地震、台風、そして感染症の流行。
災害大国である日本において、離れて暮らす親御さん、特に施設に入所している親御さんの安全は、家族にとって最大の気がかりです。
「もし大きな地震が起きたら、スタッフさんは親を助けてくれるのだろうか?」
「電気が止まっても、介護は続くのだろうか?」
そんな不安を解消するために、施設見学の際や、現在の入居先に対して確認してほしい「ある計画」があります。
それが「BCP(業務継続計画)」です。
今回は、2024年からすべての介護施設に義務付けられたこの「BCP」について、家族が知っておくべきポイントと、良い施設の見分け方をお話しします。
「逃げる」だけじゃない。「介護を止めない」ための計画書
これまでの防災対策といえば、「火事や地震が起きたらどう逃げるか(避難訓練)」が中心でした。
しかし、介護施設にとってそれだけでは不十分です。なぜなら、避難した後も、利用者さんの生活(食事、排泄、入浴、医療ケア)は待ったなしで続くからです。
BCP(Business Continuity Plan)とは、災害などの緊急事態が起きても、
- 重要な業務(介護)を中断させない
- 中断しても、できるだけ早く復旧させる
ための具体的なアクションプランのことです。
- スタッフが出勤できなくなったら、誰が代わりに来るのか?
- 電気が止まったら、人工呼吸器やエアマットはどうするのか?
- 食材が届かなくなったら、何日分の備蓄でどう凌ぐのか?
これらをあらかじめ想定し、準備しておくことが、法律で全ての施設に義務付けられました。
つまり、BCPがしっかりしている施設は、「どんなことがあっても親御さんの生活を守り抜く覚悟と準備がある施設」だと言えるのです。
施設選びで聞いてみたい「魔法の質問」
これから施設を探す方、あるいは今の施設の防災体制が気になる方は、ぜひ担当者にこう質問してみてください。
「こちらの施設では、BCP(業務継続計画)に基づいた訓練は、どのようなことをされていますか?」
「ええ、年に2回、避難訓練をしています」としか答えない施設は、少し勉強不足かもしれません。
「夜間にスタッフが少ない想定で、シミュレーション訓練をしました」
「停電時に発電機を動かす手順を確認しています」
このように、具体的な状況を想定した答えが返ってくる施設なら、安心して親御さんを任せられます。
自宅介護でも真似したい「おうちBCP」
自宅で介護をしている場合も、このBCPの考え方は非常に役立ちます。
「もし明日、大地震が起きたら」を想像して、以下の備えをしておきましょう。
1. 食べ慣れた味を回す「ローリングストック」
高齢者は、乾パンなどの非常食を食べられないことがあります。
普段から食べているレトルトのお粥や、缶詰、介護食ゼリーなどを多めに買い置きし、古いものから食べて買い足す「ローリングストック法」を実践しましょう。
「いつもの味」があるだけで、災害時のストレスは大きく軽減されます。
2. 命をつなぐ情報をまとめた「防災ポーチ」
避難する際、これだけは持ち出すという「防災ポーチ」を用意しておきます。
中には、お薬手帳(コピー)、保険証、かかりつけ医の連絡先、そして「一週間分の予備の薬」を入れておきましょう。
スマホの「お薬手帳アプリ」も便利ですが、充電切れに備えて紙の情報も必須です。
3. 停電対策の「ポータブル電源・ランタン」
夜間の停電は、転倒リスクを高めます。
足元を照らす「ランタン」や、冬場の暖房器具やスマホ充電に使える「ポータブル電源」があると心強いです。特に電動ベッドや吸引器を使っているご家庭では、電源の確保は命綱になります。
まとめ
災害はいつ来るかわかりません。だからこそ、「起きてから考える」のではなく、「起きる前に計画しておく(BCP)」ことが大切です。
「うちは大丈夫」と思わず、今度の週末にでも、施設の方や家族と「もしもの時」の話をしてみてください。その会話が、未来の安心を作ります。
「BCP(業務継続計画)」。この言葉を知っているだけで、施設を見る目が変わります。
全ての介護事業者にBCPの策定と研修・訓練が義務付けられていること。これは令和6年度からの完全義務化事項であり、最新の介護知識として非常に重要です。
「法律で決まってるんだ!」と驚いたあなた。ぜひ実際の試験問題で、その重要性を確認してみてください。
👉 【挑戦!】介護福祉士の過去問を解いてみる
