「年のせい」で片付けない。高齢者の精神疾患、その特殊性とリスク

問30

高齢者の精神疾患について、より適切なものはどれか。3つ選べ。

  1. 要因の一つに、脳の加齢性変化がある。
  2. うつ病では、自殺リスクはない。
  3. 配偶者や近親者の死が、うつ病の要因となることがある。
  4. アルコール依存症は、うつ病を合併することはない。
  5. 精神症状が定型的でなく、訴えは多彩かつ曖昧であることがある。
目次

正解は1・3・5。身体・環境・症状の「高齢者特性」

高齢者の精神疾患は、若年者とは異なる特徴を持っています。
身体的な衰えや環境の変化が引き金になりやすく、症状もわかりにくいのが特徴です。

脳の変化が心を変える(選択肢1)

要因の一つに、脳の加齢性変化がある。

この記述は適切です。

脳の萎縮や神経伝達物質の減少といった「器質的な変化(加齢性変化)」は、精神疾患のベースになります。
単なる気分の問題ではなく、脳という臓器の老化が関与していることを理解しましょう。

喪失体験が引き金に(選択肢3)

配偶者や近親者の死が、うつ病の要因となることがある。

この記述は適切です。

高齢期は「喪失の時代」とも呼ばれます。
配偶者との死別、定年退職による役割の喪失、健康の喪失など。
これらの環境要因(心因)が大きなストレスとなり、うつ病(老年期うつ病)を発症させる要因となります。

「なんとなく不調」の正体(選択肢5)

精神症状が定型的でなく、訴えは多彩かつ曖昧であることがある。

この記述は適切です。

「悲しい」「憂鬱だ」といった典型的な精神症状が出ないことがあります。
代わりに「頭が痛い」「眠れない」「食欲がない」といった身体的な不調(身体愁訴)を訴えるケースが多く、内科を受診しても原因がわからない「仮面うつ病」の状態になりやすいのが特徴です。

誤答は2・4。命に関わる危険な誤解

誤りの選択肢は、リスクを過小評価する危険な記述です。

高齢者の自殺率は高い(選択肢2)

うつ病では、自殺リスクはない。

この記述は不適切です。

高齢者のうつ病における自殺リスクは非常に高いです。
「もう死んでしまいたい」という希死念慮を抱くことも少なくありません。
「高齢だからそんな元気はないだろう」という思い込みは禁物です。

アルコールと「うつ」はセット(選択肢4)

アルコール依存症は、うつ病を合併することはない。

この記述は不適切です。

定年後の孤独感などを紛らわせるために飲酒量が増え、アルコール依存症になるケースがあります。
そして、アルコール依存症はうつ病を合併するリスクが非常に高いです。
お酒と心の病は、互いに悪影響を及ぼし合う「負の連鎖」を起こします。

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