「今月はヘルパーさんを増やしたから、請求額を見るのが怖い」
「父も母も介護サービスを使っていて、毎月の出費がバカにならない」
介護が始まると、どうしても気になってくるのが毎月のお金のことです。
終わりが見えない介護だからこそ、貯金を切り崩していく生活に不安を感じる方も多いのではないでしょうか。
しかし、日本の介護保険制度には、利用者の負担が重くなりすぎないよう、ある一定額を超えた分のお金が「現金で戻ってくる」仕組みが用意されています。
それが「高額介護サービス費」という制度です。
今回は、意外と知られていないこの制度の「お得な計算ルール」と、申請のポイントについてわかりやすく解説します。
「これ以上は払わなくていい」月々の上限設定
介護保険のサービスを利用すると、基本的には費用の1割(所得により2〜3割)を自己負担します。
数千円程度なら問題ありませんが、施設を利用したり、多くのサービスを組み合わせたりして、この1割負担分だけでも数万円になってしまうことがあります。
そんな時に発動するのが、この「安全装置」です。
所得に応じて「1ヶ月あたりの負担上限額」が決まっており、それを超えて支払った分は、後から申請することで払い戻されます。
- 現役並みの所得がある世帯:上限は高めに設定
- 一般的な所得の世帯:標準的な上限(例:月額44,400円など)
- 住民税非課税の世帯:上限は低めに設定
「うちは税金を払っている(課税世帯)から対象外だろう」と諦める必要はありません。上限額の違いはあっても、課税・非課税に関わらず利用できる制度です。
夫婦ならさらにお得。「世帯合算」の魔法
この制度の最大の特徴は、計算が「個人」ではなく「世帯単位」で行われることです。
例えば、お父様とお母様が二人とも介護サービスを利用している場合を想像してください。
一人ずつの利用額では上限を超えなくても、「二人分の負担額を足したら(合算したら)、上限を超えていた」というケースがよくあります。
この場合も、合算して上限を超えた分がしっかりと払い戻されます。
「家族みんなの負担」として計算してくれるこの仕組みは、老老介護世帯にとって非常に心強い味方です。
申請漏れを防ぐための3つのアクション
「お金が戻ってくるなんて知らなかった!」と損をしないために、私たち家族が気をつけておくべきポイントを整理しましょう。
1. 自治体からの「通知」を見逃さない
多くの自治体では、払い戻しの対象になった世帯に対し、「支給申請書」を郵送してくれます。
役所からの封筒は中身を確認せず置いてしまいがちですが、これを見逃すと手続きができません。
「高額介護サービス費支給申請書」という書類が届いたら、すぐに振込先口座などを記入して返送しましょう。
(※一度申請すれば、翌月以降は自動的に振り込まれる自治体が多いです)
2. 「戻ってこないお金」があることを知る
この制度で戻ってくるのは、あくまで「介護サービスの1〜3割負担分」のみです。
以下の費用は対象外なので注意してください。
- 施設での「食費」や「居住費(部屋代)」
- 個室を選んだ場合の「差額ベッド代」
- 散髪代や日常生活費
「施設に払った総額」が全部戻ってくるわけではないので、予算を立てる際は注意が必要です。
3. 地域密着型サービスも対象
「うちは小さなデイサービス(地域密着型)だから対象外?」と不安になる必要はありません。
地域密着型であっても、通常の居宅サービスと同じように合算の対象になります。
領収書を整理する際は、すべての介護サービス費用をチェックするようにしましょう。
まとめ
介護費用の負担には、家計が破綻しないようしっかりとした「限度額(ストッパー)」が設けられています。
特に「夫婦での合算」は見落としがちなポイントです。
「先月は出費が多かったな」と思ったら、数ヶ月後に役所から書類が届いていないか、郵便受けを気にして見てください。
制度を正しく知って、受け取れるお金はしっかりと受け取り、長く続く介護生活の安心につなげていきましょう。
