救急車を待っていたら手遅れに?親が倒れた時の「最初の3分」が運命を決める理由

実家に帰省中、楽しく会話をしていた親御さんが、急に胸を押さえて倒れ込んだら。
声をかけても反応がない。息をしていないように見える。

そんな時、あなたは冷静に行動できる自信がありますか?
「すぐに119番して、救急車を待つ」
そう答える方が多いかもしれません。しかし、厳しい現実をお伝えしなければなりません。

救急車を待っているだけでは、親御さんの命を救えない可能性が高いのです。

今回は、高齢者の急変時に家族だけが提供できる「命のリレー」について、救急医療のデータをもとにお話しします。

目次

救急車が来るまで「平均9分」。これでは間に合わない

日本で119番通報をしてから救急車が現場に到着するまで、平均でどれくらいかかるかご存知ですか?
総務省のデータによると、全国平均で約9〜10分かかると言われています。

一方で、心臓が止まってから「助かる確率」は、時間とともに急激に下がっていきます。
「カーラーの救命曲線」という有名なグラフによると、心停止からたった3分経過するだけで、死亡率は約50%に達してしまうのです。

つまり、救急車のサイレンが聞こえる頃には、すでに手遅れになっている可能性が高いということ。
この「空白の9分間」を埋められるのは、その場に居合わせた家族(あなた)しかいません。

もし親御さんが『自宅で最期を迎えたい』と望んでいる場合、慌てて救急車を呼ぶと警察が介入することになるかもしれません。穏やかな看取りのために知っておくべき『医師との連携』についてはこちらです。

「骨が折れてもいい」覚悟で胸を押す

では、具体的に何をすればいいのでしょうか。
最も重要なのは、「胸骨圧迫(心臓マッサージ)」です。

「素人がやって余計に悪化させたらどうしよう」
「肋骨を折ってしまったら怖い」

そんな恐怖心がブレーキをかけるかもしれません。しかし、救急のプロはこう言います。
「躊躇せず、強く押してください。肋骨が折れても、命があれば治せます」

意識がなく、普段通りの呼吸をしていない(または死戦期呼吸というあえぐような呼吸をしている)場合は、心停止を疑って直ちに胸骨圧迫を開始してください。
胸の真ん中を、5cm沈むくらい強く、1分間に100〜120回のリズム(「アンパンマンのマーチ」や「地上の星」のテンポ)で絶え間なく押し続けること。これが、止まった心臓の代わりに脳へ血液を送り届ける唯一の方法です。

心臓マッサージ以外にも、吐いていたり出血していたりする場合の『やってはいけない行動』があります。間違った処置で悪化させないために、こちらも確認しておいてください。

いざという時にパニックにならないための「お守り」

頭では分かっていても、いざという時はパニックになるものです。
平常時のうちに、便利なツールやサービスを準備しておきましょう。

1. 近くのAEDがわかる「救命マップアプリ」

心臓に電気ショックを与えて正常なリズムに戻す「AED」
いざという時、どこにあるか探せますか?
「日本全国AEDマップ」などのスマホアプリを入れておけば、現在地から一番近いAEDの場所がすぐに分かります。帰省した際に、実家の近くのAED設置場所(コンビニや公民館など)をチェックしておくだけでも安心です。

2. 体で覚える「普通救命講習」

動画を見るのと、実際に人形を押すのとでは大違いです。
消防署などが実施している「普通救命講習」に一度参加してみませんか?
3時間程度の講習で、胸骨圧迫やAEDの使い方を実技で学べます。「一度やったことがある」という経験が、パニックを防ぐ最強のワクチンになります。

3. プロにつながる「緊急通報サービス」

「一人で対応できるか不安」という場合は、警備会社(ALSOKやセコムなど)の「緊急通報サービス」を導入するのも手です。
ボタン一つでガードマンが駆けつけたり、救急車の手配をしてくれたりします。プロがバックについている安心感は、何物にも代えがたいものです。

まとめ

「あの時、もっと早く押していれば」
そんな後悔をしないために。

「お父さん、もしもの時は私が肋骨を折る勢いで助けるからね!」
そんな冗談を言いながら、一度家族で救命の話をしてみてください。それが、命を守る最初の準備になります。

急変は突然起こるものですが、実は『熱が出ない肺炎』など、分かりにくい予兆があることも。倒れる前に異変に気づくための、高齢者特有のサインを知っておきませんか?

「呼吸なし=即圧迫」。この判断ができるあなたは、命の恩人です。
救急車を待たずに蘇生を開始すること。これは勇気の問題ではなく、生存率を上げるための医学的に正しい手順であり、国家試験の正解でもあります。
「もしもの時、私は動けるかな?」とシミュレーションしながら、実際の試験問題を確認してみましょう。
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