「最近、親がトイレに間に合わず下着を汚してしまう」
「洗濯が大変だし、本人も辛そうだから、そろそろオムツに切り替えたほうがいいのかな…」
介護生活の中で、排泄のトラブルは家族にとって最もデリケートで、頭を悩ませる問題の一つです。
失敗して落ち込んでいる親御さんを見ると、「オムツを履けば安心だよ」と勧めたくなるのが親心(子心)かもしれません。
しかし、もしご本人が「オムツは嫌だ」「まだ自分でトイレに行きたい」と願っているなら、その提案は少し早すぎるかもしれません。
今回は、排泄での失敗が続き、自信を失いかけている方に対して、家族や周囲がどうサポートすればよいのか。
「管理」するのではなく、「自立」を支えるためのプロのアプローチについてお話しします。
「オムツは嫌だ」は、生きる意欲の表れ
今回の事例に登場するBさん(42歳女性・知的障害あり)は、トイレでの失敗を他の利用者にからかわれ、深く傷ついていました。
心配したお母さんは「紙オムツを使いなさい」と勧めましたが、Bさんは頑なに拒否しました。
これは単なる強がりではありません。
「オムツには頼りたくない。人間として、当たり前にトイレで用を足したい」
という、Bさんの切実な願いであり、尊厳そのものなのです。
ここで家族が「失敗したら大変だから」とオムツを強制したり、「私が全部やってあげるから(全介助)」と手を出したりしてしまうと、ご本人は「自分はもうダメなんだ」と諦めてしまいます。
失敗は恥ずかしいことですが、その恥ずかしさこそが「次は成功させたい」という意欲の源でもあるのです。
解決の鍵は「一緒に振り返る」こと
では、失敗を減らすために具体的に何をすればよいのでしょうか?
介護のプロが選ぶ正解は、「定期的に、手順を理解できているか一緒に確認する」ことです。
「なぜ失敗したのか?」の原因は人それぞれです。
- 尿意を感じてからトイレに行くのが遅かったのか?
- ズボンのボタンを外すのに手間取ったのか?
- 拭く時や立ち上がる時に服を汚してしまったのか?
「頑張って」と精神論で励ますのではなく、「どこでつまずいたのか」を一緒に確認し、具体的な解決策を見つけることが大切です。
手順は合っているのに、なぜかうまくいかない…。そんな時は『座る姿勢』を見直すだけで解決するかもしれません。排泄を成功させる『ロダンのポーズ』とは?

成功率を上げる「3つの見直しポイント」
手順を確認する中で、失敗の原因が見えてきたら、環境や道具を少し変えるだけで解決することがあります。
1. 「脱ぎ着しやすい服」に変える
ボタンやファスナーが複雑なズボンは、焦っている時には大きな壁になります。
ウエストが総ゴムのズボンや、ゆとりのある下着に変えるだけで、「間に合った!」という成功体験が増えるかもしれません。
2. 「声かけのタイミング」を見直す
ご本人が尿意を訴えるのを待つのではなく、「ご飯の前に行っておこうか」「出かける前に行こうか」と、生活の区切りで声をかけてみましょう。
定期的にトイレに行く習慣がつけば、急な尿意によるパニックを防げます。
3. トイレの中の「手すり」と「スペース」
狭いトイレの中で、服を下ろして、座って、拭いて、立って、服を上げる。
これは高齢者にとってかなりの重労働です。
立ち座りを支える手すりがあるか、動作を妨げる物が置かれていないか、トイレ環境を見直してみましょう。
トイレの立ち座りを楽にするには、手すりの『向き』が重要です。お風呂場の話ですが、トイレの手すり設置にも共通する『縦と横の役割』について解説しています。

まとめ
トイレでの失敗は、誰にとってもショックな出来事です。
でも、そこで「もうダメだ」とレッテルを貼るのではなく、「どうすればできるかな?」と隣に並んで考えてあげてください。
「今日は失敗しなかったね!」
その喜びを共有することが、親御さんの自信と尊厳を守る一番の薬になります。
いろいろ試したけれど、やっぱりおむつが必要かもしれない…。そんな時、親御さんのプライドを傷つけずにどう提案すればいいのでしょうか? 拒否されないための『伝え方』のヒントです。

「手順を一緒に確認する」。これが自立支援の第一歩です。
失敗したからといって、すぐに「オムツ」や「全介助」にするのは安易な対応です。なぜなら、本人の「自分でやりたい」という可能性を奪ってしまうからです。
プロはどう判断し、どう動くのか。実際の試験問題で、その視点を確認してみましょう。
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