「一緒に暮らそう」と誘ったのに親が激怒。それは「頑固」になったからではありません

離れて暮らす親御さんが70代、80代になると、子供としては心配が尽きません。
「転んだらどうしよう」「一人で寂しくないかな」

そんな思いから、一大決心をして「こっちに来て一緒に暮らそう」と提案することもあるでしょう。
きっと喜んでくれるはず。そう思っていたのに、返ってきた言葉は「行きたくない」「ここがいい」。

「せっかく心配して言ってるのに!」
「年をとって頑固になったなぁ」

そう感じてしまうかもしれませんが、ちょっと待ってください。
親御さんが首を縦に振らないのには、「住み慣れた場所を離れる恐怖」という、切実な理由があるのです。

今回は、同居を拒む親の心理と、私たち子供世代がついやってしまいがちな「無意識の決めつけ」についてお話しします。

目次

親にとっての引っ越しは「人生の喪失」かもしれない

私たち現役世代にとって、引っ越しは「新生活のスタート」というワクワクする側面があります。
しかし、高齢の親御さんにとっては意味が違います。

長年住んだ家、馴染みの商店街、挨拶を交わす近所の人、趣味のサークル仲間。
これら全てを手放して、誰も知り合いのいない土地へ行くことは、「自分の居場所と役割を失う(喪失体験)」ことと同義です。

たとえ便利で綺麗な家でも、話し相手もおらず、道もわからない場所では、親御さんは「ただのお世話される老人」になってしまいます。
「不便でも、ボロ家でも、自分の城で生きたい」。それが親御さんの本音であり、生きる誇りなのです。

家族の「心配」と、本人の「願い」が食い違ってしまうのはなぜでしょうか?良かれと思った提案がすれ違ってしまう原因と、本当のニーズを見つける方法はこちらを参考にしてください。

その言葉、「エイジズム」になっていませんか?

親を説得しようとして、こんな言葉を使っていませんか?

「年をとると頑固になるから、今のうちに決めたほうがいいよ」
「そのうち認知症になったら困るでしょ?」

親を心配するあまりの言葉ですが、これらは「エイジズム(年齢差別・偏見)」と呼ばれる考え方に基づいています。
「高齢者=衰えるもの、判断力がなくなるもの、頑固になるもの」という決めつけです。

元気でダンスを楽しみ、友人と笑い合っている親御さんに対して、この言葉はあまりに失礼で、尊厳を傷つけるものです。
「私の今の生活を見てくれていない」「バカにされている」と感じさせ、心を閉ざす原因になってしまいます。

「年をとったから判断できない」という決めつけは、親御さんのプライドを深く傷つけます。怒りの裏にある「老いへの恐怖」と、プライドを守る接し方について、詳しくはこちらをご覧ください。

同居しなくても「安心」は作れる

「親の生活を尊重したいけれど、やっぱり心配」。
そのジレンマを解消するために、同居以外の選択肢にも目を向けてみましょう。

1. ほどよい距離感の「見守りサービス」

ポットを使ったり、トイレのドアを開けたりすると通知が届く「見守りセンサー」を活用しましょう。
「監視」ではなく、「今日も元気で起きているな」と確認できるだけで、こちらの不安はぐっと減ります。

2. 緊急時の「かけつけサービス」

警備会社などが提供する「高齢者向け緊急通報サービス」を契約しておけば、いざという時にプロが駆けつけてくれます。
「何かあったらここを押してね」とペンダント型のボタンを渡しておくだけで、親御さんにとっても心強いお守りになります。

3. 会話を楽しむ「スマートディスプレイ」

画面付きのスマートスピーカー(Amazon Echo Showなど)を設置すれば、顔を見ながら気軽にビデオ通話ができます。
「孫の顔を見せる」という楽しみを提供しつつ、さりげなく顔色や部屋の様子を確認できる最強のツールです。

まとめ

親御さんが「ここがいい」と言うなら、それは今の生活に満足し、幸せを感じている証拠です。
無理に環境を変えることだけが親孝行ではありません。

「お父さんたちがそこまで言うなら、今の生活を一番に応援するよ」
そう言って、便利なツールと共に「遠くからの見守り」を提案してみてください。きっと、今までで一番安心した顔を見せてくれるはずです。

親御さんが「ここがいい」と譲らない場合、無理に同居するのではなく、「プロに見守ってもらう」という選択肢もあります。24時間365日、自宅にヘルパーや看護師が駆けつけてくれるサービスについて、ぜひ知っておいてください。

「年寄りは頑固」。その思い込みが親を傷つけているかも?
良かれと思って言った言葉が、実は「エイジズム(年齢への偏見)」だった。この事例は、家族関係だけでなく、介護福祉士の試験でも問われる「高齢者の心理と尊厳」に関する重要なテーマです。
「ドキッとした」というあなた。ぜひ実際の試験問題で、親御さんの気持ちを客観的に見つめ直してみませんか?
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