年金が少なくても大丈夫。生活保護と介護保険の「お金」の仕組み

「親の年金が少なくて、これからの介護費用が払えるか不安」
「もし生活保護を受けることになったら、デイサービスやヘルパーは使えなくなるの?」

長生きリスクという言葉があるように、老後のお金に関する悩みは切実です。
経済的な理由で必要な介護サービスを諦めなければならないとしたら、それはとても悲しいことです。

でも、安心してください。日本の社会保障制度は、経済的に困窮していても必要な介護を受けられるように設計されています。
今回は、意外と知られていない「生活保護」と「介護保険」の関係、そしてお金の負担がどうなるのかについて、わかりやすく解説します。

目次

生活保護を受けていても、介護サービスは使えます

結論から言うと、生活保護を受けていても、一般の方と同じように介護保険のサービスを利用することができます。

「生活保護を受けているから、質の低いサービスしか受けられない」といったことはありません。
ケアマネジャーに計画を作ってもらい、デイサービスに行ったり、ホームヘルパーに来てもらったりすることが可能です。

「介護保険」が先に適用されるルール

ここには一つだけ、「他法優先(たほうゆうせん)」というルールがあります。
これは、「介護保険などの他の制度が使える場合は、まずそちらを使ってください。それでも足りない部分を生活保護で補います」という決まりです。

つまり、介護保険証を持っている方(65歳以上の方など)は、まず介護保険を使ってサービスを受け、その残りの自己負担分を生活保護がカバーする形になります。

介護の「自己負担」は実質0円になる

介護サービスを利用すると、通常は費用の1割〜3割を窓口で支払う必要があります。
しかし、生活保護を受給している場合、この自己負担分は「介護扶助(かいごふじょ)」という仕組みで全額カバーされます。

ここでのポイントは、お金が支給されるのではなく、「現物給付(げんぶつきゅうふ)」であるという点です。

ご本人が現金を一度立て替える必要はありません。
「介護サービスという『現物』を無料で提供してもらえる」と考えれば分かりやすいでしょう。つまり、利用時の支払いは発生しません。

毎月の「介護保険料」はどう払う?

65歳以上の方には、介護サービスを使っても使わなくても、毎月の「介護保険料」を支払う義務があります。
「生活保護なのに保険料を払うの?」と不思議に思うかもしれません。

実は、この保険料分のお金は、生活保護費の中の「生活扶助」に上乗せして支給されます(介護保険料加算)。
国から支給された保護費の中から、介護保険料を納めるという形になります。

つまり、結果としてご本人の持ち出し(赤字)になることはないように設計されているのです。

お葬式の費用もサポートがある

少し先の心配事かもしれませんが、生活保護制度には「葬祭扶助(そうさいふじょ)」というものもあります。

万が一の時、火葬や埋葬に必要な最低限の費用が支給される仕組みです。
「お葬式代も残してあげられない」とご自身を責める必要はありません。最低限ではありますが、尊厳を持ってお見送りするための制度が整っています。

困ったら「福祉事務所」へ相談を

親御さんの経済状況が悪化し、生活が立ち行かなくなりそうな時は、一人で抱え込まずにお住まいの地域の「福祉事務所」(市役所内にあることが多いです)に相談してください。

生活保護の申請や決定を行うのは、家庭裁判所ではなく、この福祉事務所です。

「まだ早いかな」と思っても、相談することで利用できる他の制度が見つかることもあります。
お金の不安を解消して、安心して介護を受けられる環境を整えることは、決して恥ずかしいことではありません。

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