久しぶりに実家に帰って親御さんと向かい合ったとき、ふと「あれ?」と思ったことはありませんか?
「笑っているはずなのに、片方の口角が上がっていない」
「ご飯を食べているとき、ポロポロと口からこぼすようになった」
あるいは、「顔を洗うのを嫌がるようになった(触ると痛いから)」
これらを「年のせいだから仕方ない」と見過ごしてはいけません。
実は、顔の「感覚」や「動き」をコントロールしている神経にトラブルが起きている可能性があります。
今回は、高齢者に多い顔のトラブルの原因と、家族が気づいてあげるべきサインについて、専門的な神経の仕組みを噛み砕いてお話しします。
「感じる神経」と「動かす神経」は別物です
私たちの顔には、複雑な神経が張り巡らされていますが、大きく分けて2つの役割があります。
- 感じる役割(センサー): 「熱い」「冷たい」「痛い」を感じ取る。
- 動かす役割(モーター): 笑ったり、目を閉じたり、口を動かして食べる。
実はこの2つ、担当している神経が全く違います。
センサー役は「三叉(さんさ)神経」、モーター役は「顔面神経」と呼ばれています。
親御さんの困りごとが「痛み(感覚)」なのか、「動かしにくさ(運動)」なのかによって、疑うべき病気や対処法が変わってくるのです。
「電気が走るような激痛」なら:三叉神経痛
もし親御さんが「顔を洗うのが怖い」「歯磨きをするとビリッと電気が走る」と訴えるなら、「三叉神経痛」の可能性があります。
これは、顔の感覚センサーが過敏になり、少し触れただけで激痛が走る病気です。
虫歯と勘違いして歯医者さんに行っても治らず、痛みのあまり食事も摂れなくなり、体力が落ちてしまうこともあります。
【家族ができるサポート】
- 洗顔・口腔ケアグッズの見直し: 痛みを避けるため、極細毛の柔らかい歯ブラシや、拭き取りタイプの洗顔シートなど、刺激の少ないアイテムを提案してあげましょう。
- 受診のアドバイス: 「脳神経外科」や「ペインクリニック」が専門です。「ただの歯痛じゃないかもしれないから、一度専門医に診てもらおう」と背中を押してください。
「表情がこわばる・水が漏れる」なら:顔面神経麻痺
一方で、「片方の目が閉じにくい」「口からお茶がこぼれる」「表情が左右非対称」といった場合は、「顔面神経麻痺」の疑いがあります。
こちらは「痛み」ではなく「動き」の麻痺です。ウイルス感染や脳卒中の前兆として現れることもあります。
特に、脳梗塞などの場合は一刻を争います。「イーッ」と歯を見せてもらって、片方の顔が動いていなければ、すぐに救急車を呼ぶ判断が必要です。
【生活を助けるツール】
- 食事介助用品: 口が閉じにくく食べこぼしが増える場合は、口当たりの優しい「シリコンスプーン」や、飲み込みを助ける「とろみ剤」を活用すると、食事のストレスが減ります。
- 乾燥対策: 目が閉じにくくなるとドライアイになりやすいため、点眼薬や眼帯の利用について医師に相談しましょう。
まとめ
顔は、その人の健康状態を映す鏡です。
「痛いのか」「動かないのか」。その違いに気づけるのは、普段から親御さんの顔を見ている家族だけです。
「最近、お父さんの笑顔が少しぎこちないな」
そんな小さな違和感を大切にしてください。早期に発見できれば、治療で治るケースもたくさんあります。
「顔が痛い=三叉神経」。この知識があれば、適切な病院を選べます。
顔の「痛み」と「動き」が別の神経で支配されていること。実はこれ、介護福祉士の国家試験でも頻出の「人体の構造」に関する基礎知識なんです。
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