家にお風呂があるのに「訪問入浴」を頼んでいいの?プロ3人が運ぶ「極楽」の時間

「お風呂が大好きな親のために、毎日入れてあげたい」
「でも、足腰が弱ってきて、家の浴槽をまたぐのが怖くなってきた」

そんなジレンマを抱えているご家族は少なくありません。
入浴介助は、介護の中でも特に重労働です。滑りやすい浴室で体を支えるのは、介助する側にとっても転倒のリスクがあり、腰への負担も相当なものです。

「ウチには立派なお風呂があるし、まだ寝たきりじゃないから……」
そう思って、無理をして自宅のお風呂に入れようとしていませんか?

実は、介護保険の「訪問入浴介護」は、寝たきりの方だけのものではありません。
自宅に浴室があっても、安全に入浴することが難しい場合は堂々と利用できるサービスです。

今回は、まるで自宅に温泉がやってくるような、訪問入浴サービスの魅力と、安心して任せられる理由についてご紹介します。

目次

1. 部屋の中に「お風呂」が出現する驚き

訪問入浴の最大の特徴は、「専用の浴槽」を自宅の部屋まで持ち込んでくれることです。

浴室まで移動する必要はありません。ベッドのすぐ横などの畳やフローリングの上に、分割式の浴槽をテキパキと組み立て、給湯車からホースでお湯を引き込みます。
あっという間に、リビングや寝室が「一番風呂」に早変わりするのです。

これなら、移動が困難な方や、ヒートショックが心配な冬場でも、温かい部屋で安全に入浴を楽しむことができます。

2. 「看護師1名+介護職2名」の鉄壁チーム

「お風呂に入れる時に、具合が悪くなったらどうしよう」
そんな不安を解消するために、訪問入浴は基本的に「3人1組」のチームで訪問します。

その内訳は、「看護師(または准看護師)1名」と「介護スタッフ2名」です。

力持ちの介護スタッフが安全に身体を移動させて洗ってくれるだけでなく、医療のプロである看護師が常にそばにいてくれるのが最大の安心ポイントです。

  • 入浴前: 血圧、脈拍、体温などのバイタルチェックを行い、「今日お風呂に入っても大丈夫か」を判断します。
  • 入浴中: 湯あたりしていないか、顔色や呼吸の状態を見守ります。
  • 入浴後: 軟膏を塗ったり、着替えを手伝ったりして、再度体調を確認します。

この手厚い体制があるからこそ、医療ニーズが高い方でも安心して入浴できるのです。

3. 体調が悪い日は「体を拭く」に変更も可能

高齢者の体調は変わりやすいものです。
「今日はお風呂の日だけど、なんだか少し熱っぽいかも」という日もあるでしょう。

そんな時は、無理に全身浴をする必要はありません。看護師の判断やご本人の希望に合わせて、「清拭(せいしき:温かいタオルで体を拭く)」「部分浴(手足だけお湯につける)」に切り替えることができます。

「お風呂に入れないならキャンセルしなきゃ」と気負わなくても大丈夫。
スタッフが来てからでも、その日の体調に合わせたベストなケアを提供してくれます。

4. 最期の時まで「お風呂」を楽しめる

「終末期で看取りの段階にあるから、お風呂なんて無理だろう」
そう諦めてしまう方もいますが、実は逆です。

訪問入浴は、終末期(ターミナルケア)の方にこそ利用していただきたいサービスでもあります。

痛みや苦しさがある中で、温かいお湯に包まれる時間は、何よりのリラクゼーションになります。体がきれいになり、さっぱりした表情を見せてくれることは、ご本人だけでなく、見守るご家族にとっても救いになります。
医師や看護師と連携しながら、最期の時まで入浴を支援するケースは非常に多いのです。

ショートステイ中は利用できない点に注意

とても便利なサービスですが、一つだけ知っておきたいルールがあります。
それは、「ショートステイ(短期入所)を利用している間は使えない」ということです。

ショートステイ先の施設にはお風呂があり、そこで入浴サービスが提供されるため、重複して訪問入浴を使うことはできません(自費であれば可能ですが、介護保険は使えません)。
「今週はショートステイに行くから、訪問入浴はお休み」といったスケジュール調整が必要になります。

まとめ:お風呂の悩みはプロに任せよう

「家族の手で入れてあげたい」という気持ちは素晴らしいですが、それでお互いが疲弊してしまっては元も子もありません。

週に1回でも訪問入浴を利用すれば、その日は家族も介助から解放され、親御さんもプロの手でゆったりとお湯につかることができます。
「自宅のお風呂が大変になってきたな」と感じたら、ぜひケアマネジャーに「訪問入浴を使ってみたい」と相談してみてください。

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