親の介護用品、「借りる」か「買う」か?損しないための判断基準と衛生のルール

親の介護が始まると、手すりやベッド、車椅子など、今まで家に無かった様々な道具が必要になります。
「これ全部揃えたら、いくらかかるんだろう…」
と不安になるかもしれませんが、介護保険を使えば、費用の1割〜3割の負担で利用することができます。

ただし、ここで一つ注意点があります。
介護保険の対象となる福祉用具には、月々定額で借りる「レンタル(貸与)」と、一度お金を払って購入し、後からお金が戻ってくる「購入(特定福祉用具販売)」の2種類があるのです。

「ずっと使うなら買ったほうが安い?」
「いや、とりあえずレンタルで様子見?」

迷ってしまうこの二択ですが、実は「どちらにするか」は自分で選べるものではなく、品目ごとにルールが決まっています。
今回は、その判断基準となる「衛生の法則」と、賢い利用法についてお話しします。

目次

福祉用具は「家族の腰」も守ってくれる

まず大前提として、福祉用具を使うことに罪悪感を持つ必要はありません。
「親を機械扱いしたくない」「手で介護するのが愛情」と考える方もいらっしゃいますが、福祉用具には2つの大きな目的があります。

  1. 親御さんの自立を助ける: 自分で歩けたり、起き上がれたりする喜びを守る。
  2. ご家族の負担を減らす: 抱え上げによる腰痛や、共倒れを防ぐ。

便利な道具を使うことは、介護する側・される側双方の笑顔を守るための賢い選択なのです。

「レンタル」と「購入」の分かれ道は“肌感覚”

では、どの道具がレンタルで、どれが購入になるのでしょうか。
その境界線は、非常にシンプルです。

「他人が使ったものを、再利用することに抵抗があるかどうか(衛生面)」

これが最大の判断基準です。

1. お風呂とトイレは「購入」一択

例えば、入浴用の椅子(シャワーチェア)や、ポータブルトイレ。
これらは直接肌に触れますし、水や排泄物で汚れる場所で使います。いくら消毒したとはいえ、「前の人が裸で座った椅子」を使うのは、心理的にも衛生的にも抵抗がありますよね。

そのため、「入浴」と「排泄」に関わる道具は、原則として「購入」の対象になります。
これらは一旦全額を支払って購入し、申請すると後から費用の9割〜7割が戻ってくる仕組み(償還払い)になっています。

2. 高価な機械やベッドは「レンタル」がお得

一方で、介護ベッド、車椅子、床ずれ防止用のエアマットなどは、非常に高価であり、定期的なメンテナンスや消毒が必要です。
また、体の状態が変われば「もっと機能が高いもの」に変える必要も出てきます。

こうした「高価で、管理が必要で、体の変化に合わせて交換するもの」は「レンタル」の対象です。
消毒済みの清潔な製品が届き、合わなくなれば交換してもらえるのがレンタルの強みです。

迷いやすい「ボード」や「簡易浴槽」の罠

基本は「肌に触れる水回りは購入」ですが、中には判断に迷うアイテムもあります。

ベッドから移る時の「スライディングボード」

ベッドから車椅子へ乗り移る際に、お尻の下に敷いて滑らせる「スライディングボード」という板があります。
プラスチック製で洗えそうですが、これは「ベッドの付属品」という扱いになるため、実は「レンタル」の対象です。

部屋で使う「簡易浴槽」

空気を入れて膨らませるタイプなど、部屋の中で使える「簡易浴槽」もあります。
「たまにしか使わないし、機械っぽいからレンタル?」と思いがちですが、用途はあくまで「入浴」です。肌が触れてお湯を使うため、こちらは「購入」の対象になります。

まとめ:カタログを見る前にケアマネジャーへ

「これは借りられるの? 買うの?」と迷ったら、自分でカタログを見て悩む前に、担当のケアマネジャーに相談しましょう。

ケアマネジャーは、福祉用具専門相談員と連携して、
「お父様の今の状態なら、この機能がついたベッドをレンタルしましょう」
「お風呂の椅子は、将来を見越してこのタイプを購入しましょう」
と、最適なプランを提案してくれます。

道具一つで、介護の景色はガラリと変わります。
制度を賢く利用して、親御さんもご家族も、少しでも楽に過ごせる環境を整えていきましょう。

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