毎朝の「よいしょ!」がなくなる?片麻痺の親がスッと起きられる、プロ直伝「肘」の使い方

「朝、ベッドから親を起こすのが一番の重労働」
「首の後ろに腕を回して、全力で引き上げているから腰が痛い」

在宅介護をしているご家族から、そんな悲鳴のような相談をよく受けます。
特に、脳梗塞などで片側に麻痺がある親御さんを起こすのは、コツを知らないと、お米の袋を持ち上げるよりも大変な作業です。

もしあなたが、汗だくになって親御さんを「引き上げている」なら、今すぐそのやり方を変えましょう。
それはあなたの腰を壊すだけでなく、親御さんの首や肩を痛める原因にもなってしまいます。

今回は、力をほとんど使わずに、まるで魔法のようにスッと起き上がれる「テコの原理」を使った介助テクニックをご紹介します。

目次

「引き上げる」のではなく「回転させる」

まず、やってはいけない一番のNG例は、「仰向けのまま首や背中を持って、正面から起こそうとすること」です。
これは、相手の体重が全てあなたの腰にかかる、最も危険な方法です。

プロは、体を「起こす」のではなく、「回転」させます。

  1. まず、麻痺のない元気な側(健側)を下にして、横向きに寝てもらいます。
  2. ベッドの端に足を下ろします(重りとして利用)。
  3. そして、ここからが重要ポイントです。

魔法の支点は「元気な方の肘」

横向きになった親御さんの、下になっている(元気な方の)「肘(ひじ)」に注目してください。
ここが、体を起こすための最強のスイッチになります。

親御さんにこう声をかけてください。
「下の肘で、ベッドをグイッと押してみて」

あなたが体を持ち上げる必要はありません。
親御さんが肘でベッドを押す力と、ベッドから下ろした足の重み。この2つが連動すると、テコの原理(シーソーのような動き)が働き、上半身が自然と「ひょいっ」と持ち上がります。

あなたは、親御さんの骨盤や肩を軽く支えて、回転の動きをガイドしてあげるだけでいいのです。

この方法が「一石三鳥」な理由

この「肘を使う」介助法には、3つの大きなメリットがあります。

  1. 介護者の腰が守られる: 重さを持ち上げないので、腰痛リスクが激減します。
  2. 利用者が苦しくない: 首や腕を引っ張られないので、痛みがありません。
  3. リハビリになる: 「自分で肘を使って起きた」という運動になるため、残された機能(残存機能)の維持・向上につながります。

まとめ

介護は「してあげる」ことだけが優しさではありません。
「ここを押してごらん」とヒントを出し、親御さんの持っている力を引き出してあげる。

そうすることで、あなたは楽になり、親御さんは自信を取り戻す。
明日からは「よいしょ!」と気合を入れる代わりに、「肘で押して!」と声をかけてみてください。

「肘を支点にする」。このコツを知っていれば、腰痛とはサヨナラです。
力任せに抱えるのではなく、利用者の身体機能(テコの原理)を活用すること。これはボディメカニクスの基本であり、介護福祉士国家試験でも正解となる重要な技術です。
「プロはここを見ていたのか!」と納得したあなた。ぜひ実際の試験問題で、その理論を確認してみてください。
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