「困難事例」の鉄則。一人で抱えず、チームと法を武器にする

問48

ソーシャルワークの視点から、支援困難事例に関する記述として、より適切なものはどれか。3つ選べ。

  1. 高齢者の家族が支援内容に対して何度も不満を訴えたため、担当の介護支援専門員が地域包括支援センターヘ相談する。
  2. 独居のクライエントが屋外までごみがあふれている家屋に住んでいるので、直ちに警察へ介入を依頼する。
  3. 認知症のために判断能力が著しく低下したクライエントに対して、成年後見制度の利用を検討する。
  4. セルフ・ネグレクトには、配偶者からの身体的虐待が含まれる。
  5. 関係する専門職、関係機関、地域住民などがチームを組んでアプローチすることが望ましい。
目次

正解は1・3・5。組織対応と権利擁護の定石

支援困難事例(虐待、ゴミ屋敷、激しいクレーマーなど)において、ケアマネジャー個人のスキルで解決しようとすることは危険です。
「組織」と「法制度」を使う視点が問われています。

包括は「困難事例」の専門家(選択肢1)

高齢者の家族が支援内容に対して何度も不満を訴えたため、担当の介護支援専門員が地域包括支援センターヘ相談する。

この記述は適切です。

執拗な苦情や理不尽な要求に対して、一人のケアマネジャーが対応し続けると疲弊し、バーンアウト(燃え尽き)してしまいます。
地域包括支援センターは、こうした「支援困難事例」をバックアップする役割を持っています。
早めに相談し、組織的な対応に切り替えるのがプロの判断です。

判断能力不足には「後見人」(選択肢3)

認知症のために判断能力が著しく低下したクライエントに対して、成年後見制度の利用を検討する。

この記述は適切です。

判断能力が低下すると、悪徳商法の被害に遭ったり、財産管理ができなくなったりします。
これは福祉サービスだけでは守りきれません。
法的に権利を守る「成年後見制度」の利用を検討し、権利擁護のネットワークにつなぐ必要があります。

「チーム」で支える(選択肢5)

関係する専門職、関係機関、地域住民などがチームを組んでアプローチすることが望ましい。

この記述は適切です。

これがソーシャルワークの核心です。
医療、介護、行政、そして民生委員や近隣住民。
多職種が連携し、それぞれの視点と役割で「チーム」として関わることで、複雑に絡み合った問題を解きほぐすことができます。

誤答は2・4。対応手順と定義の誤り

誤りの選択肢は、性急すぎる対応や、用語の定義を履き違えているものです。

ゴミ屋敷は「福祉」の課題(選択肢2)

独居のクライエントが屋外までごみがあふれている家屋に住んでいるので、直ちに警察へ介入を依頼する。

この記述は不適切です。

ゴミ屋敷(不衛生な環境)は、セルフ・ネグレクトや認知症などが背景にある「福祉的な課題」です。
犯罪ではないため、いきなり警察に通報しても解決しません(生命の危険が切迫している場合を除く)。
まずは地域包括支援センターや行政と連携し、信頼関係の構築から始めるのが筋です。

それは「他者からの虐待」(選択肢4)

セルフ・ネグレクトには、配偶者からの身体的虐待が含まれる。

この記述は不適切です。

セルフ・ネグレクト(自己放任)とは、自分自身で生活を維持する行為を放棄してしまうことです(拒食、医療拒否、不衛生など)。
配偶者や家族から暴力を受けるのは「身体的虐待(他者からの虐待)」であり、明確に区別されます。
対応のアプローチも異なるため、混同してはいけません。

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