「お父さん、歯磨きして!」
「面倒くさいから、あとでいいよ」
実家でそんなやり取りをして、ため息をついていませんか?
高齢になると、手先が動かしにくくなったり、洗面所に行くのが億劫になったりして、歯磨きがおろそかになりがちです。
「虫歯になっても、もう総入れ歯だから関係ないし」なんて思っている方もいるかもしれません。
しかし、声を大にして言わせてください。
高齢者にとっての歯磨きは、虫歯予防のためだけではありません。「命を守るための感染症対策」なのです。
今回は、お口のケアがなぜ肺炎やインフルエンザの予防になるのか、その驚きのメカニズムと、無理なく続けるためのケア方法についてお話しします。
口の中は「細菌の温床」。歯磨きをサボると命取りになる理由
私たちの口の中には、数百種類、数千億個もの細菌が住んでいると言われています。
歯磨きをサボって汚れ(歯垢)が溜まると、これらの細菌が爆発的に増えてしまいます。
これが高齢者にとって致命的なリスクになる理由は2つあります。
1. 誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)の原因になる
高齢者は飲み込む力が弱いため、寝ている間に唾液が気管に入ってしまうことがあります。
この時、口の中が汚れていると、細菌も一緒に肺に入り込み、肺炎を引き起こします。これが、高齢者の死因の上位を占める「誤嚥性肺炎」の正体です。
2. ウイルスの侵入を許してしまう
口の中の細菌が出す酵素には、粘膜を傷つけ、ウイルスを細胞に侵入しやすくする働きがあります。
つまり、口の中が汚いと、インフルエンザなどのウイルスに感染しやすくなってしまうのです。
逆に言えば、しっかり口腔ケアをして細菌を減らせば、ウイルスに対する強力なバリアを張ることができるのです。
嫌がる親御さんに。無理なく続けるための「3つのケア術」
「歯磨きしなさい!」と怒るのではなく、楽にできる方法や道具を提案してあげましょう。
1. うがいができない時は「拭き取り」でOK
洗面所まで行くのが大変なら、リビングやベッドの上でケアしましょう。
「口腔ケア用のウェットティッシュ」を指に巻きつけ、歯や歯茎、頬の内側を優しく拭き取ります。これだけでも、ネバネバした汚れはかなり取れます。
2. 痛くない「スポンジブラシ」を活用
歯ブラシの毛先が痛いという方には、先端がスポンジになった「口腔ケアスポンジ」がおすすめです。
水や洗口液を含ませて、口の中をクルクルと掃除します。粘膜を傷つけず、食べカスや痰を絡め取ることができます。
3. 唾液を出す「マッサージ」で自浄作用アップ
唾液には、口の中の汚れを洗い流し、細菌の繁殖を抑えるすごい力があります。
耳の下や顎の下にある「唾液腺」を優しくマッサージして、唾液の分泌を促しましょう。
食事の前に行うと、飲み込みもスムーズになりますよ。
まとめ
歯磨きは、マスクや手洗いと同じくらい重要な「感染予防」です。
「風邪を引かないように、お口をさっぱりさせようか」
そんな声かけで、親御さんの口の中と、その先にある命を守ってあげてください。
「歯磨き=感染予防」。この常識、自信を持って言えますか?
口腔ケアの目的は「虫歯予防」だけではありません。「感染症の予防」こそが、高齢者ケアにおける最重要ポイントです。
介護福祉士の国家試験でも問われるこの知識。あなたの認識が合っているか、実際の試験問題でチェックしてみましょう。
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