親御さんの介護保険を申請し、調査員による訪問調査が終わった後。
「あの調査結果は、どうやって『要介護1』や『要介護3』といった数字になるんだろう?」と不思議に思ったことはありませんか?
「調査員さんの主観で決まるの?」
「役所の人が会議で決めるの?」
結果が届くまでの間、きちんと審査されているのか不安になる方も多いことでしょう。
実は、要介護認定のプロセスは二段階に分かれており、その最初のステップは「コンピュータによる自動判定」で行われているのです。
今回は、意外と知られていない認定の裏側、「一次判定」の仕組みについて、わかりやすく解説します。
最初の判定は「コンピュータ」が行っている
調査員が自宅に来て、親御さんの身体の動きや認知症の症状などをチェックした調査票(全74項目)。
このデータは、まず市町村のコンピュータに入力されます。
そして、国が定めた全国共通のプログラムによって、「この状態なら、1日あたりこれくらいの介護の手間(時間)がかかるだろう」という推計値が弾き出されます。
これを「一次判定」と呼びます。
なぜコンピュータを使うのでしょうか? それは「公平性」を保つためです。
北海道に住んでいても、沖縄に住んでいても、同じ身体の状態であれば同じ結果が出るように、まずは人間の主観を排除した機械的な判定を行うのです。
「実際に介護している時間」では決まらない理由
ここで多くの方が誤解しやすい、重要なポイントがあります。
コンピュータが算出する時間は、あくまで「全国的な統計データに基づいた推計の時間」であり、「ご家族が実際に介護に費やしている時間」ではありません。
「うちは食事に1時間もかけて食べさせているのに、判定が軽すぎる!」
「夜中も起きて世話をしている苦労が反映されていない!」
そう感じるご家族の気持ちは痛いほどわかります。しかし、もし「実際の介護時間」をそのまま判定基準にしてしまうと、大きな矛盾が生まれてしまうのです。
「手際が良い」と損をする?
例えば、介護のプロや手際の良すぎるご家族が、パパッと短時間でオムツ交換や食事介助を済ませたとします。
もし「実際の時間」で評価すると、「短時間で済んでいるから、介護の手間はかかっていない(要介護度は低い)」と判定されてしまいます。
逆に、不慣れで時間がかかっている場合は「要介護度が高い」となってしまいます。
これでは、介護が上手な人ほど損をしてしまいますよね。
こうした不公平をなくすために、誰が介護しても標準的にこれくらいかかるだろう、という「標準的な時間(モノサシ)」を使って判定を行っているのです。
届くのは「最終結果」だけ
このコンピュータによる「一次判定」の結果は、そのままご自宅に通知されるわけではありません。あくまで途中経過です。
この結果をもとに、医療や福祉の専門家が集まる「介護認定審査会」が開かれます。そこで、コンピュータでは判断しきれない個別の事情(主治医の意見書や特記事項)を加味した「二次判定」が行われ、最終的な要介護度が決定します。
皆さんの手元に届く「認定結果通知書」は、この最終決定されたものです。
「一次判定の結果はどうだったのか?」は、通常のお知らせには記載されません。
仕組みを知れば、冷静に待てる
要介護認定は、「コンピュータによる客観的な計算(一次判定)」と、「専門家による人間味のある審査(二次判定)」の二段構えで行われています。
「機械的に決められるなんて冷たい」と感じるかもしれませんが、それは「誰にとっても公平な基準」を作るための大切なステップです。
そして、そこから漏れてしまう細かな事情は、その後の二次判定できちんと検討されます。
仕組みを知っておくことで、結果通知が届いたときに「なるほど、こういうプロセスを経て決まったんだな」と、少し冷静に受け止められるようになるはずです。
