実家に帰って親御さんと食事をしている時、こんな光景を見たことはありませんか?
ご飯を一口食べるたびに、お茶や汁物で流し込んでいる。
あるいは、食後に近くで話した時、「あれ、ちょっとお口のニオイが強くなったかな?」と感じる。
「年をとれば、飲み込む力も弱くなるし、口臭くらいあるでしょう」
そう軽く流してしまいがちですが、実はこれ、口の中の「唾液」が減ってしまっているSOSサイン(ドライマウス)かもしれません。
唾液はただの「水」ではありません。高齢者の健康、そして命を守るための非常に重要な役割を担っているのです。
今回は、意外と見落としがちな「唾液の減少」が引き起こすリスクと、今日からできる潤いアップ術についてお話しします。
唾液は「天然の消毒液」であり「潤滑油」
なぜ、年をとると唾液が減るのでしょうか。
加齢による生理的な機能低下に加え、高血圧の薬などの副作用で口が乾きやすくなることもあります。
唾液が減ると、親御さんの口の中では大変なことが起きます。
- 口臭・虫歯が増える(洗浄作用の低下)
唾液には、口の中の汚れを洗い流し、細菌の繁殖を抑える働きがあります。これが減ると、菌が増え放題になり、強い口臭や虫歯の原因になります。 - 飲み込みにくくなる(潤滑作用の低下)
パサパサしたパンや、粘り気のあるお餅などを食べる時、唾液はそれらをまとめて喉を通りやすくする「オイル」の役割をします。唾液が足りないと、食べ物が喉に詰まりやすくなり、最悪の場合、窒息や誤嚥(ごえん)につながります。
「お茶で流し込む」という行動は、足りないオイルを無理やり水で補おうとしている証拠なのです。
放置しないで!ドライマウス対策「3つの神器」
「唾液が少ないなら、水を飲めばいい」というわけではありません。
口の中の粘膜を保護し、本来の唾液の働きを助けるためのケアが必要です。
1. 食前の儀式「唾液腺マッサージ」
お金をかけずにできる一番の対策は、唾液の工場(唾液腺)を刺激することです。
食事の前に、以下の場所を優しくマッサージするよう勧めてみてください。
- 耳下腺(じかせん): 耳たぶの少し前、上の奥歯あたりを指全体で回すように押す。
- 顎下腺(がっかせん): 顎の骨の内側を、親指で突き上げるように押す。
「いただきます」の前の習慣にすると、じわっと唾液が出てきて食事がスムーズになります。
2. 乾燥を防ぐ「口腔保湿ジェル・スプレー」
「朝起きた時に口がネバネバする」「口の中がヒリヒリする」という場合は、専用の保湿剤を使いましょう。
ドラッグストアの介護用品売り場にある「口腔保湿ジェル」や「口腔用スプレー」は、口の中に潤いの膜を作ってくれます。
枕元に置いておき、寝る前や起きた時に使うのがおすすめです。乾燥による口臭予防にも効果的です。
3. お口の筋トレになる「ハードグミ・昆布」
唾液を出す一番の方法は、やはり「よく噛むこと」です。
おやつには、口の中で溶けてしまうクッキーよりも、少し歯ごたえのある「昆布」や「ハードグミ」、あるいは「キシリトールガム」を選んでみましょう。
「噛む」という刺激が脳に伝わり、自然と唾液の分泌量が増えていきます。(※飲み込みに不安がある方は、誤嚥に注意してください)
まとめ
「たかが唾液」と侮ってはいけません。
それは、美味しい食事を楽しみ、細菌から体を守るための「命の水」です。
「最近、お茶飲む量が増えてない?」
そんな気づきから、親御さんのお口の健康チェックを始めてみてください。
「お茶で流し込む=唾液不足」。この着眼点、プロ級です。
口臭や嚥下困難の原因が「唾液分泌の低下」にあると見抜くこと。これは介護の現場で観察力(アセスメント能力)を問う、国家試験の鉄板問題です。
「私ならすぐに気づけるかも!」と思ったら、ぜひ実際の試験問題でその観察力を試してみてください。
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