「最近、とっさに言葉が出てこなくて情けない」
「新しい機械の使い方が覚えられない。もう還暦を過ぎたら下り坂だね」
親御さんがそんなふうに、自分の衰えを嘆いているのを聞いたことはありませんか?
確かに、若い頃のような「テキパキとした反応」は難しくなるかもしれません。しかし、だからといって「知能全体が低下している」と考えるのは大きな間違いです。
実は、人間の知能には、年をとっても衰えにくい、それどころか「経験を重ねるほどに磨かれていく能力」が存在します。
今回は、高齢者が自信を持つべき「脳の強み」について、心理学の視点からお話しします。
知能には「瞬発力」と「蓄積力」の2種類がある
心理学では、人間の知能を大きく2つに分けて考えます。
1. 流動性知能(瞬発力)
新しい情報を処理したり、計算したり、暗記したりする能力です。
これは20代でピークを迎え、その後は加齢とともに徐々に低下していきます。「新しいスマホの操作が覚えられない」のは、この能力の変化によるもので、ある程度は仕方のないことです。
2. 結晶性知能(蓄積力)
こちらは、長年の経験や学習によって獲得した知識、語彙力、判断力のことです。
冠婚葬祭のマナー、料理のコツ、歴史の知識、対人関係の知恵などがこれに当たります。
特筆すべきは、この「結晶性知能」は、高齢になっても低下しにくく、むしろ60代以降も維持・上昇する傾向があるという点です。
いわゆる「年の功」や「おばあちゃんの知恵袋」というのは、科学的に証明された脳の力なのです。
あなたは「歩く辞書」であり「生き字引」です
もし親御さんが「もう役に立たない」と落ち込んでいたら、こう伝えてあげてください。
「計算の速さではAIや若者に負けるかもしれないけれど、『どう振る舞えば丸く収まるか』『この場面では何が必要か』という総合的な判断力では、お父さん(お母さん)には敵わないよ」と。
実際、漢字の読み書きや語彙力、ことわざの知識などは、若者よりも高齢者の方が圧倒的に豊富です。
それは長い人生をかけてコツコツと積み上げてきた「知識の結晶」であり、誰にも奪えない財産なのです。
知識の結晶を輝かせ続けるためのツール
せっかくの「結晶性知能」も、使わなければ錆びついてしまいます。
知識をアウトプットし、脳を活性化させるための趣味やツールを取り入れてみましょう。
1. 知識を総動員する「クロスワード・川柳」
語彙力が問われる「クロスワードパズル」や、言葉選びのセンスが光る「川柳・俳句」は、結晶性知能をフル活用する最高のアソビです。
新聞の投稿欄に応募してみるのも良い刺激になります。「入選した!」という喜びが、さらなる意欲を生み出します。
2. 経験を次世代に伝える「先生役」
得意なことを誰かに教えることは、脳にとって一番の活性化になります。
地域のボランティアで「将棋」や「手芸」を教えたり、孫に「昔の遊び」を伝授したり。
「誰かの役に立っている」という実感が、心の健康も支えてくれます。
3. 人生を振り返る「自分史ノート」
これまでの経験を整理するために、「自分史」を書いてみるのもおすすめです。
市販の「エンディングノート」や「自分史作成キット」を使えば、質問に答えていくだけで、豊かな人生経験が一冊の本になります。書き出しながら「私はいろんなことを知っているな」と再確認できるはずです。
まとめ
年をとることは「失うこと」ばかりではありません。
経験という名の宝石が、脳の中にどんどん増えていく過程でもあります。
「物忘れ」ばかりを数えるのはやめて、積み上げてきた「知恵」の多さに目を向けてみませんか?
「年の功」には、ちゃんとした専門用語があります。
経験によって蓄積された知恵や知識のこと。これを心理学用語で「結晶性知能(けっしょうせいちのう)」と呼びます。
この言葉を知っているだけで、高齢者の能力を正しく評価できるようになります。ぜひ実際の試験問題で、その定義を確認してみてください。
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