「ようやく特養(特別養護老人ホーム)の空きが出たけれど、ニュースで見るような虐待や身体拘束がないか心配」
「医療的なケアが必要になったら、退所させられるんじゃないかしら」
待機期間を経てやっと入所が決まっても、大切な親御さんを預ける場所として本当に安全なのか、不安は尽きないものです。
実は、特養は「終の棲家(ついのすみか)」としての役割を果たすために、国によって非常に厳しい運営ルールが定められています。
今回は、私たちが安心して親を預けるために知っておきたい「身体拘束」や「医療体制」に関する特養の決まりごとについてお話しします。
「身体拘束」は原則禁止。減らすための会議が義務
ご家族が一番心配されるのが、「転倒防止のためにベッドに縛り付けられるのではないか」といった身体拘束のことでしょう。
介護保険制度において、身体拘束は原則として「禁止」されています。
「切迫性」「非代替性」「一時性」という3つの要件を満たす緊急やむを得ない場合を除き、勝手に拘束することは許されません。
さらに特養には、「身体拘束をしないための対策を検討する委員会」を3ヶ月に1回以上開催することが義務付けられています。
「どうすれば縛らずに安全を守れるか?」を、施設全体で定期的に話し合っているのです。
見学の際に「身体拘束ゼロに向けた取り組みはされていますか?」と聞いてみるのも、良い施設を見極める一つのポイントになります。
看護師さんは「常勤」で必ず1人以上いる
「夜中に急変したらどうしよう」
「日々の健康管理は誰がしてくれるの?」
特養は「生活の場」ですが、高齢者の命を守る場所でもあります。
そのため、入所者の人数に応じた看護職員(看護師・准看護師)の配置が必要であり、そのうち「1人以上は必ず常勤でなければならない」というルールがあります。
パートタイムの看護師さんだけが入れ替わり立ち替わり来るのではなく、施設のことを熟知した常勤の看護師さんが腰を据えて働いている。これは、ご家族にとっても大きな安心材料と言えるでしょう。
ケアプランは「作りっぱなし」にされない
入所中も、ケアマネジャーが作成する「施設サービス計画書(ケアプラン)」に基づいて生活サポートが行われます。
「計画書を作ったら、あとは現場任せ」ということはありません。
特養のケアマネジャー(計画担当介護支援専門員)には、定期的にプランの実施状況を確認(モニタリング)し、記録に残すことが義務付けられています。
「最近、食事が進まないようだ」「リハビリの効果が出てきた」
こうした変化を定期的にチェックし、プランを見直してくれる仕組みがあるからこそ、状態が変わっても適切なケアを受け続けることができるのです。ちなみに、このケアマネジャーも「常勤」であることが必須とされています。
「第三者評価」を受けている施設は狙い目?
最後に、良い施設を探すためのちょっとしたヒントをお伝えします。
特養には、施設のサービスの質を外部の機関にチェックしてもらう「第三者評価」という仕組みがあります。
実はこれ、受けることは「義務」ではなく「努力義務(できるだけ受けてね)」となっています。
つまり、義務ではないにも関わらず、自ら進んで第三者評価を受けて結果を公表している施設は、「自分たちのサービスに自信がある」「客観的な意見を取り入れて良くしていこう」という意識が高い施設である可能性が高いと言えます。
まとめ:見学時に「安心の根拠」を確認しよう
特養は、厳格なルールの上に成り立っている安心の住まいです。
- 身体拘束廃止への取り組み
- 常勤看護師の存在
- ケアプランの定期的な見直し
これらが守られているか、施設見学や入所面談の際にさりげなく確認してみてください。
「ルールだからやっています」ではなく、「入所者様のためにこう工夫しています」と答えてくれる施設なら、きっと親御さんも穏やかに過ごせるはずです。
