「最近、背中が痒くて仕方がないんだ」
久しぶりに会った親御さんが、ボリボリと体を掻いている姿を見たことはありませんか?
そんな時、私たちはつい良かれと思って、「背中を流してあげるよ」とナイロンタオルでゴシゴシと洗ってあげたくなるものです。「綺麗に洗えば痒みも治まるはず」というのは、私たちが若い頃に身につけた感覚ですよね。
しかし、高齢者の体において、その常識は通用しないばかりか、かえって症状を悪化させる「NG行動」になってしまうことがあります。
今回は、高齢者の体の変化に基づいた「意外なNGケア」と、病気や怪我を防ぐために知っておきたい生活の知恵についてお話しします。
1. 乾燥した肌に「ゴシゴシ洗い」は厳禁
高齢者の皮膚トラブルで最も多いのが、「皮脂欠乏症(老人性乾皮症)」です。
加齢とともに皮膚の脂分(皮脂)が減り、水分を保つバリア機能が壊れてしまっている状態です。
ここに、「清潔にすれば治る」と思ってナイロンタオルで強く擦るとどうなるでしょうか?
わずかに残っていた必要な皮脂まで根こそぎ削ぎ落としてしまい、皮膚はさらに乾燥し、痒みが爆発してしまいます。
正解は「泡で手洗い」
親御さんが痒がっている時こそ、「洗いすぎない」ことが重要です。
- 石鹸をしっかり泡立てる。
- ナイロンタオルは使わず、「手」で優しく撫でるように洗う。
- お風呂上がりにはすぐに保湿クリームを塗る。
「洗う」よりも「守る」ケアに切り替えることが、痒みを止める近道です。
2. 膝や腰が痛いなら「布団」はやめよう
「関節リウマチ」や「変形性膝関節症」など、関節に痛みを抱える高齢者は少なくありません。
もし親御さんが、畳に布団を敷いて寝ているなら、見直しのタイミングかもしれません。
低い床から立ち上がったり、布団を上げ下ろししたりする動作は、私たちが思う以上に膝や腰に強烈な負担をかけます。
痛みを我慢して使い続けると、関節の変形が進んでしまうリスクがあります。
正解は「ベッドと椅子の生活」
関節を守る鉄則は、負担を減らすことです。
思い切って「ベッド」や「椅子」を中心とした洋式の生活スタイルに変えることを提案してみてください。
立ち座りが楽になるだけで、生活の活動範囲が広がり、筋力の維持にもつながります。
3. 「薬を飲んでいるから大丈夫」という油断
糖尿病の治療を受けている親御さんの中に、こんな勘違いをしている方はいませんか?
「薬をちゃんと飲んでいるから、甘いものを食べても平気だ」
これは非常に危険な思い込みです。
糖尿病治療の基本は、あくまで「食事」と「運動」です。薬は、それでも血糖値が下がらない場合の「補助」に過ぎません。
薬を免罪符にして暴飲暴食を続ければ、動脈硬化が進み、脳梗塞や心筋梗塞などの命に関わる病気を引き起こしてしまいます。
4. 「めまい」と「転倒」の怖さを知る
最後に、高齢者の生活を一変させてしまう最大のリスク、「転倒」についてです。
高齢者が転んで足の付け根(大腿骨頸部)を骨折すると、手術や入院が必要になり、そのまま「寝たきり」になってしまうケースが非常に多いのです。
転倒の原因の一つに「めまい」や「ふらつき」があります。
これらを「立ちくらみかな?」と軽く見てはいけません。高齢者の場合、耳の病気だけでなく、「脳梗塞」の前兆としてめまいが起きている可能性があるからです。
- 呂律(ろれつ)が回らない
- 片方の手足が痺れる
めまいと同時にこうしたサインがないか、家族が気にかけてあげることが重要です。
まとめ:常識を「高齢者モード」にアップデート
良かれと思ってやったことが逆効果だったり、「大丈夫だろう」という油断が大きな病気につながったりします。
- 痒い時は、洗わず保湿する。
- 痛い時は、和式から洋式へ変える。
- ふらついたら、脳の病気を疑う。
親御さんの体を守るために、私たちの持っている「健康の常識」を、少しだけ高齢者向けにアップデートしていきましょう。
