「介護=腰痛」はもう古い?親を持ち上げずに動かす「魔法の板」とプロの技

「親をベッドから車椅子に乗せるたびに、腰が砕けそうになる」
「小柄な母なのに、抱きかかえると鉛のように重い…」

在宅介護をしているご家族の多くが、深刻な「腰痛」に悩まされています。
湿布を貼り、コルセットを巻いて、「愛情があれば重くないはず」と精神論で乗り切ろうとしていませんか?

はっきり言います。人間の体を腕力だけで持ち上げるのは、物理的に無理があります。
腰を痛めるのは、あなたが弱いからではなく、「持ち上げているから」です。

今、介護の現場では常識が変わりつつあります。
「持ち上げない・抱え上げない・引きずらない」
これを徹底する「ノーリフティングケア」について、今日から家庭で使えるテクニックと道具をご紹介します。

目次

「持ち上げる」は、親御さんにとっても苦痛です

「よいしょ!」と親御さんを抱きかかえて移乗するスタイル。
実はこれ、介護する側の腰に悪いだけでなく、される側の親御さんにとっても大きな負担になっています。

  • 苦しい: 体が締め付けられ、呼吸が苦しくなる。
  • 怖い: 足が浮くため、「落とされるかも」という恐怖心で体が強張る。
  • 傷つく: 皮膚が引っ張られて、内出血や皮下出血の原因になる。

つまり、「持ち上げない」ことは、手抜きではなく「親御さんを大切に扱うための優しさ」なのです。

滑らせて動かす「魔法の板」スライディングボード

では、持ち上げずにどうやってベッドから車椅子へ移動させるのでしょうか?
答えはシンプルです。「滑らせる」のです。

ここで登場するのが、「スライディングボード(移乗ボード)」という福祉用具です。
ツルツルした素材でできた板で、ベッドと車椅子の間に橋のように渡して使います。

  1. ベッドと車椅子の高さを揃える(またはベッドを少し高くする)。
  2. お尻の下にボードを差し込む。
  3. ボードの上をお尻で滑るようにして、するりと移動する。

これなら、体重50kgの人を持ち上げる必要はありません。横に少し押す力だけで済むので、腰への負担は劇的に軽くなります。

「動かす」を楽にするその他のツール

ボード以外にも、ノーリフティングケアを助ける便利な道具があります。

1. 背抜き・位置修正に「スライディングシート」

ベッドの上で体がずり下がった時、無理やり引き上げていませんか?
ナイロン製などのツルツルした「スライディングシート(筒状の滑る布)」を体の下に敷き込めば、指一本で動かせるほど摩擦がなくなります。
数千円で購入でき、洗濯もできるので、在宅介護の必需品です。

2. 重度の場合は「介護リフト」

自分で座っている姿勢が保てない方の場合は、「介護リフト」の導入を検討しましょう。
ハンモックのような布で体を包み込み、電動で吊り上げて移動します。
「家の中で大掛かりな機械なんて」と敬遠されがちですが、最近はコンパクトなものや、天井走行型などもあり、レンタルも可能です。

まとめ

介護は「力仕事」ではありません。「技術職」です。
そして、その技術を支えるのは、便利な道具たちです。

「もう腰が限界」と悲鳴を上げる前に、ケアマネジャーや福祉用具専門相談員に「持ち上げない道具を使ってみたい」と相談してみてください。
その一枚の板が、あなたの腰と、親御さんとの笑顔の時間を守ってくれます。

「持ち上げない」が今の介護のスタンダードです。
腰痛予防のために推奨されている「ノーリフティングケア」。スライディングボードやリフトの活用は、介護福祉士の国家試験でも「最も適切な対応」として選ばれる正解ルートです。
「抱え上げないでどうするの?」と気になったあなた。ぜひ実際の試験問題で、その手法を確認してみてください。
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