建物は立派でも「中身」は大丈夫?施設選びで失敗しないための「運営母体」の見極め方

「そろそろ親の施設を探そうか」
そう思ってパンフレットを集めると、どうしても目が行くのは「部屋の広さ」「食事の豪華さ」「料金の安さ」ではないでしょうか。

もちろん、それらも大切です。しかし、入居してから「こんなはずじゃなかった」と後悔する原因の多くは、実は目に見える設備ではなく、目に見えない「運営体制」にあります。

「経営が悪化してサービスが悪くなった」
「ある日突然、事業からの撤退を告げられた」

そんなトラブルに巻き込まれないために、今回は少し視点を変えて、施設を運営している「法人(会社)」の種類と、その安全性の見抜き方についてお話しします。

目次

「社会福祉法人」と「株式会社」の違い

介護施設の運営母体には、大きく分けて「社会福祉法人」と「株式会社(民間企業)」があります。それぞれの特徴を知っておくことが、安心への第一歩です。

1. 社会福祉法人(安定・公益重視)

特別養護老人ホーム(特養)などを主に運営しています。
「利益」よりも「福祉」を目的としているため、行政からの補助金や税制優遇を受けており、経営が安定している傾向があります。また、法律で厳しく規制されているため、簡単に事業を投げ出して解散することができません。

2. 株式会社(サービス・自由度重視)

有料老人ホームなどを運営しています。
競争原理が働くため、ホテル並みの接客やユニークなレクリエーションなど、サービスの質が高いのが魅力です。一方で、営利企業であるため、経営不振になれば撤退や倒産のリスクもゼロではありません。

「評議員会」という名の監視役

特に「社会福祉法人」がなぜ安心だと言われるのか。その理由の一つに、「評議員会」という組織の存在があります。

これは、いわば「外部の目」です。
社会福祉法人は、理事長などの経営陣だけで勝手に物事を決めることができません。外部の有識者などで構成される「評議員会」を必ず設置し、重要事項の決定や、役員の選任・解任についてチェックを受ける義務があるのです。

「ワンマン経営者が勝手なことをして施設が傾く」といったリスクを防ぐために、法律でガチガチに守られている。それが社会福祉法人の強みと言えます。

安心して親を預けるためのチェックツール

では、私たちはどうやって「しっかりした運営母体」を見分ければよいのでしょうか。プロも使っている無料のツールや方法をご紹介します。

1. 施設の「財務状況」が見られるサイト『WAM NET』

「社会福祉法人の財務諸表等電子開示システム(WAM NET)」という公的なサイトがあります。
少しマニアックですが、気になる特養などの法人名を入れると、現況報告書や計算書類を誰でも見ることができます。「赤字が続いていないか」「借金が多すぎないか」など、数字の裏付けを確認したい慎重派の方におすすめです。

2. 介護施設検索サイトの「運営法人情報」欄

大手の「老人ホーム検索ポータルサイト」を使う際は、写真だけでなく、ページの下の方にある「運営法人」の欄を必ずチェックしてください。
法人名をクリックすると、創業年数や運営している他の施設の数が分かります。「全国で〇〇箇所運営」といった実績のある法人なら、ノウハウが蓄積されており、トラブル時の対応力も高いと判断できます。

3. 重要事項説明書の「協力医療機関」

見学時にもらえる「重要事項説明書」も宝の山です。
特にチェックしたいのが、運営法人が提携している「協力医療機関」です。しっかりした法人は地域の信頼ある病院と連携していますが、体制が弱い法人は提携先が遠かったり曖昧だったりします。「夜中に熱が出たらどこの病院が診てくれますか?」と聞いてみるのも良いでしょう。

まとめ

施設選びは、親御さんの「終の棲家」選びであると同時に、パートナーとなる「事業者」選びでもあります。

「建物が綺麗だから」だけで即決せず、「この運営母体なら、これから10年、20年先も潰れずに守ってくれるかな?」という視点を一つ加えてみてください。その冷静さが、家族の安心な未来を作ります。

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記事の中で紹介した「評議員会」という監視役の存在。実はこれ、社会福祉法人のガバナンス(統治)に関わる非常に重要な知識として、国家試験にも頻出するテーマなんです。
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