実家に帰省した時や、久しぶりに親御さんと食事をした時、こんな変化を感じたことはありませんか?
「昔は早食いだったのに、最近いつまでも食べているな」
「食事の途中で疲れて、ため息をつくことが増えた」
「話しかけても、声がかすれていて聞き取りづらい」
「年をとれば食べるのも遅くなるし、声も枯れるだろう」と、そのまま見過ごしてしまいがちですが、実はこれらの変化は、親御さんの体が発している「危険なサイン」かもしれないのです。
今回は、見逃してはいけない「喉の不調」と、それが引き起こすリスク、そして家族ができる対策についてお話しします。
その「食べたくない」は、わがままではありません
高齢になると、口の中や喉の筋肉が衰え、食べ物を飲み込む力(嚥下機能)が低下してきます。
また、パーキンソン病などの神経の病気が原因で、喉の動きがスムーズにいかなくなることもあります。
もし親御さんが、
- 食事にひどく時間がかかるようになった
- 「もういらない」と食事を嫌がるようになった
- 普段から声がかすれている(嗄声)
といった様子を見せたら、それは「飲み込みにくさ」を感じて、食事自体が苦痛になっている可能性があります。
決してわがままを言っているわけではないのです。
喉の筋力だけでなく、実は「脳の指令」が遅れることも飲み込みにくさの原因です。息を止めたり飲み込んだりする「命の司令塔」の働きについて、詳しくはこちらをご覧ください。

「かすれ声」は肺炎の予備軍?
特に注意したいのが「かすれ声」です。
声がかすれるということは、声帯(喉の奥にある声を出すためのひだ)が、ピタッと閉じなくなっている証拠です。
声帯は、声を出すときだけでなく、食べ物を飲み込むときにもしっかり閉じて、気管に食べ物が入らないように「蓋」をする役割をしています。
この蓋がうまく閉まらないと、食べ物や唾液が誤って気管に入りやすくなります。これを「誤嚥(ごえん)」と言います。
誤嚥は、高齢者の命を奪う「誤嚥性肺炎」の直接的な原因になります。
「むせる」ことがなくても、静かに誤嚥していることもあるので、かすれ声は重要なサインなのです。
喉を守るために、今すぐできる工夫
「もしかして、飲み込みにくくなっているのかも?」と感じたら、肺炎を予防するために、生活の中でできる工夫を始めましょう。
1. 食事の形態を工夫する(とろみ・刻み)
サラサラした水やお茶は、勢いよく喉に流れ込むため、最もむせやすい飲み物です。
市販の「とろみ調整食品」を使って、飲み物に薄くとろみをつけるだけで、飲み込むタイミングが掴みやすくなり、誤嚥のリスクがぐっと減ります。
また、食材を細かく刻んだり、柔らかく煮込んだりする工夫も必要です。最近は、見た目は普通食なのにスプーンで潰せる「介護食(ユニバーサルデザインフード)」もスーパーで手軽に買えるようになっています。
2. 食べる姿勢を見直す
猫背や、リクライニングしたままの姿勢での食事は、食べ物が気管に入りやすくなります。
食事の時は、できるだけ背筋を伸ばし、顎を少し引いた姿勢を保てるように、椅子の高さや背もたれを調整してあげましょう。
3. プロの力を借りる(訪問歯科・リハビリ)
「どの程度の食事なら大丈夫なのか分からない」という場合は、専門家に相談しましょう。
通院が難しくても、自宅に来てくれる「訪問歯科診療」や、言語聴覚士による「訪問リハビリ」を利用すれば、専門的な視点で飲み込みのチェックや、喉のトレーニングを受けることができます。
お住まいの地域の地域包括支援センターやケアマネジャーに相談してみてください。
飲み込みにくくなると、食事量が減って「低栄養」になるリスクも高まります。誤嚥を防ぎながら栄養もしっかり摂るための、スプーン選びやとろみのコツはこちらが参考になります。

まとめ
「食べるのが遅い」「声がかすれる」といった小さな変化は、体が発するSOSです。
「ゆっくりでいいよ」と声をかけつつ、食事の内容や環境を少し見直してみる。
そんな家族の気づきと配慮が、親御さんを肺炎の危機から守る大きな力になります。
もし飲み込みに失敗して気管に入ってしまっても、強く咳をして「吐き出す力」があれば肺炎は防げます。命を守るための「痰出し」の介助方法についても知っておきませんか?

「声がかすれる=飲み込み注意」。この気づき、プロの視点です。
一見関係なさそうな「声の変化」から、命に関わる「誤嚥(ごえん)」のリスクを見抜く。これは介護のプロである介護福祉士の試験でも問われる、非常に重要な観察スキルです。
「私の勘、当たってた!」と自信を持てたあなた。ぜひ実際の試験問題で、その「気づく力」を試してみてください。
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