「酸素チューブをつけたままタバコを一服」が命取りに。在宅酸素療法で絶対に守るべき“火”のルール

肺の病気などが原因で、自宅で鼻から酸素を吸いながら生活する「在宅酸素療法(HOT)」
息苦しさが楽になり、住み慣れた家で過ごせる素晴らしい治療法ですが、一つだけ、病院にいる時以上に気をつけなければならないことがあります。

それは、「火の取り扱い」です。

「酸素を使っている時に火を使ってはいけないなんて、常識でしょう?」
そう思われるかもしれません。しかし、毎年必ずと言っていいほど、酸素吸入中の喫煙などが原因で、チューブや衣服に引火する重篤な事故が起きているのです。

今回は、決して他人事ではない「在宅酸素と火災」のリスクと、親御さんを守るための具体的な環境づくりについてお話しします。

目次

酸素は「燃える」のではなく「激しく燃え上がらせる」

まず、酸素の性質を正しく理解しましょう。
酸素自体が爆発したり燃えたりするわけではありません。酸素には「他のものが燃えるのを助ける性質(助燃性)」があります。

通常の空気中の酸素濃度は約21%ですが、酸素濃縮装置から出る酸素は90%以上の高濃度です。
この状態で火種が近づくと、どうなるでしょうか?

  • タバコの火が、一瞬で炎となって燃え上がる。
  • 衣服についた小さな火が、あっという間に全身に広がる。

線香花火が酸素の中で激しく燃える実験を見たことはありませんか? あれと同じ現象が、親御さんの顔のすぐそばで起こる可能性があるのです。

家族が見落としがちな「3つの火種」

「タバコは吸わないから大丈夫」と油断してはいけません。生活の中には危険な火種がたくさんあります。

1. 仏壇の「ロウソク・線香」

高齢の方にとって、毎日のお参りは大切な日課です。
しかし、酸素チューブをつけたままロウソクに火をつけようとして、袖口やチューブに引火するケースがあります。
拝む時は酸素を一時的に外すか、火を使わない「LED式ロウソク・線香」への切り替えを強くおすすめします。

2. 調理中の「ガスコンロ」

キッチンに立つのが好きな親御さんも注意が必要です。
ガスコンロの青い炎は見えにくく、近づきすぎて衣服に燃え移る危険があります(着衣着火)。
可能であれば「IHクッキングヒーター」への交換を検討するか、調理は電子レンジを活用するように生活スタイルを変えましょう。

3. 冬場の「ストーブ・ファンヒーター」

石油ストーブやガスファンヒーターなど、炎が出る暖房器具もリスクが高いです。
酸素機器を使用する部屋では、「エアコン」「オイルヒーター」など、火を使わない暖房器具に限定するのが安全の鉄則です。

「2メートル」の距離が命を守る

どうしても火を使わなければならない場面もあるかもしれません。
その場合は、以下のルールを徹底してください。

「酸素機器(および吸入している人)から、火気まで最低2メートル以上離す」

これは、酸素が周囲に漏れ出して濃度が高くなっている範囲を避けるための安全距離です。
もちろん、喫煙に関しては「2メートル離れればOK」ではありません。「酸素療法中は禁煙」が絶対条件です。ご本人だけでなく、同居のご家族も協力して、クリーンな環境を作ってあげてください。

まとめ

在宅酸素療法は、親御さんが「自分らしく生きる」ための手段です。
その大切な時間が、一瞬の火の不始末で悲劇に変わらないように。

「お父さん、タバコはやめてね」
「お母さん、ロウソクは電池式にしたよ」

その一言と小さな行動が、親御さんの命を守る最強の防災対策になります。

「酸素のそばでタバコはNG」。これは命に関わる正解です。
在宅酸素療法中の火気厳禁。これは医療的ケアの基本中の基本であり、介護福祉士試験でも絶対に間違えてはいけない問題です。
「当たり前でしょ!」と思ったあなた。その「当たり前」が現場の安全を守ります。ぜひ実際の試験問題で確認してみてください。
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