介護は「個人戦」ではありません。家族を救う最強の布陣「チームアプローチ」の考え方

「親のことは、家族である私が一番よく分かっている」
「だから、私が全部なんとかしなくちゃ」

責任感の強い方ほど、介護を「自分ひとりの戦い」だと思い込んでしまいがちです。
食事の世話、病院の付き添い、下の世話、そして日々の話し相手……。これら全てを一人で背負い込めば、どんなにタフな人でもいつか心と体が折れてしまいます。

でも、安心してください。介護の世界には、あなたを一人にさせないための「チームアプローチ」という大原則があります。

今回は、様々な分野のプロフェッショナルが連携してあなたと親御さんを支える「チームケア」の仕組みと、そこで家族が果たすべき本当の役割についてお話しします。

目次

親御さん一人を、これだけの「プロ」が囲んでいる

「チームアプローチ」とは、一人の利用者さん(親御さん)を支えるために、医師、看護師、介護福祉士、ケアマネジャー、リハビリ専門職など、異なる強みを持った専門家たちがチームを組んで協力することです。

イメージしてみてください。
親御さんが「司令塔」だとしたら、周りにはこんなに頼もしいメンバーが控えています。

  • ケアマネジャー(作戦参謀): どんなサービスが必要か計画を立てる。
  • 医師・看護師(衛生兵): 病気を治療し、体調を管理する。
  • ヘルパー・介護福祉士(前衛): 日々の生活を直接サポートする。
  • 理学療法士など(トレーナー): 体の機能を維持・回復させる。

これだけのプロが、「親御さんがその人らしく生きる」という共通のゴール(勝利)に向かって、スクラムを組んでいるのです。
あなたは一人で戦っているのではなく、この「最強チームの一員」なのです。

チームの要となる『作戦参謀』のケアマネジャー。具体的にどんな仕事をしてくれて、どう付き合えば良いチームが作れるのでしょうか?

家族の役割は「監督」ではなく「マネージャー」

「プロにお任せするなら、家族は何もしなくていいの?」
もちろん、そんなことはありません。家族には、他の専門職には絶対にできない重要な役割があります。

それは、「親御さんの『本音』や『普段の様子』をチームに伝えること(情報共有)」です。

プロたちは専門知識を持っていますが、親御さんの「昔の趣味」や「好き嫌い」、「家でのリラックスした表情」までは知りません。
「母は昔、編み物が得意だったんです」
「最近、夜になると寂しそうにしています」

そんな家族だからこそ知っている情報をチームに共有することで、ケアの質は劇的に上がります。
全部自分でやる必要はありません。あなたはチームの「マネージャー」として、プロたちが動きやすいように情報を渡してあげるだけでいいのです。

良いチームを作るための「魔法のツール」

チームの連携をスムーズにし、親御さんを守るために、こんなツールを活用してみましょう。

1. チーム全員が見る「連絡ノート」

ヘルパーさんや訪問看護師さんが来た時に書く「介護記録(連絡ノート)」。
これをただの業務報告と思わず、家族からのメッセージ欄として活用しましょう。
「昨日はよく眠れていました」「今日は機嫌が良いです」と一言書くだけで、次に訪問するスタッフへの貴重な引き継ぎになります。

2. 本人の希望を可視化する「エンディングノート」

チームの目標(ゴール)を決めるのは、あくまで「本人」です。
「延命治療はどうしたいか」「最期はどこで過ごしたいか」。
元気なうちに「エンディングノート」に希望を書いておけば、判断に迷った時、チーム全員が「ご本人の希望はこうだから」と迷わずに進むことができます。

3. 顔を合わせる「サービス担当者会議」

ケアプランを作る時や更新する時に開かれる「サービス担当者会議」
関係者が一堂に会するこの場は、チームの結束を固めるチャンスです。
遠慮せずに不安なことや希望を伝えましょう。「みんなで支えてくれているんだ」と実感できるだけで、介護の孤独感は消え去ります。

チームが集まる『サービス担当者会議』には、ヘルパーのリーダーである『サ責』も参加します。現場のキーマンである彼らを味方につけるコツはこちらです。

まとめ

介護において、「助けて」と言うことは恥ずかしいことではありません。
それは「チームのみんな、出番ですよ!」という合図なのです。

一人で抱え込まず、周りのプロたちをもっと頼ってください。
それが、親御さんにとっても、あなたにとっても、一番幸せな介護の形になるはずです。

『プロに任せていいと言われても、やっぱり申し訳ない』と感じてしまう方へ。人に頼ることは、甘えではなく法律で認められた『権利』なのです。

「チームアプローチ」。この言葉、介護の現場では常識です。
一人の利用者を多職種で支えること。これは現代の介護において最も重要な概念であり、介護福祉士国家試験でも必ずと言っていいほど出題されるテーマです。
「どんな職種が関わるの?」と気になったあなた。ぜひ実際の試験問題で、チーム連携の基本を確認してみてください。
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