親の「いつもと違う」に気づいたら。「励ます」よりも先にやるべき、たった一つのこと

離れて暮らす兄弟や、同居している家族から、ふとこんな連絡が来ることがあります。
「最近、お父さんの笑顔が少ない気がするんだよね」
「お母さん、なんだかいつもと様子が違うみたい」

そんな時、心配するあまり、すぐに親御さんに電話をかけてこう言っていませんか?
「お母さん、元気出して!」
「クヨクヨしてないで、散歩でも行ったら?」

家族としては「良かれと思って」の励ましですが、実はその言葉、親御さんを追い詰めてしまうかもしれません。
今回は、親の不調(サイン)を感じ取った時、家族チームとしてどう動くのが正解なのか。介護現場のプロが実践している「チームケア」の視点からお話しします。

目次

「励まし」は時としてプレッシャーになる

「元気がない」という事実には、必ず理由があります。
体調が悪いのか、薬が合わないのか、認知症の初期症状なのか、あるいは友人を亡くして落ち込んでいるのか。

理由がわからない状態で、頭ごなしに「元気を出せ」と言うのは、骨折している人に「走れ」と言うのと同じくらい酷なことかもしれません。
もしそれが「うつ傾向」によるものだとしたら、安易な励ましは禁物です。「家族に心配をかけている」という罪悪感を植え付け、余計に心を閉ざさせてしまうリスクがあります。

まずは「第一発見者」の話を徹底的に聞く

では、連絡を受けたあなたが最初にするべきことは何でしょうか。
それは、親御さんへのアクションではなく、「異変に気づいた人(兄弟や介護職員)」へのヒアリングです。

介護の現場では、リーダーが「あの新人さん、様子がおかしいな」と気づいた時、周りのスタッフはまずリーダーに「具体的にどんな時にそう感じましたか?」と詳しく聞きます。これを「フォロワーシップ」と呼びます。

家族も同じです。「お母さんが変だ」と言ってきた兄弟に対して、こう聞いてみてください。

  • 「いつ頃からそう感じる?」
  • 「電話の声のトーン? それとも話す内容?」
  • 「ご飯は食べられているみたい?」

まずは情報を集め、状況を正確に把握すること。これが家族連携(チームケア)の第一歩です。
「なんとなく心配」というふんわりした不安を、「食欲不振がある」「発言がネガティブだ」といった「事実」に変換してから対策を練りましょう。

情報を共有し、見守るための「チームの道具」

離れて暮らす家族同士で、親御さんの細かな変化を共有し続けるのは大変です。
「言った言わない」のトラブルを避け、スムーズに連携するための便利なツールを活用しましょう。

1. 家族専用の「介護情報共有アプリ」

LINEグループでも良いですが、情報が流れてしまいがちです。
「家族間で見られるカレンダーアプリ」「介護記録に特化した共有アプリ」を使うのがおすすめです。
「今日はお母さん、声が明るかった」「訪問看護師さんから薬の変更があった」など、日々の小さな変化を記録として残せます。気になった時に過去の様子を振り返れるので、「いつから調子が悪かったか」の分析にも役立ちます。

2. さりげない「見守りセンサー・カメラ」

「様子が心配だから」といって頻繁に電話をすると、親御さんも疲れてしまいます。
そんな時は、ポットや冷蔵庫を使うと通知が届く「見守りセンサー」や、プライバシーに配慮した「見守りカメラ」の導入を検討してみましょう。
「活動量が落ちている」「夜中に何度も起きている」といった客観的なデータがあれば、医師やケアマネジャーに相談する際もスムーズですし、家族も「今はそっとしておこう」といった判断がしやすくなります。

3. プロの目を借りる「訪問サービス」の利用

家族だけで抱え込まず、プロの目を入れることも大切です。
ヘルパーさんや配食サービスのスタッフに、「最近、母の様子どうですか?」と聞いてみるだけで、家族には見せない意外な一面が見えてくることもあります。

まとめ

親御さんの異変に気づいた時、一番大切なのは「焦らないこと」です。
そして、一人で解決しようとせず、気づいてくれた人(家族や職員)としっかり情報を共有すること。

「何かあったら、みんなで考えるから大丈夫だよ」
そんなドッシリとした構えこそが、親御さんにとっても一番の安心材料になるはずです。

家族の連携プレー、実はプロ顔負けのスキルです。
「お母さん最近どう?」と兄弟で話し合い、状況を確認し合うその行動。実はこれ、介護の現場で最も重要とされる「フォロワーシップ」というチームワーク技術そのものなんです。
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