いきなり歯ブラシはNG!親の命を守るために、歯磨きの前に必ずやるべき「儀式」とは

「さあ、お口をきれいにするよ。あーんして」
そう言って、乾いた歯ブラシを親御さんの口に入れようとしていませんか?

もしそうなら、ちょっと待ってください。
その何気ない行動が、親御さんの口の中を傷つけ、最悪の場合、誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)を引き起こすきっかけになっているかもしれません。

介護のプロである「介護福祉士」は、いきなり歯を磨いたりはしません。
安全に、そして気持ちよくケアを受けてもらうために、必ず守っている「手順」「姿勢」のルールがあります。

今回は、家庭でも今日から実践できる、プロ直伝の口腔ケアの鉄則をお伝えします。

目次

鉄則1:まずは「うがい」で口を潤す

一番大切なルールはこれです。
「歯磨きの前に、まずブクブクうがいをする」

なぜだか分かりますか?
高齢者の口の中は、唾液が減って乾燥していることが多いです。
乾いた口にいきなりブラシを入れるのは、乾いたフライパンを金たわしでこするようなもの。粘膜を傷つけ、痛い思いをさせてしまいます。

さらに重要なのが、口の中に溜まった食べカスや細菌を、あらかじめ洗い流す効果です。
うがいをせずに磨き始めると、汚れや細菌を喉の奥へと押し込んでしまい、それを誤って飲み込む(誤嚥する)ことで肺炎のリスクが高まります。

「まずはブクブクして、悪いものを出しちゃおうね」
このワンクッションが、安全なケアの第一歩です。(※うがいができない方は、保湿ジェルを塗ったり、スポンジブラシで湿らせたりするだけでもOKです)

鉄則2:「上を向いてあーん」は絶対ダメ

口の中を見ようとして、「ほら、上を向いて」と親御さんの顎(あご)を上げさせていませんか?
これは非常に危険な姿勢です。

人間の体の構造上、顎を上げると気管の入り口が開き、物が入りやすくなります。
この状態で水や唾液が喉に流れると、そのまま気管に入ってむせ込んだり、肺炎を起こしたりします。

口腔ケアの基本姿勢は「顎を引く」こと。
少しうつむくくらいの姿勢の方が、喉に蓋がされ、誤嚥しにくくなります。
ご家族が立ったまま介助すると、親御さんは見上げようとして顎が上がってしまうので、必ず「同じ目線の高さ」「少し下」から覗き込むようにしましょう。

鉄則3:舌の掃除は「奥から手前」

舌についた白い苔(舌苔)を取る時、歯ブラシでゴシゴシこすっていませんか?
舌はとてもデリケートです。専用の「舌ブラシ」を使いましょう。

そして動かす方向は、必ず「奥から手前」の一方通行です。
手前から奥へ動かしたり、往復させたりすると、汚れを喉の奥に押し込んでしまったり、「オエッ」という嘔吐反射を誘発して苦しい思いをさせてしまいます。

まとめ

口腔ケアは、ただ汚れを落とせばいいというものではありません。
「痛くない」「苦しくない」という安心感があって初めて、親御さんは口を開けてくれます。

「まずはうがい、顎は引く、舌は手前に」
この3つの呪文を唱えてから、歯ブラシを手に取ってみてくださいね。

「歯磨きの前にうがい」。これが国家試験の正解です。
なぜ順番が決まっているのか。それは「誤嚥性肺炎」という命に関わるリスクを防ぐためです。
この基本的な手順は、介護のプロなら必ず知っている常識。あなたのケアが合っているか、実際の試験問題で答え合わせをしてみませんか?
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