親に「おむつ」を勧めたら怒られた…。その時、家族が忘れている「一番大切な気持ち」とは?

「最近、トイレの失敗が増えてきたな」
「洗濯物が大変だし、そろそろおむつを使ってほしい」

そう思って親御さんに「おむつ、買ってきたよ」と渡した途端、「俺をバカにするな!」「こんなもの履けるか!」と激怒された経験はありませんか?

家族としては「便利だし、安心なのにどうして?」と困惑してしまいますよね。
しかし、高齢者にとって「おむつを履く」ということは、私たちが想像する以上に、「大人としての尊厳(プライド)」に関わる重大な出来事なのです。

今回は、おむつ導入の際にぶつかる「心の壁」と、親御さんのプライドを傷つけずにスムーズに使い始めてもらうためのヒントをお話しします。

目次

おむつは「便利な道具」である前に「恥ずかしいもの」

私たち介護する側にとって、おむつは「洗濯の手間を減らし、床の汚れを防ぐ便利な道具」です。
しかし、される側にとっては違います。

「赤ちゃんの頃に戻ってしまったようだ」
「もう自分一人ではトイレもできないのか」

おむつを渡されることは、「人としての終わり」を突きつけられたような絶望感や、強烈な「羞恥心(恥ずかしさ)」を感じさせる行為なのです。
怒ったり拒否したりするのは、その恥ずかしさを隠すための精一杯の抵抗かもしれません。

まずは、「おむつ=恥ずかしい」という親御さんの気持ちを、丸ごと受け止めることから始めましょう。

「家族の都合」を押し付けていませんか?

「漏らされると私が大変だから」
「夜中にトイレに起きられると迷惑だから」

そんな「こちらの都合」が見え透いてしまうと、親御さんは余計に意固地になります。
また、「長時間用だから1日変えなくていいよ」なんて言葉もNGです。汚れた下着をつけ続けるのは誰だって不快ですし、床ずれや感染症の原因にもなります。

あくまで「お父さんが快適に過ごすため」「お母さんが安心して眠れるため」という視点で提案することが大切です。

傷つけずに勧める「魔法の言い換え」

では、どう切り出せばよいのでしょうか。ポイントは、言葉の選び方と商品の選び方です。

1. 「おむつ」とは呼ばない

言葉のイメージは強烈です。「おむつ」という言葉は使わず、別の呼び方に変えてみましょう。

  • 「リハビリパンツ」
  • 「安心パンツ」
  • 「紙パンツ」

これだけで、「赤ちゃん用」ではなく「大人用の機能性下着」というニュアンスに変わります。

2. 「下着に近いもの」から始める

いきなりテープで止めるタイプ(いわゆるおむつ)を見せられたら、誰でもショックを受けます。
最初は、薄手でゴワゴワしない、見た目が普通の下着に近い「パンツタイプ」から始めましょう。
色は白だけでなく、ブルーやピンクなどおしゃれなものも増えています。

3. 「保険」として提案する

「これを履いて!」と強制するのではなく、「念のためのお守り」として提案します。

「長時間のドライブでトイレに行けないと困るから、今日だけ保険で履いておこうか」
「風邪で咳き込んだ時に、ちょっと漏れたら気持ち悪いから、これを使ってみない?」

「あなたのトイレ能力を否定しているわけではない」というメッセージを込めることで、受け入れてもらいやすくなります。

まとめ

おむつは、排泄の失敗を隠し、これまで通り外出や交流を楽しむための「前向きなツール」です。

「これを履けば、またバス旅行に行けるね」
そんな未来の楽しみとセットにして、優しく手渡してあげてください。

「本人の羞恥心に配慮する」。これが介護のプロの鉄則です。
「家族の都合」や「機能性」よりも、まずは利用者の「恥ずかしい」という気持ちに寄り添うこと。これが介護福祉士国家試験でも「最も適切」とされる対応です。
「やっぱり気持ちが一番なんだ」と再確認できたあなた。ぜひ実際の試験問題で、その優しさがどう問われているか見てみませんか?
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