親御さんの介護が必要になったとき、最初に頼ることになるのが「ケアマネジャー(介護支援専門員)」です。
「これから毎月お世話になります」と挨拶をされたけれど、具体的にどんなことをしてくれる人なのか、いまいちピンとこない方も多いのではないでしょうか。
「介護のことは全部お任せしていいの?」
「毎月家に来るみたいだけど、何を話せばいいんだろう?」
そんな疑問をお持ちの方へ。
ケアマネジャーは、決して「何でも屋さん」ではありません。彼らには、利用者が自分らしく暮らすために定められた、プロとしての「仕事のサイクル」があります。
今回は、ケアマネジャーが普段どんな視点で動いているのか、その仕事の中身をわかりやすく解説します。
ケアマネジャーの仕事は「3つのステップ」で回っている
ケアマネジャーの主な役割は、親御さんの生活を支える計画書(ケアプラン)を作ることですが、ただ作って終わりではありません。
実は、以下の3つのステップを繰り返しながら、親御さんの生活を守っています。
1. じっくり話を聞いて分析する(アセスメント)
プランを作る前に、まずは「今、何に困っているのか」「何ができるのか」を詳しく調査します。これを専門用語で「アセスメント(課題分析)」と呼びます。
- 身体の状態はどうなっているか
- どんな薬を飲んでいるか
- 家族の負担はどれくらいか
これらを、国が決めた細かい項目に基づいて漏れなくチェックします。いわば、生活の健康診断のようなものです。この分析があるからこそ、的外れではない、その人にぴったりのプランが提案できるのです。
2. メニューを提示して、選んでもらう
分析が終わったら、「こういうサービスを使えば、こんな生活が送れますよ」という提案をします。
ここで大切なのは、「ケアマネジャーが勝手に決めない」ということです。
「お風呂が大変なら、デイサービスに行く方法と、訪問入浴に来てもらう方法があります。それぞれのメリットは……」
このように、公平な立場で情報を提供し、最終的には親御さんやご家族自身に選んでもらいます。これを「自己決定の支援」と言い、ケアマネジャーが最も大切にしている姿勢の一つです。
3. 月に1回、様子を見に行く(モニタリング)
サービスが始まったら、「はい、さようなら」ではありません。
少なくとも月に1回はご自宅を訪問し、「プラン通りにいっているか」「新たな困りごとはないか」を確認します。これを「モニタリング」と言います。
「デイサービスに行ってみたけど、合わなかった」
「最近、足腰がさらに弱ってきた気がする」
そんな変化をキャッチし、必要であればプランを修正します。この定期点検があるからこそ、安心してサービスを使い続けられるのです。
「できないこと」も知っておこう
一方で、ケアマネジャーには「管轄外」の仕事もあります。
例えば、
- 「地域のボランティアグループを立ち上げてほしい」
- 「町内会のような、地域の大きな会議を主催してほしい」
こうした「地域全体」に関わる活動作りや会議の運営は、個別のケアプランを作るケアマネジャー(居宅介護支援事業所)ではなく、「地域包括支援センター」や役所が担う役割になります。
ケアマネジャーはあくまで、「目の前の利用者さん個人」を支えるスペシャリストです。
役割分担があることを知っておくと、相談もしやすくなるはずです。
月に1回の訪問を「有意義な時間」にするために
ケアマネジャーが毎月訪問してくるのは、単なる世間話のためではありません。先ほどお伝えした「モニタリング(定期点検)」という重要な業務なのです。
この時間を有効に使うために、私たち家族ができることがあります。
- 普段の様子をメモしておく: 「ご飯を残すようになった」「夜中に起きているようだ」など、気になった変化をメモしておき、訪問時に伝えましょう。
- 「こうしたい」を伝える: 遠慮して「お任せします」と言うよりも、「本当はもっと外出させたい」「家でお風呂に入れたい」といった希望を伝える方が、ケアマネジャーも提案がしやすくなります。
ケアマネジャーは、親御さんの生活を支える伴走者です。
「全部やってくれる人」ではなく、「一緒に考えてくれるパートナー」として、月に一度の面談を大切に活用していきましょう。
