「最近、お父さんの背中が小さくなった気がする」
「食事は残さず食べているのに、なぜか体重が減っていく」
久しぶりに会った親御さんの姿を見て、そんな不安を抱いたことはありませんか?
「もっとたくさん食べなきゃダメだよ!」と励ましてお肉やご飯を勧めても、なかなか太らない。それどころか、無理に食べてお腹を壊してしまう……。
実は、高齢者の「痩せ」の原因は、食べた量ではなく、体の中で行われる「吸収」の力が落ちていることにあるかもしれません。
今回は、私たちが意外と誤解している「栄養吸収」の仕組みと、弱った吸収力を助けるための具体的な工夫についてお話しします。
栄養の9割は「胃」ではなく「小腸」で決まる
皆さんは、「食べたものはどこで栄養になるの?」と聞かれたら、どう答えますか?
なんとなく「胃」で消化されて栄養になるイメージが強いかもしれません。
しかし、胃の主な役割は、食べ物をドロドロに溶かすことだけ。
実際に栄養素の大部分を吸い上げ、血液に乗せて全身に送り出しているのは、その先にある「小腸」なのです。
小腸は、広げるとテニスコート一面分もの面積があると言われる巨大な吸収工場です。
ところが、高齢になるとこの工場の働きが鈍くなります。
- 栄養をキャッチする絨毛(じゅうもう)が短くなる
- 食べた物を送り出す動き(蠕動運動)が弱くなる
その結果、若い頃と同じ量を食べていても、体に取り込める栄養の量が減ってしまい、知らず知らずのうちに「低栄養(フレイル)」の状態に陥ってしまうのです。
「吸収率」を上げるための3つの工夫
小腸という工場が弱っているなら、そこに届ける荷物(食べ物)の方を工夫してあげる必要があります。
「量」を増やすのではなく、「質」と「形」を変えて、吸収を助けてあげましょう。
1. 「調理家電」で事前消化を助ける
小腸に届く前に、できるだけ食べ物を細かくしておくことが吸収への近道です。
でも、高齢者の「噛む力」には限界があります。そこで便利なのが、「ハンドブレンダー」や「フードプロセッサー」です。
野菜スープや肉料理をポタージュ状やムース状にするだけで、消化にかかる負担は劇的に減り、その分スムーズに栄養が吸収されます。最近は、見た目を損なわずに柔らかくできる調理家電も増えています。
2. 「高栄養食品」で効率よく摂る
食が細くなり、たくさん食べられない場合は、少量で多くの栄養が摂れる「高栄養流動食」や「栄養補助ゼリー」を活用しましょう。
ドラッグストアの介護食コーナーには、お茶碗一杯分のエネルギーがジュース一本で摂れる商品(メイバランスやアイソカルなど)がたくさん並んでいます。
おやつの時間にこれらをプラスするだけで、不足しがちなタンパク質やビタミンを効率よく小腸に届けることができます。
3. 腸内環境を整える「整腸剤・発酵食品」
吸収工場である小腸のコンディションを整えることも大切です。
ヨーグルトや納豆などの「発酵食品」を意識して摂るほか、サプリメントや指定医薬部外品の「整腸剤」を利用するのもおすすめです。
腸内細菌のバランスが良くなると、栄養の吸収効率が上がるだけでなく、免疫力アップにもつながります。
まとめ
「食べる」ことだけが食事ではありません。
「吸収して、身になる」ところまでが食事です。
親御さんが痩せてきたなと感じたら、「もっと食べて」と言う前に、「お腹に優しいものに変えてみようか」と提案してみてください。
その優しさが、弱った小腸をいたわり、再び元気を取り戻すきっかけになるはずです。
「栄養吸収の主役は小腸」。この基礎知識、自信を持って言えますか?
「胃は消化、小腸は吸収、大腸は水分調整」。この役割分担を正しく理解していることは、高齢者の低栄養対策の基本であり、介護福祉士国家試験の「人体の構造」における鉄板問題でもあります。
「知ってた!」というあなた。ぜひ実際の試験問題で、その知識を確信に変えてみてください。
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