介護保険の「上限」を気にしすぎていませんか?実はカウントされない「別腹」サービスの活用法

親御さんが要介護認定を受けると、「要介護1なら月々これくらいの金額(点数)まで使えます」という説明を受けます。
これを専門用語で「区分支給限度基準額」と言いますが、要するに「介護保険で使える月々のお財布の上限」のことです。

「ヘルパーさんを増やしたいけど、限度額ギリギリだから無理かな…」
「デイサービスに行くと、他のサービスが使えなくなるかも…」

そんなふうに、電卓を叩きながら不安になっているご家族も多いのではないでしょうか。
でも、安心してください。実は介護保険のサービスの中には、この「月々の上限額にカウントされない(枠外の)」特別なサービスが存在します。

今回は、ケアプランを圧迫せずに使える「別腹」サービスについて、その仕組みと活用メリットをわかりやすく解説します。

目次

毎月の「利用枠」とパズルの関係

まず、基本のルールをおさらいしましょう。
介護保険では、要介護度ごとに「ひと月に使える単位数(金額)」が決まっています。

  • 訪問介護(ホームヘルパー)
  • 通所介護(デイサービス)
  • 福祉用具のレンタル(ベッドや車椅子)

私たちがよく使うこれらの基本的なサービスは、すべてこの「利用枠」の中でやりくりする必要があります。
ケアマネジャーは、限られた枠の中にこれらのサービスをパズルのように組み合わせ、「今月はあと少し余裕があるから、お風呂の介助を一回増やせますよ」といった調整を行っています。
もし枠を超えてしまうと、その分は全額自費(10割負担)になってしまうため、非常にシビアな管理が求められます。

もし限度額内で使っていても、自己負担額が重いと感じたら。月々の上限を超えた分が戻ってくる、もう一つのセーフティネット『高額介護サービス費』についても知っておきましょう。

ケアプランを圧迫しない「嬉しい例外」

ところが、この厳しい枠組みの中に、特例として「利用しても利用枠(限度額)が減らない」サービスがあります。

それが、「居宅療養管理指導」と呼ばれるサービスです。

漢字ばかりで難しく見えますが、簡単に言うと「医師、歯科医師、薬剤師、管理栄養士などが自宅に来て、療養上の管理や指導をしてくれること」を指します。

なぜ「別枠」扱いなの?

ヘルパーさんやデイサービスには、「他の事業所で代用する」などの選択肢がありますが、医療的な指導は「医師や薬剤師にしかできない」専門的な行為であり、代わりがききません。

「今月は限度額がいっぱいだから、医師の指導を受けるのをやめよう」となっては、利用者の命や健康に関わってしまいます。
そのため、こうした医療系の専門的な管理サービスは、他の介護サービスの利用枠とは切り離して(別枠で)使えるルールになっているのです。

特に『別腹』として限度額にカウントされないのは、医師や薬剤師による『療養上の管理・指導(居宅療養管理指導)』です。その専門的なケアが必要となる具体例として、命に関わる『唾液不足』のリスクについても確認しておきましょう。

施設に入ると計算ルールが変わる

ちなみに、ご自宅ではなく「特別養護老人ホーム(特養)」などの施設に入所した場合も、ご自宅用の限度額ルールは適用されなくなります。

施設サービスは、介護も住まいも食事もすべてセットになった「包括的なサービス」として扱われるため、ご自宅のように「ヘルパー代」「デイサービス代」と一つひとつ積み上げる計算をしなくなるからです。
「施設に入ったら、今までの限度額の心配はなくなる(別の計算になる)」と覚えておいてください。

制度を賢く使うための3つのアクション

「枠内」と「枠外」があることを知った上で、私たちはどう動けばよいのでしょうか。具体的な活用法をご提案します。

1. 薬の管理が不安なら「薬剤師訪問」を相談する

「親が薬を飲み忘れてしまう」「管理ができなくなってきた」という悩みはありませんか?
そんな時は、ケアマネジャーや主治医に「薬剤師さんに家に来てもらうことはできませんか?」と相談してみましょう。
これは「別枠(居宅療養管理指導)」扱いになることが多いため、今のヘルパーやデイサービスの回数を減らさずに、薬のプロのサポートを追加できる可能性があります。

2. 「栄養・食事」の悩みもプロに頼る

「最近、親が痩せてきた」「飲み込みが悪くなった」という場合、管理栄養士による訪問指導も対象になることがあります。
これもケアプランの上限を圧迫せずに利用できる重要なサポートの一つです。

3. ケアマネジャーに「枠外」の可能性を聞いてみる

限度額ギリギリで困っている時、「何か『枠外』で使える社会資源やサービスはありませんか?」と聞いてみるのも一つの手です。
介護保険外のサービスも含め、プロの視点でアイデアを出してくれるかもしれません。

まとめ

介護保険の限度額は、厳格なルールのように見えて、実は利用者の健康を守るための柔軟な「抜け道(別枠)」が用意されています。

「上限だからこれ以上は無理」と諦める前に、「医療系のサポートなら追加できるかもしれない」という視点を持ってみてください。
仕組みを少し知っているだけで、親御さんの生活を支える選択肢はぐっと広がります。

限度額を超えてまで『家族でやらなきゃ』と頑張りすぎてはいませんか?介護保険は、家族を孤独から解放し、社会全体で支えるために作られた制度です。罪悪感なくサービスを使うための、国の理念について知っておきましょう。

ケアマネ試験解説

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