親御さんの介護が必要になったとき、まず頼るのはケアマネジャーやヘルパーといった「専門職」の方々ですよね。
「プロにお願いしたから、とりあえず一安心」
そう思って、ホッと胸をなでおろす方も多いでしょう。
もちろん、医療や介護の専門家は欠かせない存在です。しかし、彼らだけで親御さんの「24時間の暮らし」すべてをカバーできるわけではありません。
ふとした瞬間の寂しさを埋めたり、生きがいを感じたりするために必要なのは、実はもっと身近な「地域の人々」の力なのです。
今回は、専門職だけではない、地域全体で高齢者を支える「新しいチーム」の形と、そこに家族がどう関わっていけるかについてお話しします。
専門職だけでは「暮らし」は作れない
医師、看護師、ケアマネジャー。彼らは非常に頼もしい存在ですが、あくまで「業務」として関わっています。
契約した時間以外にふらっと立ち寄って世間話をしたり、一緒に趣味を楽しんだりすることは、役割上難しいのが現実です。
もし、親御さんの周りに「専門職」しかいなかったら、どうなるでしょうか。
体は守られるかもしれませんが、心は「患者」「利用者」という立場のまま、孤独を感じてしまうかもしれません。
そこで重要になるのが、「地域援助」という視点です。
これは、専門職だけでなく、ご近所さん、商店街のお店、ボランティア、NPOなど、地域のみんながそれぞれの立場で高齢者を見守り、支えようという考え方です。
商店街やカフェが「居場所」になる
具体的に、地域にはどのような「支え」があるのでしょうか。
認知症カフェ(オレンジカフェ)
最近増えているのが、NPOや地域の商店などが協力して運営する「認知症カフェ」です。
ここは、認知症の方やその家族、地域住民が誰でも気軽に集まれる場所です。
専門職による相談コーナーもあれば、美味しいコーヒーを飲みながらお喋りを楽しむ時間もあります。
「患者」としてではなく、「一人の常連客」として過ごせる場所があることは、親御さんにとって大きな心の拠り所になります。
ボランティアやご近所さんの見守り
災害時や緊急時に、真っ先に駆けつけられるのは近くに住む人々です。
日頃から「挨拶できる関係」を作っておくことや、自治会などのボランティア活動に参加しておくことは、いざという時の命綱になります。
「制度がないなら作る」という選択肢
生活していると、「ここにもっとベンチがあったらいいのに」「移動手段がなくて困る」といった、既存のサービスでは解決できない悩みが出てくることがあります。
そんな時、「仕方ない」と諦めるのではなく、自治体や行政に「こういうことで困っています」と声を届けることも、大切な地域活動の一つです。
一人の声は小さくても、地域住民がまとまって働きかけることで、新しい乗り合いバスができたり、高齢者に優しい制度が生まれたりすることがあります。
これを専門用語で「ソーシャルアクション」と呼びますが、要は「住みやすい街は、自分たちの声で作れる」ということです。
つながる時のマナー:プライバシーを守る
地域とのつながりは大切ですが、一つだけ注意したいのが「プライバシー」です。
地域の集まりやイベントに参加した際、楽しかったからといって、本人の許可なく写真を撮ってSNSにアップしたり、名前を公表したりすることは絶対にNGです。
「認知症であることを知られたくない」「そっとしておいてほしい」という気持ちを持っている方もいらっしゃいます。
善意の活動であっても、最低限のルールとマナーを守ることが、長く良い関係を続ける秘訣です。
まとめ:回覧板や掲示板を見てみよう
親御さんの生活を豊かにするために、私たち家族ができる第一歩。
それは、実家に帰った時に「地域の回覧板」や「公民館の掲示板」をちょっと覗いてみることです。
そこには、専門職のサービスリストには載っていない、地元ならではのサロンやイベント、助け合いの情報が載っているかもしれません。
「お母さん、今度ここのカフェに行ってみない?」
そんな誘いが、親御さんを地域という大きなチームにつなぐきっかけになります。
