定年退職をして会社に行かなくなった翌日。あるいは、子供たちが独立して家を出て行った後の静まり返ったリビング。
ふとした瞬間に、「あれ、今の私って何なんだろう？」という強烈な寂しさや不安に襲われたことはありませんか？
現役時代は「〇〇会社の部長」「〇〇ちゃんのお母さん」という明確な役割がありました。しかし、それらの肩書きがなくなった途端、まるで自分が透明人間になったかのような心もとなさを感じる……。
実はこれ、心理学の言葉で言うと「アイデンティティ（自己同一性）の揺らぎ」と呼ばれる状態です。「自分探し」は若者だけの特権ではありません。人生の第2ステージに入った高齢期こそ、「本当の自分」を見つけ直す大切な時期なのです。
今回は、役割を終えた後の喪失感と、そこから新しい「自分らしさ」を見つけるためのヒントをお届けします。
「自分は何者か？」は一生続く問いかけ
「アイデンティティ」という言葉、なんとなく聞いたことがあるかもしれません。
「自分はこういう人間だ」「社会の中でこういう役割がある」という、自分を支える確信のようなものです。
一般的には思春期や青年期の課題とされていますが、実は高齢期にも大きな危機が訪れます。
仕事、子育て、配偶者……。自分を支えていた柱が変化したり失われたりすることで、「自分は何のために生きているのか」が分からなくなってしまうのです。これを「定年うつ」や「空の巣症候群」と呼ぶこともあります。
でも、安心してください。これはあなたが弱いからではなく、人生のステージが変わる時に誰もが通る「心の衣替え」の期間なのです。
過去の栄光ではなく「今の好き」に目を向ける
では、どうすれば失われたアイデンティティを埋め、心を安定させることができるのでしょうか。
ポイントは、「過去の肩書き」ではなく「現在の感性」に目を向けることです。
「元部長」という鎧を脱いで、ただの一人の人間として何が好きか、何に心が動くかを見つめ直してみてください。
- 昔好きだった映画をもう一度観てみる
- 散歩中に見つけた花の写真を撮ってみる
- 孫のためではなく、自分のために料理を作ってみる
誰かの評価を得るためではなく、「自分が楽しいからやる」。その小さな積み重ねが、新しい「自分らしさ」を作っていきます。
新しい居場所とつながりを作るツール
家の中に閉じこもって一人で悩み続けるのは辛いものです。現代には、新しい「役割」や「つながり」を見つけるための便利なサービスがたくさんあります。これらを活用して、社会との接点をもう一度結び直してみませんか？
1. 趣味と仲間が見つかる「カルチャースクール・検索サイト」
「趣味なんて今さら」と思わず、近所の公民館やカルチャースクールの体験教室を覗いてみてください。
最近は、「大人のための習い事検索サイト」なども充実しています。将棋、陶芸、英会話、パソコン……。同じ興味を持つ仲間との出会いは、「先生」「生徒」あるいは「友人」という新しいアイデンティティをあなたにプレゼントしてくれます。
2. 経験を誰かのために「ボランティア・シルバー人材センター」
「誰かの役に立っている」という実感は、最強の自己肯定感になります。
地域の「ボランティア募集サイト」や「シルバー人材センター」に登録してみるのも一手です。現役時代のスキルを活かしたり、全く未経験の軽作業で体を動かしたり。報酬の多寡ではなく、「ありがとう」と言われる場所を持つことが心の安定剤になります。
3. 人生を棚卸しする「自分史作成サービス」
これまでの人生を振り返り、一冊の本やアルバムにまとめる「自分史」がブームです。
プロのライターが聞き書きをしてくれる作成サービスや、簡単に製本できるアプリもあります。過去を整理し、「いろいろあったけど、良い人生だったな」と肯定することは、これからの人生を前向きに生きるための強力なエネルギーになります。
まとめ
役割が変わることは、終わりではありません。それは、「〇〇さんの役」を演じるのをやめて、「あなた自身」に戻るためのスタートラインです。
「今の自分も、案外悪くないな」
そう思える瞬間を、焦らずゆっくりと探していきましょう。
「自分探し」は若者だけのものじゃありません。
「私は何者？」という問いかけは、心理学の専門用語で「アイデンティティ」と呼ばれ、国家試験にも出るほど人間の根本に関わるテーマです。
自分の心のモヤモヤに名前がつくと、少しスッキリするかもしれません。クイズ形式で、心の仕組みを学んでみませんか？
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