実家に帰ると、親御さんが厚着をして暖房をケチっていたり、逆に夏場に蒸し風呂のような部屋で扇風機だけで過ごしていたりして、ギョッとしたことはありませんか?
「お母さん、寒くないの?」と聞いても、「これくらいが丁度いいのよ」と言う。
その言葉を信じて、「本人がいいなら」と放置するのは非常に危険です。
高齢になると、暑さや寒さを感じる「温度感覚」が鈍くなります。
本人が「快適だ」と感じていても、体は悲鳴を上げていることがよくあるのです。
今回は、高齢者の住宅環境で最も注意すべき「温度」の問題、特に冬場の死亡事故原因となる「ヒートショック」の防ぎ方についてお話しします。
部屋は暖かいのに、トイレは「冷蔵庫」?
冬場、暖房の効いたリビングから、暖房のない寒いトイレや脱衣所に行った瞬間、ブルッと震えた経験はありませんか?
この急激な温度変化が、高齢者にとっては命取りになります。
- 暖かい部屋から寒い場所へ移動する。
- 血管がキュッと縮み、血圧が急上昇する。
- 用を足した後や、お湯に浸かった瞬間に血管が広がり、血圧が急降下する。
この血圧の乱高下が、心筋梗塞や脳卒中を引き起こす「ヒートショック」の正体です。
これを防ぐ唯一の方法は、「家の中の温度差(バリア)」をなくすことです。
親の感覚に頼らない「温度のバリアフリー化」
「寒いならストーブつけてね」という声かけだけでは不十分です。
親御さんが意識しなくても、自動的に安全な温度になる環境を作ってあげましょう。
1. トイレと脱衣所に「人感センサーヒーター」
親御さんがスイッチを入れ忘れても大丈夫なように、人が入ると自動で温風が出る「人感センサー付きの小型セラミックファンヒーター」を設置しましょう。
トイレや脱衣所に入った瞬間から暖かい。それだけで、心臓への負担は劇的に減ります。
2. 「みはり機能付き」の温湿度計
リビングには、温度や湿度を大きく表示する「デジタル温湿度計」を置きましょう。
「熱中症注意」「インフルエンザ注意」などをアラームやランプで知らせてくれる「みはり機能」がついているものがおすすめです。
「私が寒いと言ってるから」ではなく、「機械が警告しているからエアコンをつけよう」と伝える方が、親御さんも納得してくれます。
3. エアコンを「スマートリモコン」で遠隔操作
「やっぱりエアコンをつけてくれない」という場合は、スマホで家電を操作できる「スマートリモコン」を導入するのも一手です。
離れて暮らしていても、室温を確認し、危険な温度になっていたら遠隔でエアコンをONにすることができます。(※ご本人に事前に了承を得ておきましょう)
夏場の「我慢大会」も命に関わります
冬だけでなく、夏も要注意です。
高齢者は「汗をかいてから冷房をつける」という習慣がある方も多いですが、それでは遅すぎます。
汗をかく機能自体が衰えているため、気づかないうちに体温が上がり、家の中で熱中症になってしまうのです。
「夏は28度、冬は20度以上」
この数字を絶対のルールとして、親御さんの感覚ではなく「温度計の数値」を基準に空調を管理するよう伝えてあげてください。
まとめ
「快適な温度」は、贅沢ではなく「命綱」です。
今度の週末、実家に帰ったらまずはトイレに入ってみてください。
もしそこが寒かったら、すぐに電気屋さんに走って、ヒーターをプレゼントしてあげましょう。その数千円が、親御さんの寿命を延ばす最高の投資になります。
「冬はトイレも暖める」。これがプロの常識です。
なぜ部屋だけでなくトイレの温度まで気にする必要があるのか。それは「温度差」こそが高齢者の血管を傷つける凶器(ヒートショックの原因)だからです。
この住環境の整備に関する知識は、介護福祉士試験でも頻出の重要ポイント。ぜひ実際の試験問題で確認してみてください。
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