「庭いじりをしていた父が、急に倒れて救急車で運ばれた」
「脳出血と診断され、命は助かったけれど長いリハビリが必要になった」
ある日突然訪れる家族の危機。命が助かった安堵の次に押し寄せてくるのは、現実的な「お金の不安」ではないでしょうか。
「手術をして、何ヶ月も入院して、リハビリをして……一体いくらかかるんだろう?」
「まだ現役で働いているのに、仕事はどうなるの? 収入は?」
特に60代前後は、定年延長などで働いている方も多く、経済的なダメージは深刻です。
ですが、焦って貯金を切り崩す前に、まずは日本の制度がどれほど手厚く私たちを守ってくれているかを知ってください。
今回は、突然の病気やケガの際に使える「保険」の仕組みと、支払いを最小限に抑えるための必須手続きについてお話しします。
「治療」の間は、いつもの保険証が最強の味方
まず基本中の基本ですが、病院での手術、治療、そして回復期のリハビリテーション。これらにかかる費用は、すべて「医療保険(健康保険)」の対象です。
皆さんが持っている「健康保険証」を窓口に出せば、かかった費用の3割(年齢や所得により1〜2割)を支払うだけで済みます。
「でも、総額が1000万円だったら、3割でも300万円……払えないよ!」
そう思いますよね。そこで登場するのが、日本が世界に誇る最強のセーフティネットです。
支払いを大幅に減らす「魔法の認定証」をすぐに申請しよう
医療費が高額になった場合、自己負担額には「上限」が設けられています。これを「高額療養費制度」と言います。
例えば、一般的な所得の方であれば、ひと月の医療費の自己負担上限は約8万円〜9万円程度で済みます。たとえ総医療費が100万円かかっても、窓口で支払うのは約8万円(+食事代など)でいいのです。
【重要】入院が決まったらすぐにやるべきこと
後から申請してお金が戻ってくる方法もありますが、一時的とはいえ大金を立て替えるのは大変です。
入院が決まったら、すぐに加入している健康保険組合(会社員なら協会けんぽなど、自営業なら市町村)に連絡し、「限度額適用認定証」を発行してもらってください。
この認定証を病院の窓口に出せば、請求額そのものが自己負担限度額まで下がります。これがあるのとないのとでは、精神的な安心感が段違いです。
「介護保険」はいつから使うの?
60代の方の場合、「介護保険は使えないの?」と疑問に思うかもしれません。
- 医療保険: 病気やケガの「治療・回復」が目的(病院での入院・リハビリなど)
- 介護保険: 症状が固定した後の「生活支援」が目的(デイサービス、手すりの設置など)
原則として、病院に入院して治療を受けている間は「医療保険」を使います。退院して自宅に戻り、生活のためにヘルパーさんやデイサービスが必要になった段階で「介護保険」の出番となります。
(※脳血管疾患などは特定疾病として、40歳以上であれば介護保険の申請自体は可能です。退院に向けて、早めにケアマネジャーに相談するのはOKです)
備えあれば憂いなし。今すぐ確認できるツール
いざという時に慌てないために、平時のうちに以下の準備をしておきましょう。
1. 「民間保険の証券」を整理しておく
「昔入った医療保険、どこにやったっけ?」となりがちです。
がん保険、医療保険、就業不能保険など、民間の保険証券を一度全て出し、スマホで写真を撮って家族と共有しておきましょう。「入院1日〇〇円」が出る保険に入っていれば、個室代やパジャマ代などの実費をカバーできます。
2. マイナンバーカードを保険証として使う
実は、マイナンバーカードを健康保険証として利用(マイナ受付)できる病院であれば、事前の「限度額適用認定証」の申請が不要になります。
カードリーダーでの同意のみで、自動的に高額療養費制度の上限が適用されるのです。親御さんのマイナンバーカード、まだ作っていないなら作成を検討してみても良いでしょう。
3. 家計簿アプリで「医療費」を記録する
年間(1月〜12月)に支払った医療費が家族合算で10万円を超えた場合、確定申告で「医療費控除」を受ければ税金が戻ってきます。
レシートを靴箱に溜め込むのではなく、「家計簿アプリ」や「医療費管理アプリ」でその都度撮影して記録しておくと、確定申告の時期に劇的に楽になります。
まとめ
病気は不幸な出来事ですが、経済的な破綻までセットでやってくるわけではありません。
「医療保険」と「高額療養費制度」という2つの盾が、あなたの家計をガッチリ守ってくれます。
まずは落ち着いて、保険証と限度額適用認定証の準備から始めましょう。
「入院中のリハビリは医療保険」。この判断ができますか?
「60歳だから介護保険?」それとも「仕事中の怪我じゃないから労災は無理?」
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