「親の認知症が進んできて、自宅での生活が難しくなってきた」
「大きな施設だと、環境の変化で混乱してしまうかもしれない」
そんな不安を抱えるご家族にとって、有力な選択肢となるのが「グループホーム(認知症対応型共同生活介護)」です。
名前はよく聞くけれど、有料老人ホームや特養と具体的に何が違うのか、ピンとこない方も多いのではないでしょうか。
実は、グループホームには、認知症の方が穏やかに暮らすための「計算された小ささ」があります。
今回は、グループホームならではの特徴である「少人数のルール」と、入居する際に見落としがちな「福祉用具(ベッドなど)の取り扱い」について解説します。
「顔なじみ」を作れる限界が9人
グループホームの最大の特徴は、「1つのユニット(生活単位)は5人以上9人以下」と決められていることです。
なぜ「9人」なのでしょうか?
それは、認知症の方が「相手の顔と名前を認識し、混乱せずに人間関係を築ける限界の人数」だと言われているからです。
何十人もいる大きな施設では、毎日違うスタッフ、知らない入居者に囲まれ、認知症の方は常に不安を感じてしまいます。
しかし、最大9人の固定メンバーと、顔なじみのスタッフだけで暮らす環境なら、「ここは知っている場所だ」「知っている人がいる」という安心感が生まれやすくなります。
この「家庭的な規模感」こそが、認知症の進行を和らげ、精神的な安定をもたらす最大のカギなのです。
建物全体でも「3ユニット」まで
さらに、グループホームには「1つの建物の中に、最大でも3ユニット(27人)までしか作ってはいけない」というルールもあります。
これも、施設が大きくなりすぎて「管理的な病院」のようになってしまうのを防ぐためです。
地域の中に溶け込み、普通の家と同じような感覚で暮らせるように、あえて規模を制限しているのです。
「大きな施設の方が設備が整っていて安心」と思いがちですが、認知症ケアに関しては、この「小ささ」こそが最大の設備だと言えるかもしれません。
入居すると「レンタル」は使えなくなる?
グループホームへの入居を検討する際、一つ気をつけていただきたいのが「介護ベッドや車椅子のレンタル」についてです。
自宅で介護保険を使ってベッドや車椅子をレンタルしている場合、グループホームに入居した時点で、その契約は終了(解約)となります。
「使い慣れているからそのまま持って行きたい」と思うかもしれませんが、ルール上、グループホームに入居中は「在宅サービス」である福祉用具貸与(レンタル)を使うことができません。
基本は施設が用意してくれる
では、どうすればいいのでしょうか?
基本的には、生活に必要な家具や設備は施設側が用意することになっています。
ただし、使い慣れた自分の家具(タンスや椅子など)を持ち込むことは推奨されていますし、施設によってはベッドの持ち込みを相談できる場合もあります。
「今使っている車椅子をそのまま使いたい」といった希望がある場合は、契約前に必ず施設側に確認しておきましょう。
まとめ:小ささが生む「安心」を選ぶ
グループホームは、認知症という病気の特徴に特化して作られた住まいです。
- 9人以下の少人数で、顔なじみの関係を作る
- 地域に溶け込む小さな建物
- 福祉用具はレンタルではなく、施設のものを利用する
「大勢の中の一人」ではなく、「9人の家族の一員」として暮らすこと。
それが、親御さんの不安を取り除き、その人らしい笑顔を取り戻すための第一歩になるかもしれません。
