実家で暮らす親御さんが、夜中にトイレに起きた際、廊下で転んでしまった。
あるいは、寝室から出てきた瞬間にふらついて、ヒヤッとした経験はありませんか?
「やっぱり足腰が弱っているんだな」
「筋トレをさせなきゃ」
そう考えがちですが、実はその転倒、足ではなく「目」の老化が一番の原因かもしれません。
昼間は元気に歩いているのに、なぜ夜だけ危なっかしいのか。
今回は、高齢者が直面する「暗闇の見えにくさ」の正体と、転倒事故を防ぐための具体的な光の工夫についてお話しします。
映画館に入った瞬間、何も見えなくなりませんか?
明るい場所から急に暗い場所に入ると、最初は真っ暗で何も見えませんが、しばらくすると目が慣れて周りが見えるようになりますよね。
これを専門用語で「暗順応(あんじゅんのう)」と言います。
若い頃は、この切り替えがスムーズに行われます。
しかし、高齢になると、この「目が暗闇に慣れるまでの時間」が極端に長くなるのです。
「魔の数分間」が事故を招く
例えば、親御さんが夜中に目を覚まし、電気を消した寝室から、薄暗い廊下に出たとします。
若ければ数秒で目が慣れて足元が見えますが、高齢者の場合、目が慣れるまでに数分以上かかることもあります。
つまり、親御さんは「目隠しをしたまま、記憶だけを頼りにトイレに向かっている」のと同じ状態なのです。
これでは、少しのスリッパのズレや、床に落ちている物に気づかず、転倒してしまうのも無理はありません。
「見えない」を前提にした安全対策
「気をつけて歩いてね」という注意喚起だけでは、生理的な目の機能低下はカバーできません。
親御さんの目が暗闇に慣れるのを待つのではなく、「そもそも暗闇を作らない」環境づくりが重要です。
1. 必須アイテム「人感センサー付き足元灯」
一番効果的で、すぐに導入できるのが「人感センサーライト(フットライト)」です。
コンセントに差し込むタイプや、乾電池式のものを、寝室の出入り口、廊下、トイレの前に設置しましょう。
人が通るとパッと足元を照らしてくれるので、暗順応の遅れをカバーし、「見えない恐怖」を解消してくれます。
2. スイッチの位置がわかる「蓄光テープ」
「電気をつけたいけど、スイッチの場所がわからなくて手探りしているうちに転んだ」というケースも多いです。
電気のスイッチや、段差のある場所に、暗闇で光る「蓄光テープ」を貼っておきましょう。
「ここを押せば明るくなる」「ここに段差がある」という目印があるだけで、夜間の移動の安全性は格段に上がります。
3. 思い切って「常夜灯」をつけっぱなしにする
転倒リスクが高い場合は、廊下の電気を一晩中つけておく、あるいは足元灯を常時点灯させておくのも一つの手です。
「電気代がもったいない」と親御さんは嫌がるかもしれませんが、「転んで骨折して入院する費用に比べれば安いものだよ」と説得してあげてください。最近のLED電球なら、電気代は微々たるものです。
まとめ
夜の転倒は、骨折や寝たきりにつながる大きなリスクです。
でも、ほんの少し「光」を足してあげるだけで、そのリスクは劇的に下げることができます。
「お父さんの足元を照らしてあげてね」
そんな優しい言葉と一緒に、センサーライトをプレゼントしてみてはいかがでしょうか。
「暗いところに目が慣れる=暗順応」。この言葉、覚えておいて損はありません。
加齢によってこの時間が「延長する(長くなる)」という事実は、高齢者の住環境を考える上で最も重要な知識の一つであり、介護福祉士試験の常連問題でもあります。
「理屈がわかれば対策ができる!」とピンときたあなた。ぜひ実際の試験問題で、その理解を深めてみてください。
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