実家に帰って親御さんと話していると、何度も「え?」「あぁ?」と聞き返されて、会話が進まないことはありませんか?
最初は優しく言い直していても、3回、4回と続くと、つい声を張り上げてしまい、最後には「もういい!」と喧嘩になってしまう……。
「補聴器をつけてよ」と言っても、「雑音がうるさいから嫌だ」と拒否されることも多いのが現実です。
耳が遠くなることは、誰にでも訪れる老化現象ですが、コミュニケーションが取れなくなることは、親御さんにとっても家族にとっても大きなストレスであり、孤立の原因にもなります。
今回は、補聴器だけに頼らず、親御さんとの会話をスムーズにするための「伝える技術」と「便利グッズ」についてお話しします。
「大声」は逆効果?プロが使う「要約筆記」という技
耳が遠い相手に対し、私たちはつい「大きな声」で話そうとします。
しかし、高齢者の難聴(加齢性難聴)は、「高い音が聞こえにくい」「早口が聞き取れない」という特徴があります。ただ大声で叫んでも、音が割れてうるさいだけで、内容は伝わりにくいのです。
そこで試してほしいのが、聴覚障害者支援のプロも使っている「要約筆記(ようやくひっき)」というテクニックの応用です。
全部は書かない。「キーワード」だけ書く
筆談といっても、話す内容を一言一句書く必要はありません。それでは時間がかかりすぎて、会話のリズムが崩れてしまいます。
コツは、「結論」と「重要な単語」だけを紙に書くことです。
- ×「来週の日曜日は病院がお休みだから、薬をもらいに行くなら土曜日に行っておかないとダメだよ」
- ○「病院」「土曜日」「行く」(と書きながら話す)
これだけで十分です。
視覚的なヒント(キーワード)があるだけで、脳は欠けた情報を補完しやすくなり、聞き取り能力が格段に上がります。
100円ショップの「ホワイトボード」や「電子メモパッド」を食卓に置いておくだけで、お互いのストレスは激減します。
実は、高齢者の耳は「音が小さい」のではなく「音が割れて聞こえる」ことが多いのです。なぜ大声で怒鳴ると余計に伝わらなくなるのか、その耳の仕組み(感音性難聴)についてはこちらをご覧ください。

インターホンが聞こえない不安には「光」を
会話だけでなく、生活音(チャイムや電話の音)が聞こえないことも、高齢者の不安の種です。
「宅配便が来たのに気づかなかった」「電話に出られなかった」という失敗が続くと、自信を失ってしまいます。
そんな時は、音を「光」に変えるグッズを活用しましょう。
「フラッシュベル」で来客をお知らせ
「フラッシュライト付きの呼び出しチャイム」を導入してみてください。
インターホンが押されると、ピカピカと強い光で知らせてくれます。これなら、テレビの音が大きくても、掃除機をかけていても、確実に気づくことができます。
工事不要で設置できるワイヤレスタイプも多く販売されています。
スマホが最強の「翻訳機」になる
最近は、スマートフォンの「音声認識アプリ(UDトークなど)」が非常に優秀です。
あなたが話した言葉が、リアルタイムで文字になって画面に表示されます。
「これ見て」とスマホを見せながら話せば、字幕付きの映画を見るような感覚で会話が楽しめます。
耳が遠い親御さんとの会話は、「耳」だけでなく「目」もフル活用するのが、令和の常識になりつつあります。
筆談と同じくらい大切なのが「座る位置」です。耳が遠い親御さんは、無意識に「口の動き」を読んでいます。会話が劇的にスムーズになる「正面の法則」もあわせて試してみてください。

まとめ
「聞こえない」ことは、親御さん自身が一番辛く感じているはずです。
大声で喉を痛める前に、ペンを取ったり、スマホを使ったりしてみてください。
「伝わった!」という瞬間の親御さんの笑顔を見れば、その一手間も苦ではなくなるはずです。
「耳が遠いから」と会話を諦める必要はありません。筆談やアプリ、補聴器などの道具を使ってコミュニケーションを続けることこそが、幸せな老後(サクセスフル・エイジング)の秘訣です。

「要約筆記」を知っているあなたは、もう介護の上級者です。
耳の遠い方に文字で情報を伝える支援方法。これは介護現場だけでなく、聴覚障害者支援の分野でも正解となる重要な知識です。
「筆談ってただ書くだけじゃないんだ!」と興味を持ったあなた。ぜひ実際の試験問題で、支援のポイントを確認してみてください。
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