「ヘルパーさんが来てくれるおかげで、親の食事が安心できるようになった」
「お風呂に入れてもらえて助かっている」
訪問介護(ホームヘルプサービス)は、在宅介護の要です。
しかし、利用していく中で、こんなモヤモヤを感じたことはありませんか?
「時間が余ったみたいだから『ついでに窓も拭いて』と頼んだら、『できません』と断られてしまった」
「『犬の散歩に行って』と言ったら困った顔をされた」
決して意地悪で断っているわけではないのですが、利用者側からすると「ちょっとくらい融通を利かせてくれてもいいのに」と思ってしまいますよね。
実は、訪問介護には「やっていいこと」と「やってはいけないこと」の厳しい境界線が存在します。
今回は、ヘルパーさんが「便利屋さん」ではない理由と、要望を上手に伝えてサービスを快適に利用するためのコツについてお話しします。
ヘルパーは「ケアプラン」に書かれたことしかできない
ヘルパーさんがあなたの個人的な頼みごとを断る最大の理由。
それは、「ケアプラン(計画書)に書かれていないことは、やってはいけない」という鉄則があるからです。
介護保険は、私たちの税金や保険料で賄われている「公的な制度」です。
そのため、利用者の自立支援に必要なこと(食事、入浴、排泄、掃除、洗濯など)には使えますが、「本人がやらなくても生活に支障がないこと」や「家族のための家事」には使えません。
よくある「NG」依頼の例
- 大掃除(窓拭き、床のワックスがけ): 日常的な掃除の範囲を超えているためNG。
- ペットの世話、植木の水やり: 本人の自立支援とは直接関係がないためNG。
- 家族分の食事作り: ヘルパーはあくまで「本人」のためのサービスなのでNG。
「余った時間でやってよ」と思うかもしれませんが、ヘルパーさんは勝手な判断でプラン外のサービスを提供することを固く禁じられています。
もしどうしても必要な場合は、自費の家事代行サービスを利用するか、ケアマネジャーに相談してプランの見直し(本当に必要かどうかの検討)をお願いする必要があります。
不満や要望は「サ責(サセキ)」に伝えよう
「担当のヘルパーさんに直接文句を言うのは気が引ける」
「もっとこういう味付けにしてほしいけど、言いにくい」
そんな時は、「サービス提供責任者」、通称「サ責(サセキ)」という役職の人を頼ってください。
サ責は、ヘルパーたちを束ねる現場のリーダーです。
単にシフト調整をしているだけではありません。
「今のサービスで満足しているか」「困っていることはないか」を利用者から聞き取り、計画を調整する重要な役割を持っています。
現場のヘルパーさんに直接言いにくいことでも、サ責に伝えれば、角を立てずに改善策を提案してくれます。定期的に訪問してくれるはずですので、その時が相談のチャンスです。
個人契約とは違う「組織の安心感」
「いろいろ制限があって面倒だな」と感じるかもしれませんが、介護保険の訪問介護事業所を使うことには、個人契約の家政婦さんにはない大きなメリットがあります。
それは「組織としての守り」です。
1. 事故が起きた時の対応
万が一、サービス中に親御さんが転倒したり、物を壊してしまったりした際、ヘルパー個人の責任で隠蔽することは許されません。
速やかに家族、ケアマネジャー、市町村へ連絡し、組織として対応するルートが確立されています。
2. 災害時の備え(BCP)
近年、台風や地震などの災害が増えていますが、訪問介護事業所には「業務継続計画(BCP)」の策定が義務付けられています。
「もし大きな災害が起きても、どうやって重要なケアを途切れさせないか」を日頃から計画しているのです。
まとめ:ルールを知れば、関係はもっと良くなる
ヘルパーさんは、親御さんの生活を支える大切なパートナーです。
「融通が利かない」と不満に思う前に、「公的なサービスだからルールがあるんだな」と理解しておくだけで、お互いに気持ちよく付き合えるようになります。
- 「ついで」の家事は頼まない
- 要望があればリーダー(サ責)に相談する
この2つのポイントを押さえて、プロの力を上手に借りながら、安心できる在宅生活を続けていきましょう。
