親御さんが75歳を迎えると、それまでの国民健康保険や会社の健康保険から抜け、「後期高齢者医療制度」へと加入先が切り替わります。
「ああ、誕生日が来たら新しい保険証が届くのね」
そうやって自動的な手続きだと思っている方が多いですが、実はこの制度、単に年齢だけで区切られているわけではありません。
ご本人の状態によっては「65歳」から加入できるケースがあったり、逆に生活保護を受けていると対象外になったりと、意外と知られていない「特例ルール」が存在します。
今回は、親御さんの医療費や保険料負担にも関わる、知っておきたい制度の仕組みについてお話しします。
1. 原則は75歳。でも「65歳」から入れる人がいる
後期高齢者医療制度は「75歳以上の方」が入るもの、というのが大原則です。
しかし、例外として「65歳以上75歳未満」であっても加入できるケースがあります。
それは、「一定の障害があり、広域連合の認定を受けた場合(障害認定)」です。
具体的には、身体障害者手帳などをお持ちで、寝たきり等の状態にある方が対象となります。
これの何が重要かというと、「今の健康保険(国保など)から、後期高齢者医療制度に移ったほうが、保険料や医療費の負担が軽くなる可能性がある」ということです。
自動的には切り替わらないため、ご自身(または家族)で役所に申請する必要があります。
もし親御さんが65歳以上で障害をお持ちの場合は、「今の保険とどちらが得か」を一度自治体の窓口で相談してみる価値があります。
2. 生活保護を受けている場合は「保険証」がない
経済的な事情で「生活保護」を受けている親御さんの場合、この制度はどうなるのでしょうか。
結論から言うと、生活保護受給者は、後期高齢者医療制度の被保険者にはなりません。
生活保護には「医療扶助」という仕組みがあり、医療費はそこから全額公費で賄われるため、そもそも保険料を払って医療保険に入る必要がないからです(介護保険とは仕組みが異なります)。
そのため、75歳を過ぎても後期高齢者医療被保険者証は届かず、医療券などを使って受診することになります。
3. 保険料が苦しい時は「減免」の相談を
「年金だけで暮らしているのに、保険料や窓口負担が重い……」
そんな悩みを持つ高齢者は少なくありません。
後期高齢者医療制度の運営主体である「広域連合(都道府県ごとの運営グループ)」には、特別な事情がある場合に保険料を減免する権限があります。
- 災害で家が被害を受けた
- 失業や事業の廃止で収入が激減した
こうした特別な理由がある場合は、申請によって保険料が安くなることがあります。「払えない」と諦めて滞納してしまう前に、お住まいの市町村の窓口へ相談に行きましょう。
4. 医療保険でも「訪問看護」は使える
最後に、在宅ケアで重要な「訪問看護」についてです。
訪問看護は介護保険で使うイメージが強いですが、実は後期高齢者医療制度(医療保険)を使って利用することも可能です。
基本的には介護保険が優先されますが、「末期の悪性腫瘍」や「難病」など、特定の条件に当てはまる場合は、医療保険からの給付に切り替わります。
「うちは介護保険の限度額がいっぱいだから……」と遠慮せず、医師やケアマネジャーに相談してみてください。
まとめ:役所からの封筒は必ずチェックを
後期高齢者医療制度は、都道府県単位の「広域連合」が運営しており、保険料率なども2年ごとに見直されています。
「難しい書類だから」と親御さんが封筒を開けずに放置してしまわないよう、実家に帰った際は「役所からのお知らせ」を確認してあげてください。
障害認定の申請や減免の相談など、知っている人だけが活用できるサポートがあるかもしれません。
