デイも泊まりも同じ場所で。小規模多機能型居宅介護の賢い使い方

「デイサービスに行きたくない日は、ヘルパーさんに来てほしい」
「急な用事ができたとき、いつも通っている場所にそのまま泊まれたらいいのに」

親御さんの体調やご家族の都合に合わせて、柔軟に介護サービスを使いたいと思ったことはありませんか?
通常、デイサービス、ショートステイ、訪問介護はそれぞれ別の事業所と契約する必要があり、スタッフも顔ぶれもバラバラになりがちです。

「知らない人が家に来るのは不安」
「場所が変わると親が混乱してしまう」

そんな悩みを解決する切り札となるのが、「小規模多機能型居宅介護(しょうきぼたきのうがたきょたくかいご)」、通称「小多機(しょうたき)」です。

今回は、3つのサービスを自由に組み合わせて使えるこの便利な仕組みについて、メリットと注意点をわかりやすく解説します。

目次

「通い・泊まり・訪問」が1セットの定額制

小規模多機能型居宅介護の最大の特徴は、一つの事業所と契約するだけで、以下の3つのサービスを自由に組み合わせて使えることです。

  1. 通い(デイサービス機能): 食事や入浴、レクリエーションなどを楽しむ。
  2. 泊まり(ショートステイ機能): 「通い」の延長で、そのまま施設に宿泊する。
  3. 訪問(ヘルパー機能): 自宅にスタッフが来て、安否確認やケアを行う。

これらが月額定額制(食費や宿泊費は別途)で提供されます。
「今日は体調が悪いから、通うのをやめて訪問に来てもらおう」
「来客があるから、夕食まで食べてきてそのまま泊まらせてもらおう」
といった柔軟な使い方が、電話一本で相談できるのが大きな魅力です。

最大のメリットは「顔なじみ」の安心感

認知症の方や人見知りの方にとって、環境の変化は大きなストレスです。
デイサービスでは楽しそうにしていても、ショートステイで知らない施設に行くと不穏になってしまう……というケースは少なくありません。

その点、小規模多機能は「どのサービスを使っても、対応してくれるのは同じ事業所のスタッフ」です。

昼間デイサービスで一緒に笑い合ったスタッフが、夜のお泊まりも見守ってくれたり、自宅に訪問してくれたりします。
「知っている人がいる」という安心感は、親御さんの精神的な安定に大きくつながります。

ケアマネジャーも「専属」になる

通常、ケアプランを作るケアマネジャーは「居宅介護支援事業所」にいますが、小規模多機能を利用する場合は、「その事業所に所属しているケアマネジャー」に担当が変わります。

プランを作る人が現場のすぐ近くにいるため、
「昨夜あまり眠れていないようなので、今日はお昼寝の時間を増やしましょう」
といった、日々の細かい体調変化に合わせたプラン変更(臨機応変な対応)が非常にスムーズに行えます。

利用前に知っておきたい「浮気厳禁」のルール

とても便利なサービスですが、仕組み上、いくつかの制限があります。これを理解した上で検討することが大切です。

1. 他のデイサービス等は使えなくなる

小規模多機能は「セット契約」のようなものです。
そのため、ここに登録すると、他の事業所のデイサービスやショートステイ、訪問介護を併用することはできません。
「お風呂はあっちのデイサービスがいい」「リハビリはこっちがいい」といった「つまみ食い」はできないルールになっています(※訪問看護や福祉用具レンタルなどは併用可能です)。

現在お気に入りのデイサービスに通っている場合は、そこを辞めなければならないため、慎重な判断が必要です。

2. リハビリ専門職はいないことが多い

理学療法士などのリハビリ専門職の配置義務はないため、専門的なリハビリ機器が揃っているとは限りません。
生活の中でのリハビリ(家事や散歩など)が中心になりますので、「ガッツリ鍛えたい」という方には物足りないかもしれません。

まとめ:変化に弱い親御さんにこそおすすめ

小規模多機能型居宅介護は、以下のような方に特におすすめです。

  • 認知症があり、環境の変化に弱い方
  • 体調の波が激しく、予定が変わりやすい方
  • 家族の仕事が不規則で、柔軟な対応を求めたい方

「地域密着型サービス」ですので、お住まいの地域にある事業所しか利用できません。
もし興味があれば、近所に小規模多機能があるか、ケアマネジャーや地域包括支援センターに問い合わせてみてはいかがでしょうか。
「顔なじみの関係」で支える介護は、親御さんにとってもご家族にとっても、大きな安心感をもたらしてくれるはずです。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
目次