着替えを手伝っているとき、親御さんの腕に身に覚えのない内出血(紫斑)を見つけたり、背中を見たら粉が吹くほど乾燥していたりして、驚いたことはありませんか?
「どこかにぶつけたの?」と聞いても「覚えていない」と言う。
「痒いからもっと強く掻いてくれ」とせがまれる。
実はこれ、高齢者特有の体の変化によるものです。
私たちの皮膚は、外側から「表皮」「真皮」「皮下組織」という層になっていますが、高齢になると一番外側にある「表皮」が極端に薄くなります。その薄さは、なんとティッシュペーパー1枚分ほどとも言われています。
今回は、そんな繊細な高齢者の肌を守るために、今日から見直したいスキンケアの常識についてお話しします。
一番外側の「表皮」が、全ての攻撃を受け止めている
皮膚の一番外側にある「表皮」。ここは、紫外線や細菌、乾燥といった外敵から体を守る「バリア機能」の最前線です。
若い頃はこのバリアが頑丈で、水分もしっかり保たれています。
しかし、加齢とともに表皮は薄くなり、脂分(皮脂)も減ってカサカサになります。
例えるなら、「乾いてパリパリになった薄い紙」が体に張り付いているような状態です。
そんな状態で、少し何かにぶつかったり、テープを剥がしたりするだけで、簡単に皮膚がめくれたり(表皮剥離)、出血したりしてしまうのです。
「ゴシゴシ洗い」は肌への虐待かも?
親御さんの入浴スタイル、昔のままになっていませんか?
特に昭和世代の方は、「ナイロンタオルで垢が出るまでゴシゴシ擦らないと気が済まない」という方が少なくありません。
ですが、高齢者の薄い肌に対してそれを行うのは、ヤスリで皮膚を削っているのと同じです。
バリア機能である表皮を自ら傷つけ、乾燥とかゆみの悪循環(ドライスキン)を招いてしまいます。
今日から、「洗う」という意識を捨てて、「泡で包む」という意識に変えてもらいましょう。
繊細な肌を守る「3つのスキンケア神器」
「擦らないケア」を実践するために、道具をアップデートしましょう。
1. 摩擦ゼロで洗える「泡で出るボディソープ」
固形石鹸や液体ソープをタオルで泡立てるのではなく、最初から「泡で出てくるタイプのボディソープ」を使いましょう。
タオルは使わず、「手」で優しく撫でるように洗うだけで、汚れは十分に落ちます。高齢者向けの保湿成分が入っているものなら、なお良しです。
2. お風呂上がりの鎧「高保湿ローション・ワセリン」
入浴後、タオルで拭いた瞬間から肌の乾燥は始まります。
パジャマを着る前に、全身に「保湿ローション」や「ワセリン」を塗りましょう。
高級なものである必要はありません。大切なのは「毎日たっぷり使うこと」。ポンプ式の大容量タイプなら、蓋を開ける手間もなく、こまめに塗ることができます。
3. 肌への刺激を減らす「縫い目のない肌着」
化学繊維の肌着や、縫い目が肌に当たってチクチクすることが、かゆみの原因になることがあります。
肌に直接触れる下着は、「綿100%」や「シルク混」など天然素材のものを選びましょう。最近は、縫い目が外側になっていたり、タグがプリントされていたりする「シニア向け肌着」も多く販売されています。
まとめ
高齢者の肌トラブルの多くは、「洗いすぎ」と「保湿不足」から来ています。
「お父さん、そのタオル痛くない? ふわふわの泡で洗ったほうが気持ちいいよ」
そんな声かけで、親御さんの肌を「薄い紙」のように大切に扱ってあげてください。その優しさが、かゆみや痛みから解放してあげる一番の薬になります。
「皮膚の一番外側は表皮」。当たり前のようで深い知識です。
皮膚がどのような層でできているか、一番外側で私たちを守っているのは何か。この人体の構造を知っていることは、介護福祉士の国家試験でも正解を導き出す重要な基礎知識になります。
「肌の構造なんて簡単!」と思ったあなた。ぜひ実際の試験問題で、その知識を確認してみてください。
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