアとして,最も適切なものを1つ選びなさい。
- 仰臥位(背臥位)で行う。
- 歯垢を除去するためにうがいをしてもらう。
- 歯ブラシで歯を1,2本ずつ磨く。
- スポンジブラシは乾いた状態で使用する。
- 部分床義歯(局部床義歯)はつけたまま行う。
正解は 3 です。
歯ブラシによるブラッシングは、毛先を歯と歯茎の境目や歯間に的確に当て、細かく振動させるようにして1〜2本ずつ丁寧に磨くのが基本です。力を入れすぎず、軽い力で小刻みに動かすことで、歯肉を傷つけることなく効率的にプラーク(歯垢)を除去できます。
【他の選択肢が誤りである理由】
- 選択肢1(誤り):仰臥位(あおむけ)の状態で口腔ケアを行うと、水分や剥がれた汚れが気管に入り込み、誤嚥や誤嚥性肺炎を引き起こす危険性が極めて高くなります。座位や半座位(リクライニング位)、あるいは回復体位(側臥位)など、誤嚥を防止できる姿勢で行う必要があります。
- 選択肢2(誤り):うがい(洗口)には口腔内の残渣や遊離した汚れを洗い流す効果はありますが、歯の表面に強固に付着している歯垢(生物膜・バイオフィルム)をうがいだけで除去することはできません。歯垢の除去には、歯ブラシ等を用いた物理的な摩擦(機械的清掃)が必要です。
- 選択肢4(誤り):スポンジブラシを乾燥した状態のまま使用すると、摩擦によって口腔粘膜を傷つけてしまう恐れがあります。必ず水や高張性の洗浄液で湿らせ、余分な水分をしっかりと絞ってから、粘膜の汚れを絡め取るように使用します。
- 選択肢5(誤り):義歯(入れ歯)を装着したまま口腔ケアを行うと、義歯と粘膜の隙間に挟まった食物残渣や細菌を取り除くことができず、口腔内不潔や義歯性口内炎の原因となります。口腔ケアの際は必ず義歯を外し、残存歯・粘膜と義歯をそれぞれ別々に洗浄します。
問題43
次のうち,右片麻痺の利用者が前開きの上着を着脱するときに介護福祉職が行う説明として,最も適切なものを1つ選びなさい。
- 「脱ぐときは,左肩の衣服を下げてから,右側の袖から腕を抜きましょう」
- 「脱ぐときは,右肩の衣服を下げてから,right側の袖から腕を抜きましょう」
- 「襟元を手前にして,腿の上に置きましょう」
- 「着るときは,右袖を肘まで通してから,左袖を通しましょう」
- 「着るときは,右袖を肩まで通してから,左袖を通しましょう」
正解は 5 です。
片麻痺のある人の着脱介助(更衣介助)では、身体の過度な動きを抑え、可動域の制限や痛み、衣服の突っ張りを防ぐために「脱健着患(だっけんちゃっかん:脱ぐときは健側から、着るときは麻痺側から)」が原則です。本事例では右片麻痺があるため、着る動作は麻痺側である「右側」から始めます。その際、右袖を単に手先や肘まで通しただけで左袖(健側)に移行しようとすると、衣服が背中側で突っ張ってしまい、左腕を袖に通すことが難しくなります。あらかじめ右袖を肩(しっかりと根元)まで引き上げておくことで、衣服に十分なゆとりが生まれ、動かせる左腕を無理なくスムーズに左袖へ通すことが可能になります。
【他の選択肢が誤りである理由】
- 選択肢1(誤り):前開き上着を脱ぐ際は、原則通り健側である「左側」から行います。手順としては、左肩の衣服を下げたあと、先に左側の袖から腕を抜く必要があります。右袖(麻痺側)から先に抜こうとすると、可動性が制限されている右腕に無理な負荷がかかり、関節を傷める原因になります。
- 選択肢2(誤り):脱ぐ動作の起点として、麻痺側である右肩の衣服から下げようとすることは脱健着患の原則に反します。動かしやすく突っ張りの少ない左側(健側)の肩からアプローチを始めるのが適切です。
- 選択肢3(誤り):前開きの上着を自力または最小限の介助で着る際、準備段階として腿の上に置くときは「襟元を向こう側(膝側)、裾を手前(お腹側)」にし、衣服の裏面を上に向けて広げるのが基本です。この配置にすることで、手前から麻痺側の袖口へ手を差し込みやすくなり、そのまま上着を頭上に引き上げて背中へ回す一連の動作がスムーズに行えます。
- 選択肢4(誤り):着るときに右袖(麻痺側)を肘までしか通していない状態では、衣服が十分に背中へ回らず、残りの左袖に左腕を通す際に大きな摩擦や突っ張りが発生します。これは利用者の肩関節の過進展や苦痛を招く不適切な手順です。
問題44
次のうち,介護老人福祉施設における食事に関する支援として,最も適切なものを1つ選びなさい。
- 食堂の換気は,不要である。
- 食事中は,会話を控えるようにする。
- 食事が楽しくなるような雰囲気をつくる。
- 食べ終わった利用者の食器は,すぐに下膳する。
- 照明は,明るさを25ルクス(lx)以下にする。
正解は 3 です。
介護老人福祉施設における食事の支援は、単なる栄養補給や身体機能の維持だけでなく、利用者のQOL(生活の質)を高めるための重要な生活援助です。心地よい音楽、適切ななじみの関係にある人との交流、清潔で開放的な環境づくりなど、食欲を刺激し安心感をもたらすアプローチは、唾液の分泌や消化吸収などの生理面にも良い影響を与え、尊厳に配慮したケアの根幹をなします。
【他の選択肢が誤りである理由】
- 選択肢1(誤り):食事環境における空気の滞留や食べ物の臭気のこもりは食欲減退を招くだけでなく、感染症予防や衛生管理の観点からも極めて不適切です。食事の前後や必要に応じた適切な換気(2箇所の開口部による気流の確保)が不可欠です。
- 選択肢2(誤り):安全面への配慮(誤嚥防止の注意喚起)は重要ですが、一律に会話を制限・禁止する対応は食事の場に過度な緊張感や孤独感を生み出します。利用者の発声や食事のペース、咀嚼・嚥下のタイミングを見極めつつ、自然で心地よい対話を促す視点が必要です。
- 選択肢4(誤り):他の利用者がまだ食事を続けている最中に、食べ終えた利用者の食器を急いで下膳する行為は、まだ食べている人に無言のプレッシャーや焦りを与え、食事を楽しむ雰囲気を著しく損ないます。個別の事情(徘徊や食器の弄便リスク等)がない限り、テーブル全体や周囲の状況に配慮したタイミングでの対応が求められます。
- 選択肢5(誤り):高齢者は白内障などの視覚機能低下により、若年層よりも室内を暗く感じやすい特性(至適照度の高まり)があります。食卓の明るさが25ルクス(常夜灯や深夜の廊下と同等の薄暗さ)以下では、料理の色彩や形態、視覚的な食欲喚起を阻害し、食べこぼしや誤飲のリスクを高めるため、少なくとも50〜100ルクス以上(可能であれば300ルクス程度)の十分な照度の確保が推奨されます。
問題45
次の記述のうち,椅子に座って食事をするときに,利用者が食事をしやすい姿勢を確保するための介護として,最も適切なものを1つ選びなさい。
- 足底を床につけてもらう。
- テーブルと身体の間は30cm離してもらう。
- 椅子に浅く座ってもらう。
- 体幹を後方に傾けてもらう。
- 顎を上げてもらう。
正解は 1 です。
椅子での食事の際、足の裏(足底)全体がしっかりと床についていることは、身体の安定性を保ち、咀嚼や嚥下を安全に行うための基本姿勢です。足底が床につくことで体幹が安定し、咀嚼時に咀嚼筋や頚部・体幹の筋肉が連動して働きやすくなるほか、骨盤が起きて前傾姿勢を維持しやすくなります。
【他の選択肢が誤りである理由】
- 選択肢2(誤り):テーブルと身体の間が30cmも離れていると、食べ物を口に運ぶ距離が長くなり、前傾姿勢を保つことが難しくなって食べこぼしが増える原因となります。一般的には「握り拳1個分(約10〜15cm)」程度あけるのが適当です。
- 選択肢3(誤り):椅子に浅く腰掛けると、骨盤が後傾して背もたれに寄りかかるような不安定な姿勢(ずっこけ座り)になりやすく、腹圧がかけにくくなったり誤嚥のリスクを高めたりします。椅子にはしっかりと「深く」座ってもらう必要があります。
- 選択肢4(誤り):体幹を後方に傾けると、顎が上がって気道が開き、食べ物や水分が誤って気管に入りやすくなるため誤嚥のリスクが跳ね上がります。食事の際は、体幹をやや「前傾(前かがみ)」に保つのが原則です。
- 選択肢5(誤り):顎を上げると、喉の構造上、喉頭蓋が閉まりにくくなって気道が開いた状態になり、誤嚥に直結します。安全に嚥下するためには、頸部をやや前屈させて「顎を引いた姿勢」を維持することが極めて重要です。
問題46
咀嚼機能が低下した利用者の食事介護に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
- 大きめのスプーンで吸い込むように食べてもらう。
- 一口量は,ティースプーンに軽く一杯を目安にする。
- 食べる順番は,介護福祉職の判断で行う。
- スプーンは,舌の奥にのせるように入れる。
- 咀嚼が始まったら,すぐに次の食べ物を口に入れる。
正解は 2 です。
咀嚼(噛むこと)の機能が低下している利用者は、一度に多くの食べ物を口に含むと、十分に噛み砕くことができず丸飲みになって窒息や誤嚥を引き起こすリスクが高まります。そのため、一口量は本人が安全に処理できる「ティースプーンに軽く一杯程度(約5〜10ml)」の少量から段階的に調整していくアプローチが基本となります。
【他の選択肢が誤りである理由】
- 選択肢1(誤り):大きめのスプーンを使用すると一口量が過多になりやすく、さらに「吸い込む」ような食べ方は、食べ物が咀嚼や嚥下の準備が整う前に喉に送り込まれるため、気管に入り込んで誤嚥する危険性が極めて高くなります。
- 選択肢3(誤り):食事の摂取順序は、利用者の好みやこれまでの習慣、食欲の増進などを考慮し、本人の意思(自己決定)に基づいて進める必要があります。介護福祉職の判断だけで一歩的に順序を決める対応は、利用者主体の原則に反します。
- 選択肢4(誤り):スプーンを舌の奥深くまで差し込んでしまうと、不快な嘔吐反射(さえずり反射・えずき)を誘発し、苦痛や食事への恐怖感を与えます。スプーンは下唇の上に軽くのせ、本人が唇を閉じて取り込めるよう促す位置に留めるのが適切です。
- 選択肢5(誤り):口の中にまだ食べ物が残っている状態で次の食べ物を詰め込むと、咀嚼・嚥下のサイクルが崩れ、窒息や誤嚥の原因となります。必ず口の中のものを完全に飲み込んだことを視覚的・聴覚的(喉の挙上運動など)に確認してから、次の食事を勧めます。
問題47
Aさん(80歳,女性,要介護3)は,介護老人福祉施設で生活している。食事は見守りのもとでほぼ自立しているが,嚥下機能は低下してきている。医師からは,食事摂取に配慮するように指導されている。ある日の昼食中,Aさんは食事を1/3ほど食べたところで箸を止め,表情がこわばり,呼吸もやや浅くなった。
次の記述のうち,介護福祉職が医療職に報告すると同時に,最初に行う対応として,最も適切なものを1つ選びなさい。
- 血圧を測定する。
- 口腔の状況を観察する。
- 口すぼめ呼吸を促す。
- その場で仰臥位(背臥位)になってもらう。
- すぐに薬を服用してもらう。
正解は 2 です。
嚥下機能が低下しているAさんが、食事の途中で急に箸を止め、表情がこわばり呼吸が浅くなっている状態は、食物が咽頭や気頭に詰まる「誤嚥(窒息)」を引き起こしている可能性が極めて高い状況です。このような緊急時には、まずは最優先で口腔内に食物が残っていないか、喉に詰まっていないかを視覚的に直接確認(観察)し、必要に応じて指巻きガーゼ等でかき出す、あるいは咳き込みを促すといった気道確保に向けたアプローチへ直結させる必要があります。
【他の選択肢が誤りである理由】
- 選択肢1(誤り):バイタルサイン(血圧)の測定は、利用者の全身状態を把握するために重要ですが、窒息が疑われる緊急事態において器具を準備し測定を行う対応は時間のロスとなり、低酸素状態を悪化させる原因になります。
- 選択肢3(誤り):口すぼめ呼吸は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの患者が呼気時に気道の閉塞を防ぐために行う呼吸コントロール技法です。食物による急性気道閉塞や誤嚥の疑いがある本場面において、これを促すことは適切な初期対応とは言えません。
- 選択肢4(誤り):窒息や誤嚥のリスクがある状態で体をあおむけ(仰臥位)に寝かせると、重力によって口腔内の食物や分泌物がさらに気管の奥深くへと流れ込み、完全閉塞や誤嚥性肺炎を確実に引き起こすため禁忌とされています。
- 選択肢5(誤り):原因が特定されていない段階、かつ咽頭機能や気道に問題が生じている可能性が高い状況下で、水分や薬剤を口から摂取させる行為は、それ自体が新たな誤嚥や窒息を誘発するため極めて危険です。
問題48
ベッド上で行う陰部洗浄に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
- 滅菌手袋を使用して行う。
- 上半身はベッドの手前端に移動する。
- バスタオルで両下肢を包む。
- 洗浄するときは,43℃のお湯を用いる。
- 終了後は,蒸しタオルで水分を拭き取る。
正解は 3 です。
ベッド上での陰部洗浄の際、露出部分を最小限にして利用者の羞恥心に配慮すると同時に、室温や洗浄水による身体の冷え(おむつを開放することによる体温低下)を防ぐ必要があります。バスタオル等を用いて両下肢を覆うように包むことは、プライバシーの保護と保温の効果を両立させるために有効な手順です。
【他の選択肢が誤りである理由】
- 選択肢1(誤り):陰部洗浄は無菌操作を必要とする医療行為(処置)ではなく、日常生活上の清潔援助(介護)です。滅菌手袋を使用する必要はなく、介護福祉職自身の感染予防および衛生管理の観点から、通常の使い捨てプラスチック手袋(ディスポーザブル手袋)を着用して行います。
- 選択肢2(誤り):ベッド上で行う排泄・清潔介助では、利用者の腰部(臀部)の下に洗髪槽や防水シーツ、おむつなどを敷き詰めて洗浄水をキャッチします。上半身だけをベッドの手前に移動させると、身体が不自然にねじれて苦痛を与えるだけでなく、安定した安楽な姿勢を保てません。
- 選択肢4(誤り):43℃のお湯は、陰部や外陰部のような皮膚・粘膜が非常に薄く繊細な部位に対しては熱すぎます。強い刺激によって痛みを感じたり、熱傷(やけど)を引き起こしたりするリスクがあるため、一般的には体温より少し高い「38℃〜40℃」程度のぬるま湯を使用するのが適切です。
- 選択肢5(誤り):洗浄後に蒸しタオル(温熱・湿潤タオル)を使用すると、拭いた直後に皮膚の表面から水分が蒸発する際、周囲の気化熱を奪って皮膚が急激に乾燥し、肌荒れや湿疹、不快な冷えを招きます。終了後は、乾いた清潔なタオルやペーパータオルを優しく押し当て、水分をしっかりと吸い取るように拭き取ります。
問題49
腹部の清拭の方法を図に示す。矢印は拭く方向を表している。
次のうち,基本的な清拭の方法として,最も適切なものを1つ選びなさい。
正解は 2 です。
腹部の清拭は、解剖生理学的な観点から「の」の字を書くように、時計回りの方向(上行結腸→横行結腸→下行結腸→S状結腸)に沿って拭くのが原則です。この方向でマッサージ効果を伴う清拭を行うことは、大腸の蠕動運動を促し、便秘の予防や解消、ガス(腹部膨満感)の排出を助けるという生理的なメリットをもたらします。図2は、おへそ(「」で示された中心部)の周りを時計回りに円を描くようにマッサージしながら拭く適切なアプローチを示しています。
【他の選択肢が誤りである理由】
- 選択肢1(誤り):上部から下部へ向かってジグザグに拭く方法であり、結腸の走行や便の移動経路を無視した動線となっています。腸管の解剖学的構造に沿っていないため、便秘解消や排便促進の効果は期待できません。
- 選択肢3(誤り):下部から上部へと逆W字を描くように拭く方法です。こちらも結腸の流れに逆らう、あるいは全く関連性のない動きであり、腹部の緊満感を和らげるためのケアとしては不適切です。
- 選択肢4(誤り):中心から外側に向けて反時計回りの方向に円を描いています。反時計回りに腹部を刺激することは、順路とは逆方向に便を押し戻すような物理的圧力をかけることになり、腸管の正常な蠕動運動を阻害し、便秘を悪化させる恐れがあります。
- 選択肢5(誤り):下部から上部へ向かってジグザグに拭き上げる方法です。便は上腹部から下腹部(左下腹部のS状結腸・直腸)へと運ばれるため、下から上への逆行的な刺激は生理学的な理にかなっていません。
問題50
Aさん(55歳,男性,会社員)は,20歳のときに交通事故で第5頸髄(C5)を損傷した。現在,電動車いすを使用し,自宅で自立した生活を送っている。身体状況は安定しているが,ときどき仙骨部に褥瘡ができることがある。入浴は,居宅介護(ホームヘルプサービス)を利用していて,訪問介護員(ホームヘルパー)が福祉用具を用いて入浴介護をしている。
次のうち,Aさんが入浴時に使用している福祉用具として,最も適切なものを1つ選びなさい。
- 移乗台
- バスボード
- 入浴用リフト
- 浴槽用手すり
- 滑り止めマット
正解は 3 です。
第5頸髄(C5)レベルの損傷では、三角筋や上腕二頭筋などの機能が残存し、肘の屈曲は可能となるものの、手関節や手指の運動機能、および体幹を保持する筋力は失われます。自力での立ち上がりや座る姿勢の維持(座位保持)が困難であり、さらに仙骨部に褥瘡(床ずれ)のリスクを抱えているため、移乗時や入浴時の身体的負担や摩擦を最小限に抑える必要があります。入浴用リフトを使用することで、訪問介護員の力に頼りすぎることなく、機械の支持によって安全かつ安楽な姿勢のまま浴槽への出入り(昇降運動や移乗)を行うことができます。
【他の選択肢が誤りである理由】
- 選択肢1(誤り):移乗台(シャワーキャリーから浴槽へ移る際などの中継点となる台)は、利用者が自ら、あるいは部分的な介助のもとで臀部を滑らせたり腕で身体を支えたりして移動するための福祉用具です。体幹機能や上肢の支持性が著しく低下しているC5頸髄損傷のAさんにとって、この方法での移乗は滑落や転倒の危険が大きく適しません。
- 選択肢2(誤り):バスボード(浴槽の縁に渡して腰掛ける板)は、一定の座位保持能力があり、手すり等を掴みながら自力または軽介助で下肢をまたぎ入れられる人を対象としています。体幹のバランスが保てず、下肢の自律運動ができないAさんには適していません。
- 選択肢4(誤り):浴槽用手すりは、自力で立ち上がったり、手すりを握って身体のバランスを保持したりできる残存機能がある場合に有効です。手指の握る機能(把持力)や体幹支持性が失われている頸髄損傷者では、手すりを安全に活用して浴槽をまたぐことは困難です。
- 選択肢5(誤り):滑り止めマットは、浴槽内や洗い場での足元の滑りを防ぐための用具であり、立位バランスの保持や、浴槽内での姿勢安定に寄与します。Aさんのように、移乗動作そのものに全介助(または機械的支援)が必要な状況において、浴槽への出入りを解決するための中心的な用具とは言えません。
問題51
Aさん(85歳,男性,要介護3)は,アルツハイマー型認知症(dementia of the Alzheimer’s type)と診断され,認知症対応型共同生活介護(認知症高齢者グループホーム)で生活をしている。入所時,Aさんは,尿意や便意はあり,自分でトイレに行って排泄できていた。最近,認知機能の低下によって,トイレ以外の場所で排泄するようになった。
次のうち,Aさんの状態に合わせた介護福祉職の対応として,最も適切なものを1つ選びなさい。
- 骨盤底筋訓練を行う。
- 紙おむつを使用する。
- 一日の水分摂取量を減らす。
- ほかの利用者と同じ時間にトイレへ誘導する。
- トイレの出入口に「トイレ」と書いた紙を貼る。
正解は 5 です。
Aさんは尿意や便意を認識できているものの、アルツハイマー型認知症の進行に伴う「見当識障害」や「視空間認知の障害(失認)」により、トイレの場所そのものが分からなくなって他の場所で排泄(迷子型排泄障害)しています。このような状態に対しては、トイレの出入口に明確な文字やわかりやすいピクトグラムを掲示し、視覚的な手がかり(手がかりの提供)によって場所の識別を容易にする環境調整が有効です。
【他の選択肢が誤りである理由】
- 選択肢1(誤り):骨盤底筋訓練は、お腹に力がかかった際に尿が漏れる「腹圧性尿失禁」等に対して、骨盤底筋群を強化して尿道を締める力を高める体操です。Aさんの排泄トラブルの原因は認知症の症状(中核症状・BPSD)によるものであり、尿路の解剖学的な緩みではないため適しません。
- 選択肢2(誤り):Aさんは排泄機能自体が失われているわけではなく、トイレの場所が分かれば自力排泄が可能です。この段階での安易な紙おむつの導入は、残存能力の活用(自立支援)を阻害して廃用症候群を進行させるだけでなく、本人の自尊心を深く傷つけます。
- 選択肢3(誤り):排泄回数を減らす目的で水分の摂取量を制限することは、高齢者の脱水症、尿路感染症、便秘、さらには意識混濁(せん妄)を誘発する重大な危険因子となるため禁忌です。
- 選択肢4(誤り):他の利用者と一律のスケジュールでトイレに誘導する対応は、Aさん個人の尿意や便意の発生リズムを無視した施設側の管理優先のケアです。認知症ケアにおいては、本人の個別の排泄パターンを把握し、それに合わせた誘導を行う必要があります。
問題52
次のうち,下痢をしている利用者の水分補給として,最も適切なものを1つ選びなさい。
- 白湯
- 牛乳
- 炭酸水
- コーヒー
- 冷水
正解は 1 です。
下痢をしている時は、糞便とともに水分や電解質が大量に失われるため、脱水症を予防するための水分補給が不可欠です。その際、過敏になっている胃腸の粘膜を刺激せず、身体に負担をかけずに吸収されやすい温和な飲み物を選ぶ必要があります。一度沸騰させて不純物を減らし、人肌程度に冷ました白湯は、胃腸の負担が最も少なく、内臓を温めて消化管の機能回復を促します。
【他の選択肢が誤りである理由】
- 選択肢2(誤り):牛乳に含まれる乳糖(ラクトース)は、下痢によって腸粘膜の乳糖分解酵素(ラクターゼ)の活性が低下している状態では適切に消化吸収されません。消化不良を起こした乳糖が腸内に残ると、浸透圧の関係でさらに腸管内へ水分が引き込まれ、下痢を悪化させる原因になります。
- 選択肢3(誤り):炭酸水に含まれる二酸化炭素ガスは、胃や腸の粘膜を物理的に刺激し、消化管の蠕動運動を過剰に亢進させます。これにより腸管の過敏状態が強まり、腹痛や下痢の症状を助長します。
- 選択肢4(誤り):コーヒーに豊富に含まれるカフェインには、胃腺を刺激して胃酸分泌を促す作用や、腸管の運動を亢進させる作用があります。弱っている消化器系への刺激が強すぎるため、下痢の際の水分補給としては不適当です。
- 選択肢5(誤り):冷たい水を摂取すると、その物理的な冷たさが胃腸の平滑筋や血管を急激に収縮させ、腸の蠕動運動を誘発して腹痛や下痢を悪化させます。
問題53
Aさん(83歳,男性,要介護1)は,一人暮らしで,少額の年金で生活している。Aさんは軽度の認知症(dementia)と診断を受けている。近所には親しくしている人が複数いる。ある日,訪問介護員(ホームヘルパー)が訪問すると,近所のスーパーで購入した未開封の健康食品が山積みになっていた。Aさんが財布を持ってきて,「買いたいものがたくさんあるが,お金が足りない。どうしたらよいか」と訪問介護員(ホームヘルパー)に相談した。
このときの訪問介護員(ホームヘルパー)の対応に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
- 「お金は足りているから安心して大丈夫ですよ」と伝える。
- 近所の親しい人に,財布を預かってもらえるか,聞いてみる。
- 鍵付きの引き出しに財布を入れ,訪問介護員(ホームヘルパー)が鍵を管理する。
- 「お金の使い方について,一緒に考えてみませんか」と提案する。
- 健康食品のクーリング・オフを勧める。
正解は 4 です。
軽度の認知症があり「買いたいものがたくさんあるがお金が足りない」と悩むAさんに対し、まずはその不安や相談に寄り添い、本人の主体性を尊重しながら一緒に解決を模索する姿勢を示すことが対人援助の基本原則にかなっています。意思決定の支援や信頼関係の構築に向け、自己決定を促す共感的なアプローチを行います。
【他の選択肢が誤りである理由】
- 選択肢1(誤り):Aさんは実際に少額の年金でやりくりしており、未開封の健康食品が山積みになっているなど、家計や購買行動に具体的な課題が生じています。客観的な事実を確認せずに根拠のない気休めを伝えることは、利用者の現実的な困りごとを軽視し、根本的な問題解決を妨げます。
- 選択肢2(誤り):訪問介護員には厳格な守秘義務があり、本人の同意を得ずに近所の人へ財産管理や財布の保管を打診することは、プライバシーの侵害および機密保持義務違反にあたります。財産管理の支援が必要な場合は、適切な手続きを経て専門の機関(日常自立支援事業や成年後見制度等)を検討します。
- 選択肢3(誤り):訪問介護員(ホームヘルパー)が利用者の財産(財布やその鍵)を直接管理・占有することは、訪問介護員の業務範囲を逸脱しているだけでなく、紛失トラブルや財産侵害、自己決定権の不当な制限につながるため認められていません。
- 選択肢4(誤り):未開封の健康食品が山積みになっている状況から、認知症による判断力の低下を突いた悪質商法の被害(過量販売など)に遭っている可能性が強く疑われます。しかし、現時点でAさんの相談内容は「お金が足りない。どうしたらよいか」という家計への不安であり、いきなり法律用語であるクーリング・オフを勧めても、混乱している本人には理解や手続きの実行が難しく、段階に応じた適切な対応とは言えません。
問題54
繊維や衣類の性質と洗濯方法に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
- 綿の柄物シャツには酸素系漂白剤を使う。
- ナイロンのレインウエアは脱水時間を長くする。
- ウールのニットセーターは乾燥機を使う。
- レーヨンのパジャマはすすぎ時間を長くする。
- 絹のブラウスには弱アルカリ性洗剤を使う。
正解は 1 です。
酸素系漂白剤は、染料を消さずに汚れの色素のみを酸化・分解する特性があるため、色柄物の衣類(綿、麻、化学繊維など)の漂白に適しています。一方、塩素系漂白剤は漂白力が非常に強く、染料まで分解して色落ちさせてしまうため、柄物には使用できません。
【他の選択肢が誤りである理由】
- 選択肢2(誤り):ナイロンなどの合成繊維で作られたレインウェア(防水性生地)は水を通さないため、洗濯機で脱水をかけると水が抜けず、遠心力によって洗濯槽内で異常な振動が発生し、洗濯機の転倒や故障、生地の破損を招く危険があります。脱水は避けるか、ごく短時間にとどめて干す必要があります。
- 選択肢3(誤り):ウール(羊毛)は、熱や水分、摩擦が加わると、繊維の表面にある鱗状の構造(スケール)が絡み合って収縮し、硬くなる性質(フェルト化)があります。タンブル乾燥機を使用すると、熱と回転の摩擦によってセーターが著しく縮んでしまいます。
- 選択肢4(誤り):レーヨンは木材パルプを原料とした再生繊維であり、水に濡れると強度が著しく低下し、収縮や型崩れを起こしやすいデリケートな性質を持っています。水に浸かる時間をできるだけ短くすることが鉄則であるため、すすぎ時間を長くすることは不適切です。
- 選択肢5(誤り):絹(シルク)やウールは主成分がタンパク質であるため、アルカリ性に弱い性質があります。一般的な弱アルカリ性洗剤を使用すると繊維を傷め、ツヤや風合いが失われる原因となるため、洗濯の際は中性洗剤(おしゃれ着洗い用洗剤)を使用します。
問題55
Aさん(82歳,女性,要介護1)は,訪問介護(ホームヘルプサービス)を週1回利用し,生活援助を受けながら,自宅で一人暮らしをしている。調理はAさん本人が行うなど,できることは自分で行いたいと思っている。ある日,訪問介護員(ホームヘルパー)はAさんから買物リストを渡されて,近くのスーパーで食材を購入してきた。
次の記述のうち,Aさんへの生活援助における訪問介護員(ホームヘルパー)の対応として,最も適切なものを1つ選びなさい。
- 依頼された食材が安かったので,リストに書かれた数より多く購入した。
- おつりとレシート,購入した食材の確認を,Aさんにすべて任せた。
- 冷蔵庫を開けたとき,賞味期限切れの食材があったため廃棄した。
- 買物リストは,次から訪問介護員(ホームヘルパー)が書くことを提案した。
- 購入した食材で調理しにくいものがないか,Aさんに確認した。
正解は 5 です。
Aさんは要介護1であり、「できることは自分で行いたい」という明確な自立への意欲を持っています。訪問介護における生活援助(買物代行)では、単に物品を届けて終了するのではなく、本人の残存能力に応じた調理行動(自立した生活環境)へ繋げる視点が重要です。買ってきた食材の中に、本人の身体状況や認知機能で調理しづらいもの(例:硬くて切りにくい根菜類、開封に強い力が必要なパッケージなど)がないかを確認し、必要に応じて下処理の提案等を行う対応は、本人の「自分で調理したい」という意思と自立支援に合致します。
【他の選択肢が誤りである理由】
- 選択肢1(誤り):買物代行は利用者から預かった金銭で行う委託契約であり、リストの記載を超える物品をヘルパー自身の判断で購入することは権限逸脱(契約違反)にあたります。独居高齢者の場合、過剰な食材の購入は使い切れずに腐敗・廃棄を招く原因となり、経済的にも生活管理的にも不適切です。
- 選択肢2(誤り):金銭のトラブルを防ぐため、訪問介護員が代行した買物の精算(おつり、レシート、購入物の照合)は、必ず利用者と訪問介護員が「双方で一緒に確認する」ことが鉄則です。すべてを本人に任せてしまう対応は、事後の金銭トラブルや信頼関係の破綻に直結します。
- 選択肢3(誤り):利用者の自宅にある所有物はすべて私財であり、いくら賞味期限が切れているからといって、介護福祉職が本人の同意(許可)を得ずに勝手に廃棄する行為は、自己決定権および財産権の侵害にあたります。「期限が切れているようですが、どうされますか」と声をかけ、判断を仰ぐのが基本です。
- 選択肢4(誤り):Aさんは軽度の要介護状態であり、自分で買物リストを作成できる能力を持っています。その役割をヘルパー側が安易に奪って代行することを提案する対応は、本人の自立した生活機能や自己決定の機会(残存能力)を低下させる過剰介護につながります。
問題56
次の記述のうち,良質な睡眠のための環境づくりとして,最も適切なものを1つ選びなさい。
- 日中は,強度の高い運動を多く取り入れる。
- 夜食は,就寝直前にとる。
- 入浴は,就寝の1~2時間前に行う。
- 眠気がなくても,決まった時間に目を閉じる。
- 寝ている間も,照明は明るくしておく。
正解は 3 です。
厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」や生理学的な知見において、就寝の1〜2時間前に入浴することは良質な睡眠を促す環境づくりに極めて有効です。入浴(40℃程度のぬるま湯)によって身体の「深部体温」を一時的に適度へ上昇させると、その後、就寝のタイミングに向けて深部体温が急速に低下し、この体温の落差がスムーズな入眠と深い睡眠(ノンレム睡眠)を誘発します。
【他の選択肢が誤りである理由】
- 選択肢1(誤り):日中に適度な運動(ウォーキングなど)を取り入れることは睡眠の質を高めますが、夕方以降や夜間に「強度の高い運動」を多く行うと、交感神経が過剰に優位となり、心身が興奮状態に陥って寝付きが悪くなります。
- 選択肢2(誤り):就寝直前に夜食をとると、消化活動のために胃腸をはじめとする内臓が活発に動き続け、眠りが浅くなる原因になります。睡眠中の消化器官の負担を減らし脳を休息させるため、食事や間食は遅くとも就寝の2〜3時間前までに済ませるのが基本です。
- 選択肢4(誤り):眠気がない状態で無理にベッドに入って時計を気にしたり目を閉じ続けたりすると、「ベッド=眠れない場所」という不快な条件付けが脳内で形成され、かえって不眠を助長します。眠くなってから寝床に入り、起床時間を一定に保つことが睡眠衛生上重要です。
- 選択肢5(誤り):入眠中や夜間の寝室が明るいままだと、睡眠を促進するホルモンである「メラトニン」の分泌が視覚的な光刺激によって著しく抑制されます。これにより、体内時計(概日リズム)が乱れて睡眠の質が低下するため、寝室の照明は消すか、足元灯などの不快に感じない程度の薄暗さにする必要があります。
問題57
Aさん(83歳,女性,要介護3)は,脳梗塞(cerebral infarction)の後遺症で左片麻痺があり,介護老人福祉施設に入所している。ある日の夜間,仰臥位(背臥位)で寝ていたAさんが,「背中が重く感じて,眠れない」と介護福祉職に訴えた。
次の記述のうち,介護福祉職がAさんに行う介護として,最も適切なものを1つ選びなさい。
- ファーラー位にして,左下肢にクッションを入れる。
- 両上肢の下に,クッションを入れる。
- 両膝窩部に,クッションを入れる。
- 右側臥位にしてクッションを抱いてもらう。
- 右下肢の足部に,クッションを入れる。
正解は 4 です。
長時間の仰臥位(あおむけ)は、仙骨部や肩甲骨部、踵骨部などに体重が集中しやすく、圧迫による不快感や「背中が重い」といった訴えに繋がります。また、Aさんは左片麻痺があるため、麻痺側を下にした左側臥位は肩関節の亜脱臼や感覚障害による過度な圧迫、苦痛を招くリスクがあり禁忌です。健側である右側を下に変える「右側臥位」に体位変換し、胸の前にクッションを抱いてもらうことで、上側の麻痺肢(左腕)の重みが体幹に干渉するのを防ぎ、良肢位を保ちながら背部への圧迫を安全に除圧できます。
【他の選択肢が誤りである理由】
- 選択肢1(誤り):ファーラー位(半座位:頭部を約45度上げた姿勢)にすると、身体が足元へ滑り落ちる剪断力(ずれ力)が働き、仙骨部や背部に強い摩擦と圧迫が加わります。「背中が重い」という訴えや不快感をさらに増強させるため不適切です。
- 選択肢2(誤り):仰臥位のまま両上肢の下にクッションを入れる対応は、背部や仙骨部にかかっている体圧を分散・軽減する効果が乏しく、現在の不快感を直接的に解決するアプローチになりません。
- 選択肢3(誤り):両膝窩部(ひざの裏のくぼみ)にクッションを入れ、膝を軽く曲げた状態にすると腰部の緊張は和らぎますが、背中全体の圧迫感を根本的に取り除く除圧としては不十分です。さらに、長時間の膝窩部圧迫は下肢の静脈還流を阻害し、血栓形成(深部静脈血栓症)のリスクを高める懸念があります。
- 選択肢5(誤り):健側である右下肢の足部にのみクッションを入れる対応は、背部に集中している局所的な圧迫や不快感の軽減に対して直接的な効力を持ちません。
問題58
次の記述のうち,介護老人福祉施設で,終末期にある利用者とその家族に行う介護福祉職の支援として,最も適切なものを1つ選びなさい。
- 利用者の苦しそうな姿を見せないように,家族には面会を控えてもらう。
- 利用者と家族の関係が良好でない場合は,家族と連絡を取らないようにする。
- 好きなものや食べたいものがある場合は,家族に持ってきてもらう。
- 苦痛を訴える場合は,家族から激励してもらう。
- 家族が不安になるため,体調の変化は伝えないようにする。
正解は 3 です。
終末期(看取り期)の介護では、利用者の身体的・精神的な苦痛を和らげ、残された時間をその人らしく安楽に過ごせるようQOL(生活の質)の維持・向上を図るアプローチが最優先されます。好きな食べ物や馴染みのある味は、感覚的な喜びや安心感をもたらし、生の実感を支える貴重な要素です。また、家族が利用者のために好きなものを用意して持参する行為は、家族にとっても「大切な人のために何かをしてあげられた」という肯定的なグリーフケア(精神的支援)につながります。
【他の選択肢が誤りである理由】
- 選択肢1(誤り):家族との貴重な時間を奪うだけでなく、十分な面会ができないまま死別を迎えることは、家族に深い後悔や終わりのない悲嘆を残すリスクを高めます。苦しそうな状態がある場合は、医療職と連携して速やかに緩和ケアを行うとともに、家族に対して現在の状態や適切な関わり方を事前に説明し、寄り添える環境を整えます。
- 選択肢2(誤り):利用者と家族の関係に葛藤や複雑な歴史がある場合でも、施設側の独断で連絡を絶つことは不適切です。看取り期における家族への通知や連携は、後々の法的・倫理的トラブルを回避するためにも、また家族が関係を見つめ直す機会を確保するためにも不可欠であり、多職種で対応を慎重に協議しながら慎重に連絡を行います。
- 選択肢4(誤り):終末期に身体的あるいは精神的な苦痛を強く訴えている利用者に対し、家族からの過度な「激励(がんばって、など)」を求めることは、利用者にさらなる精神的負担や焦燥感を与え、苦痛を増悪させる原因になります。この時期は激励よりも、背中をさする、手を握る、静かに声をかけるといった受容的で穏やかなケアが求められます。
- 選択肢5(誤り):家族への情報提供を怠り、体調の悪化や死の兆候を伝えないまま臨終を迎える対応は、家族の心の準備を妨げ、施設や介護福祉職に対する重大な不信感に直結します。厚生労働省のガイドライン等でも示されている通り、看取り期においては常に最新の心身の状況や変化を予測も含めて丁寧に共有し、家族の心理的負担の緩和に努めるのが基本原則です。
問題59
次の記述のうち,施設で亡くなった利用者家族への介護福祉職の対応として,最も適切なものを1つ選びなさい。
- 悲しみの表出があった時点からかかわりを開始する。
- 傾聴よりも励ますことを重視する。
- 悲嘆は特異な反応のため注意する。
- 故人との思い出には触れないようにする。
- 悲嘆が長期化した場合は,専門医等へ相談するように助言する。
正解は 5 です。
大切な人を亡くした家族が示す、身体的・精神的な痛みの反応を「悲嘆(グリーフ)」と呼びます。多くは時間の経過とともに段階を経て受け入れられていきますが、日常生活に支障をきたすような重篤な状態が数ヶ月から年単位で続くなど、悲嘆が慢性化・長期化した場合は「複雑性悲嘆(遷延性悲嘆症)」やうつ病といった精神医学的なケアが必要な状態に陥っている可能性があります。介護福祉職の対応として、専門医や心理カウンセラーなどの専門機関・専門職への相談を勧めることは、家族を支えるグリーフケア(終末期ケアにおける家族支援)の観点から適切な判断です。
【他の選択肢が誤りである理由】
- 選択肢1(誤り):家族へのグリーフケアは、利用者が亡くなり、悲しみが表面化してから急に開始するものではありません。利用者の生前、特に看取り期の段階から良好な関係を構築し、死の準備や心構えを共に見守るプロセス全体が含まれます。
- 選択肢2(誤り):深い悲しみの中にある家族に対し、「頑張ってください」「元気を出してください」といった安易な励ましや気休めは、かえって本人の感情の表出を抑圧し、精神的な負担を増大させます。まずは家族の語りに耳を傾け、ありのままの感情を受け止める「傾聴」や共感の姿勢が最も重視されます。
- 選択肢3(誤り):悲嘆は、大切な存在を失った人間に生じる「極めて自然で正常な防御・適応反応」です。涙を流す、無気力になる、自責の念に駆られるといった心身の変化は特異な(異常な)ことではなく、誰もが経験し得るプロセスとして理解する必要があります。
- 選択肢4(誤り):故人との思い出を語り合うことは、家族が喪失の事実を少しずつ受け入れ、新たな一歩を踏み出すための重要なプロセス(再適応)に寄与します。施設での生活ぶりやエピソードなどを意図的に避けるのではなく、家族のペースに合わせて穏やかに振り返る機会を持つことが大切です。
問題60
次のうち,固定式歩行器が適した利用者として,最も適切なものを1つ選びなさい。
- 対麻痺で,下肢を交互に出すことができない人
- 片麻痺があって,麻痺側の指関節の拘縮がある人
- 両上肢の筋力が弱く,手関節に痛みがある人
- 両手の握力が保たれていて,数秒程度の立位保持ができる人
- 右の足根骨を骨折して,右下肢に体重をかけることができない人
正解は 4 です。
固定式歩行器(フレーム折りたたみ式などを含むキャスターのない歩行器)を使用する際は、歩行器全体を両手で一度持ち上げて前方に進め、次に両足を進めるという動作を繰り返します。そのため、持ち上げる際に数秒程度は歩行器に頼らず自力で立位を維持できる支持性が必要であり、かつ歩行器のグリップをしっかりと握り込んで安全に持ち上げるための十分な両手の握力が求められます。
【他の選択肢が誤りである理由】
- 選択肢1(誤り):固定式歩行器は、フレームの中に身体を収めて両下肢で一歩ずつ荷重を移動させながら進む用具です。対麻痺によって下肢を交互に前へ出すことができない場合は、車いすの利用や、支持基底面が異なりスイング動作に対応した別の移動補助具・装具の検討が必要となります。
- 選択肢2(誤り):片麻痺があり、さらに麻痺側の手指関節に拘縮(可動域制限や強直)がある人は、歩行器の両側のグリップを均等かつ確実に握ることができません。片手での持ち上げ操作はバランスを崩して転倒する危険が極めて高いため、片麻痺の人には四点杖(多点杖)や、健側のみで操作できるサイドウォーカー(片手用歩行器)が適しています。
- 選択肢3(誤り):固定式歩行器は操作のたびに自分の腕で器具を持ち上げる必要があり、さらに体重の一部を上肢で支持(免荷)します。両上肢の筋力が低下している人や、手関節に疼痛がある人には、腕を持ち上げる負担がなく前腕全体で体重を支えられる前腕支持型(プラットホームクラッチ型)歩行車などが適しています。
- 選択肢5(誤り):右足根骨の骨折によって右下肢への完全非荷重(免荷)が指示されている場合、固定式歩行器を持ち上げる瞬間や移動の際に、誤って右足をついて荷重してしまうリスクが排除できません。片下肢の完全免荷における移動には、脇の下やロフストランドクラッチ等の松葉杖(クラッチ)を用いて健側下肢と上肢で三点歩行を行うのが一般的です。
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(令和7年度午前Aパート)介護福祉士国家試験 問題・解答・解説 (当ページ)
(令和7年度午後Bパート)介護福祉士国家試験 問題・解答・解説




