親と意見が合わない!介護の方針で揉めたとき、絶対にやってはいけない「説得」と、やるべき「分離」の話

「お父さん、もう一人暮らしは無理だよ。施設に入って!」
「嫌だ!俺は死ぬまでこの家にいる!」

介護の場面で最も辛いのは、下の世話でもお金のことでもなく、「親と意見が合わずに喧嘩になること」かもしれません。
心配するからこそ安全な道を勧める子供と、自由と尊厳を守りたい親。
どちらも間違っていないからこそ、話し合いは平行線をたどり、最後は言い争いで終わってしまう……そんな経験はありませんか?

「どうやって説得しようか」と頭を抱えているあなたへ。
実は、介護のプロたちが意見の対立を調整する時、最初に行う「鉄則」があります。
それは、「一緒の場では話し合わない」ということです。

今回は、泥沼化した親子関係を解きほぐすための、ちょっとした会話のテクニックについてお話しします。

目次

三者面談が「修羅場」になる理由

ケアマネジャーさんを交えて、親、あなた、ケアマネの3人で話し合う「サービス担当者会議」。
ここで本音をぶつけ合おうとして失敗するケースが後を絶ちません。

なぜなら、親御さんの目の前で「お母さんはもうボケてて火の不始末が怖いんです!」と言ってしまえば、親御さんは「バカにされた」「子供に裏切られた」と感じ、意地になって心を閉ざしてしまうからです。
逆に、あなた自身も親の前では「もう介護したくない」という弱音を吐きにくいかもしれません。

お互いに感情的になりやすい家族同士だからこそ、「同じテーブルで一度に解決しようとする」のは危険なのです。

プロはあえて「別室」に呼ぶ

私たち介護の専門職は、意見が割れている時ほど、「別々に話を聞く機会」を設けます。

まず、親御さんと二人きりで話します。
「娘さんは心配性だからああ言ってますけど、お父さんはどうしたいですか?」
すると、「実は一人も不安なんだが、娘に迷惑をかけたくなくて強がってしまった」という本音が出てくることがあります。

次に、ご家族(あなた)と二人きりで話します。
「お母様の前では言いにくかったと思いますが、本当のところ、今の介護負担はどうですか?」
そこで初めて、「実は夜も眠れていなくて限界なんです」というSOSが出せたりします。

別々に吐き出された「本音」を、プロがフィルターとなって整理し、「お父様はこう思っているようですが、この部分だけは娘さんの希望を通しませんか?」と調整する。これが「ケアマネジメント」の真髄です。

家族ができる「賢い相談」のアクション

もし今、親御さんと意見が対立しているなら、正面から説得しようとするのをやめて、以下の方法を試してみてください。

1. ケアマネジャーに「別々に聞いて」と頼む

「母の前では本音が言えないので、電話かメールで私の話を聞いてくれませんか?」とケアマネジャーにお願いしましょう。
そして、「母の話も、私がいないところで聞いてあげてください」と伝えます。第三者になら、親御さんも素直になれることが多いものです。

2. 「手紙」や「ノート」で伝える

口で言うと喧嘩になるなら、文字に頼りましょう。
「お父さんの気持ちは尊重したい。でも、私はお父さんが転んで怪我をするのが一番怖い。だからこのサービスだけは使ってほしい」
感情を削ぎ落とし、アイメッセージ(私はこう思う)で書かれた手紙は、冷静に読むことができます。

3. 本音を引き出す「もしもカード」

「施設か自宅か」の二択を迫るのではなく、「もしもカード(エンディングノートの一種)」のようなツールを使って、ゲーム感覚で希望を聞き出してみましょう。
「もし歩けなくなったらどうしたい?」といったカードを選ぶ過程で、「絶対に家がいいわけじゃなく、痛いのが嫌なだけだった」といった意外な本音が見えてくることがあります。

まとめ

意見が違うのは、当たり前です。
違う人間同士が、それぞれの「幸せ」を願ってぶつかっているのですから。

「説得」して相手を変えようとするのではなく、一度「分離」して、それぞれの想いを第三者に預けてみてください。
絡まった糸は、引っ張るよりも、緩めたほうが解けやすくなるものです。

「家族と話す機会を別に設ける」。これがトラブル解決の正解です。
意見が対立した時、説得するのではなく「個別に話を聞く(受容する)」こと。これは介護福祉士国家試験でも正解となる、対人援助の基本テクニックです。
「やっぱり別々でいいんだ!」と安心したあなた。ぜひ実際の試験問題で、プロの対応を確認してみてください。
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