第38回(令和7年度)介護福祉士国家試験 Bパート 午後問題・解答・解説

目次

こころとからだのしくみ(Bパート12問)

問題61

次のうち,比較的短い時間に限られる大きな感情の動きに該当するものとして,適切なものを1つ選びなさい。

  1. 条件づけ
  2. 短期記憶
  3. 気分
  4. 思考
  5. 情動

正解は 5 です。

心理学における感情(エモーション)の分類において、比較的短い時間に限られる、急激で強い感情の動きを「情動(アフェクト/エモーション)」と呼びます。これには、恐怖、怒り、喜び、驚きなどが含まれ、心拍数の上昇、発汗、表情の変化といった自律神経系や身体的な反応(生理的変化)を強く伴う特徴があります。

【他の選択肢が誤りである理由】

  • 選択肢1(誤り):条件づけ(コンディショニング)は、経験や訓練によって特定の刺激に対して新しい反応が形成される「学習」のメカニズムを指します。パブロフの犬に代表される古典的条件づけや、オペラント条件づけがあり、感情そのものの動きを表す言葉ではありません。
  • 選択肢2(誤り):短期記憶は、数秒から数十秒程度の極めて短い時間、脳内に保持される「記憶」の分類です。保持できる情報量(マジカルナンバー)に限界がある認知機能の一種であり、感情の動きとは異なります。
  • 選択肢3(誤り):気分(ムード)は、情動に比べて強さは弱いものの、比較的長い時間にわたって持続する微弱な感情の状態を指します。明確な対象や原因が特定しにくく、背景として持続する精神的状態です。
  • 選択肢4(誤り):思考は、問題解決や意思決定のために、概念や知識を操作・整理する「高次脳機能(認知心理学的プロセス)」です。感情の動きそのものではなく、知的な処理活動に該当します。

問題62

次の記述のうち,脳のしくみとその働きとして,適切なものを1つ選びなさい。

  1. 神経細胞は,神経膠細胞(グリア細胞)を支える。
  2. 神経膠細胞(グリア細胞)は,情報伝達をつかさどる。
  3. セロトニン(serotonin)は,神経伝達物質の1つである。
  4. 頭頂葉には運動野が存在する。
  5. 海馬は,視覚をつかさどる。

正解は 3 です。

セロトニンは、脳内の神経細胞間で情報をやり取りする際に分泌される神経伝達物質(モノアミン神経伝達物質)の1つです。主に感情や記憶、睡眠・覚醒リズムの調節に関わっており、精神の安定に深く寄与することから「幸せホルモン」とも呼ばれます。脳幹の縫線核(ほうせんかく)で合成され、大脳皮質や辺縁系など脳全体に広く投射されています。

【他の選択肢が誤りである理由】

  • 選択肢1(誤り):主従関係が逆です。脳の機能の主体となり情報処理を行う神経細胞(ニューロン)を、その周囲から物理的・代謝的に維持し、栄養供給や環境保持を行って「支える」のが神経膠細胞(グリア細胞)の役割です。
  • 選択肢2(誤り):電気信号や神経伝達物質を用いて、情報の処理や複雑な「情報伝達をつかさどる」のは神経細胞(ニューロン)の働きです。グリア細胞は、神経細胞の生存やシグナル伝達を円滑にするための補助的な役割を担っています。
  • 選択肢4(誤り):随意運動の指令を出す「運動野」は、大脳皮質の「前頭葉(中心前回)」に存在します。頭頂葉には、皮膚感覚(触覚・痛覚など)や深部感覚などの情報が集まる「体性感覚野」が存在します。
  • 選択肢5(誤り):大脳辺縁系の一部である「海馬」は、新しい情報を一時的に保管し、長期記憶へと移行させるための「記憶の形成・制御」をつかさどる器官です。「視覚」を主に処理する機能は、大脳皮質の「後頭葉(視覚野)」が担っています。

問題63

次のうち,循環器系のしくみとして,正しいものを1つ選びなさい。

  1. 心臓は体性神経が支配している。
  2. 肺動脈には静脈血が流れている。
  3. 左心室から出た血液は大静脈へ流れる。
  4. リンパ管には血液が流れている。
  5. 静脈血とは酸素を多く含む血液である。

正解は 2 です。

動脈と静脈は「心臓から出ていく血管(動脈)」か「心臓に戻ってくる血管(静脈)」という解剖学的な構造で区別されます。一方で、動脈血と静脈血は「酸素を多く含むか(動脈血)」か「二酸化炭素を多く含むか(静脈血)」という血液の性質で区別されます。右心室から肺へと向かう「肺動脈」は、全身から戻ってきた二酸化炭素の多い血液を肺に送ってガス交換を行うための血管であるため、動脈という名称でありながら「静脈血」が流れる例外的な部位です。

【他の選択肢が誤りである理由】

  • 選択肢1(誤り):心臓の拍動は、自分の意思でコントロールできない「自律神経系(交感神経と副交感神経)」によって支配・調節されています。体性神経(運動神経・感覚神経)は、自分の意思で動かす骨格筋などを支配する神経です。
  • 選択肢3(誤り):左心室から拍出された酸素の豊富な動脈血は、全身の組織へ酸素を供給するために「大動脈」へと流れ込みます(体循環・大循環)。大静脈は、全身の組織で酸素を消費した後の静脈血が右心房へと戻ってくるための血管です。
  • 選択肢4(誤り):リンパ管の中を流れているのは血液ではなく、組織間液が流入した「リンパ液」です。リンパ液は主にリンパ球などの免疫細胞や脂質成分、老廃物を含んでおり、最終的に鎖骨下静脈で静脈血と合流します。
  • 選択肢5(誤り):静脈血とは、全身の組織に酸素を供給した後の、二酸化炭素を多く含んだ暗赤色の血液のことです。酸素を多く含む鮮紅色の血液は「動脈血」と呼ばれます。

問題64

次の記述のうち,人の動作時に収縮する筋肉に関する説明として,適切なものを1つ選びなさい。

  1. 立位を保持するときは,大殿筋が収縮する。
  2. 膝の屈曲には大腿四頭筋が収縮する。
  3. 肘の屈曲には上腕三頭筋が収縮する。
  4. 肩関節を内転するときは三角筋が収縮する。
  5. 足関節の底屈では前脛骨筋が収縮する。

正解は 1 です。

人間の直立二足歩行および立位姿勢の保持には、重力に対抗して身体を支える「抗重力筋」が働きます。臀部の主要な筋肉である大殿筋(だいでんきん)は、股関節を伸展させる(骨盤を後ろから支えて身体をまっすぐに起こす)強力な抗重力筋の1つであり、立位保持の際に持続的に収縮して姿勢の安定に大きく貢献します。

【他の選択肢が誤りである理由】

  • 選択肢2(誤り):大腿四頭筋(だいたいしとうきん)は、太ももの前面に位置する非常に大きな筋肉であり、膝関節を「伸展(伸ばす)」させる時に収縮します。膝を「屈曲(曲げる)」させる主動作筋は、太ももの裏面にあるハムストリングス(大腿二頭筋、半腱様筋、半膜様筋)です。
  • 選択肢3(誤り):上腕三頭筋(じょうわんさんとうきん)は、二の腕の後面に位置し、肘関節を「伸展(伸ばす)」させる時に収縮します。肘を「屈曲(曲げる)」させる際に主として収縮するのは、二の腕の前面にある上腕二頭筋や上腕筋です。
  • 選択肢4(誤り):三角筋(さんかくきん)は、肩の関節を覆う筋肉であり、主に肩関節を「外転(腕を横に持ち上げる)」させる時に収縮します。腕を身体の側面に引き寄せる「内転」の動作では、主として大胸筋や広背筋、大円筋などが収縮します。
  • 選択肢5(誤り):前脛骨筋(ぜんけいこつきん)は、すねの前面に位置する筋肉であり、つま先を上に向ける「背屈(はいくつ)」の動作時に収縮します。つま先を下に向ける「底屈(ていくつ)」の動作(ふくらはぎを縮める動き)では、腓腹筋やヒラメ筋からなる下腿三頭筋が主として収縮します。

問題65

次のうち,白内障(cataract)で混濁する部位として,適切なものを1つ選びなさい。

  1. 網膜
  2. 角膜
  3. 脈絡膜
  4. 硝子体
  5. 水晶体

正解は 5 です。

白内障(はくないしょう)は、眼の中でカメラのレンズの役割を果たしている「水晶体(すいしょうたい)」が、主に加齢によるタンパク質の変性などが原因で白く濁ってしまう病気です。水晶体が混濁すると、光が正常に網膜まで届かなくなるため、「目がかすむ」「光をまぶしく感じる」「視力が低下する」といった特有の視覚障害が現れます。

【他の選択肢が誤りである理由】

  • 選択肢1(誤り):網膜(もうまく)は、眼球の最深部にある神経の膜で、カメラのフィルムに相当します。光の刺激を電気信号に変換して脳に伝える役割を持ち、ここに異常が生じる代表的な疾患には「網膜剥離」や「加齢黄斑変性」「糖尿病網膜症」などがあります。
  • 選択肢2(誤り):角膜(かくまく)は、眼球の前面(黒目の部分)を覆っている透明な膜で、外光を最初に取り込んで屈折させるレンズの役割を持ちます。角膜が濁る疾患には「角膜混濁」や「角膜炎」などがあります。
  • 選択肢3(誤り):脈絡膜(みゃくらくまく)は、強膜(白目)と網膜の間に位置する血管が豊富な膜です。網膜に栄養を供給するとともに、豊富なメラニン色素によって眼球の内部を暗室のように保つ役割を担っています。
  • 選択肢4(誤り):硝子体(しょうしたい)は、水晶体の後ろから網膜に達するまでの眼球内の大部分を占める、無色透明なゲル状の組織です。眼球の形状(球体)を内側から維持する役割があり、ここが濁ったり出血したりする病態は「硝子体混濁」や「硝子体出血」と呼ばれます。

問題66

次の記述のうち,低栄養の高齢者にみられる症状や行動の特徴として,最も適切なものを1つ選びなさい。

  1. 唾液の分泌が増加する。
  2. 腸蠕動が亢進する。
  3. 食べこぼしが減る。
  4. 偏りのある食べ方をする。
  5. 体重が増える。

正解は 4 です。

低栄養状態にある高齢者は、認知機能の低下や味覚・嗅覚の減退、嚥下機能の低下、あるいは好みの固執などにより、「柔らかいもの(炭水化物中心など)ばかり食べる」「特定の食品を拒絶する」といった偏りのある食べ方(偏食)をする傾向が強くみられます。このような食行動の偏りが、タンパク質やビタミン、ミネラルなどの必須栄養素の不足をさらに加速させ、低栄養の悪循環(PEM:タンパク質・エネルギー低栄養状態)を惹起する原因となります。

【他の選択肢が誤りである理由】

  • 選択肢1(誤り):低栄養や加齢、脱水などの影響により、身体の分泌機能は全体的に低下します。したがって、唾液の分泌量は増加するのではなく「減少」し、口腔内の乾燥(ドライマウス)や咀嚼・嚥下困難、食欲不振をまねきます。
  • 選択肢2(誤り):栄養不足や筋力の低下(廃用)、自律神経の乱れにより、腸の蠕動(ぜんどう)運動は亢進するのではなく「低下(減退)」します。これにより、便が腸内に滞留しやすくなり、高齢者の頑固な便秘や腹部膨満感の原因となります。
  • 選択肢3(誤り):低栄養が進行すると、全身の筋力低下(サルコペニア)や注意力・認知機能の低下が生じます。箸やスプーンを保持する上肢の支持性や、口元へ正確に運ぶ協調運動が阻害されるため、食べこぼしは減るのではなく「増える」のが一般的です。
  • 選択肢5(誤り):低栄養とは、身体を維持・構築するためのエネルギーやタンパク質が絶対的に不足している状態です。体脂肪や筋肉量(骨格筋)が減少していくため、体重は増えるのではなく「減少」します。

問題67

次のうち,バリア機能をもつ表皮の構造として,最も適切なものを1つ選びなさい。

  1. 汗腺
  2. 角質層
  3. 基底層
  4. 有棘層
  5. 顆粒層

正解は 2 です。

皮膚の最外層に位置する表皮は、外側から順に「角質層」「顆粒層」「有棘層」「基底層」の4層構造で構成されています。このうち最表層にある角質層(角層)は、角質細胞がレンガ状に積み重なり、その隙間を細胞間脂質(セラミドなど)が埋めることで、外部からの異物(細菌、ウイルス、アレルゲンなど)の侵入を防ぎ、体内の水分蒸発を防ぐ重要な「皮膚のバリア機能」を担っています。

【他の選択肢が誤りである理由】

  • 選択肢1(誤り):汗腺(かんせん)は表皮の構造ではなく、真皮(および皮下組織)に存在する皮膚の「付属器」です。汗を分泌することで体温調節を行う役割がありますが、表皮のバリア機能そのものを構成する層ではありません。
  • 選択肢3(誤り):基底層(きていそう)は表皮の最下層(真皮との境界)に位置する層です。ここでは基底細胞が絶えず分裂を繰り返して新しい皮膚細胞を作り出し、上の層へと押し上げることで皮膚の代謝(ターンオーバー)の起点となっています。
  • 選択肢4(誤り):有棘層(ゆうきょくそう)は表皮の中で最も厚い層であり、細胞同士が互いに突起(棘)で強固に結合して皮膚の物理的な強度を保っています。また、免疫機能をつかさどるランゲルハンス細胞が存在しますが、物理的・化学的なバリア機能の主体は角質層です。
  • 選択肢5(誤り):顆粒層(かりゅうそう)は角質層のすぐ下にある層です。ガラス様顆粒(ケラトヒアリン顆粒)を含み、紫外線から皮膚を守る役割や、角質層へ移行する過程でバリア機能に不可欠な脂質や保湿成分(天然保湿因子など)を放出する前段階の役割を担っています。

問題68

Aさん(98歳,女性)は認知症(dementia)があるが,食事動作は自立していた。最近,配膳されても食事動作が始まらないことが増えてきた。介護福祉職が献立や食材などの説明をしたところ,Aさんは食べ始めるようになった。

次の摂食嚥下の5期のうち,介護福祉職が支援した期として,最も適切なものを1つ選びなさい。

  1. 先行期
  2. 準備期
  3. 口腔期
  4. 咽頭期
  5. 食道期

正解は 1 です。

摂食嚥下の5期において、食べ物の形態や性質、量などを目や鼻などの感覚器で認識し、これから食べるものであると識別して唾液の分泌や咀嚼・嚥下に必要な準備を整える段階を「先行期(認知期)」と呼びます。Aさんは認知症の影響によって目の前のものが食べ物であるかどうかの認識(食認知)が困難になり、食事動作が始まらない状態にありました。介護福祉職が献立や食材の説明を行い、視覚や聴覚的な情報を補うことで、Aさんはそれが食事であると正しく認識し、食べる意欲や動作へと繋がりました。

【他の選択肢が誤りである理由】

  • 選択肢2(誤り):準備期(咀嚼期)は、口に取り込んだ食べ物を歯で噛み砕き(咀嚼)、唾液と混ぜ合わせて飲み込みやすい塊(食塊)を形成する段階です。Aさんはまだ食事を口に運ぶ前の認識の段階でつまずいているため、この期の支援には該当しません。
  • 選択肢3(誤り):口腔期(随意的連続期)は、形成された食塊を舌の運動などによって、口の中から咽頭へと送り込む段階(随意運動)を指します。
  • 選択肢4(誤り):咽頭期(不随意運動期)は、食塊が咽頭に達すると嚥下反射が起こり、気管の入り口である喉頭蓋が閉じて、食塊が気管に入らず(誤嚥を防ぎながら)食道へと送り込まれる段階です。
  • 選択肢5(誤り):食道期は、食道に入った食塊が、食道壁の蠕動運動と重力によって胃へと送り込まれる段階です。

問題69

次のうち,健康な成人において,横行結腸の次に便が通過する部位として,最も適切なものを1つ選びなさい。

  1. 盲腸
  2. 上行結腸
  3. 下行結腸
  4. S状結腸
  5. 直腸

正解は 3 です。

大腸は消化管の終末部に位置し、盲腸、結腸(上行結腸・横行結腸・下行結腸・S状結腸)、直腸の3つの部位に大別されます。小腸(回腸)から送られてきた消化物は、まず右下腹部にある盲腸に流れ込み、そこから大腸の右側を上行する「上行結腸」、お腹を右から左へと横切る「横行結腸」、お腹の左側を下行する「下行結腸」、S字状に湾曲する「S状結腸」を経て、最終的に「直腸」へと運ばれます。したがって、横行結腸の次に便が通過する解剖学的な部位は下行結腸です。

【他の選択肢が誤りである理由】

  • 選択肢1(誤り):盲腸(もうちょう)は大腸の始まりに位置する袋状の部位であり、小腸(回腸)から回盲弁(バウヒン弁)を介して最初に便(消化物)が流入する場所です。横行結腸よりもはるか上流に位置します。
  • 選択肢2(誤り):上行結腸(じょうこうけっちょう)は盲腸に続く部位であり、腹部の右側を上方に向かって走行し、右結腸曲(肝曲)で左に折れ曲がって横行結腸へと移行します。横行結腸の「前」を通過する部位です。
  • 選択肢4(誤り):S状結腸(えすじょうけっちょう)は、下行結腸の次(下流)に位置する部位です。左下腹部でS字状のカーブを描きながら骨盤腔内へと進み、直腸へと繋がります。
  • 選択肢5(誤り):直腸(ちょくちょう)はS状結腸の次に位置する大腸の最末端の部位であり、肛門へと連続します。ここに便が溜まって直腸壁が展伸されることで、排便反射が誘発されます。

問題70

Aさん(80歳,男性)は,半年前から急に便秘になり,最近では排便回数が5日に1回程度となった。腹部は膨満していて,便は細く,血液が付着することがあるという。

次の記述のうち,Aさんの便秘に対する対応として,最も適切なものを1つ選びなさい。

  1. 水分摂取を促す。
  2. 食物繊維の摂取を促す。
  3. 散歩などの運動を促す。
  4. 腹部のマッサージを行う。
  5. 医療機関の受診を促す。

正解は 5 です。

Aさんの状態は「半年前に急発」「5日に1回という急激な排便頻度の低下」「腹部膨満」「便が細い(便柱狭小)」「血便(血液の付着)」といった、器質性便秘(特に大腸がんなどの下部消化管の閉塞性疾患)を強く疑わせる危険兆候(レッドフラッグ)が揃っています。このような疾患が原因の器質性便秘に対して、一般的な生活習慣の改善や介護現場でのケアを行うことは病状の発見を遅らせ、あるいは悪化させるリスクを伴うため、最優先で専門医療機関での精密検査・受診へと繋ぐ必要があります。

【他の選択肢が誤りである理由】

  • 選択肢1(誤り):水分摂取の促進は、便の硬さを調整して排便をスムーズにするため、主に機能性便秘(弛緩性便秘など)に対して有効なアプローチです。Aさんのように器質的な通過障害(がんによる狭窄など)が疑われる場合、根本的な原因解決にはならず、受診を優先すべき病態です。
  • 選択肢2(誤り):大腸がんなどによる腸管狭窄(器質性便秘)がある状態で食物繊維を大量に摂取すると、腸管内で便の体積(かさ)が増し、狭くなった部位にさらに便が詰まって腸閉塞(イレウス)を引き起こす重大な危険性があります。
  • 選択肢3(誤り):散歩などの適度な運動は、腸の蠕動運動を促すため弛緩性便秘の予防・改善には適していますが、下部消化管の疾患や腫瘍に伴う器質性便秘に対しての改善効果は期待できません。
  • 選択肢4(誤り):「の」の字を書くような腹部マッサージは、大腸の蠕動運動を物理的に刺激して排便を促すケアです。しかし、腸管の狭窄や病変、あるいは炎症が存在する可能性がある場合、腹部への圧迫やマッサージを行うことは症状の悪化や予期せぬトラブルを招く恐れがあり禁忌です。

問題71

次のうち,65歳以上の人の妥当な睡眠時間として,最も適切なものを1つ選びなさい。

  1. 約12時間
  2. 約10時間
  3. 約8時間
  4. 約6時間
  5. 約4時間

正解は 4 です。

厚生労働省が策定した「健康づくりのための睡眠ガイド2023」や各種の疫学調査において、高齢者(65歳以上)の妥当な日常の睡眠時間は「6時間以上8時間未満(目安として約6時間台)」とされています。加齢に伴って脳の睡眠中枢や体内時計の機能が変化し、深い睡眠が減って必要とする睡眠時間自体が短くなる(生理的な睡眠時間の短縮)ため、約6時間程度の睡眠が健康維持の上で最も妥当とされています。

【他の選択肢が誤りである理由】

  • 選択肢1・2(誤り):10〜12時間という睡眠時間は、高齢者にとっては過剰すぎます。日中の活動量や運動量が低下している高齢者がベッドに長く留まりすぎると、逆に睡眠が浅くなって中途覚醒や早朝覚醒が増え、睡眠の質を著しく低下させる原因(不眠の悪化)になります。
  • 選択肢3(誤り):「睡眠は8時間が理想」というイメージが根強くありますが、これは主に現役世代(成人期)の指標です。高齢者が無理に8時間眠ろうと寝床に長く居続けることは、生理的なメカニズムに合致せず、熟眠感を損なう要因になります。
  • 選択肢5(誤り):約4時間という睡眠時間は短すぎ(睡眠不足)、高齢者であっても身体的・精神的な健康を維持する上で不十分です。慢性的な睡眠不足は、日中の傾眠や認知機能の低下、転倒リスクの上昇、高血圧や糖尿病などの生活習慣病の悪化を招きます。

問題72

キューブラー・ロス(Kubler-Ross,E.)が示した終末期にある人の死の受容プロセスのうち「抑うつ」の段階として,適切なものを1つ選びなさい。

  1. 第1段階
  2. 第2段階
  3. 第3段階
  4. 第4段階
  5. 第5段階

正解は 4 です。

精神科医のエリザベス・キューブラー・ロスは、著書『死ぬ瞬間』の中で、人が死を受け入れていくプロセスを5つの段階(死の受容プロセス)に分類しました。第4段階である「抑うつ(Depression)」は、避けることのできない死を悟り、身体的な衰えや周囲との別れ、失うものの大きさに直面して深い悲しみや絶望、孤独感に襲われる状態を指します。この時期は無理に励ますのではなく、その悲しみを受容するケアが不可欠です。

【他の選択肢が誤りである理由】

  • 選択肢1(誤り):第1段階は「否認と孤立(Denial & Isolation)」です。自身の重大な病状や死の告知を受けた直後に、その事実を信じることができず、何かの間違いであると頑なに否定し、周囲から一時的に心を閉ざして孤立を試みる段階に相当します。
  • 選択肢2(誤り):第2段階は「怒り(Anger)」です。死の事実を否認しきれなくなった結果、「なぜ自分だけがこのような目に遭わなければならないのか」という不条理に対する激しい感情が、家族や周囲の医療・介護従事者などへ向けられます。
  • 選択肢3(誤り):第3段階は「取引(Bargaining)」です。「良い行いをするので、もう少しだけ命を延ばしてほしい」「子供の結婚式を見るまでは生きていたい」など、何らかの条件や信仰を介して、死の運命を先延ばしにしようと試みる心理状態を指します。
  • 選択肢5(誤り):第5段階は「受容(Acceptance)」です。これまでの様々な感情的な葛藤を乗り越え、自身の死という運命を静かに受け入れ、心穏やかな境地に至る最終的なプロセスにあたります。

発達と老化の理解(Bパート8問)

問題73

次の記述のうち,ハヴィガースト(Havighust,R.)の示す中年期の発達課題に該当するものとして,適切なものを1つ選びなさい。

  1. 良心,道徳心,価値尺度を発達させる。
  2. 成人としての市民的・社会的責任を達成する。
  3. 満足できる住宅を確保する。
  4. 男性あるいは女性の社会的役割を身につける。
  5. 気心の合う社交集団を見つける。

正解は 2 です。

アメリカの教育心理学者ロバート・J・ハヴィガースト(Havighurst, R.)は、人間が生涯のそれぞれの時期において直面し、達成することが求められる課題を「発達課題(Developmental Tasks)」として提唱しました。彼が分類した「中年期(壮年期)」の発達課題の筆頭には、「成人としての市民的・社会的責任を達成すること」が挙げられており、社会の維持や発展において中心的な役割を担う時期としての役割が示されています。

【他の選択肢が誤りである理由】

  • 選択肢1(誤り):「良心、道徳心、価値尺度を発達させる」は、ハヴィガーストが示す「児童期(学童期)」の発達課題です。集団生活の中で善悪の判断や社会のルール、価値基準を内面化していく時期に該当します。
  • 選択肢3(誤り):「満足できる住宅を確保する(満足できる物理的な生活環境を整える)」は、ハヴィガーストが示す「老年期」の発達課題です。加齢に伴う身体機能の低下やライフスタイルの変化に適応し、安全で快適に暮らせる住環境を整える課題にあたります。
  • 選択肢4(誤り):「男性あるいは女性の社会的役割を身につける」は、ハヴィガーストが示す「青年期(思春期)」の発達課題です。自らの性別を受け入れ、それぞれの性に期待される社会的な役割や自己同一性(アイデンティティ)を模索し確立する時期を指します。
  • 選択肢5(誤り):「気心の合う社交集団(同世代の仲間)を見つける」は、ハヴィガーストが示す「老年期」の発達課題の1つです。退職や喪失体験を経ていく中で、孤立を防ぎ、心理的な支えとなる同世代との新しい関係性やコミュニティを再構築していく課題に該当します。

問題74

次の記述のうち,自閉症スペクトラム障害(autism spectrum disorder)の特徴として,最も適切なものを1つ選びなさい。

  1. 文字のつづりがうまく書けず,類似の文字を間違えたりする。
  2. 同じ動作や行動を繰り返す。
  3. 注意の持続が難しい。
  4. 順番を待てずに割り込む。
  5. 数の大小の比較が難しい。

正解は 2 です。

自閉症スペクトラム障害(ASD)の主な特徴は、「対人関係や社会的コミュニケーションの障害」と「限定された特異な関心・反復的な行動(こだわり)」の2つに大別されます。選択肢2の「同じ動作や行動を繰り返す(常同行動・反復行動)」は、この後者の特徴に強く合致する典型的な症状です(例:手をひらひらさせる、体を揺らす、同じルートや手順に頑なに固執するなど)。

【他の選択肢が誤りである理由】

  • 選択肢1(誤り):「文字のつづりがうまく書けず、類似の文字を間違えたりする」は、神経発達症群(発達障害)の中の「限局性学習症(SLD:学習障害)」のうち、特に読み書きに困難を示す「失読回読障害(ディスレクシア)」に特徴的な症状です。
  • 選択肢3(誤り):「注意の持続が難しい」は、「注意欠如・多動症(ADHD)」の主要な特性の1つである「不注意」に該当する症状です。
  • 選択肢4(誤り):「順番を待てずに割り込む」は、「注意欠如・多動症(ADHD)」の特性である「多動性・衝動性」に該当する行動特徴です。
  • 選択肢5(誤り):「数の大小の比較が難しい」は、限局性学習症(SLD)のうち、算数の計算や数字の概念の理解に困難を示す「算数障害(ディスカリキュリア)」に特徴的な症状です。

問題75

次のうち,健康な状態と心身の機能が低下して介護等が必要な状態の中間を示す用語として,最も適切なものを1つ選びなさい。

  1. エイジング(aging)
  2. サルコペニア(sarcopenia)
  3. ロコモティブシンドローム
  4. ホメオスタシス(homeostasis)
  5. フレイル(frailty)

正解は 5 です。

フレイル(frailty)は、日本老年医学会が提唱した用語で、加齢に伴い心身の活力(運動機能や認知機能など)が低下し、健康な状態と要介護状態の「中間」に位置する虚弱な状態を指します。身体的衰えだけでなく、精神・心理的衰え(うつ傾向や認知機能低下)、社会的衰え(独居や閉じこもり)が連鎖する多面的な概念ですが、適切な介入や生活習慣の改善によって、元の健康な状態に戻ることができる「可逆性」を持つ点が大きな特徴です。

【他の選択肢が誤りである理由】

  • 選択肢1(誤り):エイジング(aging)は、時間の経過とともに生物の心身に生じる変化全般、すなわち「加齢」や「老化」そのものを表す用語です。健康と要介護の中間的な状態をピンポイントで示す言葉ではありません。
  • 選択肢2(誤り):サルコペニア(sarcopenia)は、加齢や活動量の低下などに伴って生じる「骨格筋量の減少」および「筋力や身体機能の低下」を指す、より限定的な身体現象です。フレイルを構成する「身体的フレイル」の主要な要因(コア)となります。
  • 選択肢3(誤り):ロコモティブシンドローム(運動器症候群)は、骨、関節、筋肉、神経などの「運動器」の障害により、立つ、歩くといった移動機能が低下した状態を指します。骨粗鬆症や変形性膝関節症といった具体的な運動器疾患に由来する状態であり、心身全体の虚弱を包括するフレイルとはアプローチの拠って立つ視点が異なります。
  • 選択肢4(誤り):ホメオスタシス(homeostasis)は、外部環境の変化に左右されず、体温や血糖値、血液のpHなどの体内環境を一定の安定した状態に保ち続けようとする生物の「恒常性維持機能」を指す生理学用語です。

問題76

高齢者のセクシュアリティ(sexuality)に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

  1. 高齢になると性への関心がなくなる。
  2. 男性は,高齢になっても性ホルモンの分泌が維持される。
  3. 女性は,高齢になると性交痛を感じやすくなる。
  4. 高齢者は生殖機能の喪失と同時にセクシュアリティ(sexuality)を喪失する。
  5. 高齢者の性的欲求に,性差はみられない。

正解は 3 です。

閉経後の女性は、卵巣機能の低下に伴い女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が著しく減少します。これにより、腟粘膜が萎縮して薄くなり、分泌液(愛液)の量も減少して腟内が乾燥しやすくなる「萎縮性腟炎(閉経関連泌尿生殖器症候群:GSM)」を引き起こします。その結果、組織の柔軟性や潤滑性が失われ、性交時に摩擦や痛みを感じやすくなります。

【他の選択肢が誤りである理由】

  • 選択肢1(誤り):加齢に伴い性機能や性的欲求の強度に生理的な変化は生じるものの、性への関心の有無やその度合いには大きな個人差があります。高齢になっても性的な関心やスキンシップへの欲求を持ち続ける人は少なくありません。
  • 選択肢2(誤り):男性の性ホルモン(テストステロン)の分泌量は、20代頃をピークに加齢とともに緩やかに減少していきます。女性のように閉経期に急激に激減することはありませんが、「分泌が維持される」わけではなく、徐々に低下をたどります。
  • 選択肢4(誤り):セクシュアリティ(人間の性におけるアイデンティティ、欲望、人間関係、精神的な結びつきなどの包括的な概念)は、生殖機能(子どもを産み育てる能力)のみに依存するものではありません。生殖機能を喪失した後も、愛情の表現や自己表現の手段としてのセクシュアリティは生涯にわたって維持されます。
  • 選択肢5(誤り):高齢者の性的欲求や性行動のパターンには、ホルモンバランスの減少速度の違いや社会的・文化的背景、個人の健康状態などに基づく明確な性差がみられます。

問題77

Aさん(22歳,女性)は,施設で介護福祉職として勤務し,食事や睡眠を工夫しながら,一人暮らしをしている。日々の生活や勤務状況に問題はない。職場にAさんと年齢の近い介護福祉職はおらず,休憩時間や休みの日も一人で過ごしている。Aさんは,「自分の仕事ぶりを上司に認めてほしいという気持ちはない。それよりも,仕事やそれ以外のことを深く話せる同年代の同僚がほしい」と思っている。

次のうちマズロー(Maslow,A.H.)の欲求階層説の各段階のうち,Aさんの現在の気持ちが当てはまるものとして,最も適切なものを1つ選びなさい。

  1. 生理的欲求
  2. 所属・愛情欲求
  3. 安全欲求
  4. 承認欲求
  5. 自己実現欲求

正解は 2 です。

アブラハム・マズロー(Maslow, A.H.)の欲求階層説において、人間の欲求は低階層から順に「生理的欲求」「安全欲求」「所属・愛情欲求(社会的欲求)」「承認欲求(尊厳欲求)」「自己実現欲求」の5段階で構成されます。事例のAさんは、食事や睡眠が工夫できており(生理的欲求の充足)、一人暮らしや勤務状況にも問題がなく(安全欲求の充足)、さらに「上司に認めてほしいという気持ちはない」と述べているため、承認欲求はまだ前景化していません。その一方で、「仕事やそれ以外のことを深く話せる同年代の同僚がほしい」と、集団への帰属や他者との精神的な結びつき、親密な関係性を強く求めています。これは第3段階である「所属・愛情欲求」に合致する心理状態です。

【他の選択肢が誤りである理由】

  • 選択肢1(誤り):生理的欲求は、生きていくための本能的な欲求(食欲、睡眠欲、排泄欲など)の段階を指します。Aさんは「食事や睡眠を工夫しながら」問題なく一人暮らしを送っていると記述されており、この欲求は満たされています。
  • 選択肢3(誤り):安全欲求は、生命の危険から守られたい、経済的に安定したい、予測可能で秩序ある環境で暮らしたいといった安定を求める段階です。日々の生活や勤務状況に問題がないと明記されているため、この段階の不充足には当たりません。
  • 選択肢4(誤り):承認欲求は、他者から有能であると認められたい、尊敬されたい、また自己を肯定したいという段階です。Aさんは「自分の仕事ぶりを上司に認めてほしいという気持ちはない」と言明しているため、ここには該当しません。
  • 選択肢5(誤り):自己実現欲求は、マズローの階層説における最上位の欲求であり、自己の持つ潜在的な可能性を最大限に発揮し、あるべき自分になりたいという動機を指します。Aさんの場合は、その手前の段階である他者とのつながり(所属・愛情欲求)の段階でつまずきを感じている状態です。

問題78

次のうち,加齢に伴い階段を上ると息切れしやすくなる現象に関係する恒常性の機能として,最も適切なものを1つ選びなさい。

  1. 予備力
  2. 適応力
  3. 免疫力
  4. 抵抗力
  5. 回復力

正解は 1 です。

人間の身体には、安静時よりも大きな負荷が心身にかかった際、各器官の働きを強めてその負荷に対応しようとする余裕が備わっており、これを「予備力(あるいは予備能力)」と呼びます。加齢に伴い、心肺機能、筋肉、血管などの各器官の予備力が低下(予備力の減少)するため、階段を上るなどの急激な運動負荷(酸素消費量の増大)が加わった際に体内環境の恒常性を維持することが難しくなり、息切れなどの症状が顕著に現れるようになります。

【他の選択肢が誤りである理由】

  • 選択肢2(誤り):適応力(適応能)は、気候の変動や高地などの環境変化、またはストレスなどの持続的な外部環境の変化に対し、身体のバランスを徐々に合わせていこうとする調節能力を指します。短時間の運動負荷に対する息切れの直接的な機序(恒常性の限界)とは異なります。
  • 選択肢3(誤り):免疫力(免疫機能)は、体内に侵入した細菌やウイルスなどの異物(抗原)を識別し、それを排除・攻撃して自己を守るための生体防御システムを指します。
  • 選択肢4(誤り):抵抗力は、主に病原菌やウイルスなどの感染症、寒冷や不衛生といった各種の有害なストレスに対して耐えるための身体の防衛能力全般を指します。
  • 選択肢5(誤り):回復力は、病気や怪我、あるいは激しい運動などで低下した身体的・精神的な疲労や組織の損傷状態を、再び元の健康な状態へと引き戻すための治癒能力を指します。階段を上っている「最中」に生じる急激な息切れは、回復力ではなく運動負荷に対応する予備力の不足によるものです。

問題79

次の記述のうち,高齢者の疾患や症状の特徴として,適切なものを1つ選びなさい。

  1. 典型的な症状を呈する。
  2. 生活が活発になる。
  3. 痛みに敏感になる.
  4. 複数の疾患を持ちやすい。
  5. 慢性的な疾患は少ない。

正解は 4 です。

高齢者は、長年の生活習慣の積み重ねや加齢に伴う生理機能・免疫機能の低下により、一つの臓器だけでなく複数の臓器に障害が及びやすくなります。そのため、高血圧症、糖尿病、変形性膝関節症、白内障といった複数の疾患を併発しているケース(多病性:マルチモビディティ)が極めて一般的です。多病性は、多剤併用(ポリファーマシー)による副作用のリスクを高める要因にもなります。

【他の選択肢が誤りである理由】

  • 選択肢1(誤り):高齢者の疾患は、臓器の予備能力低下や生体反応の鈍麻により、非定型的な症状(典型的な症状が出ないこと)を呈するのが特徴です。例えば、肺炎を起こしていても高熱が出ずに「なんとなく元気がない」「食欲がない」といった意識障害やADL低下の症状のみが前面に出ることがあります。
  • 選択肢2(誤り):疾患やその症状(痛み、息切れ、精神的な不安など)、運動器の機能低下(サルコペニアなど)が重なると、活動量が低下して生活範囲が狭まり、閉じこもりや不活発な状態(廃用症候群やフレイル)を招きやすくなります。
  • 選択肢3(誤り):加齢に伴い神経伝達速度が低下し、知覚認知機能が鈍麻するため、若年者と比較して「痛みに鈍感(痛みの閾値が上昇)」になります。心筋梗塞や狭心症を発症しても強い胸痛を自覚しない「無痛性心筋梗塞」や、腹膜炎を併発しても腹痛を強く訴えないケースがあるため注意を要します。
  • 選択肢5(誤り):高齢者の疾患は、完全に治癒することが難しい生活習慣病や退行性変性疾患(認知症、変形性関節症、骨粗鬆症など)が大部分を占めます。急性疾患よりも、長期にわたる療養や管理が必要な「慢性的な疾患(慢性疾患)が圧倒的に多い」のが特徴です。

問題80

Aさん(82歳,女性)は,介護老人保健施設に入所している。朝,眠そうな様子であったため,介護福祉職がどうしたのかと尋ねると,Aさんは,「夜,足や背中がかゆくてあまり眠れなかった」と話した。看護師と共に足や背中を観察すると,皮膚が乾燥していて,引っ掻いたような傷があった。そのほかに皮膚の異常はみられなかった。Aさんは寒さに弱く,今は冬なので常に電気毛布を使用している。昨日は入浴日であった。

次のうち,Aさんに生じている可能性がある疾患として,最も適切なものを1つ選びなさい。

  1. 角化型疥癬(hyperkeratotic scabies)
  2. 帯状疱疹(herpes zoster)
  3. 褥瘡
  4. 老人性皮膚掻痒症(senile pruritus)
  5. 閉塞性動脈硬化症(arteriosclerosis obliterans)

正解は 4 です。

老人性皮膚掻痒症は、加齢に伴う皮脂や汗の分泌量低下によって皮膚のバリア機能が著しく減退し、強い痒みを引き起こす疾患です。特に冬期の乾燥した環境や、入浴による皮脂の洗い流し、電気毛布の使用による皮膚のさらなる乾燥などが誘因・悪化要因となります。Aさんの「皮膚が乾燥している」「目に見える発疹などの異常(原発巣)がなく、引っ掻いた痕(掻破痕)がある」「冬場に電気毛布を使用」「入浴の翌朝に睡眠を妨げるほどの痒み」という特徴的な状況は、すべてこの疾患の典型的な病態と一致します。

【他の選択肢が誤りである理由】

  • 選択肢1(誤り):角化型疥癬(ノルウェー疥癬)は、ヒゼンダニの大量寄生によって発症する感染力の極めて強い皮膚疾患です。全身の皮膚がガサガサに厚くなる「過角化(鱗屑や痂皮)」が特徴であり、Aさんのように「皮膚の乾燥と掻破痕以外の異常がみられない」という病態とは明らかに異なります。
  • 選択肢2(誤り):帯状疱疹は、水痘・帯状疱疹ウイルスが再活性化することで発症します。身体の左右どちらか一方の神経に沿って、ピリピリとした強い神経痛(痛み)を伴う「帯状の紅斑や水疱(水ぶくれ)」が局所的に現れるのが特徴ですが、Aさんにはこれらの皮膚症状がありません。
  • 選択肢3(誤り):褥瘡は、寝たきりなどによる持続的な圧迫と摩擦が原因で、骨の突出している部位の組織が血流障害を起こして壊死する状態(床ずれ)です。主な好発部位は仙骨部や踵などであり、乾燥を主因として全身的な痒みを訴えるAさんの状態とは機序が異なります。
  • 選択肢5(誤り):閉塞性動脈硬化症は、下肢の血管が動脈硬化によって狭窄・閉塞し、血流障害を起こす疾患です。間欠性跛行(歩行時の足の痛みやしびれ)、足の冷感、皮膚の潰瘍などの症状が主であり、背中も含めた全身的な皮膚の乾燥や痒みを引き起こすものではありません。

認知症の理解(Bパート10問)

問題81

次の記述のうち,認知症(dementia)のある人にみられる妄想の説明として,最も適切なものを1つ選びなさい。

  1. 自分でしまい忘れた物が見つからず,誰かが盗んだと思い込むのは,嫉妬妄想である。
  2. 孫と会って話をしたにもかかわらず,孫にずっと会わせてもらえていないと主張するのは,カプグラ症候群である。
  3. 介護支援専門員(ケアマネジャー)と妻が話しているのを見て,妻の浮気相手だと思い込むのは,幻の同居人である。
  4. 家族など身近な人がよく似た偽物と入れ替わっていると主張するのは,被害妄想である。
  5. 身体的疾患がないにもかかわらず,自分が病気だと思い込むのは,心気妄想である。

正解は 5 です。

心気妄想(しんきもうそう)とは、身体的な異常や検査結果に問題がないにもかかわらず、「自分は不治の病にかかっている」「内臓が腐ってしまっている」などと強く確信し、訂正することが不可能な状態を指します。うつ病や統合失調症のほか、アルツハイマー型認知症や血管性認知症などの認知機能低下に伴う不安や身体的違和感、セルフケア能力の低下から二次的に生じることがあります。

【他の選択肢が誤りである理由】

  • 選択肢1(誤り):自分でしまい忘れた物を「誰かに盗まれた」と思い込む病態は、認知症(特にアルツハイマー型認知症の初期〜中期)に最も頻度の高い「物盗られ妄想(被害妄想の一種)」に該当します。嫉妬妄想は、配偶者が浮気をしていると根拠なく思い込む状態です。
  • 選択肢2(誤り):事実と異なるにもかかわらず「孫にずっと会わせてもらえない」と主張するのは、自分が家族から冷遇されている、あるいは見捨てられているという不満や不安から生じる「迫害妄想」や「見捨てられ妄想」にあたります。
  • 選択肢3(誤り):配偶者が浮気をしている、異性と不適切な関係にあると根拠なく思い込むのは「嫉妬妄想(あるいは不貞妄想)」に該当します。幻の同居人(phantom boarder)は、自宅に知らない人や家族以外の誰かが勝手に住み着いていると思い込む妄想です。
  • 選択肢4(誤り):家族や親しい人が「よく似た偽物、替え玉」に入れ替わっていると主張する精神症状は「カプグラ症候群(カプグラの錯覚)」と呼ばれ、人物誤認(記憶錯誤や視覚認知の障害)に基づきます。被害妄想は、他者から危害を加えられている、嫌がらせを受けていると思い込む状態を指します。

問題82

次の記述のうち,認知症(dementia)の人への取り組みとその説明として,最も適切なものを1つ選びなさい。

  1. 本人ミーティングでは,当事者たちが語り合い社会に発信も行う。
  2. 認知症初期集中支援チームは,要介護認定を行う。
  3. 若年性認知症支援コーティネーターは,認知症(dementia)の診断を行う。
  4. 認知症疾患医療センターは,地域ケア会議を開催する。
  5. 認知症カフェは,認知症介護指導者を養成する。

正解は 1 です。

本人ミーティングは、認知症の本人(当事者)が集まり、自らの思いや希望、生活上の工夫について語り合う場です。厚生労働省の「認知症施策推進大綱」や認知症基本法(2024年1月施行)に紐づく施策としても位置づけられており、当事者同士のピアサポート(相互支援)にとどまらず、認知症に対する社会の理解を深めるための啓発や、地域・行政への意見提言といった社会への情報発信を行う重要な役割を担っています。

【他の選択肢が誤りである理由】

  • 選択肢2(誤り):認知症初期集中支援チームは、認知症が疑われる人や症状が悪化した人に対して、早期診断・早期対応に向けた集中支援(訪問や初期アセスメントなど)を行う専門家チームです。要介護認定の事務(審査・判定)を行うのは、市町村に設置される「介護認定審査会」です。
  • 選択肢3(誤り):若年性認知症支援コーディネーターの役割は、現役世代で発症した若年性認知症の人やその家族に対し、就労継続、経済的支援の活用、福祉サービスの調整といった相談支援・ネットワーク構築を担うことです。医師ではないため、認知症の「診断」を行うことはできません。
  • 選択肢4(誤り):認知症疾患医療センターは、認知症の専門医療機関として鑑別診断や急性期医療、専門相談を行う拠点です。地域ケア会議は、高齢者の個別課題の解決や地域包括ケアシステムの構築を目的として、「地域包括支援センター」または「市町村」が主催・開催します。
  • 選択肢5(誤り):認知症カフェ(オレンジカフェ)は、認知症の人やその家族、地域住民、専門職が気軽に集い、交流や情報交換、相談を行うことができる集いの場です。認知症介護指導者の養成は、国が指定した認知症介護研究・研修センター等が実施する専門的な研修事業が担っています。

問題83

次の記述のうち,認知症(dementia)の行動・心理症状(BPSD)に該当するものとして,最も適切なものを1つ選びなさい。

  1. 10分前に施設職員が挨拶しに来たことを,覚えていない。
  2. 病院にいるのに,自宅にいると思っている。
  3. 通所介護(デイサービス)を利用中に,出口を探して歩き回る。
  4. 薬を処方されても,服薬管理ができない。
  5. 入浴を促すと,湯につかるだけで出てくる。

正解は 3 です。

認知症の症状は、脳の神経細胞が破壊されることで直接生じる「中核症状」と、本人の気質や周囲の環境、人間関係などが複雑に絡み合って現れる「行動・心理症状(BPSD)」の2つに大別されます。選択肢3の「出口を探して歩き回る(徘徊)」は、不安や焦燥感、見当識障害などの心理的・身体的要因を背景に現れる活動の異常であり、BPSD(行動症状)の典型例です。

【他の選択肢が誤りである理由】

  • 選択肢1(誤り):挨拶に来たこと自体を覚えていない状態は、新しい経験や情報を記憶・保持できない「記憶障害(近時記憶の障害)」に該当します。これは脳の病変に直結する中核症状です。
  • 選択肢2(誤り):自分が今いる場所や時間の正確な認識が難しくなる状態は「見当識障害」に該当します。時間、場所、人物の順に障害が進行することが多く、これも認知症の中核症状の1つです。
  • 選択肢4(誤り):処方された薬の管理ができなくなる状態は、物事を計画を立てて順序よく実行する能力が低下する「実行機能障害(遂行機能障害)」に分類されます。手順の複雑な作業が困難になる中核症状です。
  • 選択肢5(誤り):入浴という一連の行為において、身体を洗うなどの目的に応じた正しい一連の動作がとれなくなる状態は「失行(しっこう)」に該当します。運動機能に問題がないにもかかわらず日常の動作ができなくなる中核症状です。

問題84

次の記述のうち,アルツハイマー型認知症(dementia of the Alzheimer’s type)の説明として,最も適切なものを1つ選びなさい。

  1. 古い記憶から障害され,徐々に新しい記憶も障害される。
  2. 認知機能が変動することが特徴的である。
  3. ADL(Activities of Daily Living:日常生活動作)の障害は,重度期以降に認められる。
  4. 見当識障害は,中期以降に認められる。
  5. 記憶障害は,初期から認められる。

正解は 5 です。

アルツハイマー型認知症は、脳の海馬や大脳皮質などの神経細胞が変性・萎縮することによって生じる認知症です。初期症状として最も典型的なものが「エピソード記憶の障害(近時記憶障害)」であり、ついさっき聞いたことや体験した出来事そのものをすっぽりと忘れてしまう特徴があります。

【他の選択肢が誤りである理由】

  • 選択肢1(誤り):アルツハイマー型認知症の記憶障害は、新しいことを覚える「近時記憶(新しい記憶)」から順に損なわれます。昔の出来事や慣れ親しんだ手続きに関する「遠隔記憶(古い記憶)」は、比較的後期まで保たれる傾向にあります。
  • 選択肢2(誤り):時間帯や日によって認知機能のレベルが大きく変化する「認知機能の変動(動揺)」は、レビー小体型認知症の代表的な核心症状(特徴)です。
  • 選択肢3(誤り):記憶障害や見当識障害、実行機能障害などの中核症状が進行するに伴い、初期〜中期の段階から徐々に調理、買い物、金銭管理といった「IADL(手段的日常生活動作)」に支障が出始めます。さらに中期以降になると、入浴、着脱衣、排泄などの「ADL(基本的日常生活動作)」の障害も顕著になります。
  • 選択肢4(誤り):時間、場所、人物の順に認識が難しくなる「見当識障害」は、記憶障害と並んで初期の段階(特に時間に関する見当識障害)から現れる重要な中核症状です。

問題85

次のうち,レビー小体型認知症(dementia with Lewy bodies)の症状として,最も適切なものを1つ選びなさい。

  1. ノンレム睡眠行動障害による大声
  2. 自律神経症状による起立性低血圧(orthostatic hypotension)
  3. 聴覚認知機能の障害による幻聴
  4. 側頭葉の萎縮による意味性失語
  5. 嚥下機能の促進による食欲増加

正解は 2 です。

レビー小体型認知症は、脳内にアルファシヌクレインという異常タンパク質(レビー小体)が蓄積することで発症します。この病変は中枢神経だけでなく自律神経系(交感神経・副交感神経)にも広く及ぶため、自律神経症状が高頻度で出現します。その代表例である起立性低血圧は、立ち上がった際に血圧が急激に低下し、めまいや立ちくらみ、失神などを引き起こす原因となるほか、頑固な便秘や尿失禁、多汗なども特徴的な症状です。

【他の選択肢が誤りである理由】

  • 選択肢1(誤り):レビー小体型認知症でみられる特徴的な睡眠障害は、ノンレム睡眠ではなく「レム睡眠行動障害(RBD)」です。レム睡眠(身体は眠っているが脳が活動している状態)の際に、夢の内容(生々しい悪夢など)に連動して大声を出す、奇声をあげる、暴れるといった行動がみられます。
  • 選択肢3(誤り):レビー小体型認知症の核心的特徴となる幻覚は、聴覚認知機能の障害による幻聴ではなく、ありありとした具体的な「幻視」です。そこにいない人や虫、子どもがはっきりと見えると訴えるのが特徴です。
  • 選択肢4(誤り):側頭葉前方部などの限局的な萎縮によって、言葉の意味が分からなくなる意味性失語を呈するのは「前頭側頭型認知症(前頭側頭葉変性症)」の特徴です。レビー小体型認知症では、初期から後頭葉の血流や代謝の低下がみられ、視空間認知障害が目立ちます。
  • 選択肢5(誤り):レビー小体型認知症では、パーキンソン症状(運動機能障害)の進行に伴い、嚥下機能(飲み込みの能力)は促進されるのではなく「低下」します。これにより誤嚥や窒息のリスクが高まります。

問題86

次のうち,認知症(dementia)の人の生活をアセスメントするうえで,身体的要因に含まれる項目として,適切なものを1つ選びなさい。

  1. 性格
  2. 居住環境
  3. 人的環境
  4. IADL(Instrumental Activities of Daily Living:手段的日常生活動作)
  5. 社会とのつながり

正解は 4 です。

認知症ケアや介護実践におけるアセスメントでは、利用者の状態を多面的に把握するため、要因を「身体的要因」「心理的要因」「環境的要因(社会的要因)」などに分類します。このうち身体的要因(生物学的要因)には、認知機能や疾患の状況、ADL(基本的日常生活動作)のほか、調理、買い物、金銭管理、服薬管理といった日常生活を営む上で必要な高次の身体動作能力を示す「IADL(手段的日常生活動作)」が該当します。

【他の選択肢が誤りである理由】

  • 選択肢1(誤り):性格(生活歴や価値観、こだわり、ストレスへの対処行動など)は、個人の精神面や内面的な特性にアプローチする項目であり、「心理的要因」に分類されます。
  • 選択肢2(誤り):居住環境(自宅の段差の有無、手すりの設置状況、室内の動線、照明や温度などの物理的環境)は、「環境的要因」に分類されます。
  • 選択肢3(誤り):人的環境(家族の有無やサポート体制、介護職員との人間関係、近隣住民との関わりなど)は、周囲の人間との関係性を示す項目であり、「環境的要因(社会的環境)」に分類されます。
  • 選択肢5(誤り):社会とのつながり(地域のコミュニティへの参加状況、友人関係、福祉サービスの利用状況など)は、社会的な孤立を防ぐための指標となるものであり、「社会的要因(環境的要因)」に分類されます。

問題87

認知症(dementia)の人への環境の配慮に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

  1. 視覚的認識を容易にするために,廊下の手すりに色をつけて目立つようにする。
  2. 聴覚に影響を与えるために,ピクトグラム(pictogram)を表示する。
  3. 音の選択的聴取の力を高めるために,BGM(background music)の音量を大きくする。
  4. 穏やかに生活するために,居室の光の刺激を強くする。
  5. 落ち着く空間をつくるために,居室を細かい模様の壁紙で統一する。

正解は 1 です。

認知症に伴う視空間認知の障害や加齢による視覚機能の低下(コントラスト比の低下など)がある場合、壁や床と同系色の手すりは見落とされやすく、転倒のリスクを高めます。廊下の壁や周囲の環境と対比をなす明確な色(アクセントカラー)を手すりに用いることで、本人が手すりの位置を視覚的に素早く直感的に認識しやすくなり、自立した移動の促進や安全性の確保に直結します。

【他の選択肢が誤りである理由】

  • 選択肢2(誤り):ピクトグラム(絵文字)は、言葉による理解や記憶が低下した認知症の人に対して、トイレや浴室などの場所を直感的に伝えるための「視覚的」な情報支援ツールです。聴覚に働きかける効果や影響はありません。
  • 選択肢3(誤り):複数の音の中から特定の情報(話し声など)を選び出して聞き取る能力(選択的聴取)は、認知症の進行に伴って低下します。このような状態のときにBGMの音量を大きくすると、必要な音と不要な雑音の区別がさらに困難になり、混乱や精神的疲労、不穏を引き起こします。
  • 選択肢4(誤り):居室の光の刺激が強すぎると、網膜や脳への過剰な刺激となり、眼精疲労や頭痛、興奮状態、睡眠障害を誘発して穏やかな生活を妨げます。認知症の人の居室では、眩しさを抑えた間接照明や、昼夜のメリハリがつく自然な調光設計が求められます。
  • 選択肢5(誤り):認知症(特にレビー小体型認知症など)の人において、壁紙の細かい模様や幾何学的な柄は、そこには存在しない虫や異物に見える「幻視」や「錯視(見間違い)」の直接的な原因になります。精神的な落ち着きをもたらすためには、視覚的なノイズが少ない無地で淡い色調の壁紙を選択することが原則です。

問題88

次の記述のうち,認知症(dementia)の人の遂行機能障害の症状として,最も適切なものを1つ選びなさい。

  1. ご飯を食べたことを忘れて,ご飯をほしいと言う。
  2. 包丁の使い方を忘れて,うまく使うことができない。
  3. 食事が配膳されているが,左側のものを残す。
  4. 調理の手順を順序だてて行うことができない。
  5. 皿の模様をおかずと間違えて,スプーンですくおうとする。

正解は 4 です。

遂行機能障害(実行機能障害)は、物事を論理的に計画し、順序立てて効率よく実行する能力が損なわれる認知症の中核症状です。調理は「献立を決める」「必要な食材を揃える」「並行して煮る・焼くなどの作業をこなす」「適切な順番で盛り付ける」といった高度な段取り(プロセスの管理)を要するため、遂行機能障害の低下が最も顕著に現れます。

【他の選択肢が誤りである理由】

  • 選択肢1(誤り):ご飯を食べたという体験そのものを忘れてしまう症状は、新しい出来事の記憶を維持できない「記憶障害(近時記憶の障害)」に該当します。
  • 選択肢2(誤り):運動麻痺や感覚障害がないにもかかわらず、長年使い慣れていた道具(包丁など)を正しく操作できなくなる症状は「失行(しっこう)」に分類されます。
  • 選択肢3(誤り):目の前にある食事の片側(この場合は左側)を見落としてしまう症状は、視覚そのものの障害ではなく、脳の病変(主に右頭頂葉の損傷など)により片側の空間を認識できなくなる「半側空間無視(はんそくくうかんむし)」の特徴です。
  • 選択肢5(誤り):皿の模様をおかずと見間違えてすくおうとする症状は、目に見えている対象を正しく認識・同定できなくなる「失認(しんにん)」、あるいは「視空間認知の障害」に相当します。

問題89

Aさん(75歳,男性)は,認知症(dementia)で,通所介護(デイサービス)を利用している。介護福祉職が,「今日は何月何日でしょうか」と聞くと,Aさんは,「9月」と答えた。介護福祉職が,「今朝,Aさんの家の庭にあじさいが咲いていましたね」と言うと,Bさんが,「あじさいが咲くのは6月?」と答えた。介護福祉職は,「そうです。今日は6月22日です」と言い,ホワイトボードに日付とあじさいの絵を描いた。介護福祉職が,「6月生まれの方はいますか」と聞くが,返事がない。介護福祉職は,「今日は6月22日ですが,あと3日でAさんの誕生日ですね」と伝えた。

次のうち,介護福祉職が実施した技法として,適切なものを1つ選びなさい。

  1. タッチケア(touch care)
  2. アートセラピー(art therapy)
  3. リアリティ・オリエンテーション(reality orientation)
  4. ライフレビュー(life review)
  5. グリーフケア(grief care)

正解は 3 です。

リアリティ・オリエンテーション(現実見当識訓練)は、認知症などにより時間、場所、人物などの見当識に障害がある人に対し、日常生活の関わりの中で正しい現実の情報(現在の年月日、時間、季節、場所、個人の属性など)を自然に伝え、見当識の維持・回復を図るアプローチです。介護福祉職が「今日は6月22日です」と言葉で伝えたり、ホワイトボードに日付や季節のあじさいの絵を描いて視覚的に提示したり、本人の誕生日が近いことを共有したりする一連の働きかけは、この技法に合致しています。

【他の選択肢が誤りである理由】

  • 選択肢1(誤り):タッチケア(タクティールケアなど)は、相手の肌に優しく触れたり撫でたりすることで、不安や緊張を和らげ、安心感や信頼関係をもたらすタッチセラピー(皮膚への愛撫技法)を指します。
  • 選択肢2(誤り):アートセラピー(芸術療法)は、絵画、粘土細工、コラージュなどの創作活動を通じて、言葉にできない感情を表現させたり、精神的な自己治癒力を高めたりする心理療法です。ホワイトボードへの描画は介護職が情報提示のために行ったものであり、利用者の芸術活動ではありません。
  • 選択肢4(誤り):ライフレビュー(回想法)は、過去の思い出(幼少期の記憶、仕事、趣味など)を語り合ったり、当時の懐かしい道具や写真に触れたりすることで、脳を刺激し、精神的な安定や自己肯定感を高めるアプローチです。
  • 選択肢5(誤り):グリーフケア(悲嘆ケア)は、大切な家族や身近な人との死別、あるいは重大な喪失を体験し、深い悲しみや喪失感(グリーフ)を抱えている人に対し、その心理的なプロセスに寄り添い、立ち直れるよう精神的に支援するケアです。

問題90

Aさん(88歳,女性)は,4年前に,認知症(dementia)と診断された。在宅で長男が介護している。Aさんは,3か月前から,何度もトイレ以外で排泄しようとする様子がみられた。長男が繰り返しトイレの場所を教えているが,状態は変わらない。長男はAさんに対して,「何回,同じことを言ったら,わかるんだ」と大声でどなってしまい,その後で落ち込むようになった。また,長男は,「認知症(dementia)がいつまで続くのか」「自分に何か問題があったのではないか」と言って,自分を強く責めている。

次のうち,Aさんの認知症(dementia)を長男が受け入れる過程と考えた場合,このときの長男の心理的特徴に該当する段階として,最も適切なものを1つ選びなさい。

  1. ショック期
  2. 否認期
  3. 混乱期
  4. 解決への努力期
  5. 受容期

正解は 3 です。

家族が認知症を受け入れていく心理的ステップ(障害受容・認知症受容のプロセス)において、第3段階にあたる「混乱期」は、病気による症状(事例におけるトイレ以外での排泄など)に直面し、これまでの対応が通用しないことで介護者が強い精神的ストレスを抱える時期です。怒りの感情をぶつけて大声をどなってしまうこと、その後に激しい自己嫌悪や後悔、落ち込みを覚えること、さらに「終わりが見えない」「自分の育て方や関わり方が悪かったのではないか」と理不尽に自分を責める(自責の念)といった心理的動揺は、この混乱期に典型的な特徴です。

【他の選択肢が誤りである理由】

  • 選択肢1(誤り):ショック期(第1段階)は、家族が認知症の診断を最初に受けた直後、あるいは明らかな異常行動を初めて目の当たりにした瞬間に訪れる、頭が真っ白になり現実を言葉通り「茫然自失」として受け止められない精神的衝撃の段階を指します。
  • 選択肢2(誤り):否認期(第2段階)は、突きつけられた「認知症」という現実から目を背け、「単なるもの忘れだ」「歳をとれば誰でもこうなる」「病気であるはずがない」と頑なに事実を認めようとしない、あるいは他の医療機関を転々とする(ドクターショッピング)といった防衛本能が働く段階です。
  • 選択肢4(誤り):解決への努力期(第4段階)は、混乱期の激しい感情のアップダウンを通り抜け、「いくら怒っても病気だから仕方がない」と現実を客観的に捉え直す時期です。認知症に関する本を読んだり、介護サービスや周囲のサポートを模索したり、割り切って前向きに状況をコントロールしようと具体的な工夫を始める段階にあたります。
  • 選択肢5(誤り):受容期(第5段階)は、認知症という病気を持ったありのままの本人を受け入れ、介護に伴う苦労や変化を生活の一部として自然に包摂できるようになる最終的な到達段階です。本人の残された能力に目を向け、穏やかな関係性を再構築できている状態を指します。

障害の理解(Bパート10問)

問題91

次のうち,障害福祉におけるソーシャルインクルージョン(social inclusion)の考え方の説明として,最も適切なものを1つ選びなさい。

  1. 障害のある人とない人を統合する社会
  2. 障害のある人を権利侵害から守る社会
  3. 障害のある人の意思決定を支援する社会
  4. 障害のある人の最善の利益を考える社会
  5. 障害のある人もない人も包摂する社会

正解は 5 です。

ソーシャルインクルージョン(社会的包摂)とは、障害の有無、年齢、性別、国籍、経済状況などに関わらず、すべての人々を社会の構成員として包み込み、孤立や排除から守り、共に支え合って生活できる社会を目指す理念を指します。障害福祉の分野においても、障害者を特別視して社会から分離するのではなく、地域社会の一員として「包摂する」というアプローチの根幹をなす考え方です。

【他の選択肢が誤りである理由】

  • 選択肢1(誤り):「障害のある人とない人を統合する社会」は、インテグレーション(社会的統合)の考え方です。これは、あらかじめ存在するマジョリティ(健常者)の枠組みや社会システムの中に、障害のある人を適応させて受け入れていくアプローチを意味するため、社会の側が多様性を受け入れるインクルージョンとは区別されます。
  • 選択肢2(誤り):「障害のある人を権利侵害から守る社会」は、アドボカシー(権利擁護)や障害者虐待防止法、障害者差別解消法などの法的・制度的枠組みが目指す主たる機能です。ソーシャルインクルージョンは、単なる権利擁護(防衛)にとどまらず、社会への積極的な参画と包括的な連帯を目指す包括的概念です。
  • 選択肢3(誤り):「障害のある人の意思決定を支援する社会」は、障害者権利条約第12条にも規定されている「意思決定支援(Supported Decision-Making)」の理念に該当します。本人の自己決定権を尊重し、必要な支援を行う仕組みであり、ソーシャルインクルージョンを構成する重要な要素の1つではありますが、定義そのものではありません。
  • 選択肢4(誤り):「障害のある人の最善の利益を考える社会」は、主に児童福祉法や児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)に見られる「子どもの最善の利益」の原則や、成年後見制度における「身上保護・最善の利益の考慮」に紐づく理念です。

問題92

知的障害に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

  1. 障害が発達期にあらわれる。
  2. 障害の原因は明らかである。
  3. 一般就労は不可能である。
  4. 療育手帳の等級は障害支援区分である。
  5. 運動発達の遅れは伴わない。

正解は 1 です。

知的障害(知的発達症)は、一般的に「知的機能の制約」と「適応行動の制約」が、概ね18歳までの「発達期」に生じる状態として定義されています。厚生労働省の定義や各種診断基準(DSM-5など)においても、成人期以降に脳血管障害や頭部外傷などで知的機能が低下した状態(認知症や高次脳機能障害)とは明確に区別されており、発達期までに発現することが必須の要件となっています。

【他の選択肢が誤りである理由】

  • 選択肢1(誤り):(正解肢のためスキップ)
  • 選択肢2(誤り):知的障害の原因には、染色体異常や遺伝子異常などの「生理的・遺伝的要因」、胎内感染や出生時の低酸素脳症、乳幼児期の脳炎などの「病理的要因」、環境的な要因などが存在します。しかし、医学的な検査を経ても原因が特定できないケース(特発性)も少なくなく、すべてにおいて原因が明らかであるとは言えません。
  • 選択肢3(誤り):障害特性に応じた環境調整や、就労移行支援、障害者雇用促進法に基づく制度(特例子会社など)を活用することで、多くの知的障害者が一般企業等で一般就労として活躍しています。
  • 選択肢4(誤り):療育手帳の等級(重度「A」・それ以外「B」など、自治体により異なる)は、知能指数(IQ)や適応行動の状況から総合的に判定される障害の程度を示すものです。障害福祉サービスの必要度を決定するための「障害支援区分(区分1〜6)」とは、認定の仕組みも目的も異なる別の制度です。
  • 選択肢5(誤り):知的障害は、脳の発達全般に関わる障害であるため、言葉の遅れだけでなく、首すわり、お座り、歩行といった運動発達の遅れ(運動遅滞)を初期のサインとして伴うケースが多々見られます。

問題93

次のうち,後遺症によって片麻痺や言語障害を伴うことがある疾患や病態として,最も適切なものを1つ選びなさい。

  1. 脳血管障害(cerebrovascular disorder)
  2. 糖尿病(diabetes mellitus)
  3. 脊髄損傷(spinal cord injury)
  4. 慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease)
  5. クローン病 (Crohn disease)

正解は 1 です。

脳血管障害(脳卒中)は、脳の血管が詰まる脳梗塞や、血管が破れて出血する脳出血・くも膜下出血の総称です。脳の神経細胞が損傷すると、その部位が司る機能が失われます。大脳の運動野が損傷すると反対側の半身に「片麻痺」が生じ、言語中枢(ブローカ野やウェルニッケ野)が存在する優位半球(多くの場合は左脳)が損傷すると言葉をうまく操れなくなる「言語障害(失語症)」、あるいは発声に関わる筋肉の麻痺によって「構音障害」を後遺症として伴います。

【他の選択肢が誤りである理由】

  • 選択肢2(誤り):糖尿病は、インスリンの作用不足によって慢性的な高血糖が続く代謝疾患です。主な後遺症(三大合併症)は、網膜症(視力障害)、腎症(人工透析への移行)、神経障害(手足のしびれや壊疽)であり、中枢神経由来の片麻痺や言語障害は引き起こしません。
  • 選択肢3(誤り):脊髄損傷は、交通事故や転落などで脊柱に強い衝撃が加わり、脊髄が傷つくことで生じます。損傷部位より下の領域に運動・感覚障害が現れるため、両下肢が麻痺する「対麻痺」や、頸髄損傷による「四肢麻痺」を呈するのが特徴です。脳の損傷ではないため、半身のみの「片麻痺」や脳由来の「言語障害」は原則として伴いません。
  • 選択肢4(誤り):慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、主に長年の喫煙が原因で気道や肺胞に慢性的な炎症が生じ、呼吸がしにくくなる呼吸器疾患です。主な症状は、労作時の息切れ、慢性的な咳、痰などであり、片麻痺や言語障害とは直接関係がありません。
  • 選択肢5(誤り):クローン病は、口腔から肛門に至るまでの消化管に、線維化や潰瘍を伴う肉芽腫性炎症を引き起こす原因不明の慢性炎症性腸疾患(指定難病)です。主な症状は腹痛、下痢、発熱、体重減少などであり、神経系の障害による片麻痺や言語障害は生じません。

問題94

次の記述のうち,国際障害者年を契機に,日本の障害福祉に起きた変化として,最も適切なものを1つ選びなさい。

  1. 障害者を弱者として保護する捉え方が広まった。
  2. ノーマライゼーションの理念が徐々に浸透した。
  3. 身体障害者福祉法の制定につながった。
  4. 障害種別ごとの福祉サービス給付が始まった。
  5. 措置制度から自立支援医療制度へ移行した。

正解は 2 です。

国際連合(国連)は1981年を「国際障害者年」と定め、「完全参加と平等」のテーマを掲げました。これを契機に、障害のある人が障害のない人と同様に地域社会の通常の一員として当たり前に生活を営む権利があるという「ノーマライゼーション(normalization)」の理念が、日本の障害福祉施策や社会意識において広く浸透していく重要な転換点となりました。

【他の選択肢が誤りである理由】

  • 選択肢1(誤り):国際障害者年では「完全参加と平等」が掲げられており、障害者を一律に社会から隔離し保護の対象(社会的弱者)と見なすパターナリズムの姿勢から脱却し、主体的な権利の主体として捉える視点が推進されました。
  • 選択肢3(誤り):身体障害者福祉法が制定されたのは1949年(昭和24年)であり、1981年の国際障害者年よりも大幅に以前の出来事です。
  • 選択肢4(誤り):従来の日本の障害福祉は、身体障害、知的障害(旧・精神薄弱)、精神障害といった障害種別ごとに個別の法律(縦割り行政)で福祉サービスが提供されていました。国際障害者年はこの縦割りを開始した契機ではなく、後の障害福祉の一元化(2005年制定の障害者自立支援法など)へ向かう契機として位置づけられます。
  • 選択肢5(誤り):行政処分によってサービスが決定される「措置制度」から、利用者本人の契約に基づく利用(契約制度)へと大きく舵を切るきっかけとなったのは、2003年(平成15年)に導入された支援費制度、および2006年(平成18年)本格施行の障害者自立支援法です。また、自立支援医療制度は障害者自立支援法において創設された公費負担医療制度の一種であり、措置制度からの移行を説明する言葉ではありません。

問題95

次のうち,筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis:ALS)によくみられる症状として,最も適切なものを1つ選びなさい。

  1. 感覚障害
  2. 失禁
  3. 嚥下障害
  4. 視力障害
  5. 便秘

正解は 3 です。

筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、運動神経細胞(運動ニューロン)が選択的に変性・消失していく進行性の指定難病です。病勢が脳幹の運動核に及ぶと「球麻痺(きゅうまひ)」と呼ばれる症状が現れ、舌の萎縮や運動麻痺、軟口蓋の麻痺が生じます。これにより、食物や水分をうまく飲み込めなくなる「嚥下障害」のほか、構音障害や流涎(よだれ)が初期から中期にかけて高頻度に出現します。

【他の選択肢が誤りである理由】

  • 選択肢1(誤り):ALSでは、感覚神経(痛覚、触覚、温冷覚など)は侵されないため、しびれや痛み、感覚低下などの「感覚障害」は原則としてみられません。これはALSの「四大陰性徴候(現れにくい症状)」の1つです。
  • 選択肢2(誤り):排尿や排便をコントロールする自律神経系や、骨盤底筋を支配する運動神経(オヌフ核)は比較的末期まで保たれるため、尿意や便意の感覚は正常であり、尿失禁や便失禁などの「失禁」は生じにくいとされています(四大陰性徴候)。
  • 選択肢4(誤り):眼球を動かす外眼筋を支配する動眼神経などの脳神経は高度に保たれるため、眼球運動障害は末期まで出現せず、視力を司る視神経も侵されないため「視力障害」は生じません(眼球運動障害の欠如は四大陰性徴候の1つ)。
  • 選択肢5(誤り):(※補足:ALSでは寝たきり状態に伴う運動量低下や腹圧低下、水分摂取制限によって二次的に頑固な便秘を合併することは臨床上非常に多いですが、ALSの病変そのものが直接引き起こす初発・中核的な「よくみられる陰性徴候以外の症状」として比較した場合、運動ニューロン変性に直結する球麻痺症状である「嚥下障害」が最も適切と判断されます)

問題96

Aさん(50歳,男性)は,以前は一人暮らしをしていたが,現在は統合失調症(schizophrenia)のため長期入院をしている。症状が軽快して安定したため,医師から間もなく退院できるという説明があった。Aさんは以前と同じように独居を希望しているが,一人で住居を探すのに不安がある。

次のうち,Aさんの希望を実現するために利用する公的な支援として,最も適切なものを1つ選びなさい。

  1. 地域定着支援
  2. 自立生活援助
  3. 地域移行支援
  4. 生活介護
  5. 同行援護

正解は 3 です。

障害者総合支援法に基づく相談支援事業のうち、「地域移行支援」は、精神科病院に入院している障害者や障害者支援施設に入所している人などを対象に、住居の確保や地域生活に移行するための準備、同行支援などを行うサービスです。事例のAさんは現在「長期入院中」であり、「退院間近」の段階で「一人で住居を探すのに不安」を抱えているため、この移行期を支える地域移行支援が最適です。

【他の選択肢が誤りである理由】

  • 選択肢1(誤り):地域定着支援は、居宅で一人暮らしをしている障害者などを対象に、常時の連絡体制を確保し、緊急時の対応や相談を行うサービスです。すでに「地域での生活が始まっている人」の継続維持を目的とするため、これから退院して住居を探す段階のAさんにはあてはまりません。
  • 選択肢2(誤り):自立生活援助は、障害者支援施設や精神科病院から退院・退所して「一人暮らしに移行した直後の人」などを対象に、定期的な訪問や相談を通じて公共料金の支払いや日常生活の課題を解決するサービスです。退院「後」の独居生活を維持するための支援であり、入院中に住居を探す段階では利用しません。
  • 選択肢4(誤り):生活介護は、常時介護を必要とする障害者に対して、主に日中、障害者支援施設等で入浴や排泄、食事の介護、創作的活動の機会などを提供する生活支援サービスです。住居確保の支援や退院準備を行うものではありません。
  • 選択肢5(誤り):同行援護は、視覚障害により移動に著しい困難を有する障害者に対して、外出時に同行し、移動の援護や視覚的情報の提供(代筆・代読など)を行うサービスです。精神障害に起因する住居探しの不安に対する公的支援とは異なります。

問題97

Aさん(45歳,男性)は,1年前,交通事故で頭部外傷を負った。四肢に障害は残らなかったが,高次脳機能障害(higher brain dysfunction)と診断された。

次の記述のうち,Aさんの障害特性を理解した支援として,最も適切なものを1つ選びなさい。

  1. 記憶障害によって同じことを何度も質問するが,一度だけ質問に答える。
  2. 注意障害によって作業のミスが多いため,その度ごとに強く注意する。
  3. 遂行機能障害によって指示されないと作業ができないため,自分の判断でやるように促す。
  4. 社会的行動障害によってすぐに怒りだすことがあるため,感情が落ち着くように場面や話題を変える。
  5. 病識低下によってできないことを認めないため,できないことを指摘する。

正解は 4 です。

高次脳機能障害における社会的行動障害では、感情のコントロールが難しくなる「感情失禁」や、些細なことで興奮し激高する「易怒性(いどせい)」がよく見られます。本人が怒り出したり興奮したりしているときは、真正面から説得や反論を試みても事態が泥沼化しやすいため、刺激の少ない静かな場所に移動して環境を切り替える(場面転換)、あるいは本人が関心を持つ別のテーマに話を切り替える(話題変更)などにより、興奮のきっかけから意識をそらし、心理的な落ち着きを取り戻すよう支援するのが効果的です。

【他の選択肢が誤りである理由】

  • 選択肢1(誤り):記憶障害(特に新しい出来事を覚えられない前向性健忘)がある場合、本人は「さっき質問した」という事実そのものを忘れているため、何度も同じことを尋ねます。無視をしたり一度しか答えないような対応は、本人の不安や混乱、不信感を募らせる原因となるため、メモなどの視覚的ツールに書き残していつでも確認できるようにするなどの工夫が求められます。
  • 選択肢2(誤り):注意障害(集中力の低下、注意の持続困難、気が散りやすいなど)を持つ人に対し、ミスの度ごとに強く叱責・注意をすることは、精神的な萎縮や過度な不安を招き、さらなる注意力の低下やミスの増加という悪循環を引き起こします。静かで集中しやすい環境を整える、作業工程を短く区切る、チェックリストを活用するなどの環境調整が適切です。
  • 選択肢3(誤り):遂行機能障害(実行機能障害)は、物事を論理的に計画し、優先順位をつけて順序立てて実行することが難しくなる障害です。本人の判断に丸投げして促すだけでは混乱して何もできなくなってしまうため、手順をわかりやすくマニュアル化したり、具体的な選択肢を提示して一歩ずつ行動をサポートする必要があります。
  • 選択肢5(誤り):病識低下(脳の損傷により自身の障害や能力低下を客観的に認識できない状態)にある人に対し、できないことを頭ごなしに厳しく指摘したり突きつけたりすることは、プライドを傷つけ、強い反発や抑うつ、不穏を招く危険性があります。失敗を責めるのではなく、本人が自尊心を保ちながら安全に、かつ成功体験を積み重ねられるような肯定的アプローチが重要です。

問題98

次のうち,「障害者総合支援法」に規定する補装具として,適切なものを1つ選びなさい。

(注)「障害者総合支援法」とは,「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」のことである。

  1. 特殊寝台
  2. 電動車椅子
  3. 点字器
  4. 電気式たん吸引器
  5. ストーマ装具

正解は 2 です。

障害者総合支援法における「補装具」は、身体の欠損又は損なわれた身体機能を補完・代替し、長期間にわたり継続して使用される用具(義肢、装具、車椅子、盲導犬、補聴器など)と定義されています。電動車椅子は、移動機能の障害を補完・代替する用具として、同法に基づく補装具費支給制度の対象に明確に規定されています。

【他の選択肢が誤りである理由】

  • 選択肢1(誤り):特殊寝台は、障害者総合支援法における「地域生活支援事業」の枠組みの中で、各市町村が実施する「日常生活用具給付等事業」の対象品目に該当します。身体機能を直接補完・代替するものではなく、日常生活の利便性を高めるための用具です。
  • 選択肢3(誤り):点字器は、視覚障害者の情報・コミュニケーションを支援するための用具であり、特殊寝台と同様に「日常生活用具給付等事業(日常生活用具)」の対象に分類されます。
  • 選択肢4(誤り):電気式たん吸引器は、在宅療養や医療的ケアをサポートするための衛生・医療補助用具であり、補装具ではなく市町村の「日常生活用具給付等事業(日常生活用具)」の対象品目として扱われます。
  • 選択肢5(誤り):ストーマ装具(人口肛門・人工膀胱の排泄受容器)は、排泄管理を容易にするための消耗品的な性質を持つ用具であり、補装具ではなく市町村の「日常生活用具給付等事業(日常生活用具)」の給付対象です。

問題99

次の記述のうち,地域における障害者のサポート体制として,最も適切なものを1つ選びなさい。

  1. 介護支援専門員は,サービス等利用計画を作成する。
  2. 相談支援専門員は,個別支援計画を作成する。
  3. 基幹相談支援センターは,障害支援区分を決定する。
  4. 地域包括支援センターは,要介護度を決定する.
  5. 市町村は,地域生活支援事業を行う。

正解は 5 です。

地域生活支援事業は、障害者総合支援法第77条に基づき、地方自治体が地域の特性や障害者のニーズに応じて柔軟に実施する事業です。実施主体は市町村(一部の事業は都道府県)であり、相談支援事業、移動支援事業、日中一時支援事業など、障害者が地域で自立した日常生活や社会生活を営むために必要な支援を網羅しています。

【他の選択肢が誤りである理由】

  • 選択肢1(誤り):介護支援専門員(ケアマネジャー)が作成するのは、介護保険法に基づく「居宅サービス計画(ケア計画)」などです。障害者総合支援法に基づく「サービス等利用計画」を作成するのは、特定相談支援事業所に配置されている相談支援専門員です。
  • 選択肢2(誤り):相談支援専門員が作成するのは「サービス等利用計画」です。福祉サービスを実際に提供する障害者福祉サービス事業所のサービス管理責任者(サビ管)や、児童発達支援管理責任者が「個別支援計画」を作成します。
  • 選択肢3(誤り):基幹相談支援センターは、地域における相談支援の拠点として、総合的・専門的な相談対応、相談支援専門員への指導・育成、地域移行支援や権利擁護を行う機関です。障害支援区分(区分1〜6)の審査・判定および決定を行うのは、市町村に設置される「審査会(市町村審査会)」です。
  • 選択肢4(誤り):地域包括支援センターは、高齢者のよろず相談、総合相談支援、権利擁護、ケアマネジメントの支援等を行う機関です。要介護度(要支援1〜2、要介護1〜5)の審査・判定および決定を行うのは、市町村に設置される「介護認定審査会」です。

問題100

次のうち,障害があるためスプーンをうまく握れない人に自助具を作成する職種として,最も適切なものを1つ選びなさい。

  1. 看護師
  2. 義肢装具士
  3. 理学療法士
  4. 作業療法士
  5. 言語聴覚士

正解は 4 です。

理学療法士及び作業療法士法第2条第2項において、作業療法は「身体又は精神に障害のある者に対し、主としてその応用的動作能力又は社会的適応能力の回復を図るため、手芸、工作その他の作業を行なわせること」と定義されています。食事、入浴、更衣などの日常生活活動(ADL)は応应用動作能力に含まれ、スプーンの柄を太くするなどの自助具の選定、考案、作成、およびそれを用いた訓練は、作業療法士の専門領域です。

【他の選択肢が誤りである理由】

  • 選択肢1(誤り):保健師助産師看護師法第5条に基づき、傷病者若しくはじょく婦に対する療養上の世話又は診療の補助を行う職種です。医療・健康管理や日常生活上のケアを担いますが、自助具の作成を専門とする職種ではありません。
  • 選択肢2(誤り):義肢装具士法第2条に基づき、医師の指示の下で義肢及び装具の装着部位の採型・採寸、製作、身体への適合を行う専門職です。主に失われた四肢の代替となる義肢や、治療・体幹支持を目的とする装具を対象としており、日常生活用の簡易な自助具の作成とは区別されます。
  • 選択肢3(誤り):理学療法士及び作業療法士法第2条第1項に基づき、主としてその「基本動作能力」の回復を図るため、治療的体操その他の運動を行わせ、及び電気刺激、マッサージ、温熱その他の物理的手段を加える専門職です。寝返る、起き上がる、座る、立つ、歩くといった根幹的な身体運動のサポートが中心となります。
  • 選択肢5(誤り):言語聴覚士法第2条に基づき、音声機能、言語機能又は聴覚に障害のある者に対し、その機能の維持向上を図るため、言語訓練その他の訓練、これらに必要な検査及び助言、指導その他の援助を行う専門職です。また、摂食・嚥下障害に対する専門的な訓練も担いますが、手指の自助具作成は専門外です。

医療的ケア(Bパート5問)

問題101

次の記述のうち,バイタルサインを測定するときの留意点として,最も適切なものを1つ選びなさい。

  1. 非接触型体温計による測定では,環境温度に注意する。
  2. 脈拍の測定では,橈骨動脈に拇指で触れる。
  3. 呼吸の測定では,ゆっくりと息をするように伝えてから行う。
  4. 血圧測定では,上腕にマンシェットを隙間のないように巻く。
  5. 意識レベルは,まず身体を揺さぶって反応をみる。

正解は 1 です。

非接触型体温計は、皮膚(主に額)から放射される赤外線量を検知して体温を推計する仕組みです。外気の影響を受けやすく、測定機器そのものや対象者の皮膚が冷え切っている場合、あるいは直射日光や暖房器具の近くといった環境温度の変動によって測定値に大きな誤差が生じるため、機器の仕様に定められた適切な室温・環境下で使用する必要があります。

【他の選択肢が誤りである理由】

  • 選択肢2(誤り):橈骨動脈(とうこつどうみゃく)での脈拍測定の際は、人指し指、中指、薬指の3指(または2指)の指腹を使います。検者自身の拇指(親指)の先には拍動が強く触れるため、患者の脈拍と検者自身の脈拍を誤認して混同するリスクがあります。
  • 選択肢3(誤り):呼吸は意識によって容易に回数や深さが変動します。「測定する」と事前に伝えてしまうと、緊張や意識的な調整が入り、普段の自然な安静時呼吸が測定できなくなります。そのため、脈拍測定に続けて行うなど、利用者に意識させないように測定するのが鉄則です。
  • 選択肢4(誤り):血圧計のマンシェット(腕帯)を隙間なくきつく巻きすぎると、空気を入れる前から血管が圧迫されてしまい、測定値が不当に低くなる原因になります。一般的に、マンシェットと上腕の間には「指が1〜2本入る程度の隙間(緩さ)」を持たせて巻くのが適切です。
  • 選択肢5(誤り):意識レベルの評価(JCSやGCSなど)では、最初は「呼びかけ(声かけ)」による反応を確認し、段階的に刺激を強めていくのが原則です。最初から身体を激しく揺さぶるような強い刺激を与えると、頸椎損傷や頭部外傷の悪化、不必要な精神的動揺を招く恐れがあります。

問題102

気管カニューレの構造等に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

  1. 気管カニューレは,咽頭に挿入されている。
  2. 気管カニューレは,交換の必要がない。
  3. カフは,カニューレの上端についている。
  4. カフには,滅菌蒸留水が入れてある。
  5. サイドチューブから,カフの上部の貯留物を吸引することができる。

正解は 5 です。

一部の気管カニューレには、カフ(風船部分)の上部に溜まる唾液や分泌物(サブグロッティック分泌物)を体外に排出するための「サイドチューブ(吸引用ライン)」が備わっています。カフの上部に貯留した分泌物は誤嚥性肺炎の主原因となるため、このサイドチューブから持続的または間欠的に吸引を行うことで、下気道への垂れ込みを効果的に防ぐことができます。

【他の選択肢が誤りである理由】

  • 選択肢1(誤り):気管カニューレは、のど(咽頭・喉頭)ではなく、頸部を外科的に切開して作られた気管瘻(きかんろう)を介して直接「気管」内に挿入されます。
  • 選択肢2(誤り):気管カニューレは、管内における分泌物の付着や固着、微生物の繁殖、製品の経時的劣化を防ぐため、定期的に新品への交換を行う必要があります。一般的には医療機関において月1回程度の頻度で交換されます。
  • 選択肢3(誤り):カフは、気管カニューレの内視鏡的あるいは解剖学的な位置において、外気が漏れるのを防ぎ固定を確実にするため、カニューレの「下端(先端に近い側)」に位置しています。
  • 選択肢4(誤り):一般的な気管カニューレのカフ内には、専用のシリンジを用いて「空気(エアー)」を注入し膨らませます。水を入れてしまうとカフの重量で気管粘膜を圧迫・損傷するリスクがあるほか、圧管理(カフ圧計での測定)が正確に行えなくなります。

問題103

Aさん(85歳,男性)は,慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease)で,介護老人福祉施設に入所している。ある日,Aさんから,「痰がからんでいて,咳をしても出せない」という訴えがあった。介護福祉士が呼吸回数を確認すると,1分間に22回で,ゴロゴロという音がしていた。看護職からは,右肺に痰が貯留しやすいという情報提供があった。口腔内吸引をすると,粘性の強い透明な痰が吸引できた。

このとき,介護福祉士が喀痰排出を促すためにAさんに行う対応として,最も適切なものを1つ選びなさい。

  1. 居室の湿度を30%に保つ。
  2. 水分摂取を控えるように伝える。
  3. 左側を下にした体位を勧める。
  4. 太い吸引チューブに変える。
  5. ベッド上での安静を勧める。

正解は 3 です。

重力による排痰を促す手技(体位排痰法:ポジショニング)の原則では、痰が貯留している部位(病巣側)を「上」にした体位をとることで、気道への移動や排出を自然に促進します。Aさんは「右肺に痰が貯留しやすい」という看護職からの明確な情報提供があるため、反対側である左側を下にした体位(左側臥位)をとることで、右肺が上になり、物理的に痰が流出しやすくなります。

【他の選択肢が誤りである理由】

  • 選択肢1(誤り):慢性閉塞性肺疾患(COPD)の利用者が「粘性の強い痰」を訴えている場合、乾燥は症状を悪化させます。湿度30%は過乾燥であり、痰がさらに干からびて気道に固着し、排出が困難になります。一般的に居室の湿度は40〜60%程度に適切に管理します。
  • 選択肢2(誤り):粘性の強い痰をサラサラにして排出しやすくするためには、心疾患などの医師による水分制限の指示がない限り、十分な水分補給を行うことが重要です。水分摂取を控えるような指導は不適切です。
  • 選択肢4(誤り):吸引チューブのサイズ(太さ)の選択や変更は、医師の指示や看護職の判断、医療的な評価に基づいて行うべき事項であり、介護福祉士が独自の判断で変更することは認められていません。
  • 選択肢5(誤り):呼吸回数が22回/分とやや多めでゴロゴロと音がしていますが、可能であれば上体を起こす(起座位や半座位)、または適度に体位を変えるほうが、肺の換気効率が上がり咳がしやすくなります。不必要なベッド上での一律の安静指示は、かえって無気肺や症状の鬱滞を招く恐れがあります。

問題104

次の記述のうち,胃の構造として,正しいものを1つ選びなさい。

  1. 幽門から始まり噴門で終わる。
  2. 左上方を胃底部といい,食べ物を一時的にためる。
  3. 左下方の縁を小弯という。
  4. 胃には3つの生理的狭窄部がある。
  5. 胃に続く小腸は,空腸という。

正解は 2 です。

胃は、食道から送られてきた食物を胃液と混ぜ合わせ、一時的に蓄えて消化する袋状の器官です。解剖学的に、胃の上部で左側に膨らんでいるドーム状の部分を「胃底部(いていぶ)」と呼びます。食物が胃に入ると胃底部や胃体部が広がり、これらを一時的に貯留する役割を果たします。

【他の選択肢が誤りである理由】

  • 選択肢1(誤り):食物の通り道の順で見ると、胃は食道とつながる入口である「噴門(ふんもん)」から始まり、十二指腸へと続く出口である「幽門(ゆうもん)」で終わります。記述が逆になっています。
  • 選択肢3(誤り):胃の右側の緩やかな凹状の縁(右上方の短い縁)を「小弯(しょうわん)」、左側の大きく膨らんだ凸状の縁(左下方の長い縁)を「大弯(だいわん)」と呼びます。したがって、左下方の縁は大弯です。
  • 選択肢4(誤り):「3つの生理的狭窄部(通り道が狭くなっている場所)」があるのは、胃ではなく「食道」です。食道の生理的狭窄部は、①食道開始部(咽頭との境界)、②気管分岐部(大動脈弓と交差する部位)、③横隔膜貫通部(食道裂孔)の3箇所です。
  • 選択肢5(誤り):胃の出口(幽門)の直後に続く小腸の最初の部位は「十二指腸」です。小腸は上流から順に「十二指腸」→「空腸」→「回腸」へとつながっていきます。

問題105

次の記述のうち,ボタン型胃ろうチューブを挿入している利用者に対して,介護福祉士が行うケアとして,最も適切なものを1つ選びなさい。

  1. 胃ろう周囲の皮膚に発赤がある場合は,軟膏を塗布する。
  2. 1日に2,3回,胃ろうチューブを回転させて,癒着を防ぐ。
  3. 胃ろうチューブの抜去予防のため,歩行は避けるように勧める。
  4. 胃ろう周囲の皮膚は石けんとぬるま湯で洗浄して,清潔を保つ。
  5. 栄養剤を注入する前には,胃ろう部を消毒する。

正解は 4 です。

胃ろう(PEG)の周囲は、漏れ出た胃液や栄養剤、付着した汗などによって皮膚トラブル(ただれや肉芽の形成など)が起きやすい繊細な部位です。日々のスキンケアとしては、入浴時などに刺激の少ない固形・液体石けんをよく泡立て、ぬるま湯で優しくこすらずに洗い流し、水分をしっかり拭き取って乾燥・清潔を保つことが基本かつ最も重要です。これは介護福祉士が日常の生活支援・清潔保持として行うべき適切なケアに合致しています。

【他の選択肢が誤りである理由】

  • 選択肢1(誤り):胃ろう周囲の発赤(赤み)やただれ、痛みの訴えがある場合、何らかの炎症や感染、胃液の漏れが疑われます。介護福祉士が自己判断で特定の医薬品(軟膏など)を塗布することは医行為の制限に抵触するため不適切です。まずは速やかに看護職や医師に報告し、指示を仰ぐ必要があります。
  • 選択肢2(誤り):胃ろうチューブの癒着を防ぐための回転操作(バンパーが胃壁に埋まるのを防ぐ「PEGの回転」)は、一般的に製品や医師の指示により「1週間に1〜2回程度、入浴時や洗浄時に行う」のが適切です。「1日に2、3回」という高頻度での回転は、瘻孔(ろうこう)の組織に不必要な摩擦や刺激を与え、出血や炎症を誘発するリスクがあるため誤りです。
  • 選択肢3(誤り):胃ろうを造設していても、体調が安定していれば散歩や歩行などの日常的な運動は全く問題ありません。特に「ボタン型」は身体の表面にチューブが飛び出していないため引っ掛けにくく、活動的な人に適した形状です。抜去を恐れて一律に歩行などの活動を制限することは、利用者のQOL(生活の質)や身体機能を低下させるため不適切です。
  • 選択肢5(誤り):日常的な経管栄養の注入において、注入のたびに胃ろう部をアルコールや消毒液で消毒する必要はありません。過度な消毒は、かえって皮膚の正常な常在菌のバランスを崩し、皮膚炎やバリア機能の低下を招きます。日頃から洗浄によって清潔に保たれていれば、注入前の消毒は不要です。

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(令和7年度午前Aパート)介護福祉士国家試験 問題・解答・解説 

(令和7年度午後Bパート)介護福祉士国家試験 問題・解答・解説 (当ページ)

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