久しぶりに実家に泊まった時、お風呂に入ろうとして足を入れ、その熱さに飛び上がった経験はありませんか?
「お母さん、これ熱すぎるよ! 火傷しちゃう!」
そう言っても、親御さんは涼しい顔でこう返すかもしれません。
「そうかえ? これくらい熱くないと、入った気がしないよ」
「昔から江戸っ子気質だから」とか「熱いのが好みだから」で済ませてしまいがちですが、実はこれ、好みの問題ではありません。
加齢によって皮膚の「温度を感じるセンサー(温度覚)」が鈍くなっている証拠なのです。
熱さを感じにくいまま高温のお風呂に入り続けることは、冬場の死亡事故原因トップである「ヒートショック」に直結する非常に危険な行為です。
今回は、なぜ高齢者は熱いお湯を好むのか、その体のメカニズムと、命を守るための安全な入浴ルールについてお話しします。
42℃以上のお湯は、体を「戦闘モード」にする
私たちのお風呂の適温は、一般的に38℃〜40℃程度の「ぬるめ」が良いとされています。
この温度帯だと、体をリラックスさせる「副交感神経」が働き、血管が広がって血圧が安定するからです。
しかし、42℃を超えるような「熱いお湯」に入ると、体はびっくりして「交感神経(興奮の神経)」のスイッチを入れてしまいます。
これは、いわば体が「戦闘モード」になった状態です。
- 血管がキュッと縮まる
- 心臓がドキドキする
- 血圧が急激に上昇する
「カッと熱くなって温まった気がする」のは、実は体が非常事態を感じて興奮しているだけなのです。
特に血管が脆くなっている高齢者にとって、この血圧の乱高下は脳卒中や心筋梗塞の引き金になります。
親御さんが「熱くないと温まらない」と言うのは、感覚が鈍っているために、この「ビリビリくる刺激」がないと満足できなくなっている危険な状態だと言えます。
感覚に頼らない!安全な入浴のための3つのツール
「熱いのは体に毒だよ」と言葉で伝えても、長年の習慣はなかなか変えられません。
感覚ではなく「数字」や「道具」を使って、自然と安全な入浴ができる環境を整えましょう。
1. 湯温を可視化する「デジタル湯温計(お風呂用温度計)」
給湯器の設定温度を40℃にしていても、追い焚きをしすぎて熱くなっていることがよくあります。
湯船に浮かべるかわいい「湯温計」を一つ置いてみてください。
「42℃になったらアラームが鳴る」といった機能付きのものもあります。「お父さんの感覚ではなく、機械が危険だと言ってるよ」と客観的に伝えることができます。
2. ぬるくてもポカポカ「炭酸ガス系の入浴剤」
ぬるいお湯だと湯冷めしそう……という不安を解消するのが「入浴剤」です。
特にシュワシュワと泡が出る「炭酸ガス系」の入浴剤は、血管を広げて血流を良くする効果が高く、38℃〜40℃のぬるめのお湯でも体の芯まで温まります。
「体に良い温泉の素を買ってきたよ」と言ってプレゼントすれば、喜んで使ってくれるはずです。
3. 温度差をなくす「脱衣所用ヒーター」
熱いお湯を求める心理の裏には、「脱衣所が寒くて体が冷え切っている」という事情もあります。
寒い場所から熱いお湯へ飛び込む時の温度差(ヒートショック)が一番危険です。
脱衣所に小型の「セラミックファンヒーター」や「人感センサー付き暖房」を置き、服を脱ぐ場所を暖かくしておくだけで、熱湯への欲求はずいぶん抑えられます。
まとめ
お風呂は一日の疲れを癒やす「極楽」であるべきで、命を削る「我慢大会」であってはなりません。
「長生きしてほしいから、40℃にしてゆっくり入ってね」
そんな言葉とともに、まずは温度計をひとつ、お風呂場に浮かべてみませんか?
「熱い風呂=血圧上昇」。このメカニズム、説明できますか?
なんとなく体に悪いと知ってはいても、「なぜ悪いのか(交感神経が優位になるから)」を論理的に説明できること。これは介護福祉士の国家試験でも正解となる「人体の構造と機能」の重要知識です。
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