「今日は何曜日?ここはどこ?」親の“トンチンカン”な質問は、不安の叫びかもしれません。認知症の「見当識障害」を理解する

実家に帰った時、親御さんからこんな質問を繰り返されたことはありませんか?

「今日は何月何日だっけ?」
「次のゴミの日はいつ?」
「(自宅にいるのに)ここはどこ?」

最初は「カレンダー見てよ」と笑って答えていても、何度も続くと「しっかりしてよ」「ボケちゃったの?」と不安やイライラが募ってしまいますよね。

でも、ちょっと想像してみてください。
もしあなたが、真っ暗な海の上に、時計もコンパスも持たずに放り出されたとしたら、どんな気持ちになるでしょうか?

認知症の症状の一つである「見当識障害(けんとうしきしょうがい)」とは、まさに自分の立ち位置を見失い、暗闇の中を漂っているような状態なのです。

今回は、親御さんが感じている「見えない恐怖」の正体と、家族ができる道案内(サポート)についてお話しします。

目次

「時間」→「場所」→「人」の順に消えていく

見当識障害とは、「自分が今、いつ、どこで、誰といるか」を正しく認識できなくなる障害です。
一般的には、以下の順番でわからなくなっていくと言われています。

  1. 時間: 「今日は何曜日?」「今は朝?夜?」がわからなくなる。約束の時間を守れなくなったり、季節感のない服を着たりします。
  2. 場所: 「ここはお家?」「トイレはどこ?」がわからなくなる。慣れ親しんだ家の中で迷子になったり、トイレに間に合わずに失敗(失禁)してしまったりします。
  3. 人: 「あなたは誰?」と、家族や友人の顔がわからなくなる。

今回の事例のCさん(90歳)も、大好きなレクリエーションの日時を忘れたり、施設内でトイレの場所がわからなくなったりしていました。
これは「うっかり忘れ」ではなく、脳の中のカレンダーと地図が、消しゴムで消されてしまった状態なのです。

「なんでわからないの!」は禁句です

親御さんが同じことを何度も聞くのは、不安だからです。
「さっき言ったでしょ!」と怒っても、脳の地図が消えているので、本人はどうしようもありません。怒られれば怒られるほど、「自分はダメになってしまった」と恐怖が増し、症状が悪化してしまいます。

正解は、「何度でも、初めて聞かれた時のように答えること」です。
「今日は火曜日だよ」「トイレはあっちだよ」と、優しくコンパス代わりになってあげてください。

生活の中の「道しるべ」を増やそう

親御さんが一人でも迷わないように、環境や道具でサポートすることも効果的です。

1. 「今日」がひと目でわかるカレンダー

小さな数字のカレンダーではなく、「日めくりカレンダー」や、日付と曜日が大きく表示される「デジタル電波時計」を目につく場所に置きましょう。
「これを見ればわかる」という安心感が、不安を和らげます。

2. トイレのドアを「目立たせる」

廊下が同じような壁紙だと、どこがトイレかわからなくなります。
トイレのドアに「トイレ」と大きく書いた紙を貼ったり、「花の絵の暖簾(のれん)」をかけたりして、視覚的に目立たせましょう。
夜間は、人感センサーライトでトイレまでの道を照らしてあげるのも有効です。

3. スケジュールを「声」でお知らせ

レクリエーションや通院の日時を忘れてしまう場合は、指定した時間に音声で教えてくれる「おしゃべりロボット」「スマートスピーカー」を活用するのも手です。
「Cさん、今日はレクの日ですよ」と優しく教えてくれれば、生活のリズムが整いやすくなります。

まとめ

「ここはどこ?」「今はいつ?」
そんな質問が出始めたら、それは親御さんが不安の海で溺れかけているサインです。

叱るのではなく、「大丈夫、ここはあなたの家だよ」と手を握ってあげてください。
あなたの存在そのものが、親御さんにとって一番確かな「道しるべ」になるはずです。

「見当識障害」。この言葉を知れば、親の行動の謎が解けます。
時間や場所がわからなくなること。これは認知症の中核的な症状であり、介護福祉士の国家試験でも必ず出題される重要キーワードです。
「だからトイレに間に合わなかったのか!」と納得できたあなた。ぜひ実際の試験問題で、その症状の現れ方を確認してみてください。
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