親御さんの介護保険を申請し、いよいよ「認定調査」の日が決まると、なんだかソワソワしてしまいませんか?
「調査員さんはどんな人だろう?」
「家の中を隅々まで見られるのかな?」
「難しい質問をされて、親が答えられなかったらどうしよう」
初めてのことだと、まるで入学試験や面接を受けるような気分になってしまうかもしれません。中には、調査員が来るからと慌てて大掃除を始めたり、親御さんに「ちゃんとしてね」と言い聞かせたりする方もいらっしゃいます。
でも、どうか安心してください。認定調査は、親御さんの「人間性」や「経歴」をテストする場ではありません。
調査員が知りたいのは、たった一つ。「今、生活する上でどれくらいの手助けが必要か」という事実だけなのです。
今回は、認定調査で具体的にチェックされるポイントと、逆に「関係ない(聞かれない)」ことについて、わかりやすくお話しします。
調査員は「今の生活能力」だけを見ている
認定調査には、全国共通の「調査票」というマニュアルがあります。調査員はそれに沿って、ご本人の体や頭の状態を確認していきます。
では、具体的にどのようなことを聞かれるのでしょうか。代表的な例をいくつか挙げてみましょう。
1. 「座っていられますか?」(身体機能)
「座るなんて誰でもできるでしょ?」と思うかもしれませんが、実はこれがとても重要です。
椅子やベッドの端に支えなしで座り続けられる能力(座位保持)は、食事をしたり、トイレで排泄したりするための基本動作だからです。これが不安定だと、生活の多くの場面で介助が必要になります。
2. 「髪をとかしたり、身だしなみを整えていますか?」(生活機能)
おしゃれかどうかのチェックではありません。
整髪や洗顔などの動作には、「腕を上げる身体機能」と、「身だしなみを気に掛ける認知機能・意欲」の両方が必要です。
「最近、寝癖のまま過ごすことが増えたな」と思ったら、それは単なる手抜きではなく、介護のサインかもしれません。
3. 「買い物はできていますか?」(複合的な能力)
買い物は、高度な能力が必要です。
- 欲しい商品を選ぶ(認知・判断)
- お金を支払う(計算)
- 荷物を持って帰る(体力)
これらが一連の流れとしてできているかを確認することで、自立度を測っています。
このように、調査項目はすべて「日常生活を送るための具体的な動作ができるかどうか」に焦点が当てられています。
「お金」や「学歴」は一切関係ありません
一方で、多くのご家族が心配されるのが「プライバシーに関わること」です。
「うちは年金が少ないから、認定が下りないんじゃないか」
「昔、偉い役職についていたプライドの高い父だから、調査員を見下さないか心配」
ご安心ください。要介護認定は、あくまで「心身の状態」を判定するものであり、ご本人の「経済力」や「社会的地位」は一切考慮されません。
- 預貯金の額: お金持ちでも、生活保護を受けていても、体の状態が同じなら同じ結果が出ます。(※保険料や利用料の負担割合には関係しますが、要介護度には無関係です)
- 学歴・職歴: 博士号を持っていても、元社長でも、介護が必要な状態であれば認定されます。
認定調査は、過去の栄光や懐事情を査定する場ではありません。「今、何ができて、何ができないか」という一点だけが見られています。
正しい認定を受けるための心構え
調査の内容がわかったところで、最後に私たち家族ができる「準備」についてお伝えします。
一番大切なのは、「見栄を張らないこと」です。
高齢の親御さんは、他人が家に来ると、つい「しっかりしなきゃ」と張り切ってしまいがちです。
普段はできないのに、調査員の前でだけ「できます」「やっています」と答えてしまう……。これは「認定調査あるある」なのですが、これでは正しい支援が必要だと判断されず、結果としてご本人が苦労することになってしまいます。
家族ができるサポート
- ありのままを伝えるメモを用意する
親御さんの前では言いにくい「失敗談(トイレの失敗や物忘れなど)」を、事前にメモにまとめておき、調査員の帰り際にこっそり渡すのが効果的です。 - 「普段の様子」を補足する
親御さんが「できます」と答えた後に、「調子が良い時はできますが、昨日は転んでしまいました」など、優しく事実を補足してあげましょう。
認定調査は、これからの生活を支えるための第一歩です。
「できないこと」を隠すのではなく、正直に伝えて、必要な手助け(サービス)を受けられるように準備を整えましょう。
