祖父母の介護、孫はどこまで手伝うべき? 共倒れしないための『頼れる支援』と距離感の正解

「大好きな祖父母のために、何かしてあげたい」 「でも、就職や進学を控えた自分が、どこまで介護に関わればいいのだろう」

親御さんが仕事や子育てで手一杯になり、そのしわ寄せが「孫であるあなた」に来ていませんか?

昭和の時代とは違い、今は家族だけで介護を背負う時代ではありません。今回は、現代の介護の「現実」と、若い世代が自分の未来を守りながら家族を支えるための「距離感」についてお話しします。

目次

高齢者が高齢者を支える「老老介護」が当たり前に

かつては「長男の嫁が義父母を介護する」というパターンが多く見られましたが、核家族化や少子化が進んだ今、その構図は大きく変わっています。

国民生活基礎調査などのデータによると、同居している主な介護者のうち、なんと6割以上が高齢者同士という結果が出ています。これが、いわゆる「老老介護」です。

70代の妻が80代の夫を介護する、あるいはその逆というケースは、決して珍しいことではありません。
「連れ添った相手だから」という愛情は尊いものですが、介護する側も体力や判断力が低下していく中で、24時間365日のケアを続けるのは非常に危険です。それはまるで、サビついた自転車に重い荷物を乗せて坂道を登るようなもの。ふとした拍子に、支える側も支えられる側も共倒れしてしまうリスクと隣り合わせなのです。

40代・50代を襲う「ダブルケア」の波

では、離れて暮らす子供世代が担えば解決するのでしょうか?
ここで問題になるのが、晩婚化の影響による「ダブルケア」の急増です。

今の40代、50代は働き盛りであり、子育ての真っ最中という方も多くいます。
「子供の教育費がかかる時期」と「親の介護が必要になる時期」が重なってしまうのです。

「保育園のお迎えに行ってから、実家に寄って親の夕食の世話をする」
「大事な会議中に、親の病院から呼び出しがかかる」

そんな「人生の挟み撃ち」にあい、心身ともに疲弊してしまう方が増えています。これは個人の努力不足や親不孝といった問題ではなく、社会構造の変化による避けられない課題なのです。

孫世代を襲う「ヤングケアラー」のリスク

ダブルケアで親の手が回らなくなると、その負担は「孫(あなた)」に向かいます。

「おばあちゃん子だから」という優しさにつけこまれ、本来なら勉強や遊び、就職活動に使うべき時間を介護に奪われてしまう。これが社会問題化している「ヤングケアラー」です。

孫が手伝うことは素晴らしいですが、「自分の未来(進学・就職)」を犠牲にしてまで担うべきではありません。
それは家族愛ではなく、社会構造の歪みです。無理な時は「無理」と言い、外部サービスに頼ることは、決して冷たいことではないのです。

「自宅で最期」が必ずしも正解ではない

「住み慣れた自宅で最期を迎えたい」
そう願うご本人の気持ちは、できるだけ大切にしたいものです。しかし、現実には8割以上の方が自宅以外(病院や施設など)でお亡くなりになっています。

かつてに比べ、特別養護老人ホームなどの施設で最期を迎える(看取り)ケースは増加傾向にあります。

「施設に入れるなんて冷たい」と自分を責める必要はありません。医療的ケアが必要になったり、家族の負担が限界を超えたりした時、プロの手を借りて安全で穏やかな時間を確保することは、一つの前向きな選択肢です。施設はもはや「姥捨山」ではなく、生活を守るための「第二の我が家」としての機能を担っているのです。

「家族愛」だけで乗り切ろうとしないで

ここまで少し厳しい現実をお伝えしてきましたが、解決策は必ずあります。
最も大切なのは、「家族だけで抱え込まない」ということです。

現代の介護は、愛情や根性だけで乗り切れるほど単純ではありません。これからの介護に必要なのは「精神論」ではなく、自分たちを守るための「情報」と「制度」という武器を持つことです。

1. 「仕事と介護の両立」支援制度を知る

現役世代の方が介護を理由に離職してしまうことは、経済的なリスクも大きく、親子共倒れの原因になりかねません。
今は法律で、以下のような「働く人を守る権利」が認められています。

  • 介護休暇(短期): 通院の付き添いなどで、単発で休める制度
  • 介護休業(長期): 介護体制を整えるために、まとまった期間休める制度

「周りに迷惑をかけるから」と隠さずに、まずは会社の制度を確認し、使える権利は堂々と使いましょう。これらは、あなたが仕事を辞めずに介護を続けるための大切な「防具」です。

2. プロの手を借りることを「悪」と思わない

ホームヘルパーに来てもらったり、デイサービスを利用したりすることは、決して「手抜き」ではありません。
下の世話や入浴介助などの肉体的な負担はプロに任せ、家族は「話し相手になる」「好きな食べ物を一緒に食べる」といった、家族にしかできない精神的なケアに注力する。その方が、お互いに優しくなれることも多いのです。

3. 元気なうちに「もしもの話」をしておく

親御さんが元気なうちに、少しずつ将来の話をしておくことも大切です。
「どうしても自宅がいいか、それとも安心できる施設がいいか」「延命治療はどう考えているか」。
ご本人の希望と、家族ができることの限界(ここまでなら家で看れるけど、これ以上はプロにお願いしたい、など)をすり合わせておくことが、将来の「こんなはずじゃなかった」を防ぎます。

介護の形に正解はありません。
しかし、介護をする側が倒れてしまっては元も子もありません。社会全体で支える仕組みを上手に使いながら、「頑張りすぎない介護」を目指していきましょう。

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