「近所に新しいデイサービスができたみたい」
「母の担当ケアマネジャーさんは、どこの所属なんだろう?」
親の介護が始まると、様々な事業所や専門職と関わることになります。
彼らは勝手に営業しているわけではなく、必ず行政の「指定(許可)」を受けて活動しています。
普段あまり意識することはありませんが、実はサービスの種類によって、「誰が許可を出しているか(監督しているか)」が違うのをご存知でしょうか?
あるサービスは「都道府県」が、またあるサービスは私たちの住む「市町村」が直接管轄しています。
この「管轄の違い」を知っておくと、何かトラブルがあった時の相談先が明確になり、地域で暮らす安心感にもつながります。
今回は、制度の裏側にある「行政の役割分担」について、わかりやすく紐解いていきます。
ケアマネジャーは「市町村」が選んだパートナー
介護生活の司令塔となる「ケアマネジャー(介護支援専門員)」。
彼らが所属する計画作成の事業所(居宅介護支援事業所)に対し、指定(許可)を出しているのは、実は一番身近な「市町村」です。
これは、国が「高齢者の生活プランを作る役割は、その地域の事情を一番よく知っている身近な役所が管轄すべき」と考えているからです。
つまり、ケアマネジャーは単なる民間の業者ではなく、市町村のお墨付きを得て、市町村と密に連携しながら動いているパートナーだと言えます。
「ケアマネジャーさんに相談しても解決しない…」といった場合に、市役所の窓口(地域包括支援センターなど)が相談に乗ってくれるのは、市町村こそが彼らの監督役(ボス)だからなのです。
市町村が指定・監督している、介護生活の司令塔『ケアマネジャー』。彼らが具体的にどのような仕事をして、私たちを支えてくれているのか、その実務について詳しく解説します。

「地域密着型」も市役所の管轄
もう一つ、市町村が直接指定権限を持っている重要なサービスがあります。
それは「認知症対応型共同生活介護」、いわゆる「グループホーム」などの地域密着型サービスです。
グループホームは、認知症になっても住み慣れた地域で暮らし続けるための施設です。
「この町の住民のために作られた施設」であるため、遠くの都道府県庁ではなく、地元の市町村が責任を持って許可を出し、見守っています。
これに対して、一般的な「デイサービス(通所介護)」や「ショートステイ」などは、より広域的な利用が想定されるため、「都道府県」が管轄しています。
- じっくり相談、地元で暮らす(ケアマネ、グループホーム) → 市町村
- 標準的なサービスを広く利用(デイサービスなど) → 都道府県
このように、役割に応じて行政が二重の目で見守っているのが、日本の介護保険制度の特徴です。
市町村が管轄する『地域密着型サービス』の代表格がグループホームです。なぜ大規模な施設ではなく『小さな規模』である必要があるのか。その理由を知ると、認知症ケアの奥深さが見えてきます。

制度を知って「安心」に変えるアクション
こうした「管轄」の話は少し難しく感じるかもしれませんが、「誰が責任者か」を知っているだけで、いざという時の動き方が変わります。
1. 困ったら迷わず「市役所」へ
「サービス事業所の対応に疑問があるけれど、直接は言いづらい」
そんな時は、迷わずお住まいの市町村の介護保険課や地域包括支援センターに相談してください。
特にケアマネジャーや地域密着型サービスに関しては、市町村が直接の権限を持っています。「監督者」として、あなたの声をしっかり聞いてくれるはずです。
2. 「地域密着型」という選択肢を知る
「大きなデイサービスは人が多くて苦手」という親御さんもいらっしゃるかもしれません。
そんな時は、市町村指定の「地域密着型通所介護(小規模デイサービス)」を探してみるのも一つの手です。
市町村が管轄するサービスは、定員が少なめでアットホームな所が多く、地元の顔なじみと過ごせる可能性があります。
3. 「ちゃんと見守られている」と信頼する
悪質な事業者がニュースになることもありますが、基本的には行政の厳しい基準をクリアし、定期的な指導を受けている事業所ばかりです。
「都道府県と市町村、それぞれの役所が後ろについている」と知ることで、過度に不安にならず、プロを信頼して任せてみましょう。
まとめ
介護サービスは、民間事業者が運営していても、その背後には必ず行政の目が行き届いています。
特に、生活の要となるケアマネジャーやグループホームを、一番身近な「市町村」が管轄していることは、私たちにとって大きな安心材料です。
「困ったら役所が味方になってくれる」。そう心に留めて、地域のリソースを上手に活用していきましょう。
役所が監督しているといっても、その決定や対応に納得がいかないこともあるかもしれません。そんな時、泣き寝入りせずに再審査を求めることができる『不服申し立て』の権利についても知っておくと安心です。

ケアマネ試験解説
