親の最期をどこで迎える?「死亡診断書」の重みと在宅看取りの必須条件

「住み慣れた自宅で、最期まで過ごしたい」
親御さんがそう願ったとき、あるいはご家族がそうさせてあげたいと思ったとき、具体的にどのような準備が必要かご存知でしょうか。

介護ベッドやヘルパーさんの手配など、生活の準備には目が行きがちです。しかし、盲点となりやすいのが「最期の瞬間、誰に連絡をするか」という問題です。

人が亡くなった後、葬儀や火葬、役所の手続きを進めるためには、医学的・法的に死を証明する「死亡診断書」という書類が必ず必要になります。
このたった一枚の紙がないと、私たちは大切な人を送ることができません。

今回は、この重要な書類を書ける「限られた資格」の話を通じて、自宅で穏やかな最期を迎えるために必要な準備についてお話しします。

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「死亡診断書」を書けるのは医師だけ

介護の現場では、ケアマネジャーや介護福祉士(ヘルパー)が、親御さんの生活を一番近くで支えてくれます。最期の瞬間まで手を握り、寄り添ってくれるのも彼らかもしれません。

しかし、いざ息を引き取ったとき、彼らには法的に「死にました」と診断し、証明書を書く権限はありません。
薬剤師さんも同様です。

日本の法律において、死亡診断書を交付できるのは、原則として「医師」(および歯科医師)だけと定められています。

つまり、どんなに手厚い介護を受けていても、最後には必ず「医師」による診断を受けなければならないのです。

「かかりつけ医」がいないと警察沙汰に?

病院に入院していれば、主治医がすぐに死亡確認をしてくれます。問題は「自宅」で亡くなった場合です。

もし、定期的に診察に来てくれる「かかりつけ医(往診医)」がいない状態で、朝起きたら親御さんが亡くなっていたとします。
慌てて救急車を呼ぶとどうなるでしょうか?

搬送先の病院で「かかりつけ医がいない」「死因が不明」と判断された場合、事件性がないかを確認するために警察が介入することになります。
これを「異状死」としての扱いといいます。

穏やかに見送りたかったはずが、警察による事情聴取や検視が行われ、ご家族が辛い思いをしてしまう……。そんな悲しいケースが実際に起こり得るのです。

「在宅看取り」には医師とのつながりが必須

こうした事態を避けるために最も重要なのが、「普段から診てくれている医師(かかりつけ医)」を持つことです。

定期的に訪問診療を受けていて、医師が「老衰や病気の進行により、そろそろお迎えが近いですね」と予測できている場合であれば、ご自宅で亡くなっても、医師を呼べばその場で死亡確認を行い、すぐに「死亡診断書」を書いてくれます。
これなら、警察を呼ぶ必要もありません。

介護職は「つなぐ」役割

ケアマネジャーやヘルパーは、診断書こそ書けませんが、日々の変化を医師に報告し、「そろそろ先生に来てもらったほうがいい」と連携をとる重要な役割を担っています。

歯科医師も書けるけれど…

ちなみに、法律上は「歯科医師」も死亡診断書を書く権限を持っています。
しかし、これは歯科治療中に亡くなった場合などのレアケースに限られるのが一般的です。

老衰や持病での看取りにおいては、やはり内科などのかかりつけ医(医師)との関係づくりが鍵となります。

まとめ:元気なうちに「最期」の話し合いを

「縁起でもない」と避けてしまいがちな話題ですが、いざという時に慌てないためには、事前の準備が不可欠です。

  • 親御さんは「自宅」と「病院」、どちらを希望しているか?
  • 自宅の場合、24時間対応してくれる「在宅医」は見つかっているか?
  • 容体が急変したとき、救急車を呼ぶか、かかりつけ医を呼ぶか?

これらを元気なうちに家族で、そしてケアマネジャーや医師と話し合っておくことが、親御さんの「自分らしい最期」を守ることにつながります。
「死亡診断書を書けるのは医師だけ」。この事実を頭の片隅に置いて、医療との関わり方を考えてみてください。

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