「最近、お父さんの食べこぼしがひどいな」
「スプーンを持つ手が震えて、口に運ぶまでにご飯が落ちてしまう」
パーキンソン病や加齢による手の震え(振戦)で、食事がスムーズにいかなくなることはよくあります。
ポロポロこぼす姿を見て、ご家族はついこう言いたくなりませんか?
「ほら、貸して。私が食べさせてあげるから」
服やテーブルが汚れるのを防ぎたいし、何より本人が大変そうだから。
その気持ちは痛いほど分かります。しかし、実はその「全部やってあげる」という優しさが、親御さんの「自分で食べる喜び」を奪い、寝たきりへのスピードを早めてしまうかもしれないのです。
今回は、手が震えても、最後まで自分の力で食事を楽しむための「道具の工夫」についてお話しします。
「食べさせる」のは最後の手段でいい
食事は単なる栄養補給ではありません。「自分の好きなものを、自分のペースで口に運ぶ」という行為そのものが、生きる意欲や尊厳に直結しています。
手が震えるからといって、すぐに全介助(食べさせてもらう状態)にしてしまうと、残っている機能を使わなくなり、腕の筋肉や脳の働きが一気に衰えてしまいます。
大切なのは、「震えていても、こぼさずに食べられる環境」を作ることです。
ここで活躍するのが、介護用品店などで手に入る「自助具(じじょぐ)」です。
震える手でも失敗しない「すくいやすいお皿」
震えがある方にとって、一番難しいのは「お皿の中の食べ物をスプーンに乗せる瞬間」です。
平らなお皿だと、食べ物が逃げてしまい、追いかけているうちに外にこぼれ落ちてしまいます。
そこで使ってほしいのが、「片側の縁(ふち)が高くなっているお皿(すくいやすい皿)」です。
お皿の片側が壁のように反り返っているため、スプーンで食べ物を壁に押し付けるようにすると、自然とクルッとスプーンの上に乗ってきます。
これなら、細かなコントロールが難しい震える手でも、最後の一粒まできれいにすくうことができます。
セットで使いたい「滑り止めマット」
もう一つ、忘れてはいけないのが「滑り止めマット」です。
震える手でスプーンを操作すると、カチャカチャとお皿自体が動いてしまい、さらに食べにくくなってしまいます。
お皿の下にシリコン製のマットを敷くだけで、食器がピタッと固定され、驚くほど食事が安定します。
100円ショップで売っているものでも十分効果があります。
まとめ
「こぼすから食べさせて」ではなく、「このお皿ならこぼれないよ」と提案してみてください。
「あ、これなら自分で食べられる!」
その瞬間の親御さんのホッとした表情を見れば、道具を変えることの大きな意味がわかるはずです。
「縁の高いお皿を選ぶ」。これが自立支援の正解です。
震えがある方にどう食事介助をするか。すぐに食べさせるのではなく「道具を工夫して自力を活かす」という視点は、介護福祉士国家試験でも問われる非常に重要なポイントです。
「なるほど!」と思ったあなた。ぜひ実際の試験問題で、その知識を確認してみてください。
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